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スペシャルレポート


  • 1996年2月14日・ジムクラーク氏の基調講演から(前編)
  •  幕張メッセで2月14日から開催されたオープンシステムズエキスポ’96、  ネットワークエキスポ’96(主催:日経BP社)と併催のオープンシステム  ネットワークフォーラム’96で、基調講演を行なった米ネットスケープコミ  ュニケーションズ社の会長であるジムHクラーク氏の講演内容から、その概要  を前編・後編に分けてお伝えします。  タイトル「インターネット・ビジネスの展望」(前編)  (1)インターネットはメディア・オン・デマンド     1969年に4台のコンピュータを結んだアルパネットとして出発した     インターネットは、現在利用者が6000万人といわれ、約8カ月ごと     に利用者が倍増している。     1994年WWWブラウザを開発したマーク・アンドリューセンに会い、     それまでインターネットがどういうものか、まだよく知らなかった時に、     インターネットに未来をみた私は、彼らとともに同年6月現在の会社を     スタートさせた。     約6カ月間で約1200万ドルの投資をし、1995年1月ようやく     ネットスケープナビゲータの出荷にこぎ着け、そして現在に至っている。     一方で、電気通信のインフラが今まで電話サービスのみだった、いわゆ     るボイスネットから、マルチメディア情報を扱うデータ通信、いわゆる     インターネットへと確実に移行している。     インターネットは、オンラインサービスなどを含む、あらゆる情報のイ     ンタラクティブなやり取りに適しており、今後さまざまな業界に影響を     及ぼしていくだろう。  (2)インターネットが及ぼす範囲とその影響    ・電気通信業界       〜先日アメリカで通信改革法案が成立したが、これにより通信と、        放送が相互参入し同じ土俵で競争することになる。        また一方で、電気通信がボイスのみからデータ通信(マルチメデ        ィア情報でボイスも含む)へと移行している。(前述のとおり)        世界的には2〜3兆ドル規模の巨大な業界がターゲットとなる        WWWの機能はさらに強化され、ボイスやビデオなどが取り込ま        れるだろう。    ・メディア産業(出版、放送、広告など)       〜インターネットでの情報発信(ニュース配信やオンライン出版な        ど)に必要なサーバ機用のソフトウエアを早くから提供し、イン        ターネットのコンテンツの広がりに貢献してきた。        今後は、水平型(汎用型)のサービスは減少し、限定された内容        に特化した垂直型のサービスが急増するだろう。    ・その他のジェネラルサービス(ニュース・旅行・銀行・金融など)       〜1994年6月にセキュリティ技術のライセンス契約をRSAと        結び、以後セキュリティシステムの利用と向上に努めてきた。        先日のマスターカードとビザの提携はセキュリティシステムの一        本化とオープン化において非常に重要な出来事である。ネットス        ケープとマスターカードの開発したシステムはオープンなものだ        が、ビザがマイクロソフトと開発したものはマイクロソフトのシ        ステム上でのみ扱える限定されたもので、銀行からも猛反発を受        けていた。今回のシステム統一により、その仕様は世界に対して        完全にオープンなものとなる。        これにより、今まで電話での申し込みや窓口で扱われたものが、        オンライントランザクション化されていくだろう。    ・ソフトウエア業界       〜サンマイクロシステムズの開発したJavaとネットスケープの        開発したJavaスクリプトは、ソフトウエアのあり方を変える        ものだ。今後ソフトを自分で持つ必要はなくなり、必要に応じて        ダウンロードすることになる。例えばコンテンツの中にアプリが        埋め込まれ、そのコンテンツ上で編集が可能になる。銀行の預金        管理などは、この技術を利用すれば顧客が窓口へわざわざ出向く        ことが無くなるため、店舗を持たない、いわゆるバーチャルバン        クが増えるだろう。    ・家電製品       〜テレビ、ゲーム機などに「WWWインターフェース」が取り込ま        れ、パソコンのようなキーボードではなく、リモコンなどで操作        することにより、オンデマンドサービスを受けられるようになる        だろう。             (3)現在のインターネットはイントラネット(後編でお届けします)  (4)今後の重点課題 (後編でお届けします)

  • 1996年2月17日・ジムクラーク氏の基調講演から(後編)
  •  幕張メッセで2月14日から開催されたオープンシステムズエキスポ’96、  ネットワークエキスポ’96(主催:日経BP社)と併催のオープンシステム  ネットワークフォーラム’96で、基調講演を行なった米ネットスケープコミ  ュニケーションズ社の会長であるジムHクラーク氏の講演内容から、その概要  を前編・後編に分けてお伝えします。  タイトル「インターネット・ビジネスの展望」(後編)  (3)現在のインターネットはイントラネット     実際のところ、インターネットは世間で騒がれているほど普及していな     い。ほとんどの人はインターネットへの接続方法を知らないのが実状だ。     接続サービスを実施している大手の企業でさえ、大きく宣伝してはいな     い。だから、ほとんどの人はインターネットに興味があってもどうすれ     ばよいのかも分からないし、どこに聞けばよいのかも知らない。     ネットスケープ社の年間8000万ドルの収益の内、その8割に当たる     約6400万ドルは企業からの収益である。これは企業内(ファイア     フォール内)でのインターネット利用であり、イントラネットと呼ばれ     ている。インターネットの普及により、社外での情報のやりとりを社内     とシームレスに行なうため、現在イントラネットが急速に拡大している。     ただ将来的には、先ほど述べたような一般のコンスーマへの普及が必ず     くると確信している。     企業内システムへのインターネットの影響は、「固有のシステムからの     脱却」という大きな流れを形成し始めている。今までは、あるシステム     を導入すると、そのシステムを入れ替えない限り、将来に渡ってそのシ     ステムに縛られるという状況が普通であった。     これからの流れは、固有の技術を用いず、社内外を問わない共通のシス     テムを利用することが重要になる。     ネットスケープ社の技術はオープンシステムでありスケーラブルなもの     である。従って、例えば暗号化技術も業界標準のものを用いることによ     り、他社製品と相互にやりとりができ、また途中でシステムを入れ替え     ることも可能で、決して他社製品をしめ出すものではない。このオープ     ンな戦略により、多くの企業で利用され始めている。     それに対してロータスノーツのような製品は固有の技術に縛られており、     他のシステムと情報交換ができない点でオープンシステムとはいえない。     またネットスケープ社のオープンなシステムは、ウィンドウズ95・     NTだけでなく、アップルのマッキントッシュやUNIXにも共通のシ     ステムを提供するオープンプラットホームなものであり、それぞれが重     要な市場であると考えている。     最近グループウエアの開発を手がけているコラボラ社を買収したが、コ     ラボラ社の技術をネットスケープの製品に取り込む予定である。ただし     オープンなシステムとすることに変わりはない。  (4)今後の重点課題     先ほども述べたとように、現在のインターネットはイントラネットであ     るが、将来は社会全体に影響を及ぼすようになる。インターネットは将     来のすべての進歩の基本となるもので、重要な現象であり重要な技術で     あると認識している。     ネットスケープ社は、世界共通の電気通信ソフトウエアを提供すること     により、それぞれの文化・国家を豊かに、そして強くしていくことをめ     ざしている。決して技術の進歩を妨げるものは提供しない。ただし世界     共通を考えた場合、各国の言語に対応することは重要である。特にアジ     ア圏については各国語の対応が今後の重要課題と考えている。     通信改革法案によりアメリカでは規制が大幅に緩和されることになった     が、文化・国家の強化のためには、競争力のある電気通信網が必要であ     る。それを考えた時に、日本の通信料金が米国の10倍もする点は大き     な問題である。     私は、ここへ来る前にアジア諸国をまわってきた。この後で大阪にも行     く予定になっているが、現在私はアジア圏のインターネット網の整備の     必要性を各電話会社に訴えているところだ。     インターネットは米国を中心に発展したため、米国内は比較的整備され     ている。ヨーロッパについても米国同様に整備が進んでいる。しかし、     アジア圏は各国がインターネットで直接結ばれていないため、例えばア     ジア圏内で電子メールのやりとりをする場合、データが米国を経由する     場合がある。大容量で安定した、そして最適なトラフィックを提供する     ためにも、早急の対応を望みたい。(終わり)


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