大島訴訟

  1. まずは、「租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法一四条一項に違反するものということはできない。」とします
  2. 憲法14条は国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨であって、国民各自の事実上の差異に相応して法的取り扱いを区別することは、その区別が合理的を有する限り、何ら憲法14条1項の規定に違反するものではないとしています。
  3. 租税は国家がその課税権に基づき、特別の給付に対する反対給付としてでなくその経費に充てるための資金を調達する目的をもって、一定の要件に街頭するすべての者に課する金銭給付であるという定義をします。
  4. 租税法の定立については国家財政、経済社会、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断に委ねるほかなく、裁判所はその裁量的判断を尊重せざるを得ないことをいいます。租税法分野における所得の性質の違い等を理由とする取り扱いの区別はその立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が右目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限りその合理性を否定することはできず憲法14条1項の規定に違反するということはできないとします。
  5. 租税立法については合憲性の推定が働きその内容が明らかに不合理でない限り憲法違反とならないという意味での「ゆるやかな合理性の基準」を採用しているといえます(金子宏租税判例百選第7版6ぺーjい)
  6. 「給与所得の金額の計算につき必要経費の実額控除を認めない所得税法の規定はは、憲法一四条一項に違反しない。」とします。
  7. 給与所得控除の合憲の理由を次の通りとしています。
    1. 給与所得者は、職場における勤務上必要な施設、器具、備品等に係る費用のたぐいは使用者において負担するのが通例である。
    2. 必要経費と家事上の経費はこれに関連する経費との明瞭な区分が困難であるのが一般である。
    3. 給与所得者はその数が膨大であるため、各自の申告に基づき必要経費の額を個別的に認定して実額控除を行うこと、あるいは概算控除と選択的に右の実額控除を行うことは、技術的及び量的に相当の困難を招来し、ひいて租税徴収費用の増加を免れず、 税務執行上少なからざる混乱を生ずることが懸念される。
    4. 各自の主観的事情 や立証技術の巧拙によってかえって租税負担の不公平をもたらすおそれもなしとしない。
  8. 給与所得には次のような特徴があることも給与所得控除合憲の理由となっています。
    1. 給与所得は本人の死亡等によりその発生がとだえるため担税力が乏しい
    2. 給与所得が源泉徴収の方法により徴収するため他の所得に比べて相対的により正確に捕捉されやすい。
    3. 申告所得に比べ平均して約5か月早期に所得税を納付するためその金利を調整する趣旨がある。


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