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アップル・ウォッチ

1997年5月7日・ケーブルテレビにとってのピピン


「ケーブルテレビでインターネットも利用できます!」

今ケーブルテレビ会社が躍起になって実用化を目指しているのが、ケーブルテレビで既に敷設されている各家庭までの伝送路を、インターネット接続にも利用してもらおうという、新しいデータ通信ビジネスだ。現在国内で事業化しているケーブルテレビ会社は、武蔵野三鷹ケーブルテレビとケーブルテレビ四日市の2社である。

ケーブルテレビの線(同軸ケーブル)をそのまま利用するので、当然のことながらNTTの電話料金はかからない。また、電話回線での接続(ダイアルアップ接続)のように電話をかけるという動作が発生しないので、専用線のような「つないだまま」の状態を味わえるのも特徴の一つとなっている。
ケーブルテレビを利用したインターネット接続(以後ケーブルインターネットという)では、専用の通信用モデムを必要とする。このモデムは一般に「ケーブルモデム」と呼ばれ、通常のモデムをふた回りほど大きくしたようなものだ。ケーブルモデムは、同軸ケーブルと10Base-Tの2つのインターフェースを持っている。同軸ケーブル用端子は、屋外から入ってくる同軸ケーブルを接続する部分で、10Base-TのRJ45モジュラー端子はパソコンなどのインターネット用端末と接続するためのものである。
通信速度(容量)に関してはユニークだ。初期のケーブルモデムは数メガ〜10メガビット毎秒の帯域幅を持つという点で話題になったが、現在は、上りと下り(送信と受信)の通信速度が異なる、いわゆる 非対称型のシステムが主流となっている。なお、ダイアルアップ接続や企業などの専用線接続は、上り下り共に同一の通信速度であるため、非対称型に対して「対称型システム」と呼べる。非対称型システムでは、下りの通信速度が30メガビット毎秒に達するものもあり、現在のダイアルアップ接続とは比べものにならない帯域幅が、一般の家庭でも利用できる時代がすぐそこまで来ているのである。

とても前置きが長くなったが、今回はピピンの話である。なぜくどくどとこんな長い話をするのか?
昨年末から今年の3月末まで、江東ケーブルテレビでは、上り下りとも4メガビット毎秒の対称型ケーブルモデムを使った、インターネット接続実験を実施した。この実験に先立ち、一般モニタの募集をしたところ、応募した人の3分の1はアップルのユーザで、メーカ別でもトップであった。残りの3分の2は、PC98とDOS/Vのウィンドウズ・ユーザで占められたわけだから、OSの比率ではウィンドウズが2倍と有利な状況である。
重要な話はここからだ。この実験では、ケーブルモデムからパソコン(以後PC)へのイーサネット・ボードの取り付け・設定まで、すべて無料で行なった。当然デスクトップPCもあれば、ノートPCもあるし、Macもあればウィンドウズ(PC98もDOS/V)もある。実験終了間近に、モニタを対象にアンケート調査を行ない、「パソコンへのボード取り付け・設定が自分でできるか?」という質問に対して、興味ある結果が得られた。MacOSのユーザは全員ができる、と答えたのに対し、ウィンドウズ・ユーザは半数以上の人が難しい、と答えている。その理由は、ウィンドウズのオールインワンPCへのイーサネットボード取り付け・設定が容易ではないからだ。プラグ・アンド・プレイが通るのは極まれで、中にはプラグ・アンド・プレイを強制的にOFFにしないと、セットアップできない機種もあった。現状ではオールインワンPCに対してメーカ自身が、ネットワークでの使用、すなわちイーサネットボードの使用をサポート外にしているため、仕方がないところでもある。
とはいえ、そんな問題とは無縁のMacユーザを多く見せられて、PCの在り方を考えざるを得なくなったのだ。

TCP/IPによる通信は、従来個別に提供されてきた地域の情報システム(遠隔医療や自動検針、防災情報ネットなど)を、すべて置き換えるだけの能力がある。ケーブルテレビは地域の情報ネットだから、当然われわれは、行政情報などを含めたあらゆる情報とサービスを、一元的に全家庭に提供できたら、と考える。ただ、この情報端末として現状のPCは、あまりにも役立たずなのである。

そこで、小さな子どもからお年寄りまで、すべての層に使ってもらえる情報端末、その1つの回答としてアップルコンピュータがバンダイ・ディジタル・エンタテイメント(BDE)にライセンスしているピピン@マークを、再考してみようというのが今回のテーマである。

今もなお続く、PCアーキテクチャとMPUのクロック戦争の中で、決して欲張った性能を持っているピピンではないが、CD-ROMのみでブートさせる、信頼性と設定の容易さが、万人に使い易さを提供できるハードウェアに仕上がっているのである。
以降では、ピピンのスペックと可能性、およびいくつかの問題点について述べ、最後にはJava端末やネットワーク・コンピュータ(NC)にも触れたい。


(この項つづく/Mike)


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