Free JAMAL Campaign

9.22ジャマルさん不当逮捕「傷害」容疑事件裁判第4回公判報告

論告求刑、最終弁論、最終意見陳述

 2005年3月3日(木)午前10時より、9.22ジャマルさん不当逮捕「傷害」容疑事件裁判第4回公判が行われました。最初に、検察側の論告求刑(15分ほど)がなされ、不当にも8ヶ月の求刑。ついで、弁護人の最終弁論(10分ほど)、検察側の二転三転した訴因変更などでたらめさを指弾し、じつに素晴らしかったです。最後に被告のジャマルさんが最終意見陳述に立ち、一言「公正な判断」を求めました。裁判所がもし「公正」ならば無罪しかありえないと確信させる結審でした。
 公判後は、地裁前で1時間ほどビラまき、署名集め、本の販売を行いました。
 3月18日の判決公判にぜひご参加下さい。

Under Construction ...

★ジャマルさん9.22不当逮捕「傷害」容疑事件裁判★

第5回公判(判決公判)
3月18日(金)11時〜
東京地裁425号法廷

東京地裁は地下鉄霞ヶ関駅A1出口からすぐです。
※午前10時45分から、傍聴券の配布があります。
一般の傍聴席は39席。先着順です。
傍聴券は、門を入って左手の、一番交付所にて配布します。
公判後に簡単な交流会、地裁前情宣を予定してます。
ご参加、ご協力をお願いいたします。

弁護人の最終弁論

弁論要旨

                 被 告 人  ジャマル・サーベリこと
                        ノーイ・ジャラル・アマンザデ

2005年3月3日

                 弁護人   


東京地方裁判所刑事5部 御中

 上記被告人に関する傷害被告事件につき、弁護人の意見は次のとおりである。

1 本件逮捕、公判請求手続の異常性

  本件は、自己及び他のクルド人家族らの難民認定を求めて、国連大学前にて座り込みをしていた被告人が、これを排除しようとした警備員である被害者に対し、全治3日間の「傷害」を負わせたという事案であるが、以下に見るとおり、その逮捕、公判請求に至る過程には少なからず不審な点があると言わざるをえない。
  第1に、本件は、竹村悟の検面調書に明らかなとおり、国連大学側と渋谷警察署との間にて、被告人らを排除するための入念な事前の打ち合わせの結果、なされた排除行動の経過において発生した事案である。そして、事件の直後、被告人は、これを待ち構えていたかのように、渋谷警察署員に現行犯逮捕され、同警察署にその身柄を移されるや、被告人のためのペルシャ語の書類や通訳もすでに用意されていたというのである。こうした「手回しのよさ」は、被告人に対する検挙という方針が、事前の打ち合わせの席上ですでに決定されていた可能性を強く伺わせるものである。
  また、後に述べるとおり、本件被害の結果は、「全治3日間」であり、公判請求される事案としては極めて軽微なものであるというほかない異例のものである。このことは、本件公判請求の狙いが、単に本件の処罰のみを求めるというだけではなく、本件座り込み行動そのものをつぶし、さらには、被告人の求める難民申請を妨害する意図もあったのではないかと強く疑われるところである。
  さらに、被告人と被害者の身体接触の部位をめぐる二転三転ぶりは、本件捜査のずさんなあり方を象徴的に示すものである。
  そもそも検察官は、本件そのものを撮影したビデオカメラの映像を主たる根拠として、被告人を勾留請求をしたのであるが、かかる有力な証拠がありながら、その被疑事実は、勾留段階にて、「いきなり身体右腰付近を同人の身体に突き当てる」とされていたのである。それが、公判請求段階になると「その左足側部に右足を打ち当てる」と変更され、更に公判途中の訴因変更の結果、「その右足に被告人の右足を」と再度変更されたものである。
  すなわち、本件は、一連の手続の中で新証拠が発見され、その結果、訴因の変更に至ったという事案ではなく、検察官が、ビデオ映像をよく見直してみた結果として、訴因変更がなされたものである。逆に言えば、検察官は、ビデオ映像という極めて有力な証拠を手元に置きつつ、それをよく見ないまま、本件公判請求に至ったものである。そして、ビデオを再度よく見直した結果として再度被害者に対する事情聴取をやり直すなどということまで行うことによって、結果的に被害者に最大の迷惑を及ぼしたのは検察官である。
  以上のとおり、本件逮捕、公判請求の各過程には少なからず、不自然というより異常な点が見受けられるのである。

2 被告人に暴行の故意がないこと

  本件は、被告人に暴行の故意があったことを前提として、被告人に傷害罪を問うものであるが、被告人には、暴行の故意はなく、傷害罪は成立しない。
  すなわち、被告人は、確かに、被害者の方向に向かって走り出し、右足を前に突き出したのであるが、この行動は、被害者が引き剥がそうとした幕を踏みつけ、もって被害者により、幕を剥がされることを阻止することを企図した行為であって、被害者の身体に有形力を行使することを企図した行為ではなかったものである。
  このことは、本件を至近距離で目撃していた周証人が、「高橋さんが横断幕を剥がそうとしたので、横断幕を地面に押しとどめようとして足で押さえたのだと思いました」と証言していることからも明らかなとおりである。
  また、被告人は、本件の前後に全く暴行に類する行動をしていないし、事件の前日には、警備員の身体に触れないように支援者からアドバイスを受けており、しかも、事件当日は、複数の者が、ビデオカメラを回して本件過程の証拠保全に努めていたのであり、通常、かかる状況下において、将来の検挙に結びつく暴行に及ぶことは考えにくいことでもある。
  更に、被告人は当時素足であり、素足の状態で靴を履いている被害者の足をめがけた積極的な暴行を行うことは、むしろ自らを傷つけかねないのであるから、このような行為に及んだとは考えにくく、むしろ被害者に危害を加えたいのであれば、中腰になっている被害者の上半身を押すなどするほうがよほど自然な行為である。
  そのような自然な行為をするのではなく、あえて、被告人は、被害者の付近に駆け寄り、そこで一呼吸をおいた上、右足を突き出しているのであるから、その企図するところは、やはり、幕を剥がされることを阻止することにあったはずである。
  以上の次第であるから、被告人の目的が、横断幕の踏みつけにあり、被害者の足に向けられていなかったことは関係証拠上明らかである。

3 刑法上の傷害の不成立

  本件は、被害者が、「全治3日間を要する頸部打撲及び腰部打撲」を負ったというものであるが、上記のうち、「頸部打撲」については、刑法上の「傷害」には当たらないというべきである。
  すなわち、刑法上の傷害概念は、医学上の創傷の概念と一致するわけではなく、@日常生活に支障をきたさないこと、A傷害として意識されないか、日常生活上看過される程度であること、B医療行為を特別に必要としないこと等を一応の基準とするとした裁判例(名古屋高裁金沢支部昭和40年10月10日高集18巻6号691頁)もあり、かかる裁判例の示す基準に照らせば、本件頸部打撲はおよそ刑法上の傷害には当たらないというべきである。
  なぜなら、診断書を作成した葉証人の証言によれば、本件傷害に、他覚的症状は一切なく、レントゲンで検査をしたほかは、何ら治療行為もなされず、被害者本人の供述(甲2)によれば、「この首の重さは、この事件の後、いつの間にかすぐに消えました」というのであり、傷害として特に意識されたとは言いがたく、日常生活にも何ら支障がなかったものと認められるからである。
  よって、上記「頸部打撲」の点は、傷害として認定されるべきではない。

4 情状

  そもそも本件は、難民認定を求めるべく、国連に対する要請行動をとり、その一環として国連大学前にて座り込みをしていた被告人らを、国連大学当局が、排除する過程において生じたものである。
  そして、本件の背景には、わが国の難民・入管政策が、いわゆる難民条約に沿ったものとしては運用されていないという実態があり、本件は、それに対し、やむを得ずなされた被告人らの抗議行動の過程で生じたものである。そして、本件排除の過程では、被害者側警備員による暴行的行為も存在していることが、被告人供述等により明らかである。
  そして、本件の被害は、わずか3日間という、葉証人いわく「これまでの経験のなかで最も軽い打撲の部類に属する」ものであり、数ある傷害事件の中でも、突出して軽微な事案である。
  それにもかかわらず、被告人は、自己が被害者に負傷させたこと自体については反省しており、被害者もその意を認めたからこそ、示談が成立したのである(なお、被害者は、示談の席上、もみ合いの過程で被告人に助けられたことを指摘している)。そして、示談においては、被告人が被害者に金10万円を支払い、被害者は寛大な処罰を求めているものである。
  本法廷でも明らかになったとおり、被告人の日本語能力は極めて高く、日本社会にはよく順応していると考えられる。したがって、本件判決が、独自に、被告人を強制退去の原因となるようなものであってはならない。すなわち、出入国管理及び難民認定法24条4号の2の解釈いかんでは、被告人に対し、仮に執行猶予を付したとしても懲役ないし禁固以上の刑が確定した場合、現在継続中の行政訴訟の結果を待たずして、本件により、強制退去が可能ということにもなりかねないが、かかる判決は、決してあってはならないことである。
  以上に述べたほか、被告人に前科のないこと、被告人の勾留が約半年近くの長期に及んでいること、雨宮証人ら多くの熱意ある支援者によって被告人の行動が支援されていることなど、被告人に有利な点は多々存在している。
  よって、被告人に対しては、有罪判決をなす場合であっても、その刑としては、罰金刑を選択し、これに未決勾留日数を参入して事実上残刑の残らないようにしたうえ、更に執行猶予を付することを求める次第である(弁護人は、かつて1週間の傷害をもって公判請求された事案に関し、かかる判決を得た経験がある)。
以 上