THE 3rd RALLY RAID MONGOL 1997

TEAM OFFRIDE


’97 Rally Raid Mongol 参戦レポート


ETAP 10 総合リザルト: 31th JULY ARVAYHEER>>ULAANBAATAR

TOTAL 455.03km CP-1 108.64km
SPECIAL 334.58km
SPECIAL 80.00km
LIASON 40.45km MAX TIME 15:00
朝から雨雲と追いかけっこをしながら一路ウランバートルへ向かう。平原は雨のため至る
所川のようになってペースがあがらない。ビクトリーランとなるSS−2はトゥーラ川沿いの
コースである。最後の最後でまた大転倒をするがなんとか走り抜くことが出来た。走って
いるとふと、何ともいえぬ良い香りがする。草原の香りだ。モンゴルの草原にはハーブが
多く生えていてそれが芳香を放つという。一生忘れることはあるまい。

夜明け前の走行は小判鮫


ETAP−10(最終日)はSSが2区間設定されている。約350kmあるSS−1と最終80
kmのファイナルSS−2である。ウランバートル郊外でSS−2はゴールし、その後はコン
ボイを組んで市内チンギスハーンホテルまでパレードするようになる。
距離が短い割りには予定されている行事が多いためかこの日のスタートは6時と異例に
早かった。まだあたりは暗く、私のマシンは計器照明が不調なためまともに見えるのはマ
ップくらいである。しょうがないので他力本願で行こうとすぐ前にスタートした田中先生の後
を小判鮫走行することにした。

空は昨夜の雷雨の名残かあいかわらず曇天のままである。田中先生はマシンと体力を
温存するためか相変わらず40から50km/hくらいでゆっくり走っている。ピスト自体は
別に走りにくくはなくどうといったこともないが分岐がけっこう多い。ヘッドライトが暗いので
足元がよくわからず時々ピストに頭を覗かせている埋もれ石にはじかれる。そのまま明る
くなるまで1時間くらい田中先生についていったろうか。50kmほど進行してようやくICO
も読み取れるようになったので前に出た。

今日の転倒その1


丘陵地帯はもう終わろうとしている。しばらくは快調に進んでいたが体が疲れて
いるせいかハンドルが重く、オーバーランを何度も繰り返したあと小さな流水轍
にフロントをとられて転倒してしまった。けっこう速度が出ており、転倒のショック
でしばらく起き上がれずにいるとすぐ後ろについていたのだろう、4輪のドライバ
ーが心配してスローダウンしていく。OKだという合図を送って車体の点検を始め
た。

 エンジンは転倒後もしばらく回っていたので大丈夫だと思うがマップホルダース
テー回りにダメージを受けてしまったらしい。またもやロープを取り出して緊縛する
ことになった。
そうこうするうちチーム・ルートハンターズが様子をうかがいながら通り過ぎてい
く。

「なんでハンドルこんなに重たいんやろ?疲れているからかなぁ。」」
まさか三つ又のベアリングがいきはじめているんじゃないだろうなと思って停止
状態でハンドルを振ってみると確かにすごく重い。この後の道のりをこんな重い
ステアリングで行くのかと思うと憂鬱になった。

ただがたがたしたりどこかの角度で引っかかったりするわけじゃないのでベアリ
ングではないかもとふと思う。ステダン調整ノブを最弱にしてハンドルを振ってみ
てもあいかわらず異常に重たい。ユニット自体動作が渋くなってしまっているようだ。
澤田君特製のステダンのピンもどうやら曲がったらしくスライドしなくなっている。
衝撃か何かが加わって壊れちまったらしい。ステダンのピンをはずしてフリーにし
てやるとハンドルが見違えたように軽くなった。ここんところバイクが重たく感じて
自分の腕が未熟なせいだと思い走るのが嫌になってだけに少し救われたような
気がする。

上位陣仲良く水没!


その後ピストは低地にさしかかり轍やクロスするピストに水がけっこうなスピード
で流れている。細かい迂回を繰り返しながら進のでペースがなかなか上がらない。
 と、幅が20M位ある川にさしかかった。けっこう流れが速い。向こう岸に上位陣
のライダーたちが数人 固まっている。なんで連中今頃こんな所に?
 吉川君が「こっちこっち!押して渡れ!」と横のほうを指して大声で教えてくれた。
どうやらピスト通りまっすぐ突っ込むと水没するらしい。他にも菊地さん正井さんあ
げくの果てには博田君までいる。ここはえらく厳しい水没ポイントのようだ。
 吉川君のアドバイスにしたがってバイクを降りて押して川に入る。なぁんだ、流れ
は速いけれど深さはたいしたことないじゃん。とばかにしていると突然がぼっとバイ
クが深みにはまった。シートに水が届きそうなくらい深い。
 その瞬間私は悟ったのだ。クロスしているピストがそのまま激流になっていて死ぬ
ほど深い轍が隠れているんだ!フロントがつっかえると出られなくなる!ちょっと焦
ったが幸い勢いを殺さずに行けたので(はた目には)何事もなく終わった。

 上位陣の連中たちはそのまままっすぐ突っ込んで水没してしまったらしい。彼らが
次々とリカバリーしていくのを一服しながら見送り、すぐ私も後を追った。

小さな峠を越えるときに石積みの家畜小屋の脇で名古屋の河村君がRタイヤ
のパンク修理をしているのを追い越す。その峠を降りる途中にCPがあった。ここの
担当は井上さんだった。「最後までがんばってね。」優しい。

 丘を降りたところでなぜか向こうから#18元木君が来る。「CPありました?」
おいおいパスしちまったのか。峠から一本道だから迷うわけないのに。逆走して
CPが見えたら回り込んで正しい方向から入ればいいよといって別れる。
 また低い平原に出たが轍に水が溜って走りにくいピストが続く。今度は右のほ
うのピストから#39西川さんが合流してきた。えっ,何でそっちから出現するん
だ?
 雨もぱらぱら降りだしてシールドに水滴が付いて視界がはっきりせずうっとおし
い。ふと見るとTEAM ROUTE HUNTERS の生き残り2人組がバイクを停め
ている。「大丈夫かい?」と声をかけると「いや、休んでいただけだよ。」と田中先
生が言うがかなりやつれている。こっちもへこたれてしまっていてここで一服する
ことにした。西川さんもだいぶくたびれていて一緒に休憩する。「なんで他のピス
トから入ってきたの?」と聞いたがオンコースで来たと言うしCPもちゃんと通過し
ているらしい。モンゴルは同一のルートでも幅数百Mに渡って何本もピストが並
走していてるのでこんなこともしょっちゅうだ。そのうち河村君とかも追いついてき
た。

最後のミスコース


すこし晴れ間も見えてきたので重い腰を上げる。そのまま二つの丘に挟まれた
浅い谷に入り少し登っていく。次のコマ図のポイントは送電線でしかも座標をも
っているのだが、トリップが届いているはずなのにいっこうにそんなものが見え
ない。GPSをチェックするとどうやらこの丘陵地帯の向こう側らしい。追いつい
てきた西川さんと「トリップをチェックしながら戻ろう」と相談ができ戻り始めると
谷の反対側斜面を俺たちがミスコース下野と同じ方向に谷へ入っていく河村君
の姿が見えた。我々には気づいていないらしい。
 数キロ戻ったところでまた遠くにダブルのヘッドライトが見える。アフリカツイン
だ。我々に気づいたのかUターンして少し戻りそのうちコースをはずれて平原の
中を突っ切ってどこかに消えていった。後で聞くとやっぱり我々のヘッドライトで
ミスコースに気づいてGPS走行に切り替えて次のウェイポイントに向かったらし
い。
 5KMくらい戻ったところに今まで走ってきたピストから右折して外れる新しい
轍がいくつかある。コマ図のほうにも「薄いピストに右折せよ」という指示がある。
これだ!というわけで進路を変更してCAPをチェックするとぴったり。コマ図も何
枚か連続して一致する。どうやらオンコースに復帰できたようだ。

しばらくいくと道がよくなり西川さんはペースアップして先に行ってしまった。こっ
ちは80KM/h以上出すとばらばらになった計器類が震動して見えなくなるの
でどうしようもない。やがてまた新しい川沿いのブッシュぎみの網目状のピスト
になる。ここは交通量が多いらしく時折現地のバスと行き交ったりする。ゴール
は近いはずだがピストが複雑に入り乱れているので不安になってGPSでチェッ
クしながらゆっくり進んだらほどなくブッシュの向こうにヘリが見え,SSゴールに
着いた。「後ろは?」と聞かれる。まだ2人来ていないらしい。佐々木さんはすぐ
後ろから来ているはず。じゃ、ミスコースで消えていったのはやっぱり河村君か。

最後の最後でまた転倒!


ここで休憩して最終SSスタートになるのだがスタートは4時。今2時過ぎなので
たっぷり時間はある。最後の取って置きのタイラップでまたマップホルダーステ
ーを固定し、あとはゆっくり...と思っていた。ところがSSERで記念写真を撮る
と言う。プレスも写真を撮りはじめばたばたするうちすぐ時間が来てしまい黒川さ
んの指示で最終スタートの列を作らされた。

 最終スタートは一斉スタートでここまでの成績順で5列くらいに並ぶ。エンデュ
ーロレースのスタートみたいだ。すぐそばで田中先生と捶井君が「最後はおさえ
ていかないと大変なことになるから気をつけよう。」などと話している。本当にそう
だな,さすが田中先生大人だねと思う。でも最終カウントダウンが始まると皆えら
く気合いが入ってアクセルをフカし始め本当にエンデューロの一斉スタートみたい
になってしまった。いかんなぁと思いつつもちんたら走って引き離されてしまうのも
嫌なので結局とばしていくことにした。

あっという間に600の連中は見えなくなってしまう。(単にパワーの差だけではな
くここまで生き残っているような600乗りは腕も立つ。)正井さんの350は出だし
でトラブったらしくスタートは俺より前なのに2、3キロ行ったところで後ろからやっ
てきていきなり抜かれた。私もここで再度気を引き締めて後を追う。彼も相当セー
ブしているようで私のようなぼんくらでも付いていくことはできる。たが正井さん、何
の理由もなくゆっくり行くはずもない。これより早いペースで行くと絶対自分は自滅
すると思ったのでずっと後ろを付いていくことにした。(でも結局自滅したんだが。)

するといつの間にか西川さんの400と三ヶ尻さんの350との計4台でのグループ
走行みたくなってしまった。

ふと横を見るとMIATのヘリ(プレス搭乗機)が低空飛行で付いてきている。ここで
見栄が爆発してちょっとペースが上がってしまった。しかしちょっとしたジャンプの
際、どうも尻にあたるものがあるので探ってみるとなんとテールバッグのバンドが
2本切れてぶらぶらしている。1本はすでに途中でだめになってタイヤチューブで
縛りつけてあったからもう1本も切れたのだろう。このままではとうてい80km持つ
わけない。かなり迷ったが結局停車して直すことにする。見ると締めつけ用のバ
ンドがすり切れていた。一度は残りのバンドだけで固定しようとしたが思わしくなく
途中で諦めてデイパックに放り込んだ。重い。が大切な工具が入っているので捨
てていくわけにはいかない。

 エンジンをかけるとき遠くに連中の後ろ姿が見える。まだ追いつける!と思って
スパートをかけたのが運の尽きだった。たいしたことのないジャンプだったはずな
のだが着地地点をみるとえらく砂が溜っている。やばい!

 マシンが激しく踊って10Mか20M位は何とか持ちこたえたもののもんどり打っ
て転倒してしまった。スピードが乗っているので足がハンドルにからんでしまい変
な姿勢のままマシンもろとも体が滑っていく。このままではやられると直感したが
足はいくら蹴っても外れてくれず姿勢を少し変えるのが精一杯だった。

 ようやくマシン・体ともに止まったものの地面にたたき付けられたショックでしば
らく動けない。すぐ横で倒れたままのバイクはエンジンがまだ生きていて「あぁ、
マシンはまだ大丈夫かも。」とぼんやり思った。 後ろからきた元木君たちがマシ
ンを起こすのを手伝ってくれる。4輪もスローダウンして様子をうかがっていく。

 マシンを点検するとまたもやフロント回りがばらばらになっている。いかん。
もう何度目になるだろう。ロープを取り出し緊縛プレイだが20mくらいあった筈な
のにもうほんの一掴みくらいの束になってしまった。もうフロント回りはパーツより
もロープの方が多いんじゃないだろうか。でもまぁなんとか走り出せそうだ。

 あとは元木君達についてツーリングペースでゆっくり行くことにした。小さな村を通
過するとき村の中の通り方を間違えてまたもやピストを見失い少し焦るがとりあえず
反対側に抜けておおむね正しい方向と思われるCAPをとって走行していると1KM
くらい左の別のピストを並走している4輪が見えた。草原を突っ切ってピストを移り,
その後を追って走る。最後の最後で小さな岩山の狭い切り通しを抜け、川沿いの水
の溜ったガラガラの細いピストを通って視界が開けたと思ったらゴールだった。

「また跳んでしまったよ。」と大橋君に言ったら「渡辺さん、本当に頭悪いですねぇ。最
後はセーブせんと。」と大笑いしてくれた。ゴール自体は実にあっけなく「感動」という
ほどのものはなかったが,正直もう時間とコマ図に追われて走らなくていいと思うとな
んともいえず開放感を覚えた。