満月は丁度太陽の反対側に見えます。太陽が西に沈むとき、満月は東から昇ります。
満月が西に沈むとき、太陽は東から昇ります。冬の太陽は低いですが、冬の満月は頭の真上近くまで高く上ります。
夏の太陽は高いですが、夏の満月はとても低く赤く見えます。この赤い満月を見ると余計に暑さを感じますね。
ところが今年の夏は特別でいつもの年よりいっそう低く見えるのです。
太陽の天球に対する見かけの通り道を黄道(こうどう)といいます。
月の天球に対する見かけの通り道を白道(はくどう)といいます。
黄道と白道はほぼ一致しているのですが、わずかに5.1度傾いているのです。
この傾きがいたずらをするのです。
地球上の位置を表すのに経度と緯度が使われますが、
天球上の位置を表すのには同様に赤経、赤緯というものが使われます。
赤緯は天の赤道を0度として、北側は+、南側は−で表します。
黄道は赤道に対して23.4度傾いています。つまり、地軸が地球の軌道面の垂線に対して23.4度傾いています。
このため、夏至のころの太陽が一番北に来たときの赤緯は+23.4となります。
逆に冬至のころの太陽が一番南に来たときの赤緯は−23.4度となります。
地平線からの角度を高度といいます。地平線が0度で、頭の真上が90度です。
天体が真南を通過するときの高度を南中高度といいます。
丁度その土地の緯度に等しい赤緯の天体の南中高度が90度となります。
東京の緯度は北緯約36度ですから、赤緯約+36度の天体が真上を通ります。
こと座の1等星ベガなどはほぼ真上を通ります。
このことから夏至の日の太陽の南中高度は東京で77.8度、冬至の日では31.0度と計算できます。
図を描けば簡単にわかりますので、確かめてみてください。
さて、本題に戻ります。先ほど白道は黄道に対して5.1度傾いているといいましたが、
このため月が最も高く見えるときの南中高度は82.9度、逆に最も低く見えるときの南中高度は25.9度
ということになります。今年2006年の6月や7月の満月は最も低く見える時期にあたるのです。
南中高度が低いということは月の出ている時間も短いということです。
例えば、2006年7月11日の満月は東京では19時32分に出て、翌日3時59分に沈みます。
約8時間半しか見えていないことになります。
この黄道と白道の5.1度の傾きは一定ですが、交点の方向が約18.6年の周期で回転しているのです。
交点は2つありますが、南から北に横切る交点を昇交点(しょうこうてん)といいます。
今年2006年6月にこの昇交点が丁度、春分点の方向に重なります。
つまり、黄道が北に位置するところでは白道はより北に、
黄道が南に位置するところでは白道はより南に位置するわけです。
こうして今年の夏の満月はとりわけ低く見えるのです。
18.6年周期の約半分の9年後(2015年)には夏の満月でも今年より約10度高く見えることになります。