銭湯の浴槽  Ver. 0.9


銭湯のメイン施設は何といっても浴室である。
 銭湯は、大きな湯舟一つでも成り立つはずなのだが、今の銭湯には本当にさまざまな浴槽があるものが増えてきた。愛媛では、中央にメインの湯船があり、奥に二つの小さな湯船を持つパターンが基本形で、古い銭湯の配置はほとんどよく似ている。奥の2つの湯船は1つは薬湯で、もう一つは電気風呂が多い。しかし、この不景気で電気風呂はその残骸だけ、薬湯でさえも使っていない銭湯もたまに見かける。
 しかし、経営者が元気な銭湯や、最近改造して新たな銭湯文化を構築しようとしているところではさまざまな湯船が試されている。

 湯舟の側壁から気泡を含んだ湯を噴射しているバブルジェット(なぜか超音波気泡湯という奇妙な名でも呼ばれる)、底にたくさん開いた小さな穴からから気泡を出している気泡湯などは、マッサージ効果をねらったものだ。
 打たせ湯も多くの銭湯で試みられているが、狭い浴室では、しぶきを飛び散らさないように仕切られている。
 薬湯は、松山では主に入浴剤、地方に行くに従って湯ノ花を入れた硫黄臭のものが多くなる。大洲や八幡浜の薬湯はほとんど後者である。いかにも温泉という風情があるのだろうが、目にはいると痛みが取れない。
 潮湯は、伊予や松前に多いが、塩分の濃いものは本当によく暖まるので、私はよく利用する。これらは、海水を直接温めているところや、後から塩を入れるところなどもあるが、やはり八幡浜の清水温泉、伊予市の五色浜温泉や汐湯のように海水と同じ程度の塩分濃度であってほしい。

 また西日本特有の電気風呂は、いかにも何か効能がありそうなためか、地方の隅々にまで普及している。一時期、大流行したのであろう。関東ではほとんどないらしいが、本当に効果があるのだろうか。この電気風呂については、効能はもちろんどんな電流をどのように流しているのかわからない点が多い。よく知っている人がいたら教えてほしい。潮湯の横にあったり、電気風呂を薬湯にしているところもあるが、理科系の私としてはちょっと怖い。
 右の写真は、その注意書きであるが、まあ刺激という面では、第1の浴槽であろう。老人の中には両電極に足と背中を押しつけて入っている。凄いと言うべきか、鈍感というべきか、どっちにしろ私にはできない技である。この電気風呂を堪能するなら松山市の新開温泉。強弱の電気風呂が浴室の中央にあって、強の方には私は入ることができなかった。めずらしいところでは、赤外線湯(松山の松の湯など)とかいうものもあるが、効能は??。

 湯を出すために特別につくった部分を何というのだろう。とりあえず湯出し口と呼んでおこう。これは、道後温泉などの温泉を意識した物であろうと考えられる。石をくりぬいたり、岩を積み上げたりさまざまな工夫をしてつくっているが、流行は過ぎたらしく、形ばかり残っているものの方が多いようだ。古い銭湯も含め、シンプルな浴室の銭湯では、湯の下から泉のようにわき出る方式のものが多いようだ。

 そのほかにも、銭湯の浴室にはおもしろい物がいろいろある。写真は銭湯のしきりによくある極小の扉である。下のシャンプーと比べてもその小ささがわかるが、大柄の私には通れそうもない。タイルにもいろいろな工夫がなされている。湯の透明度や温度を表す青系統のタイル、または玉石タイルが浴槽の中にはよく使われている。鯉のタイルが埋め込まれている風流な浴槽(松山市みかわ湯)などもある。
 露天風呂や打たせ湯なども工夫の一つである。露天風呂は石の選定や組み方が、本業の職人がやったかどうかで大きく違いある。八幡浜の清水温泉では造園師の銘入りの優れたもので、バックのタイル絵とミスマッチがまたすごい。