Sub Title

スペシャルレポート

ケーブルテレビ 2000総合展示会特集(6月25日更新)


 国内では唯一かつ最大のケーブルテレビ関連の展示会であるケーブルテレビ 2000(以下ケーブル2000)が、『新世紀への夢がふくらむケーブルテレビ』をテーマに、(社)日本ケーブルテレビ連盟/(社)日本CATV技術協会/ケーブルテレビ番組供給者協議会の主催で、2000 年6月14〜16日まで池袋サンシャインシティ(ワールドインポートマート4F、文化会館3F・4F)で開催された。関連機器、機材を展示するハードウェアゾーン、CS系の各種番組やプログラムを紹介するソフトウェアゾーン、さらに2000年12月より開始予定のBSデジタル放送を紹介するBSデジタルコーナーなど、あわせて153社の出展による総合的な展示が行なわれた。昨年のケーブルテレビ'99の出展者数が126社であったわけだから、明らかに規模は拡大しており、聞くところによると来場者もかなり増えたようだ。

 ということで私は初日に足を運んだわけが、今回の注目は「BSデジタル」と「VoIP(IP電話)」である。BSデジタルは言うまでもないが、昨年まで展示の中心であったケーブルモデムシステムは、どちらかというと脇役に回っている。『ケーブルインターネット』というインフラが整いつつある中で、ビジネスのpoint of viewが次のステップに移ろうとしているのだ。そのような中で以前から注目され、また企業向け(BtoB)などでは導入が進んでいる『VoIP』いわゆる『IP電話』に、コンテンツビジネスなどと並んで、BtoCソリューションとしての関心が集まっている。VoIPソリューションがこれだけ目立ってきているのは、ブロードバンド・ネットサービスとしての『ケーブルインターネット』が、明らかに普及期に入ったことを裏付けるものである。

 まず注目の『IP電話』では、ケーブルモデムに接続して利用する電話アダプタの展示が目立った。いくつかのブースで見られたのは、H.323準拠の沖電気(OKI)の「VoIP-TA Internet Telephony Adapter」。ケーブルモデムとアダプタを1対1で接続し、アダプタに電話機とパソコンを接続することで、IP網を介したIP電話が実現するものであり、もちろんパソコンとの同時利用も可能だ。ただし、現行ケーブルモデムシステムでのQoSが十分ではないため、ネットワークのトラフィック状態によっては通話が途切れることもあるのが現状だ。Panasonicも同様に、IP電話/IP FAXを実現する「IP-BOX」を参考出展した。やはりH.323準拠であるが、こちらは電話機/FAX機のみの接続が可能になっている。少し変わったところでは、関電工のブースで展示されていた大井電気製の「インターネット電話アダプタ」が面白い。複雑なH.323に対して、音声通話に特化して必要な部分のみで構成された新しいプロトコル「NOTASIP」(ノタシップ)を採用しており、アダプタ内に電話帳データを登録することができるようになっている。実際に通話を試してみたが、残念ながら音声品質は決してよいと言えるものではなかった。今後に期待したいところだ。またアダプタ型ではない製品として、インターネットテレコムのブースで、イスラエルALTEL社のIP電話機「AL_PHONE」が展示されていた。AL_PHONEは、ケーブルモデムと直接接続する電話機で、ネットワーク情報を電話機に直接設定して、IP電話を実現する。H.323ではなく独自のプロトコルを用いており、音声品質はまあまあである。そのほか富士通は、簡単な操作でインターネットWebアクセスやE-mailを利用できるタッチパネルディスプレイ付きのIP電話機「Web Phone」を出展していた。

 一方で、ケーブルモデムの動向に目を向けると、2000年秋にはDOCSIS1.1仕様が固まるようであるが、製品の本格的な出荷は年内は難しく、早くても2001年春以降と見られており、国内のDOCSISモデムの本格的な普及は2001年以降になりそうだ。とはいえDOCSISモデムの開発は国内でも進んでおり、昨年まで独自仕様だったパイオニアもDOCSIS1.1モデム「BT-M700」を出展した。コンパクトな筐体で、10Base-Tに加えてUSBインタフェースも搭載し、発売は2000年9月とのことだ。そのほかNECもDOCSIS1.1準拠のケーブルモデムシステム「CM5520」(暫定版)を出展し、富士通もDOCSIS1.1にソフトウェアアップグレード可能なDOCSIS1.0モデムを展示した。
少し面白い製品では、愛知電子が集合住宅対策向けに、棟内のみで完結するケーブルモデムシステムを展示していた。これは、集合住宅の共用部にケーブルモデムを設置して、いったん10BASE-Tにした後で再び小型のセンターモデム「ヘッドエンド・リンク・コントローラ」に接続し、このセンターモデムと各戸のケーブルモデムとの間で棟内通信システムを形成するのである。センターモデムは棟内ブースタ程度の大きさであり、方式は独自方式のようで通信速度は、4Mbps(MAX)である。同システムの価格について説明員に聞いてみたところ、「HomePNAや周波数変換システムが競合です」とのことだった。
日本アンテナの無線インターネットアクセスシステム「HRC(Hybrid Radio Coax)システムNRC-2400AP」も目を引いた。見た目は幹線アンプそのものであるが、その筐体の中にDOCSIS1.0ケーブルモデムと2.4GHz無線システムを搭載して親機として機能するものである。見通しのよい電柱上に設置でき、また電源は幹線から供給されるので、ケーブル事業者にとっては設置場所に悩む必要がない大きなメリットが得られる。一方の子機にあたるWireless IP Router「RTB2400/ID」は、窓などに張り付ける延長アンテナを備えたボックスで、家庭内LANやSOHO-LANがネット接続可能なルータとして機能する。2.4GHz無線システムの場合は、親機・子機間の見通しなど条件が厳しい場合はあるものの、集合住宅への供給が可能な場所が確保できれば、導入工事は「時間」「コスト」ともに大幅に圧縮できる可能性を秘めている。
モトローラのブースで展示されていたGIのコミュニケーションゲートウェイ「CentriQ-1000」は、ブースタボックスに包まれた、DOCSIS1.1ケーブルモデム機能とVoIP機能を備えたPACKET CABLE準拠のゲートウェイ機器である。「CentriQ-1000」は、基本的には集合住宅の共用部等に設置するものであるが、電源を外部(伝送路側)から受けることも可能である。VoIP機能としては、ボックス内部にネジ式ターミナルストリップとRJ-11ポート(4個)を備え、既設MDF/IDFに接続することでVoIP電話サービスが可能だ。またIPサービスでは、ケーブルモデムがボックス内に1台しかないため、HUBを介した各戸への10BASE-T配線供給になる。従って、各戸間のセキュリティは確保できない。
海外製のケーブルモデムは、特にDOCSIS化が進んでおり、モトローラ、GI、ノーテル、COM21、3Comなど多数の展示が見られた。その中で、独自仕様でQoSを実現している業界3位のCOM21は、昨年発表したSOHO型モデム「ComPORT5000」のDOCSIS版「DOXport5020」を出展し、多くのブースでその展示が見られた。ただ内容的には、4ポートHUB内蔵、NAT/DHCP機能、ファイアウォール機能、64ユーザサポートなど、「ComPORT5000」との違いはDOCSIS準拠ということ以外は見られない。 

 「インターネット・アプライアンス」なる製品は、今までにもいくつかあったが、無線の世界ならiモード端末の爆発的なヒットが記憶に新しいものの、有線の世界ではナロー/ブロードバンドともにぱっとしないのが現状だ。セガは、かねてからアナウンスしていた10/100BASEのイーサネットモジュール「ブロードバンドアダプタ」を正式に発表し、家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」をブロードバンド・インターネット・アプライアンスとして推進していくことになった。これにより、既にドリキャスを持っている人ならば8,800円で、新規であってもドリキャスとのセットで3万円内でケーブルインターネット対応の端末が手に入る。使いやすさという点では好みの分かれるところであるが、ゲーム機なので、ハングアップすれば電源を入れ直せばいいなど、基本的にはメンテナンスフリーなところがいい。ゲーム機戦略としては、年末から2001年春にはソニーが「プレステ2」で、2001年秋にはマイクロソフトが「X-BOX」での参入を予定している。リビングルームのTVを占有できることからも、ある意味ではゲーム機によるブロードバンドネット戦略が今後数年のトレンドになるかもしれない。しかし、ゲーム機が家庭のゲートウェイサーバにまで成長できるかどうかは現状では疑問であり、当面はネットゲームコンテンツ等の充実に期待したいところだ。

 「ケーブルインターネット」インフラでサービスを展開するアットホームジャパンの「@NetHOME」は、展示会会期中の2000年6月15日に正式にサービスを開始した。注目は「バックボーンネットワーク」と「コンテンツ」であるが、コンテンツについては評価の難しいところである。高速性を生かしたニュース、料理レシピなどの動画クリップ等が充実しているようだが、決して新しい試みではない。むしろ@NetHOMEの魅力は、効率的な負荷分散を狙ったRDC(リージョナルデータセンター)と各ケーブルテレビ局設備の24時間監視も含めたNOCにあるといえる。

 BSデジタル放送では、BSデジタルコーナーに8放送事業者(NHK、BS-i、BSジャパン、BS朝日、BS日テレ、BSフジ、デジタルWOWOW、スターチャンネル)が集い、2000年5月のBSデジタルフェア同様にコンテンツ系の紹介がなされていたが、気になるハードウェア側は、松下やNEC、パイオニア、ソニーなどがケーブルテレビ対応のBSデジタルチューナ(STB)を展示していた。松下のブースでは、BSデジタル放送で実際にTVリモコンを使って、TVのクイズ番組に参加する双方向サービスのデモが実演されていた。一般にケーブルテレビ対応BSデジタルチューナは、BSデジタル放送のみを受信するチューナなので、既存のアナログ放送用ホームターミナル(以下、HT)と併用する場合は、当然ではあるが、並べて使うことになる。
放送局側の受信器・変調器も多くのブースで展示されていたが、日通機(Nitsuki)では、BSデジタルのアナログ再送信/周波数変換によるパススルー方式/64QAMトランスモジュレーション/64QAMリ・マックス方式のフルラインナップで展示していた。
BN/MUXのブースでは、1Hサイズ(JIS19インチ)で、BSデジタル信号の1トラポン分(2放送局分)を処理できるBS/CトランスモジュレータDTM-1300(住友電工製)が参考出展されており、放送機器の小型化も順調に進んでいるようだ。チャンネル数の増加とともに放送センタースペースが減少するわけだから、放送事業者側としてはありがたい話である。
NHKのブースでは、BSデジタル放送に関するケーブル事業者側の再送信方式として「A方式:パススルー方式」「B方式:トランスモジュレーション方式」の2方式を大々的に紹介していたが、ケーブル事業者が今後CASの扱いをどうするかによって、どちらの方式も将来的に大きな追加投資を必要とする可能性があるため、採用については判断の難しいところである。事業者側の立場にある私としても「CAS」は、ケーブル事業者側で容易に管理ができる仕組みがほしい。 

なお、以下に各ブースで展示されていた製品等のデジカメ画像を示す。(各画像は160×120で表示しているが、実サイズは320×240のJPEGファイルとなっている)

次回の更新では、ケーブルインターネットを補完するシステムについて、情報を追加する予定である。

フジクラブース[DOCSISモデムFCM-110Rと沖電気製VoIP-TA]

フジクラブース[DOCSISモデムDOXport5120]

ミハルブース[BSデジタル・トランスモジュレータ]

NHKブース[B方式:トランスモジュレーション方式を紹介]

NHKブース[A方式:パススルー方式を紹介]

OCCブース[HomePNAシステム]

モトローラブース[コミュニケーションゲートウェイCentriQ-1000]

古河電工ブース[COM21社製ケーブルモデム]

TUTシステムブース[HomePNAシステム]

日通機ブース[64QAMトランスモジュレーション方式のBSデジタルシステム]

日本アンテナブース[HRCシステム「NRC-2400AP」]

日本アンテナブース[Wireless IP Router「RTB2400/ID」]

Panasonicブース[VoIP端末IP-BOX]

Panasonicブース[ケーブルテレビ用BSデジタルSTB]

マスプロブース[宅内情報盤+情報コンセント]

NECブース[ケーブルテレビ用BSデジタルSTB]

NECブース[IPインフラストラクチャサーバ「ゲートキーパー」]

パイオニアブース[DOCSISモデムBT-M700]

パイオニアブース[双方向デジタルSTB BD-V2T]

パイオニアブース[双方向デジタルSTB BD-V2T]

伊藤忠ブース[COM21社製センターモデムDOXController]

伊藤忠ブース[COM21社製センターモデムDOXController]

関電工ブース[インターネット電話アダプタ]

(この項つづく/なかみつ)


CableTV Directory+ Sub Title

Back