解説

注0.5:ハーバートオースチン(1866〜1941)

裕福な農家の長男として生まれた、彼は幼少のころから機械好きであった、専門的な技術者としての教育を受けたわけでは無かったが青年期に親類を頼ってオーストラリアに渡る、ここで羊毛関連の機械を製作するウーズレー社と関わることとなる、1893年にイギリスに帰り(オーストラリアには10年ほど滞在した)ウーズレー社の責任者となる。

19世紀末に誕生した新しい交通機関である自動車に世界中は活気だっていた、ハーバートもモータースポーツを熱心に支持し精力的に活動した。

彼の最初の設計による製品は1899年の単気筒3.5HPの4輪車で、翌年の1000マイルレースに出場し、注目を集める。

1905年、ハーバートはウーズレー社の経営陣と対立し オースチン社を設立する。

オースチン社は1906年に15/20 4.4Lを発表し、1922年のセブン発表までに主だったモデルでも延べ約23車種を生産していた。

注1:シリンダヘッド取り外し式

読んで字のごとく、シリンダヘッドがシリンダバレル部から取り外しが可能な形式を指す。

初期のサイドバルブエンジンにおいては、シリンダヘッドが取れないエンジンも多数存在していた、現在も草刈機などの汎用2サイクルエンジンの一部にはシリンダヘッドが取れないものもあるが、現代の自動車では見かけないことでしょう、サイドバルブエンジン自体も発電器や汎用でも姿を消しました。実際取り外し式エンジンのほうが高級だったみたいです。

ヘッドが取れないタイプは、現代において内燃機関屋さんに持っていくと、頭を抱えられてしまう難物なんです。戻る

注2:マグネト点火

ガソリンエンジンの点火システムの名称、永久磁石とコイルによって高電圧を放電させるもの、昔川で魚を取る装置に似たものがあったそうな、使用者も感電しそうですね。戻る

注3:サーモサイフォン式

これも読んで字のごとくなんですが、訳すると 温度差利用循環機構とでも言えばいいのでしょうか?

シリンダヘッド上端より上にラジエタ上端を位置させ、シリンダ下端より下側にラジエタ下部を位置させることによって、暑い水は上昇し、冷えるに従い下降するという原理を利用している。

この方法では、ウオータポンプを必要とせずとも、しっかりとした設計なら、かなりの実用性がある、またクラッシクカーならではのラジエタ周りの佇まいはこの機構によるものでもある。

しかしながら、戦前でも過給されたハイパワーモデルや、高級車には今の形式と同様なウオータポンプが装着されていました。戻る

注3.5:半浮動式

デファレンシャルギアの軸の支持方式の呼び名で、ベアリングはハウジングとシャフトの間に位置しホイールは直接シャフト先端に取り付けられる、したがってアクスルシャフトには車重の他コーナリング、加速制動時の力が働くが重量的には軽く出来る、他重量車になる従って 3/4浮動式、全浮動式等(大型トラックなど)がある。

注4:デファレンシャルギア

これも現在の自動車には無くてはならない機構であるがオースチンセブンは最初からデファレンシャルギアが装備されていました。発表の1922ころには、いわゆるサイクルカーというクルマのようなものが沢山あったが、デファレンシャルギヤの無いもののほうが多かった、今日においては一部のクルマ好きの中にはデフを溶接で固定してしまう若人もいるようだが、この先きっとクラッシクカーに興味を持つのではないだろうか?(謎)

サイクルカーに関する定義は、シャシに理論が無い3&4輪を指す場合と、法的なものとしては1914年ころ制定されたイギリスの法律で、3若しくは4輪で2座席を持ち、車重が350キロ未満、エンジンの排気量は1100CC以下を指す、のだそうです 例としてはベデリア(仏1909〜)のリアアクスルは、クラッチとトランスミッションをベルトの張りで調整しているので、リアアクスルを前後させてベルトを滑らせて駆動の断続をします。操縦安定のためにではなく駆動の断続のためだけに前後させています。しかしサイクルカーはハイパワーかつ軽い車重のため、かなり高速走行が可能であったようです。

オースチンセブンの場合、試作車の時点では車重が350キロ未満であったようです、しかし1923年のデータからは365キロとなっているので、法的区分から判断するとサイクルカーではないことになります。

注5:リジットアクスル

固定式車軸、今日においては、大型トラックなどに採用されている、全くスポーティさとは無縁に思われがちだが、リジットゆえ、荷重によるトー変化などが殆どないため、意外に素直なハンドリングを示す。

注6:板バネ

侮ることなかれ、バネ自体にも減衰能力あり、さらにはロープを巻きつけることでさらに締め上げた足回りにもチューンナップが可能です。

注7:摩擦式ダンパ

乾式クラッチのようなものです、車格によってはマルチプレートタイプが採用されているものも多いです。

ところが1920年代半ばまでには、オイルダンパも存在しています、形式的にはドアダンパタイプ、高級車の一部に装備されていました。