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西欧中世聖堂建築の見方――その象徴的意味

第8回講演会  1999年1月21日(木)
西欧中世聖堂建築の見方――その象徴的意味  武蔵野美術大学教授  馬杉 宗夫

西欧中世の聖堂建築は、人々が祈るための空間である。その一般的なプラン(平面図)はラテン十字型であり、それは、キリストが十字架刑にあったときの姿を写したものと言われている。それゆえ、聖堂建築は、キリスト自身である「神の国」を象徴化したものと言える。そして、聖堂建築を飾る彫刻や絵画は、この「神の国」を演出するために奉仕したのである。

 紀元千年を境に誕生したロマネスク美術と共に、聖堂入口(扉口)を飾る大彫刻(キリスト像)が復活してくる。しかし、キリスト教的世界観が、聖堂の中で体系的に表明されてくるのは、一三世紀のゴシック大聖堂時代を待たねばならない。まず大聖堂(カテドラル)は、方向の象徴性を持っている。キリストの頭部に当たる祭室の部分は、太陽が昇る東側に向けられ、西側に入口(扉口)が置かれる。十字架の左右の枝の部分にあたる南・北の袖廊にも、扉口が作られる。そして、これらの三つの扉口の上部には、円いバラ窓が君臨している。光の貧しい北側には、キリスト誕生に至るまでの『旧約聖書』伝、光に満ちた南側には、キリスト誕生以降の『新約聖書』伝、そして太陽の沈む西側には、世の終末を告げる「最後の審判」が表現される。すなわち、大聖堂は、キリスト教の過去(旧約)、現在(新約)、未来(最後の審判と新しいエルサレムの創造)を、三つの扉口で表現している。そして三つは相まって、永遠の真理、すなわちキリスト自身であるロゴスを象徴化しているのである。そして、これが完全な形で表現されているのは、シャルトル大聖堂の北・南・西側の三つのバラ窓においてである。

武蔵野美術大学教授
馬杉 宗夫

(文責・馬杉)


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