ジョン・デンバー

全米チャートにおける軌跡


★90年代以降、ジョン・デンバーの公式なプロフィールには、必ずと言っていいくらい「レコード史上、その売り上げの多さで世界の五指に入るアーティスト」という記述がされるようになりました。また、これまでに世界中で売り上げたレコードの総数は1億枚を超えると言われています。

そうした情報は出所がはっきりしないので、果たして正確なのかどうかは確かめようがないのですが、それにしてもジョン・デンバーに並ぶほど大きな規模の商業的成功を収めたアーティストが、他にそう多くいないことに間違いはないでしょう。

幸いにも米Billboard誌が、過去のチャート記録を保管・分析し、一般に手に入りやすい形に編集、出版しているので、そうした記録を洗いなおし、ジョン・デンバーがチャート上に残した軌跡をたどることによって、彼の音楽が当時の一般大衆にどのように受け入れられていたかを知る大きな手がかりを得ることが出来るのではないかと思います。

基本的に、アメリカで一般に発売されたジョンのアルバムについて、1.日本発売タイトル(なければオリジナル・タイトル)、2.アメリカでの発売時期、3.米Billboard誌アルバム・チャートにおけ最高順位、それに4.ゴールドまたはプラチナム・アルバム獲得の有無…の順番で表記し、*印以降に、そのアルバムからのシングル曲と、そのチャート上の成績(米Billboard誌Hot100による)や、裏話的な情報などもつけ加えておきました。

(註)Recording Industry Assiciation of America(RIAA)による、ゴールド/プラチナ・レコード認定の基準と、ジョンが獲得したゴールド/プラチナ・レコードのリストは→こちらをご覧下さいませ。

なお、チャートの順位など、一部調べがつかなかったものがありますが、そうしたものについてはわかり次第、訂正・更新していくつもりです。

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『ライムズ・アンド・リーズンズ』(1969年10月発売、最高位148位)
*シングル"Daydream/I Wish I Knew How It Would Feel To Be Free"は成果ありませんでしたが、期待の新星アーティストのソロ・デビュー・アルバムとして静かな話題を呼んでいたのか、アルバム・チャートには200位以内に3週ランク・インします。

『明日への希望』(1970年5月発売、最高位196位)
*"Anthem-Revelation/Sticky Summer Weather""Follow Me/Isabel"の2枚がシングル・カットされるも成果なし。アルバムは200位以内に2週ランク・イン。

『この自然はだれのもの』(1970年10月発売、チャート・インせず。)
*2枚のシングル"I Wish I Could Have Been There/Sail Away Home""Mr. Bojangles/Whose Garden Was This"はどちらもヒットせず。アルバムの方も惨敗で、ソロ・デビュー2年目にして早くも崖っぷちに…。

『詩と祈りと誓い』(1971年5月発売、15位、プラチナム・アルバム)
*RCAとはアルバム4枚までの契約でしたが、背水の陣で吹き込んだアルバムから"Take Me Home, Country Roads/Poems, Prayers & Promises"が、71年8月に全米2位(Cashbox誌のチャートでは第1位)の大ヒット。LPの方も初のゴールド・アルバムに輝き、めでたく契約更新。

『友への誓い』(1971年11月発売、75位、ゴールド・アルバム)
*シングル"Friends with You/Starwood in Aspen"47位、"Everyday/City of New Orleans"81位。

『ロッキー・マウンテン・ハイ』(1972年9月発売、4位、ダブルプラチナ・アルバム)
*シングル"Goodbye Again/The Eagle and the Hawk"88位、"Hard Life, Hard Times(Prisoners)/Late Winter, Early Spring"?位、"Rocky Mountain High/Spring"9位。

『さらば、アンドロメダ』(1973年6月発売、16位、ゴールド・アルバム)
*"I'd Rather Be A Cowboy/Sunshine on My Shoulders"62位、"Farewell Andromeda/Whiskey Basin Blues"89位、"Please, Daddy/Rocky Mountain High"69位。

『故郷の詩』(1973年11月発売、1位、マルチプラチナ・アルバム×9)
*シングル"Sunshine on My Shoulders/Around and Around"初の全米第1位(74年3月)に。

『バック・ホーム・アゲイン』(1974年6月発売、1位、マルチプラチナ・アルバム×3)
*"Annie's Song/Cool An' Green An' Shady"第1位(74年8月)、"Back Home Again/It's Up to You"第5位。

『ジョン・デンバー・ライブ』(1975年2月発売、2位、マルチプラチナ・アルバム×3)
*ディズニー映画『遥かなる小熊の森』("The Bears And I")主題歌でもあった"Sweet Surrender/Summer"は13位、"Thank God I'm A Country Boy/My Sweet Lady"は第1位に輝く。

『風の詩』(1975年9月発売、1位、ダブルプラチナ・アルバム)
*"I'm Sorry/Calypso"はそれぞれ第1位・2位の両面ヒット、"Fly Away/Two Shots"13位"Looking For Space/Windsong"29位。

『ロッキー・マウンテン・クリスマス』(1975年10月発売、14位、ダブルプラチナ・アルバム)
*シングル"Christmas for Cowboys/Silent Night, Holy Night"58位。

『ライブ・イン・ロンドン』(1976年6月?イギリス発売)
*イギリスのチャートでヒットしたジョンの曲は、意外にも"Annie's Song"(第1位)ただ1曲だけで、ほかはドミンゴとの"Perhaps Love"が中ヒットしたくらいでした。アルバムとしては、この『ライブ・イン・ロンドン』が最大のヒットだったようです(たしか第1位)。

『心の詩』(1976年8月発売、7位、プラチナ・アルバム)
*"It Makes Me Giggle/Spirit"60位、"Like A Sad Song/Pegasus"36位、"Baby, You Look Good To Me Tonght/Wrangle Mountain Song"65位。

『故郷の詩・第2集』(1977年2月発売、6位、ダブルプラチナ・アルバム)
*TV映画『続サンシャイン』(原題 "My Sweet Lady")の放映にぶつけたシングル"My Sweet Lady/Welcome to My Morning"が32位に。

『生きる歓び』(1977年11月発売、45位、プラチナ・アルバム)
*"How Can I Leave You Again/To The Wild Country"44位、"It Amazes Me/Druthers"59位、"I Want to Live/Tradewinds"55位。

"Live At The Sydney Opera House"(1978年オーストラリア発売)
*このアルバムはオーストラリアのみの発売でしたが、当時のチャートでの成績は資料がなくてわかりませんでした。当然、ある程度のヒットになったとは思うのですが。99年になってボーナス・トラック3曲を追加した改訂盤CDがアメリカ発売されましたが、こちらは惨敗だったようです。

『大いなる飛翔』(1979年1月発売、25位、ゴールド・アルバム)
*3枚のシングル"Downhill Stuff/Life Is So Good""What's on Your Mind/Sweet Melinda""Garden Song/Berkeley Woman"はいずれもポップ・シングル・チャートの100位以内に届かず。"Downhill...""What's..."はカントリー・シングル・チャートではそれぞれ64位、47位まで上がった。

『ジョンとマペッツのクリスマス』(1979年10月発売、26位、プラチナ・アルバム)
*マペッツと共演のクリスマス特番"A Christams Together"のサントラ。シングル"Have Yourself A Merry Little Christmas, We Wish You A Merry Christmas/A Baby Just Like You"はチャート・インせず。

『オートグラフ』(1980年2月発売、39位)
*"Autograph/The Mountain Song"52位、"Dancing with the Mountains/American Child"97位。『詩と祈りと誓い』以来、初めてゴールド・アルバムに届かなかった。

『あの頃の風』(1981年6月発売、32位、ゴールドアルバム)
*"Some Days Are Diamonds/Country Love"36位、"The Cowboy and the Lady/Till You Opened My Eyes"66位。

プラシド・ドミンゴ『愛、そして歌』(1982年1月発売、18位、プラチナ・レコード)
*"Perhaps Love/Annie's Song"59位。

『シーズンズ・オブ・ザ・ハート』(1982年3月発売、39位、ゴールド・アルバム)
*"Shanghai Breezes/What One Man Can Do"31位、"Seasons of the Heart/Islands"78位、"Opposite Tables/Relatively Speaking"チャート・インせず。

"Rocky Mountain Holiday"(1983年5月発売、チャート・インせず。)
*マペッツとの共演テレビ特番・第2弾サントラ。

『イッツ・アバウト・タイム』(1983年9月発売、57位)
*3枚のシングル"Wild Montana Skies/I Remember Romance""Hold on Tightly/Flight""World Game/It's About Time"は、いずれもポップ・チャート入りせず。"Wild Montana..."のみカントリー・シングル・チャートに登場、第14位まで上がる。

『故郷の詩・第3集』(1984年11月発売、チャート・インせず。ゴールド・アルバム。)
*シングル"Love Again(with Sylvie Vartan)/It's About Time"85位。

『ドリームランド・エクスプレス』(1985年6月発売、90位)
*2枚のシングル"Don't Close your Eyes, Tonight/A Wild Heart Looking For Home""Dreamland Express/African Sunrise"は、いずれもポップ・チャートには入らず。"Dreamland..."は86年になってカントリー・チャートで第9位のヒット。

『ワン・ワールド』(1986年6月発売、チャート・インせず。)
*"Along for the Ride/Let Us Begin""Let Us Begin(duet version)/Love Again(solo version)"ともにポップ・チャートには届かず。"Along..."はカントリー・チャート57位に登場。

『ハイアー・グラウンド』(1988年9月発売、チャート・インせず。)
*RCAを離れ、自社レーベルWindstar Recordsからの発売。88年春にオーストラリアで先行発売され、シングル("For You/Whispering Jesse")・アルバムともども大ヒット。アメリカでは、やはりプロモーションが行き届かず、アルバム・シングル"A Country Girl in Paris/Bread and Roses""For You/Bread and Roses"ともにポップ・チャート入りせず。カントリー・チャートでは、アルバムが47位、シングル"A Country Girl..."はかろうじて99位に登場。

ニッティ・グリッティ・ダート・バンド『永遠の絆Vol.2』(1989年発売、?位)
*JDがボーカルをとったシングル"And So It Goes"がカントリー・チャート第14位(89年8月)のヒットに。

『大地の詩〜リメイク・ベスト』(1990年5月発売、チャート・インせず。)
*このアルバムは当初、通販のみの発売でしたが、94年になって一般の店頭でも発売されました。

"Christmas Like A Lullaby"(1990年発売、チャート・インせず。)
*このアルバムは1989年にオーストラリアで発売され、アメリカ発売は1年遅れでした。 クリスマス・アルバムチャートの28位にランク・イン。

"Stonehaven Sunrise"(1990年6月オーストラリアのみ発売。チャート・インせず。)
*ずさんな作りのアルバムは89年夏に吹き込まれながら、ようやく翌年オーストラリア発売されるも不発。アメリカでもリミックスや収録曲の差し替えをほどこし、"Flower That Shattered The Stone"(『一輪の花』)としてようやく日の目をみることに。

『一輪の花』(1990年9月発売、185位)
*シングル"Flower That Shattered The Stone/Flower That Shattered The Stone(duet version)"チャート入りせず。

『ディファレント・ディレクションズ』(1991年9月発売。チャート・インせず。)
*ビデオも作られた"Potter's Wheel"がシングル・カットされたようですが、不発。ジョンはこのアルバムの商業的失敗に懲り、ついに自社レーベルからの発売をあきらめてしまいます。

"The Very Best of John Denver"(1994年12月、米国内の通販のみの発売。プラチナ・アルバム。)
*RCA時代の代表的な曲(ほとんど70年代ばかり)を集めた2枚組ベスト盤。テレビCMが効を奏して1999年1月になってミリオン・セラーに。

『ワイルドライフ・コンサート』(1995年6月発売、105位、ゴールド・アルバム)
*シングル"For You/Sunshine on My Shoulders"(カセット)、"For You/Rocky Mountain High"(EP)ともにチャートせず。ジョンの死の直後に売り上げ50万枚を突破。ビデオ版は、Top Music Videosチャートでは第2位に。

『ロッキー・マウンテン・コレクション』(1996年-月発売、チャート・インせず、ダブルプラチナ・アルバム)
*2枚組ベスト盤。手堅く売れ続けてミリオン・セラーに。ジョンの死後には、カントリー・アルバム・チャートに初登場。

"The Best of John Denver Live"(1997年7月発売、52位)
*ジョンが亡くなったとき、たまたま市場に出回っていたため、追悼盤的役割を果たしてヒット。

"All Aboard!"(1997年8月発売、165位)
*鉄道ネタの楽曲ばかりを集めた企画盤で、ジョンの最後のスタジオ録音。これも死後、1週だけチャート・インした。翌98年にグラミー賞の「最優秀子供向け音楽アルバム」に輝いた。

"A Celebration of Life"(1997年11月発売、130位)
*1996年に録音された再録ベスト盤だが、当初はヨーロッパとオーストラリアでしか発売されなかった。(このときのタイトルは"Love Again-Greatest & Latest")アメリカではジョンの死後ようやく、"A Celebration..."のタイトルで発売。(しかも、なぜか4曲少ない全12曲。)日本では、イギリス発売版"The Unplugged Collection"("Love Again"と同内容=16曲入り、ジャケ違い)の日本版として「カントリー・ロード 96年最新ライブ」として発売。



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Text by Takeru Tanaka


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