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スペシャルレポート

WORLD PC EXPO 97展示会特集


今年で3回目となるWORLDPC EXPO 97の展示会が、日経BP社の主催で、1997年9月24〜27日まで幕張メッセで開催された。筆者は第1回より展示会に足を運んでいるが、日本コンベンションセンターのメインホール1〜8とイベントホールをフルに使用し、PCの展示会としては最大規模となった。(最終的な出展社数は578社で、来場者数は309,018人)

筆者は26日、27日の2日間で展示会見学と基調講演を聴講する予定であったが、体調不良のため26日のみとなってしまった。当初の計画より内容が縮小してしまったが、それでも何とか参加した米Apple Computer社・担当副社長フィル・シラー氏の基調講演を含む、会場レポートの縮小版を報告する。

なお、次回のWORLD PC EXPO 98は、1998年10月7日(水)〜10日(土)の開催が予定されている。





  • その1・WORLDPC EXPO 97展示会会場レポート

  • その2・基調講演レポート[11月10日アップ]



    その1・WORLDPC EXPO 97展示会会場レポート


    まずは、この日に発売開始となったMacOS8で話題のアップルコンピュータ社のブース。ここ最近の展示会では見られなかったような人だかりで、さすがにMacOS8の関心の高さを裏付けるものとなった。MacOS8は、OSの土台こそMacOS7.6から変わってはいないが、GUIの使い勝手が大幅に向上している。したがってOSの信頼性や安定性という点では、それほどの向上は見られないが、インターフェースに関しては、まだ改善する余地のあるOSであることが改めて確認された。これは言い換えれば、まだMacOSが現役で活躍していける可能性を持ったOSと見ることができる。しかし、別の機会にMacOS8についてはレビューするつもりだが、GUIが進化すればするほど疑似マルチタスク(ノン・プリエンプティブ)の限界を目立たせることとなった。マルチスレッドファインダーになっても、Windows95のデスクトップの方が切替えはスムーズで、他の処理を待つ必要がない。また、プロテクトメモリを採用していないので、単一のアプリケーションエラーが、致命的なシステムエラーになる点も、MacOS7.6と同じである。
    98年夏に登場予定の次期メジャーアップデート「アレグロ」で、これらOSの土台がどれだけ改善されるのか、楽しみである。

    クラリスのブースでは、MacOS8の体験コーナーが設置され、こちらの方も常に満席状態。MacOS8の販売やサポートはクラリスが担当しており、以前にアップル自身が行なっていたサポート体制よりも、はるかに良いものとなっている。(筆者はMacOS7.6のアップデート手続き時にそれを確認している)

    クラリスの本展示会での目玉はクラリスインパクト3.0である。本レポート上でのレビューは特に行なわないが、ビジネスに必要なツールを統合したアプリケーションは、事実上このクラリスインパクトのみであり、日本語版はVer2.0からMachintosh版とWindows95/NT版が同時リリースになっている。Ver3.0になっても同様の対応が計られ、さらに地位が確実なものになるのは間違いない。

    さて、今年はモバイル関連が特に熱くなっており、US RoboticsのPalm Pilot、シャープのパワーザウルス、カシオやNECのWindowsCEなど様々であるが、ここでは東芝のリブレットとアップルのニュートン(正しくはMessagePad)を紹介しよう。

    Apple MessagePadは、米アップル社の製品であるが、日本法人のアップルでは、正式なローカライズ版をまだ発売していない。では日本で現在販売されているMessagePadは何か?というと、(株)エヌフォーが開発した日本語環境「UniFEP」をバンドルした形で、アップルから発売されているのである。
    ということもあり、ニュートンのブースは、(株)エヌフォーが出展している。
    97年2月のMAC WORLD Expo/Tokyo'97の時と同様、MessagePad2000とeMate300が展示されていた。いずれも日本で正式には販売されていないが、並行輸入品は出回っている。展示されたMessagePad2000上では、UniFEPによる日本語環境が完全な形で動いており、しかもその速さに驚かされた。筆者はMessagePad130を使っているが、うらやましい限りである。(株)エヌフォーの説明員によれば、アップルからの許可がおりれば、いつでも製品化できるところまできているらしいが、「こればっかりはどうにもならない」と、困った様子であった。
    MessagePad130を使う筆者としてのもう1つの注目は、MessagePad用のインターネット電子メールソフトが、この秋に2社からリリースされたことだ。1つはファクトリーから発売が予定されているFactory Mail for Internet(仮称)で、もう1つがエヌフォーから発売されたUniMail1.0である。製品のレビューについては他誌に譲るが、徹底的にプログラムサイズを小さくするために、アップルが提供するインターネット接続プログラム「Newton Internet Enabler(NIE)」を使用しない設計になっている。これが問題となって、確認済みの接続可能なプロバイダ(ISP)は、リムネットだけ!という問題について、今後の対応を説明員に尋ねた。その結果、明らかになったことは次の2点である。
    (1)近日中に期間限定のデモ版を配布し、購入前に現在利用ISPでの接続確認をできるようにする。
    (2)次期版(あるいは別製品になるかもしれないが)では、NIEを利用できるようにするので、接続可能ISPの問題は大幅に解決される。
    とのことだ。Factory Mail for Internet(仮称)の方は、まだ発売されていないので何ともいえないが、こちらは標準のNIEを利用する仕組みになっているので、接続可能なプロバイダ数は、UniMailに比べて圧倒的に有利である。MessagePadの電子メール環境は、現状では貧弱なだけに、これらの製品がリリースされるのを待っていたユーザは、筆者も含めて多いはずである。

    東芝のリブレットが最初に発売されたのは、1996年の初夏であったが、約1年の間に数回の世代交代(20/30/50)を繰り返し、現在のリブレット60に至っている。Pentium100MHz、16MBのEDOメモリに810MBのハードディスクと、スペックは大したことはないが、これらが約850gでパッケージされている点が、最大の魅力であり特徴である。Windows95でモバイルといえば、まず1番にリブレットが挙がるのであるが、東芝のリブレットのブースでは、多くのソリューションが展示されていた。

    JetEye Net/Net Plusは、リブレットのIrDA赤外線通信を利用して、ワイヤレスでEthernet接続が可能なアダプタである。通常ネットワークへの接続は、リブレットの場合、たった1つしかないType-IIのPCカードスロットにEthernetカードを装着して行なうのが普通であるが、JetEye Net/Net Plusを利用すれば、PCカードスロットを他の用途に振り分けることが可能になる。ただし、PCカードに比べて4倍以上のコスト高になり、また転送速度がIrDAの規格に左右される点は、若干不利でもあるが。

    こちらは、電子メールで映像と音声が送れる「ビデオメール簡単作成キット」。ビデオカメラ、Type-IIのインターフェースカード、ビデオメールソフトがセットになっており、購入後すぐに利用できるものとなっている。独自の圧縮技術により、2分のビデオデータを最大1.2MBのサイズに圧縮可能で、しかも実行ファイル形式として送信できるので、受け取り側が対応ソフトを用意しなくてもビデオが見られるのはありがたい(ただし、そのためにデータファイルサイズが犠牲になっている)。また、付属のビデオカメラは、本体にマイクを内蔵しズーム、パンなどのカメラ制御がリモートで行なえるので、PC本体のスピーカと組み合わせれば、ビデオ会議に利用することも可能だ。

    カシオといえば、昨年まではデジカメのカシオであったが、今年はのカシオペア(WindowsCE)のカシオである。ブースでは既に発売されているカシオペアが、ハンズオンの状態で大量に展示されていた。ただし、新製品としての時期が過ぎたため、ま新しさはなく、人もまばらであった。しかしデジカメの方は相変わらずの人気で、新製品のQV-700は特に注目が高かった。定価75, 000円のこのカメラは、従来のQVシリーズの欠点の多くが解消されている。QV-700では、QVシリーズで初めてストロボを搭載し、また画像データの保存が、内蔵のフラッシュメモリから、コンパクトフラッシュカードに変更され、撮影枚数やパソコンへの転送方法の自由度が増している。しかし本体重量が290gと、従来機種(QV-70で150g、QV-200で190g)に比べて非常に重くなってしまったのは残念だ。

    NECのシェア低下はWindows95の登場後に、よりはっきりと分かるようになった。50%を切った切らないの議論が繰り広げられたこともあったが、今となってはつまらない話だ。NECのパソコンは、独自のPC-9800アーキテクチャで築いてきたため、WindowsというOS上で、ソフトウェアの互換性を保てるようになっても、ハードウェアの拡張に対しては、メモリ1つとってもDOS/V機と互換性がなかった。そのため、可能な限りDOS/Vの部品を流用し、コスト削減による低価格化とハードウェアの拡張性に対するDOS/V機との互換性向上を目的に、PC-9800のDOS/V化を進めてきた。
    こうした一連のNECの動きと平行して、NECがDOS/V機を出すのはいつか?という議論が盛り上がったのである。当然、NECは今までの資産を尊重し、DOS/V機を出す計画はない!と反論していた。
    そうこうしている内にも、資本提携先のパッカードベルから、パッカードベル-NECブランドでのDOS/V機の発売である。既にNECがDOS/V機を出すのは時間の問題だったのだ。

    PC98-NXシリーズは、単なるDOS/V機である。とはいっても、マイクロソフト、インテルが発表しているPC97/PC98システムデザイン(ハードウェアに対する要求仕様)を、他社に先駆けて完装した点は新しい。パソコンの起動が速くなるOn Now機能や、新しいインタフェースの規格であるUSBやIEEE1394(Fire Wire) 、グラフィックス性能を高めるAGP、新しい省エネ技術のACPIなどの採用である。
    NECは、既存のPC-9800シリーズのユーザに対しては、開発、販売、サポートを今後も続けると発表している。PC-9800シリーズの新製品も10月下旬に発表されるそうだ。
    だが、今後はPC-9800シリーズの購入は絶対に避けるべきである。まず、「PC98システムデザインには対応する予定はない」とNECが認めていることだ。これにより、将来のWindowsで利用できない機能が必ず出てくる。またNECによれば、PC-9800シリーズでサポートされるOSは、Windows98とWindowsNT5.0までとのことだ。どうしてもNECブランドが捨てられないならば、迷わずPC98-NXシリーズを購入することである。

    アメリカオンラインのブースでは、まもなく登場する「AOL for Macintoshベータ版」のデモが展示されていた。その時点では、まだ一般への配布が行なわれていないとのことであったが、その場でCD-ROM郵送配布の手続きを済ませた(なお、10月中頃より一般への無料配布が始まっている)。画面を見れば分かるとおり、Nifty Serveのニフティマネジャーと感覚的には似ているが、使い勝手は、はるかに洗練されたものとなっている。しかし、同社の日本でのサービスは今年から始まったばかりであり、日本に特化したサービスはNifty Serveのほうが充実している。Nifty Serveのユーザが流れていく可能性は低いと思われるため、パソ通(あるいはインターネット)新規ユーザに、どのようにアピールしていくかが成否の鍵を握っているといえるだろう。

    ヒューレットパッカード社(HP)のブースは、同社のルー・プラット会長兼社長兼CEOと、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長兼CEOが仲良く握手をしている写真が大きく飾られているのが、まず目についた。マイクロソフト社との関係が良好であることをアピールし、顧客に安心感を与えるという、足下から固める、いかにもHPらしいやり方である(パンフレットにも同様の写真が目立つ位置に載せられている)。
    今回HPでは、Pentium IIとAGPを活かしたPCワークステーションKAYAK(カヤック)シリーズを発表し、既存のPCシステムより大幅に処理能力が向上していることを、デモでアピールしていた。HPは、これからのネットワーク・コンピューティングとしてWindowsNTを強力に推進する姿勢を明確にしているが、一方で日本メーカ各社とUNIX環境の強化に努めている点も見逃せない。HPにとってのWindowsNTは、しょせん金儲けのための一手段に過ぎないのだろうか。

    マイクロソフトのブースは、相変わらずの人だかりである。メインはインターネットエクスプローラ4.0(IE4.0)のようだ。IE4.0の特徴はOSのデスクトップ(シェル)に完全に統合される点(アクティブデスクトップと呼ぶ)であり、マイクロソフトは、こうしたインタフェースが使いやすい、と本気で信じている。だがベータ版を使用していたユーザ数名に聞いたところでは、邪魔以外の何者でもないらしく、結局アクティブデスクトップを止めたり、IEの旧バージョンに戻している。好き嫌いがはっきり分かれそうだ(またこのIE4.0をめぐって、米司法省がマイクロソフトを最近提訴したが、その内容は、OSとIE4.0の抱き合わせ販売にあるようで、今後の動きが気になるところだ。結果によっては、Windows98の出荷にも影響を与える可能性がある)。

    以前は業務ソフトといえば、「ミルキーウェイ」という社名がよく目についたものだが、今となってはその面影を製品名でしか見ることができない。ミルキーウェイ(と日本マイコン)は、米の個人会計ソフト最大手であるインテュイット社が、日本進出のために買収した会社であり、そのために日本国内のエキスポでもインテュイット社名のブースが見られるようになったのである。インテュイットという社名は、日本においてはマイナーであるが、以前にマイクロソフトが買収しようとして失敗した会社、といえば思い出す人が多いのではないか。マイクロソフトは個人会計ソフト「マネー」を持っているが、インテュイットの「クイッケン」のシェアを未だに上回っていない。

    最後にアキアのブース。メーカ直販とファブレス経営で成功している新興DOS/Vメーカであるが、今年からMacOS互換機の販売も手がけている。しかし、Apple社の互換機戦略の変更により、アキアのライセンス先であるIBM社もMacOS互換機事業から撤退するなど、アキアにとってよくない話が続いている。
    しかしアキアの飯塚社長の話では、今のところMacOS互換機事業に変更はないとのことだ。期待されながら消滅しかけているCHRPについても、Apple社が方針を変更してくれるようコミットし続けるとのことなので、マックユーザなら応援してはどうか。






    (この項おわり/なかみつ)


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