Sub Title

スペシャルレポート

ウェスタンショー in Anaheim


12月10日より12日まで米国カリフォルニア州アナハイムのコンベンションセンターで開催された、ケーブルテレビのハードウェアに関する展示会としては最大規模を誇るウェスタンショー。
今回、わけあって米国出張の機会を得、同展示会を見学することができたので、その概要をお届けする。

「晴れ」というよりは快晴といったほうが正しいくらいの好天に恵まれ、ウェスタンショーがスタートした。
もともとは、Cable TVソフト中心のNCTAに対して、ハードウェア中心のウェスタンショーだったものが、今ではすっかりソフトに押され気味のこのショーは、とても華やかなものとなっている。とはいえハードウェアの新製品が出そろうのもこのショーの特徴で、注目すべき製品やプロトタイプが多く目にとまった。
例えば「MCNSコンパチブル」は、ケーブルモデムの標準化としては今回の大きなテーマになっており、シスコを中心とした10社からなるパートナーシップや、独自対応のモトローラやインテルなど、動きが見逃せない状況だ。

ウェスタンショー

お馴染みのCOM21のブースでは、多くの新製品が展示された。シスコと提携して、いち早くMCNS対応に取り組んでいるCOM21であるが、ATMベースの従来機種との互換性は、拡張カードとバイリンガルケーブルモデムで実現されるとのこと。

ウェスタンショー

COM21ブース

MCNSは、ATMのセルではなく、従来からのIPを使った通信であるが、1998年3月に出荷予定のバイリンガルモデムは、セルとIPの両方を認識できるようになるという。また、センター装置であるComCONTROLLER(以下HCX)にはMCNSモジュールを挿入し、その先にシスコの新しいルータ(ubr7246)を接続させることで、モデム/HCX共にMCNSコンパチとなる。旧ATMベースのモデムも混在で使用可能とのことなので、既に同システムでサービスを開始しているケーブルテレビ会社にとっては、とりあえず大きな追加費用に悩むことはなさそうだ。ただし、価格については来年まで待たなければならない。

ウェスタンショー

その他にも気になるものをいくつか紹介しよう。ケーブルモデムComPORTは拡張スロットを1基もっているが、1998年3月にパラレル接続カードとテレフォニーカードがリリースされる。パラレル接続カードは、パソコンのプリンターポートに接続するためのインターフェースで、これを使うとイーサネットカードが必要なくなる。テレフォニーカードは、テレコ・リターンを実現するカードである。

小型HCXとリターンパスマルチプレクサ

リターンパス・マルチプレクサーは、最大8系統のトランクラインの上り信号を、ミックスさせることなく、時分割多重でHCXに送り込む装置である。これにより、あるトランクラインの雑音が、他のトランクラインに影響を及ぼすことがなくなる。また、雑音がトランクライン毎に分離されるため、HCX到達時の雑音は見かけ上、減少させられる。
その他、拡張スロットを無くしたぺっちゃんこのモデムや、ホテル、オフィスなど小規模施設での用途に最適な、小型のHCXなどが展示されていた。

今年のシスコのブースは、MCNSケーブルモデム・パートナーの紹介を中心に、展示物がケーブルモデムシステム一色に染まっていた。シスコがMCNSモデム用に開発したソフトウェア(ファームウェア)のライセンスを受け、パートナーシップを結んだ企業各社が、自社モデムのフラッシュROM等にインストールすることでMCNSモデムができあがるというもの。

ウェスタンショー

シスコブース

ウェスタンショー

これにより、シスコからライセンスを受けた企業のモデム同士は互換性がある、ということになる。ただしこれには、ケーブルテレビ施設のヘッドエンドに、シスコのユニバーサル・ブロードバンド・ルータ(UBR)を設置する必要があり、このルータとモデムによりMCNSコンパチのシステムとなる。

シスコのMCNSパートナーシップ

シスコと提携した企業は、COM21、RCA、ソニー、ブロードコム、ヘイズ、マイクロソフト、テラヨン、サムソン、NEXT LEVELの9社である。(ちなみにGIは、NEXT LEVELに社名変更した)
今回の提携先企業で、モデム・きょう体のデザインまで完成しているのはNEXT LEVELだけであったが、写真を撮ろうとしたところ断られてしまった。

ウェスタンショー

ソニーのMCNSケーブルモデム

ウェスタンショー

上はソニーのモデムで、左はRCAのモデムである。きょう体は単なるプロトタイプで、シスコが、ルータや電話モデムのきょう体を使って、勝手に展示したものである。(実際ソニーのブースではケーブルモデムの陰も形もない)
いずれにせよ、各社の製品が出荷されるのは、1998年7月頃とまだ先の話である。

RCAのMCNSケーブルモデム

モトローラは、独自に開発したMCNSモデムシステムを展示していた。パネルに”NOW”と示されているとおり、既に完成したモデムが展示され、実際に体験することができたのは驚きである。さすがに世界一のケーブルモデムベンダーといったところか。

ウェスタンショー

MOTOROLAのMCNS準拠HEモデム

ウェスタンショー

きょう体は縦型であるが、大きさ、重さともに問題のないでき具合だ。
ただし、現行モデムのサイバーサーファよりも通信速度が若干遅いようで、まだ作り込みの甘さが感じられた。

MOTOROLAのMCNSケーブルモデム

3Comのブースでも、MCNSモデムがメインとして展示された。こちらもプロトタイプであるが、デザインはフィックスしているようだ。製造元は、以前に買収したU.S.Roboticsで、独自開発によるものである。

ウェスタンショー

3Comブース

ウェスタンショー

3Comは、COM21に出資しており、COM21のATMケーブルモデムもOEMで取り扱っている。しかし、今後は独自開発のMCNSモデムにリソースを集中させるようで、COM21からは徐々に手を引く気配だ。

3ComのMCNSケーブルモデム

インテルのブースで見たMCNSモデムは、他社のモデムとの大きな違いに、非常に興味を持つこととなった。通信速度は12Mbpsとごく普通であるが、パソコンとの接続にUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)を採用した。

ウェスタンショー

インテルブース

ウェスタンショー

出荷は、1998年後半とのことであるが、このころにはUSBポートを搭載したパソコンが、かなり増えると思われる。インテル自身は、自社ブランドでは出荷せず、他社にライセンスするか、もしくはOEM出荷になると説明員が話してくれた。ちなみにモデムは、とてもコンパクトである。

IntelのMCNSケーブルモデム(USB接続)

ヘイズが1998年2月にトライアル版としてのリリースを予定しているウルトラ2-wayプラス・ケーブルモデムは、上り2.5Mbps、下り10Mbpsの一般的な非対称型システムであるが、オプションで上り10Mbpsまでのシステム拡張が可能となっている。なお、ヘイズはMCNSモデムでシスコと提携しているが、このシステムはMCNS準拠ではない。 

ウェスタンショー

ヘイズの2wayケーブルモデム

ウェスタンショー

1997年5月にケーブルモデムシステムから撤退したヒューレットパッカード社は、ネットワークや伝送路機器などの計測器、テスト装置、メンテナンス装置などを中心に、地味なブースを構えていた。競争になると、それに見合った利益があげられないとして、早々に撤退したHPの判断は正しかったのであろうか。今日のシスコのような動きを見ると、HPの判断は早すぎたのではないか、という疑問が残る。

HPブース

電線メーカのフジクラは、ラディアントコミュニケーションズ社の遠隔LANを実現する光トランシーバなど、各種LAN機器における国内の販売代理店となっている。10/100Base-TのLANを最大80kmまで延長できる光トランシーバは、現在、江東ケーブルテレビのインターネット接続実験でも使われており、安定した性能を示している。

ウェスタンショー

ラディアント・コミュニケーションズ

ウェスタンショー

マイクロソフト・パートナーシップのブースでひときわ人気が高かったのは、WebTVである。日本でもようやく立ち上がったWebTVであるが、この非PC系インターネットシステムに、マイクロソフトは大きな期待をかけている。ただ、米国での伸びは、最近鈍化していると聞いている。

MicrosoftブースとWebTV

ソフトウェア関連のブースは、どこも大変にぎやかであった。写真はディズニーのブースであるが、シャンパンやカクテルなども配り、お祭り気分といったところだ。ブース数の比率では、ハードウェア関連の方が多いはずであるが、全体としてみると、これはもうソフト中心の展示会に感じられた。

ウェスタンショー

華やかなディズニーブース

その他、気になったブースをいくつか紹介しよう。
パイオニアは、ケーブルモデムの展示はなく、メインはディジタル・セットトップ・ボックスとなっていた。日本のパイオニアとは対照的であるが、(日本のパイオニアの)ケーブルモデムの開発計画に若干の変更があったのかもしれない。
ハイブリットは、テレコリターンと2wayのケーブルモデムシステムの両方を展示していた。ちなみに、San Joseのケーブルテレビ会社Cable Co-opは、COM21の2wayシステムに加えて、ハイブリットのテレコリターンシステムも商用サービスとして導入している。
ケーブルモデムシステムでは先陣を切ったLan Cityを買収したBay Networksのブースでは、従来からの路線に変更はなく、10Mbpsの対称型システムを展示していた。
テラヨンはシスコ陣営に加わることとなっているが、今回の展示では、非MCNSモデムシステムの展示に留まった。
NEXT LEVEL(旧ジェネラル・インスツルメンツ)は、”SURF Board MCNS Cable Modem”と呼ばれる、MCNSケーブルモデムを展示していた。シスコ陣営でまともに自社デザインのMCNSモデムを展示したメーカは、このNEXT LEVELだけである。しかし、残念ながら写真を撮らせてもらえなかった。(前述のとおり)
江東ケーブルテレビのインターネット接続実験(第1回目)でも使用した、ゼニス社のブースでは、従来からの2wayケーブルモデム”Home Works Universal”に加えて、新たにテレコリターンのモデムも展示されていた。ちなみにモデムのきょう体はどちらも同じである。ゼニスは家電製品を取り扱っているので、ケーブルモデムを内蔵したテレビなどの発表を、以前に聞いていたが、本展示会ではそのようなハイブリット製品の展示は見られなかった。

(この項おわり/なかみつ)


Back