生命保険年金二重課税事件

  1. 死亡保障保険で被保険者が死亡し、死亡保険金を年金払でもらう場合、年金受給権評価額は相続税の対象とし、受給権をもとに払われた年金については、いわゆる利息相当額のみ所得税の対象とするというものです。
  2. 実務は年金部分の取り扱いについてこの最高裁判例で大きく変わりました。
  3. ただし、源泉徴収の規定については所得税法207条所定の生命保険契約等に基づく年金の支払をする者は,当該年金が同法の定める所得として所得税の課税対象となるか否かにかかわらず,その支払の際,その年金について所得税法208条所定の金額を徴収し,これを所得税として国に納付する義務を負うとして源泉徴収の取り扱いについて是認しています。
  4. 同じ事例に当てはまるものについては特別還付金の制度を設け、所得税の還付が行われました。
  5. 将来に向かっては、支払調書について、年金の支払調書の様式が改訂されました。これにより新しい課税制度での所得税計算が可能になります。また源泉徴収についてもこの取り扱いをする場合には停止されています。
  6. 新しい課税制度による年金の所得計算はいわゆる級数法を用いた計算で全体の課税所得額をもとめ、それを0,1,2,3,4,、、、、Xというイメージで課税されるものと考え、階段状に所得計算させるものです。よく考えられたものであり、具体例も示されているのですがいかんせん、数字が苦手なものにはわかりにくいものです。じっくり計算例を眺め、理解を深めるほかありません。
  7. さらにややこしい点が時期がちょうど相続税法24条改正とかさなったため、旧24条分と新24条分とで計算が異なるのでさらに混乱した部分があります。
  8. 最高裁の判示内容としては相続税法3条1項1号の規定によって相続により取得したものとみなされる生命保険契約の保険金であって年金の方法により支払われるもののうち有期定期金債権に当たる年金受給権に係る年金の各支給額については,被相続人死亡時の現在価値に相当する金額として相続税法24条1項1号所定の当該年金受給権の評価額に含まれる部分に限り,相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものとして,所得税法9条1項15号の規定により所得税の課税対象とならないとしています。
  9. 判例の射程範囲は生命保険年金限定と思われます。
  10. 相続税法と所得税法での二重課税は許されていないというのは筋の通った議論だと思います。ただ、それはどうしてなのかというのは税目が違うということもあり、さらに考えていく必要もありそうです。違う税法に基づくものなら例えば、消費税の世界では関税がかかった前提で消費税計算をすることがあるようです。 


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