エレクトロニクスショー’96特集
1996年10月1日〜5日の5日間、今年で35回目となる社団法人・日本
電子機械工業会(EIAJ)主催のエレクトロニクスショー’96が、幕張メッ
セで開催された。出展者数は国内外を含めた636社・団体。
今年のキャッチフレーズは「Enjoy! マルチメディア」。マルチメディアを理
解することから一歩進んで、マルチメディアとエレクトロニクスを身近に感じ、
そして楽しんでもらおうというものだ。
10月1〜2日は招待日で、一般公開日は3〜5日であったが、一般公開日初
日の会場の様子を簡単に報告する。
なお入場者数は、5日間を通して約40万人となった。
展示ホールは1〜8まで総て使用している。1〜6ホールは「産業を支えるエ
レクトロニクス部門」として、電子デバイスゾーン、電子部品ゾーン、応用・
製造装置ゾーンに分けられて出展され、また7〜8ホールは「暮らしを広げる
エレクトロニクス部門」として一般家電やアミューズメント関連などが出展さ
れた。一般客が楽しめるのは後者の方で、会場の混み具合も1〜6ホールが比
較的すいているのに対し、7〜8ホールは平日にもかかわらず非常な混み具合
であった。従って、1〜6ホールについての報告は割愛させていただく。
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展示会ホール7 | 展示会ホール8 |
今年のエレショーで目立ったのは、PDP(プラズマ・ディスプレイ)、DVD
(ディジタル・ビデオ・ディスク)、DC(ディジタルカメラ)、インターネッ
トTVなどの映像関連製品であるが、マルチメディア色が強いため、パソコン
と家電との関わりがより現実になってきている。
まずは大型ディスプレイ。富士通(富士通ゼネラル)がPDPを業界に先駆け
て発表したが、他社も負けてはいない。
三菱電機は40型(対角100cm/厚さ10cm)、46型(対角116cm)
のPDPを展示(参考出品)、特に46型は会場内では最も大型の部類に入る
もので、さすがに迫力がある。40型はVGA対応で640*480ドットで
フルカラー表示が可能、また46型はHDTV(ハイビジョン)対応で画質は
まあまあといったところである。
松下電器、パイオニアも同様に40型クラスのPDPを展示していたが、仕様
は各社とも同じようなものだ。
ソニーは他社よりサイズが小さく25型であるが、画質は1ランク上の印象を
受けた。ただしPDPではないが、LCDを使った40型クラスのプロジェク
ターを展示しており、ソニーはむしろプロジェクターの方に力を入れているよ
うだった。
一方、シャープはカラーTFT液晶の40型(対角100cm)SVGA対応
ディスプレイを参考出品し、液晶シャープの底力を見せた。画質はまあまあで
あるが、視野角が狭く、また輝度もPDPに劣るため、まだ明るい場所には不
向きと思われる。
PDPは、従来のプロジェクター型に比べてコントラストが高く、しかも高輝
度であるため非常に見やすい。また視野角が160度程度と広いことも大きな
特徴である。薄型・軽量といいことづくめのようだが、まだ画質は十分とは言
えず、荒さが気になった。また、画面から出るノイズも問題がある。この展示
会場でも気になるのだから、静かな家の中では耳障りになるのではないか?もっ
とも、ボリュームを上げれば解決できることではある。
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40形PDP(三菱電機) | 46形PDP(三菱電機) |
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42形PDP(松下電器) | 40形PDP(パイオニア) |
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25形PDP(ソニー) | 40形LCD(シャープ) |
DVDは今秋から来年にかけて登場するが、各社とも製品版を展示し、また来
場者に体験してもらうためにDVDシアターを設置、どのブーズも行列ができ
ていた。特に東芝、松下、ソニーなどは他社に比べて力の入れようが明らかに
違うと感じた。ただし、ソニーは来春の発売ということもあって、実際の製品
版を見ることはできなかった。
パソコンに搭載するDVD−ROMは、この冬にも出荷されるが、CD−Rや
DVD−RAMとの互換性が無いなどの問題がある。ソニーが出荷を遅らせる
理由はその点にもあり、早くから購入を考えているユーザは、その点に注意が
必要だ。
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DVD(東 芝) | DVD(パナソニック) |
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DVD(ビクター) | DVD(ソニー) |
ディジタルカメラ(DC)に参入するメーカが、さらに増えている。後発ほど
良く練られているようだが、カシオも画質を向上させたQV−100を発表す
るなど競争は熾烈になっている。
今回新たに発表されたDCを紹介しよう。ソニーは35万画素CCD、1.8
型液晶モニター搭載の「サイバーショット(DSC−F1)」(8万8000
円)を発表した。ソニーらしいコンパクトなボディで、レンズ部はフラッシュ
部と一体で180度回転可能な構造になっており、重量も280グラムとまあ
まあである。撮影枚数はファインモードで30枚、標準モードで58枚と決し
て多くはない。DSC−F1の上位機種としてDKC−D5PROがあり、こ
ちらは45万画素CCD、12倍ズームレンズ付属、シャッタースピードが
1/4000秒まで設定可能など、非常に多機能な設計となっているが、価格
が19万8000円とかなり高めである。
三洋電機のディジタルカメラDSC−1(仮称)は、通常のコンパクトカメラ
と違和感のない形状で、1.8インチ液晶モニターを内蔵した標準的な仕様で
ある。CCDの画素数は不明であるが640*480ドットの解像度で処理可
能なため、35万画素程度と考えられる。内蔵フラッシュメモリが2MBであ
るため、低解像度(320*240ドット)でも60枚しか記録できないのは
残念である。ただし、撮影と同時に音声を記録できるなど面白い機能もある。
また、テレビやビデオに出力するためのAV端子を備えている点も見逃せない。
DCは今までパソコンユーザのものと考えがちだったが、このような機能は、
パソコンを持っていない消費者にまでユーザ層を広げることになる。このテレ
ビなどに出力する機能は、すでに多くのDCが採用しており、標準機能の1つ
になったといえるだろう。
シャープのディジタルカメラMD−PS1はMDを記録媒体に用いた他のDC
とはひと味違うコンセプトに基づいている。140MBの記憶容量を持つMD
で、最大2000枚の画像記録を可能とし、また音声の記録・再生も可能であ
る。さらに面白いのはMDプレイヤーのように音楽MDの録音・再生も可能と
いうことなので、カメラとして利用しないときはMDウォークマンのような使
い方ができる。オールインワンを好むユーザにはうけそうだ。
パナソニックは、参考出展として、CFカード搭載のディジタル・スチル・カ
メラを発表していた。詳細は不明であるが、基本的な点は他メーカの普及価格
帯DCと同等の機能を備えており、当然ではあるがテレビ、パソコンへ出力が
可能となっている。
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DC(パナソニック) | DC(三洋電機) |
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DC(シャープ) | DC(ソニー) |
今秋に初お目見えの、テレビのみでインターネットのWWWブラウジングの可
能なインターネットTVが各社から発表・発売された。インターネットTVは
TVに内蔵あるいは外付けの付属モデムを用いた、電話回線経由で実現するシ
ステムで、ワイドテレビの場合は画面を分割することで、テレビを見ながら同
時にWWWブラウジングができる。どの製品も解像度が640*480ドット
であるため、表示エリアは決して広くないが、実用上は問題ない。またTVの
場合、文字の表示では画面のちらつきが気になるが、各社ともこの点について
はちらつきを最小限に押さえるようソフトウエアで工夫している。
なお、WWWブラウザの機能はパソコン用の最新ブラウザに比べると2世代程
度古いため、過度の期待は禁物だ。あくまで”見ることは可能である”程度に
思っていれば裏切られることはない。ただし、電子メールの送受信には各社と
も対応している。
三洋電機のインターネットテレビ「インターネッター」は21型と28型ワイ
ドの2種類を用意、価格はそれぞれ115000円、198000円となって
いる。インターネットのためだけに10万円程度の出費というのはぎりぎりの
ところだろう。20万円出すならパソコンを購入した方がいいのではないかと
思う。ただし、操作がゲームパッドのような専用リモコンで可能なため、キー
ボードが苦手な初心者にも楽しめる仕様となっている。なお、モデムは今となっ
ては低速の14.4キロビット毎秒である。
三菱電機は28型のハイビジョン/文字放送対応ワイドTVにインターネット
機能を付加し、価格は27万円である。ホームページへのアクセスは三洋電機
と同様に専用リモコンのみで可能である。
シャープのネットワークビジョンは32型のワイドTVで33万円と若干高め。
モデムは28.8キロビット毎秒のものを内蔵しており、通信速度はまずまず。
その他の機能として、TVにVGA端子を装備しており、パソコンのモニター
として使うこともできる。むしろこの機能の方が使えそうだ。
その他、松下電器、ビクターも同様のTVを出展していたが、基本的には各社
とも明確な違いはない。
違っていたのは東芝のアイティービジョン(ITビジョン)である。これは、
上りに電話回線、下りにTV電波の隙間を使った双方向システムで、TV番組
に視聴者が参加できたり、ショッピングやチケット予約などのオンラインサー
ビスが受けられるというもの。インターネットTVとの違いは、ITビジョン
がパソコン通信サービスに近いものと考えればよい。つまり、ニフティーサー
ブのように、あらかじめ決められた項目の中から、選択してサービスを受ける
ことになる。そのサービスの中には放送番組と連動するものもあれば、放送と
は独立して、オンラインサービスを受けられるものもあるわけである。
インターネットの場合は、特定の会社だけにアクセスするわけではなく、世界
中のさまざまな場所にアクセスできるという点で、ITビジョンよりオープン
ではある。しかし、受けたいサービスを自分で探す必要があるため、初心者に
はITビジョンの方が分かりやすいかもしれない。とはいえ、ITビジョンは
インターネットに対して閉じたサービスであり、その普及にはインターネット
以上に労力が必要なことも確かだ。
インターネットTVは、その商品コンセプトから”初心者向けにお茶の間へも”
が、よく読みとれるけれども、初心者でいるのは最初だけである。にもかかわ
らず、WWWブラウザ・ソフトウェアが将来バージョンアップできないのは大
きな問題といわざるを得ない。コンテンツに使われる技術が目まぐるしく進化
している現状では、1年も経たないうちに、大半のホームページが見られなく
なってしまうのではないか。少なくともインターネットTVは第2世代まで待
つのが賢明だ。
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インターネットTV(三洋電機) | インターネットTV(三洋電機) |
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インターネットTV(三菱電機) | インターネットTV(シャープ) |
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インターネットTV(松下電器) | インターネットTV(ビクター) |
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ITビジョン(東芝) | |
その他、気になる製品をいくつか紹介する。
三洋電機が参考出展したPHSファクシミリは、ペン入力の可能な大型液晶を
装備したPHSで、電子手帳の機能(カレンダー、スケジュールなど)をあわ
せ持つ。大きな特徴はFAX送受信機能を持っていることで、手書きメモをそ
のまま送信したり、FAXデータを直接受信して、その場でブラウズが可能、
更に受信したFAXデータを加工して再送信することもできる。
データモデムを内蔵しているので、パソコン通信などもできるが、残念ながら
インターネットでWWWブラウズなどを楽しむことはできない。
本体寸法は幅71ミリ、厚さ30ミリ、長さ165ミリで重量は255グラム
とPHSにしては若干大きめであるが、機能を考えると妥当なところか。
松下電器のパーソナルコミュニケータ「PINOCCHIO(ピノキオ)」も
三洋と同様の製品であるが、手書き文字認識など電子手帳として機能が豊富な
ことや、IrDAを装備してパソコンとの連携が取りやすい反面、FAXが送
信のみ対応しているなど、微妙にコンセプトが異なる。それでも大きさや重量
はほとんど同じであり、どちらを選ぶかは、デザインを除けば目的を満たす機
能ではっきり分けることができる。
パイオニアの「見えるケータイ(DP−211)」はPHSではなく、携帯電
話をベースにした製品である。テンキーなどを無くす代わりに大型液晶を搭載
し、すべての操作が液晶のタッチパネルで可能となっている。当然さまざまな
表示モードが用意されており、対話型ガイド・インターフェースを用いて、よ
り使いやすい携帯電話を実現した。三洋電機や松下電器のような複数の機能を
統合したタイプではないが、そのかわり電話としての機能は充実させている。
ネットワークコンピュータ(NC)の追い風に乗って、テレビなどにつないで
WWWブラウズを楽しむインターネット端末が増えているが、日立が近日中に
発売を予定しているインターネットプレーヤー「マイキャッチャー」は、まさ
にこの手の製品だ。CD−ROMドライブを内蔵し、コントロールパッドを使っ
て操作をする点はゲーム専用機に似ており、28.8キロビット毎秒のモデム
も内蔵している。しかし、マイキャッチャーの中身は66MHzの486DX
を持ったパソコンそのもので、シリアルポート、パラレルポートのほかにPC
カードスロットも装備されている。このコンセプトはバンダイのピピン@マー
クに似ているが、ピピンの方が価格、インテグレーション、拡張性、使いやす
さのどれを取っても優れており、マイキャッチャーに99800円を払う気に
はなれない。10万円を出せば、同性能のパソコンがディスプレイ、モデム付
きで、しかもマイキャッチャーにはないハードディスク内蔵で購入可能だから。
ソニーの「グラストロン」は、メガネ型の液晶ディスプレイ装置で、2メート
ル先に52型の大型スクリーンを体感できるというものだ。実際に使ってみた
が、それほど映像はきれいではないものの、場所を問わずに楽しめるというの
は魅力かもしれない。スクリーンの背景をブラックにすることも、外の景色を
見られるようにすることも可能であるが、スクリーン自体を透過させる「シー
スルー機能」も面白いアイディアだ。ただし、長時間の使用はかなり疲れるも
のと思われるため、自宅で使うものではなく、あくまで場所や空間に制約を受
けた場合の補助的なものと割りきったほうがよい。(この項おわり/なかみつ)
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PHS-FAX手帳(三洋電機) | PHS手帳「ピノキオ」 (松下電器) |
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液晶携帯電話(パイオニア) | インターネットプレーヤー 「マイキャッチャー」(日立) |
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メガネ型LCDモニター 「グラストロン」(ソニー) | |