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なかみつ氏のコラム

「iMac」はケーブルネットに最適のコンピュータ(1998年9月2日)


8月29日の15:00に、アップルのコンシューマー向けパソコン「iMac」が日本で発売された。価格は、各販売店とも横並びの178,000円。当日の様子だけでも見ておこうと思い、秋葉原に着いたのは15:30過ぎ。秋葉原の駅を出てすぐに、iMacを載せたキャリーを引きずったカップルを発見。とにかく箱が大きい。最初にイケショップへ行くと、大勢の人が群がっており、購入の順番を待っている様子。まだ即日持ち帰りが可能のようだ。店内には数台のiMacが展示されているが、人が多くて近づけない。
続いてT-ZONE Apple館へ行くと、既に次回入荷分の予約受け付けになっていた。本当かよ!の一言。1階フロアをiMacのみの展示エリアにして、4-5台が並べられていたが、やっとの思いでマウスに触れることができた。iMacのマウスは丸形であるが、思ったよりは使いやすそうだ。iMacを横から見て、思ったよりも奥行きがあると感じた(iMacを机で使う場合は、机を壁に押しつけず、少し隙間をつくったほうがいいかもしれない。この奥行きだとiMacのキーボードの部分が、かなり前まで出てきてしまうかもしれないからだ)。
その後、さらにLAOXザ・コンピュータMAC館へ行くと、まだiMacの当日購入は可能であった。いったい何台入荷しているのかは不明であるが、各ショップの当日購入状況はまちまちのようだ。とにかくiMacを載せたキャリーを引いて歩いている人の多いこと。はっきり言って箱がとても大きいので、遠くからでもすぐに分かってしまう。
後日、大手ウェブサイトで調べてみると、各ショップとも数十台〜数百台の入荷分は、すべて当日で売り切ってしまったらしい。いくら安いとは言っても、178,000円のコンピュータが、こんなペースで売られてしまうのは異例の状況である。
資金はなかったが、あのとき買ってしまえばよかったと、後悔先に立たずの思いだった。

さて、本題に入ろう。「iMac」がケーブルインターネットに最適だという話。これを読んで、あなたもちょっと考えてみてください。

1.価格

178,000円で全てが揃っている点が魅力的だ。メモリは標準的な32MBなので、できれば増設したいところであるが、そのままでも使える。56kモデムが内蔵されているが、10/100Base-Tのイーサネットインタフェースを持っているのがうれしい。ケーブルモデムのインタフェースと同じなので、ケーブルさえあれば直ぐに接続可能だ。
ところで、パソコンと共に購入する周辺機器の代表格はやっぱりプリンターだろう。iMacはUSBポートのみなので、標準的なMac用プリンターは使えないが、10月頃から(遅くとも年末までには)iMac対応プリンターが発売されるだろう。プリンターは低価格化が進んでいるので、iMacとのセット購入でジャスト20万円程度も夢ではない。

2.大きさ

iMacは思ったよりも奥行きがあって、重さも約17kgと大きい。とは言っても、標準的なPCシステムを考えれば、遥かにコンパクトで、持ち運びの容易な構造になっている。外に持ち出すには無理があるが、家の中での移動はしやすいので、場所を選ばずに家族みんなで使えるのがいい。内蔵モニターは15インチであるが、解像度の調整が1024×768まで簡単に行なえるので不足感はない。奥行きが意外にあると言ったが、ケーブル類が側面から出るよう配慮されているので、iMacを壁などに目一杯押しつけて使うことも可能だ。従って、どちらかというと設置場所に柔軟なノート型に近い使い方が可能であろう。

3.ネット接続が容易

イーサネットが標準で内蔵されているので、物理的にはケーブルモデムとiMacを10Base-TのUTPケーブルで繋ぐだけ(内蔵モデムの場合は、通常通り電話線をiMacに差し込むだけ)。
ソフトウェアの設定も簡単で、コントロールパネル内のTCP/IPアイコンを開いて必要な項目に入力するだけだ。Windows95/98のように複数の設定が必要なわけではなく、また設定後に「再起動」する必要もないので、間違っても何度でも素早くトライできる。これらはアップルのネットワーク技術「OPEN TRANSPORT」によってもたらされているが、非常によくできたソフトウェアだ。
設定が完了すれば、iMacにはNetscape NavigatorとInternet Explorerの両方がインストールされているので、好みのソフトウェアでウェブブラウズが楽しめる。また、メールについては、PostPet(簡易版)が入っているので、これを使うのも手だ。iMacは4GBのハードディスク容量を持つが、フロッピードライブがない。よって、データ・バックアップの手段としては、外付けフロッピードライブなどの外部記憶装置を別途購入する必要があるわけであるが、ケーブルインターネットのユーザ・ホームページ開設用サーバ容量貸しサービスを利用すると、ネットワークを介したデータのバックアップが可能だ。(ただし、サーバ利用料は各ケーブルテレビ会社でまちまちであり、それほど安くないかもしれないが)

4.将来性のあるハードウェア仕様
「iMac」の心臓部(MPU)は、PowerPC750(通称G3)233MHzとバックサイドキャッシュ512Kの組み合わせ。IntelのPentium IIシステムと、基本的にはキャッシュの使い方が同じ、非常に高速なシステムである。米AppleはPowerPC750 233MHzの「iMac」がPentium II 400MHzのPCの性能を上回ると宣伝しているが、米PC MAGAZINE誌は誇大広告と評している。MPU単体の性能ではなく、PCシステムとして評価すべきだ、との言い分だ。私も米Appleの主張には無理があると考えているが、ただ、そのような比較がされてしまうところが面白いではないか。MPU単体では、確かに優れているのだから。
「Macはよくシステムがダウンする」といわれているが、その状況も徐々に改善されつつある。米国ではこの9月にも、現行OSであるMacOS8.1のメジャーバージョンアップ「MacOS 8.5」がリリースされる。さらなる安定性と高速性がもたらされ、画面の雰囲気が替えられるなど、遊び心も満載だ。さらに、来年秋には全く新しいOSであるMacOS X(テン)がリリースされることになっているが、このOSは「iMac」のMPUをサポートしている。MacOS Xは簡単に言えば、土台には頑丈なUNIX(正確にはMachとよぶマイクロカーネル)を用い、GUIにはMacOSのルックアンドフィールを用いたOSで、最終的に生き残るとされるAppleのOSである。このMacOS Xが「iMac」をサポートしているというのは(既Macユーザでなければ知らないことかもしれないが)Appleの戦略としても「iMac」ユーザにとっても好ましいことだ。

5.欲をいえば?

「iMac」に似合うOSは、日本でも10月にはリリースされる「MacOS 8.5」だと思う(当面は)。画面の雰囲気(同社ではデスクトップ・テーマと呼んでいる)が替えられたり、ネットワーク性能が向上して、検索など操作の対象がネットワークまでシームレスに扱えるようになる。インターネットに常時接続していれば、タイムサーバを利用してiMacの内部時計を自動補正する機能なども盛り込まれている。だから、できることなら「iMac」ユーザにはMacOS 8.5の無償バージョンアップサービスを提供してほしい。アップルの商売の下手な点は、こういうOSの部分での効果的な宣伝・告知がなされないことだ。新規のユーザ獲得を狙ったiMacなのだから、Macを知らない人々に、上手に伝えてあげてくださいよ、アップルさん。


(この項おわり/なかみつ)


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