THE 3rd RALLY RAID MONGOL 1997

TEAM OFFRIDE


’97 Rally Raid Mongol 参戦レポート


ETAP 8 : 29th JULY ALTAY>>JINST

TOTAL 628.00km CP-1 211.57km
RCP 350.00km
SPECIAL 628.00km
MAX TIME 16:00
山越えをして平原の中の町、ジンストへ向かう。前半、山へ分け入り回廊のような谷を抜
けるがこれは快調に進んだ。後半、乾燥した平原の中をひたすら行くのに疲れ転倒を何
度かする度にマシンが壊れていく。

不思議とこの日のスタートは印象に残っていない。スタートして120kmくらいが記憶から抜け
落ちてしまっている。



「不思議な町」で

岩だらけの丘の上の町に入っていく。道は砂岩か花崗岩か少しざらざらしたむき出しの岩盤
で滑りやすそうだ。コマ図は「不思議な町」と言っている。確かにこれまで通過してきた町の
うらぶれた感じに比べて何か明るい雰囲気である。ただその不思議さをゆっくり味わっている
暇はない。

映画館のような大きめの建物をターンする。と、いきなり道ばたからぐぐっと乗り出してくる人
物がいる。一瞬ぶつかるかと思ったくらい肉迫してくる。カメラを持っていた。ちっちゃなちっち
ゃなコンパクトカメラである。ありゃ?U田編集長ではないか。その後ろの建物の軒先に何人
かカメラを持った人たちがいた。プレスか?

町中の通りは丘の尾根を伝うように走っている。2〜3台で追いつ追われつ駆け抜けていく。
中心部から外れモンゴル風の木造の小屋が建ち並んでいる中を走る。目印を見つけ損なっ
て行きすぎてしまった。あわてて引き返すと丘の上にでかいMIATのヘリが止まっているの
が見えた。その麓を巻き込むように見えるのがオンコースのピストだが復帰するのにショート
カット気味に小径を走ったら辺り一面尖った石が突き出していて走りにくい。

アルタイを越えゴビへ

道はやがて山岳地帯に入ってきた。170kmくらいから狭い谷あいの砂利と砂が入り交じっ
た河床を延々と走る。轍が多くハンドルを取られやすい。フロントに衝撃が掛かる度にマップ
ケースがガシャンと音を立てて揺れる。いつ壊れるかと気が気でないが補強するためのタイ
ラップはあと数本しか残っていない。もたもたしながら走っているうちだんだん疲れてきて厭
になってきた。211kmくらいで電線を見かけたときは「あぁ、もう山を下って行くだけでいい
んだ。」と救われたような気分になった。実は他の日の山越えに比べて順調なペースで進ん
でいたのである。だがこのときは全くそんな自覚がなかった。



そのうちピストは川を上がって小さな丘を越える。頂上でいきなり視界が開けた。乾燥した荒
野が遥か向こうまで広がり遠くに高い山並みが見える。その中に何本かピストが伸びていて
たき火の煙のように砂塵を舞い上げて何かが走っている。エントラントなのだろう。

私も丘を駆け下り枯れ川を幾つか越えて平原の中に走り出した。遠くに見える砂塵をめがけ
て本能的にそっちにハンドルを切ったのだがどうやらミスコースしているらしい。2〜3km行っ
てコマ図と合わないので引き返し別のピストを辿った。電線に沿って走っているとどうしようも
なくだるくてたまらない。眠い。

道ばたに田中先生が座っているのを見つけて停車し、背中のデイパックを降ろす。どうかした
のかと尋ねたがただ休憩しているだけだと言ってすぐに彼は出ていった。一人でランチパック
を開け広い平原を眺めながら一服した。のどが渇く。キャンプで支給されたエネルゲンはここ
でネタ切れになってしまった。むやみにのどが渇く。まぁまだミネラルウォーターならたっぷりあ
るから気にすることはあるまい。

また乾燥したピストを走り出す。本当に何もない。251kmで台地を下ったところに突然ポプラ
が固まって生えていた。乾燥しきった平原の真ん中でここだけに緑がある。小さな小屋があり
軒先で子供がこちらを見ていた。手を挙げて通過する。

その後は枯れ川が何重にも交錯している砂利っぽい地域を抜け、小さな町をかすめる。町外
れで古ぼけた立て看板があった。ラリーに出て以来初めて英語で書かれている文章を見た。
「GREAT GOBI DESERT NATIONAL PARK」。そうか今走っているのはゴビなのか。
デューンだけがゴビというわけではないのだな。

ピストは乾燥し枯れ草がちょろちょろ生えている平原をひたすら東へ進む。時折駱駝の群を遠
くに見る。不思議と駱駝の群は必ず私から見て道の左側に固まっていて決して道のそばに近
寄ってはこない。350kmのRCPはそんな乾燥した土地の真ん中にあった。RCPを出てから
もまだまだゴビは続く。たまにコンクリートで固めた家畜の水飲み用の井戸を見かけるだけで
何もない土地である。



なんやねん、おっさん

420kmほど来たところでようやくルートは丘陵地帯に入り始めた。前方に京都の捶井君がい
た。簡単に考えていつ抜こうかと思いながら後ろに付いていたら緩い左コーナーでフロントを跳
ねられざざーっと滑るように転倒してしまった。マシンを起こすといつの間に来たのかYさんがや
ってきて同じところで転倒した。

体が痛くてマシンを起こせないと言うので起こしてエンジンを掛けている間テールを手で支え
てあげた。エンジンが掛かるなり彼は「ありがとう。」と一言云っただけでさっさと行ってしまった。
やれやれ。呆気にとられてしまう。

気を取り直してまた走り始めた。便意を催して適当なところを物色しながら進んだが482km地
点のでかい地割れを越したところでまた転倒してしまった。転倒の度に同じところばかり打ち付
ける。とても痛い。後ろから来た4輪が心配してスローダウンして声を掛けてくれる。

落ち着いてからライト周りの補強をする。もうタイラップが無い。エマージェンシー用に持ってきた
ナイロンザイルを切って使う。これが無くなったら次は何を使おうか。まぁ、そのときになればいい
知恵も浮かぶさ。

200mほど道から離れて野○ソを決め込んだ。西川さんが追いついてきてバイクのところで一
服する。さっきのYさんの話をしたら「あっ俺もそんなことあったよ。」と言う。なんやねん、おっさん
あちこちで同じことしとるんか!

西川さんは先に行ってしまい、また一人で走り出した。丘陵はまだまだ続く。508kmで丘の上
に白い寺院の様なものを見た。緑の丘の彼方にとてもきれいだった。それが何なのか知りたか
ったがだがルートはそこに辿り着く前に右折してしまい結局判らないままになってしまった。

夕日に染められて走る(遅いからそんなことになるんだ!)

ふたたびルートは平原に出て、広いピストに入った。低い土地を走っているらしく水たまりが多く
迂回を繰り返しながら進むためアベレージが上がらない。そのうち日が傾いてきた。時計を見る
と21時である。あと残り80km。日没の22時までにはゴールできそうにない。夜間走行を覚悟
した。

左手に夕日を見ながらそれでもできるだけスピードを上げる。計器がまたぐらついてくるので片手
で押さえながら80km/hで走る。一度我慢しきれなくなって100km/hくらい出したがマップホ
ルダーが今にも壊れそうなくらいばたつくのであきらめた。

日没前の光線が斜めに道を照らすので前方が見えにくくとても走りづらい。すでに光が弱くなって
いるのでサングラスを掛けると暗くて何も見えない。ヘルメットを前に傾けてバイザーの陰からなん
とかのぞき込んで道を見る。

いよいよ太陽が沈むときあたりがオレンジ色に染まった。もう道が見えなくなるのは時間の問題だ。
空が暗くなるまではまだ多少は視界が効く。心に余裕を持ちたかった。バイクを停めて煙草を吸い、
平原の夕焼けをしばらく楽しんだ。何年か前のTBIで黒尊林道から見た海に沈む夕日を思い出す。
あのときも時間の余裕はなかったが四国を一緒に走ってきた仲間達と美しい風景を感動して眺め
ていた。

周りの風景を染めていた赤い光が弱まってきた。本当に薄暗くなってくるまでの短い時間でしかな
いが路面はまた見えやすくなっている。再び夕暮れにせき立てながら走り出す。ヘッドライトはあい
かわらず光が弱くあさっての方向を向いていてものの役に立たないで今の内に少しでも距離を稼い
でおきたい。

600km地点あたりでとうとう周りが何も見えなくなってきた。あと28km。首に掛けているライトでI
COのトリップを確認する。ICOに付けていたライトはとっくに飛んでしまって跡形もない。たぶん30
km/hか40km/hくらいしか出していなかっただろう。ゆっくりと走って行くがコマ図に出てくる目
印に確信が持てない。しかし迷いは禁物である。GPSはまだ生きていてキャンプに確実に向かって
いることを教えてくれている。オンコースを外れるときに感じる漠然とした不安も今は無い。ふと見上
げた空に星がとてもきれいだった。

ゴール数キロ前で遠くにキャンプの明かりが見え、コマ図に出ている廃タイヤの地点でようやく自分
の位置がはっきり特定できた。遥か後方何kmも離れてもう1台バイクが後を追ってくるのがわかる。
砂が深く走りづらいがそのままピストなりに走り今日もなんとかゴールすることができた。