IN A FAR AWAY LAND The Japanese JOHN DENVER Page |
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●今週の1曲● 「ワールド・ゲーム」 "World Game" (1983) ●僕にはバックミンスター・フラーという大親友がいたんだけれど、昨年の夏に亡くなってしまってね。バッキーは「ワールド・ゲーム」というコンセプトを提唱していて、それはあらゆる人がこの地球全体をフルに活用していこうという世界観なんだよ。他の誰かを利用したり妨害することなしにね。それは平和的な世界観で、まさに僕や皆さんが実現しようと今必死に取り組んでいることなんだ。 そんなわけで、僕はそのことと、去年、世界各国を巡っている中で感じたことを盛り込んで歌を作ろうと思ったんだ。すると曲はレゲエのスタイルで出来上がってしまったんだよ。でも、僕はレゲエの演奏の仕方なんて知らないしね、去年になって初めて知った音楽だったから。ところが僕のアルバム・プロデューサーでありコンサート・マネージャーでもある友人のバーニー・ワイコフがこう言ったんだ。「レゲエ・ソングを演りたいのなら、レゲエ・バンドと演ればいい」ってね。僕はこう答えたよ。「もし君がレゲエ・バンドを集められるのなら、そうするよ」って。それで彼はザ・ウェイラーズをつかまえてきたんだ。 ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのことは聞いたことがあるでしょう。何よりも彼らの功績は、いわゆる第3世界、または発展途上国から生まれた初めてのポピュラー音楽、というポジションにまでレゲエを押し上げた最大の貢献者だったんだよ。今やレゲエは至る所で信じられないくらいほどポピュラーになっているでしょう。大勢の人々がレゲエのフィーリングやリズム、サウンドなんかを好んで聞いているわけだけど、でも、そんな彼らが気づいていない重要な要素は、レゲエの政治性と精神性なんだ。 ともかくも、僕らはこの曲のレコーディングのためにマイアミにウェイラーズを招き、困難ではあったけれど、とうとうスタジオまで来てもらうことが出来たんだ。でも、来てはくれたものの、彼らはきっとこう考えていたと思うよ。「俺たち一体、このロッキー山脈から来た男とここで何するんだろう?」ってね。そこで、僕は彼らに座ってもらって、「僕はあなたたちとこの曲をやりたいんだ」と言って、今みなさんに説明したことを伝えたんだよ。僕がレゲエについて思うところや、特にその精神性や政治性についての話をね。それこそがレゲエ・ミュージックの真髄だと思うし、彼らの取り組み方でもあったから、みんな僕の話を真剣に聞いてくれたよ。 僕はこう言ったんだ。「僕はあなたたちのためにこの曲を歌いたいし、もし曲を気に入ってもらえるなら、きっと非常にすばらしい仕事が一緒にできるでしょうね。でも気に入ってもらえなかったとしても、何もなかったことにしてジャマイカに戻ってくれればいいですから」ってね。 歌う前に説明しておきたいことがあるんだけど、Jahというのはラスタファリアンといって、レゲエにおける神様の名前なんだ。Yahwehは最も起源の古い神の呼び名のひとつで、古代アラム語なんだよ。曲の中で「Yahweh, Yahweh, Yahweh, Jah」という箇所があるでしょう。僕はこう言ったんだよ。「この部分の意味するところを僕なりに翻訳するとすれば、今まさにこの世界で起こっていること、僕らが、もはや自分か他人かの二者択一ではなくて、お互いの共存を目指す世界観へと移行する過程にあるんじゃないか、という思いを込めているんだ」ってね。そして僕は曲を歌ったんだ。曲も半ばまできたところで、彼らは体を前後に揺すっていたよ。本当に気に入ってくれたようだった。そして例の「Yahweh, Yahweh, Yahweh, Jah, you and me」という箇所に差し掛かったんだけど、歌い終わったところで彼らがこう言うんだ。「違うよ、もうひとつあるだろう。"I and I"だ。」 素晴らしいね。「あなたと私」ではまだ隔たりが感じられてしまうというわけさ。「私と私」なら本当に一体感が出るでしょう。 〜1983年10月24日、英ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートのMCより
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