銭湯の庭  Ver. 0.9


 浴室の奥に小さな区画に、箱庭のような空間をつくっている銭湯が松山市内の古い銭湯に多かった。このようなものは、他でもそれまでに見たことがなかった。これは、壁絵などと違って、浴室の空間を犠牲にした遊びの装飾である。
 右の写真は、私が最もよく利用する八幡浜の清水温泉の潮湯浴槽であるが、この岩風呂の岩には庭師の銘が掘ってある。そういわれれば、石の積み方にもかなりの技術があるようだ。このような岩風呂や露天風呂風の演出は多くの銭湯で見られるし、温泉浴場では定番の演出となっている。

 しかし、庭となると、設計段階から考慮しなければならないし、出費も多いだろう。おそらくそのような贅沢がはやった時代があったのだろう。湯出し口にくぼみをつけて、そこに季節の切り花などを行けている銭湯もあったが、その延長上にこの庭があると考えられる。これは日本だからこそ考えつくものであろう。しかし、せっかくの庭も整備されているのは、もう数えるほどしかない。整備しないと、この空間は、全く無駄になってしまう。
 確かにこの庭は、光線の利用が難しく、夜になるとしずんでしまう。ライトアップしている銭湯もあったが、発想を変えてでも、この小さな空間を効果的につかうことはできないものかと考える。新しい銭湯では、観葉植物を置いたり、造花や作り物の蔦で装飾する傾向があるようだが、とにかく植物があるだけで銭湯の雰囲気は大きく変わってしまう。