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中世のパリ・今日のパリ

藤川 徹
1998年5月29日(金曜日)

 近・現代史のパリはいつも写真集や雑誌、あるいはフィルム(映像)のなかに生彩な都市の容貌を覗かせ、その豊富な話題は尽きない。また、都市工学(アーバン・デザイン)や建築学においても、パリという都市の空間は貴重でかつ興味深いテキストであろう。しかしそこでは、中世パリは整序化されたオスマンの大改造計画や威風堂々たるグランドマナーの都市計画の、あるいはフランス革命の色褪せた遠景として僅かに断片的に描かれているにすぎない。だが、現在のパリもまた遠く中世パリを原核として幾度も整形されつつ連綿として発展してきた都市である。文化・行政・社会の諸領域でもさまざまな秀れた遺産を中世パリから継承する歴史都市なのである。
 報告者は今日、世界でもなお一層の都市生命力をみなぎらせ、世界史の舞台においても数多な情報発信を提供する世界都市パリの<中世的起源>を歴史の連続性という認識のもとに構造的に都市史像を描いてみようと試みた次第である。(le 29/5/'98 par T. Fujikawa)
   <FLUCTUAT NEC MERGITUR>

 尚、当日は報告ののち、1)筆宝先生より「近代」の組合 corporation の活動理念などに中世的な<諸団体>の理念の通底が確認されるかどうかとの御質問を受けた。E. Coornaert などの "le systeme corporatif" などの研究を通じて改めて検討させていただきたい。2)岡田女史より「善き都市」la bonne Ville 「開放都市」「国王都市」などと称される都市の概念に関するご質問を頂いた。これに関しては Manduech の論文(Annales E.S.C. 1972)を引用してお答えしておいたが、更なる精密な証明を必要とするであろう。3)吉武さんよりは中世的団体の諸特権が国家(フランス王権)の拡大のプロセスの中で、他の身分的なあるいは地縁的な団体とともに国家を形成する「社団」として国家の内部に編入されてゆく事情をお答えしておいた。
P.S. 日仏会館図書室の大きな硝子窓と高いシーリング、昏れてゆく周囲の情景を視認しつつ静謐な時間を過ごさせて頂けたこと、日仏会館図書室・友の会の皆さまに只々、感謝申し上げたい。「市中の閑居」とはこのような「場」のことか? スライドが逆さまになって参加の皆さまには大変失礼申しました。

(文責・藤川 徹)


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