サスペンションシリンダの構造と

シールの交換


ハイドロニューマチック搭載のシトロエンにとって乗り心地が重要です

ひとまずリアのサスシリンダを分解してみました。

各部金属パーツ、特にピストンの表面の仕上げはかなり精密に出来ています。

ピストンとサスアームを連結するのはこんな部品、別段固定はしていません

こうして別体にすることで、作動時のピストンへの負担を軽減しています。

さて、黒いOリングの内側の白いリングこれがPTFE製のシールです。後ろからOリングで押すことで

シール性を維持しています。このPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)いわゆるテフロンなんですが、

これが軍需として開発されたのが第2次世界大戦中で 実際民需として、アメリカのデュポン社から

発売されたのが1950年、DSの発表が1955年ですから、実に先進的なことをしていたものです。

当時PTFEは極めて高価ではありましたが、氷なみの摩擦係数、ほとんどの溶剤にも耐性があり

耐熱性もずば抜けていました。

ただ難点は、バネ性に乏しく、摩擦で削れ易い、これを補っているのが、

後ろのゴム製のOリングなのです。


さて、サスシリンダ・シールキットが到着しましたので各部の状態のを確認をはじめました。

サスシリンダシール

左側が取り外した、右が新品シールです、上から、フェルト:PTFE:ゴムOリングの配列。

この写真ではフェルト製ダストシールのヘタリが認られます。

今日的な見方では、”フェルト”なんてという見方もありますが、しっかり役目をはたしていることが

汚れとなって現れていると、筆者は考えています。

PTFEシール新旧の比較

こちらは、サスシリンダの肝とも言える、PTFE製のシールです。

肉厚は旧0.84mmと新0.86mmと2/100ミリの差異が認めれれます、ただこの数字は磨耗減量を表しているのか、元々の加工公差なのかを確定することは困難ですが、仮に磨耗減量だと仮定すると・・・

このような円形のシールの場合、両側分を考慮に入れる必要があるので、4/100の磨耗が認められることになります。

さらに、PTFEの内周表面には、硬質な汚れが付着しているのですがこれもリーク量を増やす遠因になりうると考えています。

この汚れのために摩擦抵抗も増大するので、サスペンションの動きも悪くなると推測してます。


新品、中古品のサスペンションシールの作動荷重の測定

測定の趣旨

LHMのリークバック量を測定する前に、新品、中古品のサスペンションシールを同一のサスシリンダに組み込み、無荷重、無潤滑でのサスピストンの作動荷重を測定する。

その結果から、サスペンションシリンダのリペアの必要性の有無を検討する。

測定

測定準備

まず、サスピストンの外径を測定し、ピストンの状態を把握する。

サスピストンの外径を5箇所均等に測定する(1/1000のマイクロメータ使用)

1は開放側、5はシリンダの奥側

測定箇所 1 2 3 4 5
外径 29.970 29.971 29.971 29.970 29.967

以上の結果から さほど磨耗は無いのではないでしょうか?

測定方法

原理は簡単、右の写真のように秤の上にサスシリンダを置き、上から押してサスシリンダを

作動させ、そのときの荷重を測定する。

そして測定値からはサスシリンダの重量を除き、作動荷重とする。

そのとき、シールとピストンには潤滑材等は塗布しない。

結果

サスシリンダの重量:0.94Kg

中古サスシール組み込み時の作動荷重 :1.8〜2.05Kgf

新品サスシール組み込み時の作動荷重 :0.75〜0.82Kgf

考察

上記の結果から、明らかにサスシールの状態によって、作動荷重に差異があることが認められる。

これは、新品のPTFE製シールに比べ中古品の作動表面に付着した、物質によって摩擦抵抗が

増大したものと推測する。

さて、この荷重の差が、実際の乗り心地にどれだけの影響をもたらすのか、興味のあるところである。

とわいっても、このような結果を見ると、やはりDSの本来の乗り心地を維持するためには定期的な

サスシリンダのシール交換、保守が必要なのではないでしょうか?

あと問題はその期間もしくは 走行距離の規定でありましょう。

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