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スペシャルレポート

NET&COM'97特集


昨年までOPEN SYSTEMS EXPO/NETWORK EXPOと呼ばれていた展示会が、今年よりNET&COM'97と名称変更し、1997年2月12〜14日まで幕張メッセ開催された。主催は日経BP社で、内外合わせて208社の出展である。

ネットワーク・情報システムのソリューション展ということもあり、ハードウエアよりもソフトウェアの展示が圧倒的に多く、全体としては地味な展示会だ。最終的な入場者数は分からないが、幕張メッセのホール4〜8を使う展示会としては、少なかったのではないか?筆者は最終日にほぼ1日おじゃましたが、歩きやすかった。内容がどちらかというとビジネス向けであり、平日のみの開催ということもあるのだろう。

会場で印象に残ったのは、グループウェア競争の激化とJAVAの浸透、ネットワークの高速化の3点だ。以下で詳しく述べるとともに、EC(エレクトロニック・コマース)を体験してきたので、それについてもレポートする。


グループウェアでは、マイクロソフト、ロータス、ノベルが他を突き放してデモに余念がない。この分野ではロータスのNotes(ノーツ)が最も実績があり、シェアもトップである。最近ではNotesで構築したグループウェア・アプリケーションをWWWブラウザから利用可能にするNotes Domino Server(ノーツ・ドミノサーバ)を投入して、Notesをクライアントとしたインター&イントラネット戦略に強くフォーカスしている。

もともと非定型文書管理データベースだったNotesは、今ではDomino Serverのクライアントとして、電子メールやグループウェア、Webアクセスの可能な、今風のグループウェア機能をすべて実現している。また、現状ではサーバ、クライアント共に最も広範なマルチプラットフォーム化を図っていることも見逃せない(OS/2、NetWare、Windows3.1/95/NT、Mac OS、IBM AIX、HP-UX、SUN SPARC)。

Notesがデータベースの派生型であるのに対し、マイクロソフトのExchange Server(エクスチェンジサーバ)やノベルのGroupWise(グループワイズ)は、電子メールソフトの派生型といえる。

Exchange Serverは、Windows95/NTのみをプラットフォームとした電子メールとグループウェアの統合環境で、いかにもマイクロソフトらしい(広く浅い)作りのアプリケーションであるが、Visual Basicなどの開発ツールでカスタマイズ可能な柔軟性を備えているのが特徴だ。マイクロソフトでは、Outlook97と呼ぶデスクトップ上のあらゆる情報を統合管理するツールの投入を予定しており、これはExchange Serverのグループウェア機能を強化する役割も果たす。

なお、Exchange Serverの電子メール以外の利用には、Windowsというプラットフォームを要求されるという制約があり、マルチプラットフォームには対応していない(なお、Macintoshには対応する予定である)。

ノベルのGroupWiseは、Exchange Serverとは違って、Macintoshなど既にマルチプラットフォーム化が図られているが、今回のバージョン5は、現状ではクライアントがWindows3.1/95/NTのみとなっている。一方GroupWiseサーバは、当然NetWareをメインにWindows NTとの2本立てだ。

ノベルは、NetWare4.11JをコアにしたIntranetWareという、大規模なイントラネットを構築できるプラットフォーム・ソフトウェアを提供している。これは、基本的なサービスをWWWブラウザのみで可能にする、完全なマルチプラットフォーム対応であるため、本当にノベルの言う通りのものであれば、プラットフォームを限定したWindows NTよりも間違いなく優れたものである。

主催者企画のNET&COM会場内特設ステージで、ノベルのインター・イントラネット戦略というプレゼンを見たが、IDCの調査データを示しながら、説明員がWindows NTよりも「管理コストを大幅に削減できる」と力説していたのが印象に残る。

ノベルは、かつてインターネット戦略に出遅れ、NetWare以外のソフトウェア部門を売却するなど、苦境に追い込まれた時期があったが、今では戦略の方向性が定まり、活力を取り戻しつつあるようだ。
話がそれたが、Mac OSやWindows、OS/2など複数のプラットフォームをまとめる必要のある場合は、GroupWiseは一考の価値のあるソフトである。

Javaは相変わらず健在である。大規模なJavaアプリケーションになるほど、速度面で使用に耐えがたい現状にもかかわらず、これだけ注目され、サポートされるのには、完全にユニバーサルなプラットフォーム対応を実現できるためである。これにより、Wintel(マイクロソフトとインテル)支配に縛られ、また頼ることがなくなるという、多くのベンダーとユーザの願いが叶えられるわけだ。しかし、日本語対応に関しては遅れているといわざるを得ないというのも現状である。以下、展示会場内の特設会場Javaパビリオンで見かけたものを紹介する。

ジャストシステムが日本語入力システム「ATOK for Java」を参考出品していたが、製品化はJava自身の完全な2バイト対応化が図られてからとの説明を受けた。Javaに独自の拡張を施すと、Javaのユニバーサルな秩序が乱されるというのが理由である。

ATOK for Javaは、ジャストシステムが独自にJavaをローカライズしたものであるが、変換速度は思ったよりも速くて驚いてしまった。サーバに、共有のATOKエンジン(変換プログラム)とATOK辞書を置き、クライアントはシンプルなATOKのインターフェースのみという構成であるが、イーサネット環境であれば、十分に実用レベルである。今後が非常に楽しみな技術だ。

昨年はNC(ネットワーク・コンピュータ)が話題になったが、昨年末にSun Microsystemsが米国で出荷を始めたJava Stationが、参考出品として目立たなく置かれていた。

Javaチップを使っているわけではなく、Ultra SPARC2の100MHzをMPUとした、補助記憶装置を持たない完全なクライアントマシンである。Java OSも持たず、電源を投入すると最初にJava OSがダウンロードされ、その上でJavaアプレットをダウンロードして動かすのだそうだ。接続はイーサネット(10Base-T)であるが、非常にシンプルで小さい。ちょっと前のMOドライブやCD-ROMドライブ・ユニットといった感じである。高速なネットワークの利用が前提であるため、家庭で使用するようなものではなく、企業利用のみがターゲットとなる。しかしSOHO(Small Office/Home Office)での利用も悪くない。なお、当然ではあるが日本語化はされていない。


ネットワーク関連では、100Mbpsの高速Lanに対応したスイッチング・ハブなど、高速ネットワーク関連製品が目立ったが、アセンドコミュニケーションズジャパンのブースで、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)技術に対応した端末装置の参考出展が目にとまった。

これは、従来の電話回線などに用いられる、特にシールドが施されていないツイスト・ペア・ケーブルで、128kbpsのISDNサービスより高速の通信を、上り・下り非対称の速度で実現する技術である。構成としては、電話局などの交換機側がCOE(Central Office Equipment)を、また加入者側にCPE(Customer Premise Equipment)を設置し、下り6.14Mbps、上り640Kbpsの通信速度を実現できるという。ただし、現状では下りは2Mbps程度とのことだ。

なお、このADSLはDSL技術の1つであり、他にMulti DSLやIDSL(ISDN DSL)、SDSL(Symmetric DSL)などがあるが、実用化は随分と先のことになりそうだ。というのは、現状のNTTの交換機などの設備を、そのまま利用することができないからである。2010年以降のFTTHをにらんだ技術との説明を受けた。

アナログ電話回線の世界では、56kbpsの通信速度が話題となっているが、実はこの技術はまだ標準化が終わっていない。現在、米Rockwell社とUSロボティックス社の2社が56Kbps技術を発表しているが、両社の考え方は非常に似ているものの、方式は微妙に異なり、互換性はないのが現状だ。

利用者側はアナログ回線と専用モデムを使うが、プロバイダ側はディジタル回線(ISDN)である必要がある。そして、56Kbps伝送ができるのは、下り(プロバイダから利用者側)のみで、上りは28.8〜33.6Kbpsの非対称通信となる。

この56Kbpsモデムは、ISDNのターミナルアダプター(TA)との競合が予想されるが、普及するかどうかはモデムの価格によるだろう。最近ではISDN接続のできるプロバイダがほとんどのため、アナログ回線からISDNに切り替える利用者が急増している。また電話回線を容易に増やせるメリットもある。一方プロバイダ側は、既にNTTとディジタル接続しているところが多く、56Kbpsモデムに対応することは比較的容易である。

USロボティックスのブースでは、この56Kbpsモデム技術「X2テクノロジー」が紹介されていたが、同社の33.6Kbpsモデムを持っていれば、内蔵フラッシュROMのフラッシュアップ作業のみで、56Kbpsモデムへアップグレードが可能とし、コスト面でユーザへの負担を最小限に抑えられる点を強調していた。よろしいことではあるが、筆者としては、今後2社の規格がどうなっていくのかという事のほうが、価格よりも気になり、しばらくは様子を見ていた方が賢明と考える。


次はEC体験報告である。実際にICカード型の電子マネーを使ったショッピングができるコーナーがあったので、早速参加してみた。

まずICカードを発行してもらうために、登録用紙に4桁の暗証番号と自分の名前をアルファベットで記入し、登録所の女性に渡すと、PC端末とICカードに情報が登録され、発行したICカードが渡される。
ただし、この時点ではICカードにはお金が入っていない。つまりまだショッピングはできないわけだ。

次に、仮想的に作られた自分の口座から、バリュー(貨幣価値)を転送させることで、このICカードでショッピングが可能になる。自分の仮想口座からICカードへのバリューの転送は、銀行のATMのようなタッチパネルで行なうシンプルなものだ。
まず、カードリーダにICカードを差し込み、暗証番号を入力すると、ICカード内の残高がゼロと表示される。続いて入金ボタンを押すと、仮想口座の残高が表示される。
この実験では参加者全員に1000BP円が残高として割り当てられており、この1000BP円をICカードに転送することになる。1000と入力して転送ボタンを押すと、見事にICカードに1000BP円の価値が生まれるわけだ。

ショッピングも同様のタッチパネルを利用するわけだが、購入できるのはドリンクのみである。コーヒー、ウーロン茶、オレンジジュースの3種類から選ぶだけのシンプルなものであるが、一杯500BP円のドリンクを購入すると、発券機からドリンク券が出てくると同時に、ICカードの残高は500BP円になった。

クレジットカードとは根本的に違う。一時的にお金を借りるというわけではないので、ICカードの貨幣価値は入金された額によって変わり、持ち主によっても当然違う。
また、残高がゼロになると、それ以上のショッピングは不可能になり、まさに現金そのものである。これならば、仮に落としたとしても、ICカード内の額までしか使えないわけだから、クレジットカードよりは安全といえる。
しかし同時に、クレジットカードとの境界をどうするのだろうか?という疑問も沸いてくる。また、これらのシステム導入のために投資したものを、どこで回収するのか、どうやってペイさせるのかも気になるところだ。
いずれにせよ、海外では既に実験が始まっており、近い将来には実用化されるものなのだろう。

(この項おわり/なかみつ)


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