WORLD PC EXPO 96特集
−展示会情報−
1996年9月4日〜7日の4日間、今年で2回目となる日経BP社主催の
WORLD PC EXPO 96が、幕張メッセで開催された。
前回に比べて出展社数が435社と拡大し、20万人以上の来場者が見込まれ
るアジア最大のパソコン総合展で、特に初日は入場手続きのために大行列がで
きたほどだ。(前回来場者数は約15万人)
この会場に足を運んだのは4日(水)と6日(金)の2日間であるが、その会
場の様子を簡単に報告する。
今回は出展数が増加したため、展示ホールは1〜6まで使用された。さらにイ
ベントホール7にショッピングパークを開いたため、ブースの見学のみならず、
エキスポ特価で商品を買い求める人で会場はにぎわった。
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展示会ホール1 | 展示会ホール2 |
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展示会ホール3 | 展示会ホール4・5 |
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展示会ホール6 | |
ジャストシステムの一太郎7が9月13日にやっと発売となる。6月末の
WINDOWS WORLD EXPO'96では非常に地味な存在だったが、今回は発売間近とあっ
て活気が戻ったようだ。しかし、この半年以上の発売延期は今後の戦略見直し
を迫られることになりそうだ。現状の開発体制では、マイクロソフト(以下MS)
のような企業に対抗するのは難しいと思われる。(MSのワード97は97年
第1四半期に投入予定である)
一方のマイクロソフトは、相変わらずのにぎわいである。主要製品のインター
ネット対応を着実に進め、それに伴う開発ツールも整いつつある。しかし、な
んといっても目玉は8月中に出荷されたインターネット・エクスプローラ3.0
(以下IE)であり、その宣伝・普及に必死のようだ。ただし会場内で使われ
ていたWWWブラウザは、圧倒的にネットスケープ・ナビゲータ(以下NS)
が多かった。
ロータスは各製品のインターネット対応をいち早く進め、特にノーツ・データ
ベースを軸としたイントラネット構築で実績を重ねつつある。
1-2-3は近々97にバージョンアップするようだが、MSのエクセルにどこ
まで対抗できるか楽しみである。
NEC、富士通などは、ハードウエアよりはむしろインターネットやイントラ
ネットに対するソリューション(ネットワークの構築やグループウエアなど)
に力を入れていた。一方で日本IBMは、アプティバやThinkPadなどハード
ウエア中心で、前者とは対照的である。日本IBMは、このほかOS/2のブー
スを専用に設け、次期バージョンの紹介や、アマダなどの工作機械メーカと組
んだFAなどへの応用を実演していた。
東芝、松下電器は今秋にも登場するDVDに力を入れていた。特に東芝は、パ
ソコンに搭載するDVD−ROMドライブを参考出展しており、DVDでリー
ダーシップをとろうとする同社の意気込みを感じた。東芝は、ノート型PCの
世界シェアの約2割を握っているが、WINDOWS WORLD EXPO'96の時と同様にノー
ト型PCのラインアップを派手に紹介していた。ただし新製品の発表はなかった。
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ジャストシステム | マイクロソフト |
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ロータス | NEC |
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富士通 | 日本IBM |
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東 芝 | 松下電器 |
今年の始めに業績悪化で買収の噂まで飛び交ったアップルコンピュータ社であ
るが、アメリオ会長率いる新組織の後、着実に業績を回復しつつある、活気あ
ふれる姿が再び戻ってきたようだ。2月のMacWorld Expo Tokyo'96の時は、
前回以上の盛り上がりを見せながらも、アップル自身の方向性が曖昧だったた
め、将来性の点で不安を隠しきれなかったが、今はアップル社が一つにまとまっ
ている。
8月に米国で発表されたハードウエアの新ラインアップを、目にすることはで
きなかったが、ソフトウェアにおいては様々な発表があった。デスクトップビ
デオを簡単に実現する「アビット・シネマ」やインターネット・ディレクトリ
サービスの新しい形である3次元ユーザ・インターフェース「プロジェクトX」、
QuickTimeやQuickTimeVRの機能拡張などである。特にQuickTimeVRコンテンツ
の中で動画が再現されたり、マウスを使って水面に波紋を出すデモは絶品であ
る。仮想現実も遂にここまで来たのかと思ってしまうほどだ。後はMacOS
のメジャーバージョンアップの早期実現に期待がかかるところである。
この春より台湾のUMAX社がMacOS互換機を出荷しているが、ようやく
今秋にも漢字Talk版が登場する。国内でのサポートは日本法人であるユー
マックスジャパンが行なうことになっているため、サポートに関する不安はな
いと言ってよいだろう。
いままでMacOS向けの製品が圧倒的に多かったクラリス社であるが、今後
は主力製品のほとんどをウィンドウズ向けにもリリースしていくようだ。今回
同時にリリースされるのは、「クラリスワークス4.0」「ファイルメーカー
Pro3.0」「クラリスインパクト2.0」の3つのソフト。自宅でMac、
オフィスでウィンドウズの人でも、作成データの完全な互換性が保たれる設計
になっており、ウィンドウズの世界にもクラリス旋風が吹き荒れそうだ。
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アップル・コンピュータ | ユーマックス・ジャパン |
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UMAX Pulsar1500 | クラリス |
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パワーPC | CHRP仕様ボードYosemite |
インテルのマイクロプロセッサ(MPU)によるPC市場の支配という構図を
崩し、健全な市場の成長を目指して開発が進められた!?、インテル対抗の
RISC型MPU「パワーPC」。そしてそのパワーPCを核とした、複数の
OSが稼働可能なPCアーキテクチャ仕様である「パワーPC プラットフォー
ム(正式略称CHRP)」。
前回のWORLD PC EXPO 95ではほとんど実体が見えなかったが、今回は米国で既
にハードウェア(モトローラのマザーボード「Yosemite」など)が発表された
こともあり、以前よりはましになった。しかし、この構想は3年も前に発表さ
れたにもかかわらず、まだ製品化されていない。当時のCISCよりもRISC、
複数OSのサポートという考えが、現在のウィンテル陣営に対してインパクト
を与えられるのか、市場性があるのかという点に多くの疑問を感じる。皮肉な
ことに、CHRP上で走る最初のOSはウィンドウズNTになりそうだ。
一方MPU「パワーPC」の開発は、新しいロードマップが先ごろ発表され、
比較的順調に進んでいるようだ。現在の主流は601の後継の6XXシリーズ
で、最新の604eはペンティアム・プロを凌ぐ性能を出している。この6XX
シリーズの後にG3(1997年前半出荷予定)、G4(1999年前半出荷
予定)が控えており、さらにその後の「プロジェクト2K」へと続く。
パワーPCの存続は、ある意味ではアップル、IBM、モトローラ3社の仲に
かかっていると言ってよく、インテルのためにも、ひいては我々ユーザのため
にもインテル対抗として力を発揮してほしい。
1996年はディジタルカメラの普及元年といえそうなくらいに各社から新製
品が発表されている。その中のいくつかを紹介しよう。
カシオはQV−10で、ディジタルカメラの世界を一般の人に普及させる先導
役を果たしたが、その後QV−10A、−30と改良を重ね、今回新たに投入
したQV−100で更に確固たる地位を築こうとしている。QV−100は
63,000円という普及価格にもかかわらず、36万画素、1.8インチモ
ニタ、標準モードで192枚撮り、重量180グラムと非常にバランスのとれ
た仕様である。初期ロットに一部不具合が見つかったようであるが、すべて無
償で対応するということなので、サポートの面でも問題はない。
コダックは今回新製品の発表は特にないが、同社のディジタルカメラDC20、
DC40、50の活用例を紹介していた。DC20は4万円以下と低価格で、
しかも操作が簡単なため、多くの人にとって購入の候補となるだろう。しかし、
撮影枚数が少ないことや、カメラ単独で設定変更ができないこと、そしてディ
ジタルの特徴でもあるはずの、撮ったその場で確認できる液晶モニタが付いて
いないのは、不十分な仕様といわざるを得ない。DC40、50にも液晶モニ
タの付いたタイプを考えてほしいものだ。
ミノルタは普及価格帯では初参入である。横型カメラ「ディマージュV」は
1.8インチ液晶モニタ、取り外しの可能な2.7倍ズーム付きレンズ部、単
3乾電池で駆動という基本的な仕様を押さえたなかなかの意欲作だ。気になる
撮影枚数であるが、スマートメディア(SSFDC)を採用しており、2MB
媒体で標準モード時約40枚ということである。SSFDCの価格にもよるが、
複数枚持っていれば撮影枚数を増すことが可能だ。このディマージュVは近日
発売予定ということである。
ニコンは以前から発表していた縦型の2機種、E100、E300を10月末
に発売する。(E300は発売未定)
E100(59800円)は33万画素、解像度512*480、撮影枚数・
標準モード時42枚と一般的な仕様であるが、本体がPCカード/TYPE2
準拠となっており、パソコンのPCスロットに差し込んで、データの入力がで
きるのが特徴である。他のカメラと違い、本体にパソコンとのインタフェース
を持っているため、付属品がかさばらず使い勝手は良さそうだ。これで液晶モ
ニタが付いていれば、なお良いのだが・・・。E300(価格未定)は33万
画素、解像度640*480、2.5インチ液晶モニタ、撮影枚数・標準モー
ド時125枚とまずまずの仕様。面白いのは約17分の音声記録とペン入力に
よるメモ書き機能である。撮影した画像にメモが付けられるので、後で確認す
るときに重宝するはずだ。これで手頃な価格になれば文句はないのだが・・。
オリンパスが投入した横型ディジタルカメラ「キャメディア」はC−800L(
128,000円)、C−400L(74,000円)、C−400(
49,800円)の3機種である。C−400、400Lは35万画素である
が、C−800Lは81万画素と高画質仕様になっている。液晶モニタは1.8
インチのものがC−400を除いて搭載されており、ここが選択の分かれ目と
なりそうだ。撮影枚数は内蔵フラッシュメモリの容量により異なり、
C−800L、−400L、−400の順に標準モード時で120枚、80枚、
36枚となっている。オリンパスのシリーズは、通常のコンパクトカメラと違
和感のないスタイルであるため、従来のカメラにこだわるユーザには好感が持
たれるだろう。
シャープはカラーザウルスを7月より発売しているが、そのオプションとして
利用可能なディジタルカメラが紹介されていた。(MI−10DC、カラーザ
ウルスとセットで155,000円)
カメラの画素数は約27万画素と低いが、最大で約90枚までの撮影データが
保存でき、液晶モニタ部が5インチと大きいなど他のカメラにはない特徴もあ
る。画質にはこだわらず、あくまでカラーザウルスの補助機能としての利用な
ら、納得のいく価格であろう。余談ではあるが、エキスポ内をカラーザウルス
で撮影している一般客が、カシオのQVシリーズに続いて多かったような気が
する。
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カシオ | コダック |
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ミノルタ | ニコン |
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オリンパス | シャープ |
日本サン・マイクロシステムズおよび日本サン・ソフトは、Java言語で記
述されたJavaのアプレット/アプリケーション開発環境である
「Java WorkShop」を発表し、その紹介に力を入れていた。対応しているのは、
ウィンドウズNT/95およびSolaris(SPARC版、Intel版)
の各OS上で、残念ながらMacOSには未対応である。12,800円とい
う低価格、本家本元の開発環境という点が魅力だ。
面白かったのは、「サン・ソフトSolarisとマイクロソフトWindows NT:オペ
レーティング・システム市場の制覇をかけた熾烈な戦い」というタイトルの冊
子の配布である。サン・ソフトがマイクロソフトの挑戦を迎えうつ、というも
のであるが、双方とも多くの共通点があるとしながら、最後にはサン・ソフト
に分があると結論づけている。サーバ分野だけに的を絞れば、OSはこの2社
しかないとするサン・ソフトの考えは強引・ごう慢ではあるが、マイクロソフ
トに対抗する勇気は認めなければならないだろう。この戦いが、ユーザに利益
をもたらす戦いであることを望みたい。 アップルはマイクロソフトとの戦い
で、ユーザの望むことから外れた戦略をとった時期があったが、そのようなこ
とのないようにしてほしい。勿論、もっともユーザに不利益な戦略をとってい
るのは、長期的に見ればマイクロソフトそのものなのであるが・・・。
日本オラクルはネットワーク・コンピュータ(NC)のデモにもっとも力を入
れていた。米IBMは96年内にNCを発売すると発表しているなど、年内か
ら97年前半にかけて各社から続々と市場投入される予定になっている。また、
オラクルの子会社であるネットワーク・コンピュータ社や、WWWブラウザ最
大手の米ネットスケープ社も、97年前半までに主要ソフトを揃えるとしてお
り、NCの立ち上がりは今のところ問題はない。ただ本当に市場に受け入れら
れるのか?といった疑問は、残念ながら消えない。安易な低コスト化ではなく、
魅力のある、そして先進性のある環境を、ビジネスユーザのみならず一般消費
者へも広く開放してほしい。
トランスコスモスのブースで紹介していたプログレッシブ・ネットワーク社の
リアル・オーディオは、インターネットの世界では音声配信システムのデファ
クト・スタンダードとなっており、世界の多くのラジオ局でインターネット放
送に利用されている。電話回線に頼る現状の通信環境では、動画の配信は難し
いと判断し、いち早く音声のみに的を絞ってストリーミング機能(全データの
ダウンロード終了を待たずに、再生ができる機能)を持たせたことが、大きく
普及するきっかけとなったようだ。トランスコスモスは日本の代理店で、同
サーバ・ソフトの国内でのサポートを手がけており、会場では特別販売キャン
ペーンを実施していた。(この項おわり/なかみつ)
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サン・マイクロシステムズ | 日本オラクル |
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トランス・コスモス | |