天空の城
1:はじまり
「お、いたいた。探したんだぜぃ。長老さまがおまえにあいたいってさ。」
PC内のひとり(だれでもいい、できれば種族が人間以外、以降A)に出身部族からやってきた男が接触します。
男はAの昔からの知り合いです。もちろん本人なので、魔法や尋問などもきちんとクリアします。
彼は長老が君にあいたがっていることを伝えます。そして長老が病気の治療のためにこの近くの町に滞在しており、危険な状態にあることも言います。長老はAに頼みがあるそうです。
PCたちがぐずぐずしているようなら長老の病気がはかばかしくないことを強調してください。
男は長老のところまでAを案内します。他のPCはAの仲間扱いで一緒に通されます。
長老はベッドに寝たきりです。Aにむかって以下のことを語ります。
「おまえは若いときのわしにそっくりだのう。わしも若いときはいろんなところをうろついたもんだが、今となってはこのていたらくじゃ。若いときの始末をつけたいのだが体が動かん。ちょいとたのまれてくれんか?」
「ここに水晶細工の像がある。これをアル・ジェラートという街にとどけて欲しいのじゃ。これはおまえにしか頼めん。引き受けてくれないか?」
見ると、ベッドサイドのサイドテーブルに天使の水晶細工があります。それには翼が6枚あります。
依頼はそれだけです。PCたちがいろいろ尋ねても、
「行けば自然と解る。おまえが感じるままに動け。」
としか言いません。旅費は渡されます。
アル・ジェラートは砂漠の外縁部にある街。岩山が砂を押さえ水をささえるため、砂漠越えをする商人が集まるにぎやかな街。砂漠をこえたところには大帝国があり、特産の香辛料や金銀細工、絹織物などが取引されています。
2:砂漠の街
「あの街はいま、サイラ教の教えとやらで異種族は風当たりが強いんだ。人間どうしでも民族がどうこうともめてるんだ。」
アル・ジェラートのそばの村(そこまではなにも起きない。)で宿をとると、ドワーフのマスターがそういいます。
サイラ教はこのあたりで多く広まっていますが普通はそこまで過激でなく、”信じればいつか砂漠にも花は咲く”といった穏やかな宗教ですが、アル・ジェラートには過激派が集まっているようです。
アル・ジェラートは中東風の街を描写してください。ターバンをしていたり、サリーのような着物など。
街は活気に満ちあふれています。ドワーフのマスターがいっていたようなことが嘘のように、PCたちにも
露店の売り子からかけ声がとびます。
しばらくはお祭りのような町並みを描写してください。
PCが街になれたころ、黒づくめの男が何人もやってきて広場の真ん中に立て札をたてます。
周りの人に聞けば彼らがサイラ教の過激派だとわかります。
彼らは立て札をたてるとさっさとどこかにいきます。
立て札には、「岩山に住む翼人どもは、風を使い、砂嵐をおこす悪魔である。翼一枚につき賞金をかける。神殿までもってこられたし。」と記してあります。
夜、宿屋ではその話題で持ちきりです。もし、PCが像について尋ねる、もしくは見せるなどしたら客に止められます。過激派にみつかったらまずいといいます。
過激派は翼をもつものを嫌っているそうです。
3:翼人
「おまえらごときがサイラ神のお役にたてるのだ。ありがたく思え。」
翌朝、黒づくめが何人もやってきます。
彼らはPCを雇おうといいます。そして、もし断るならこの街から出ていってもらおうとも言います。
依頼は、いずれ攻め入るために、翼人の住む岩山周辺の地図を作ってこいというものです。
もちろんPCたちだけでなく、戦闘能力のありそうな冒険者はみな動員されています。ぜんぶで4パーティほどです。
そこそこの賃金はもらえます。岩山にモンスターが潜んでいることも忠告してくれます。ただし、異民族相手では小馬鹿にした感じです。
冒険者たちは手分けして岩山の捜索を命令されます。
岩山のぼりはロープなどを使いますが、基本的な装備は貸与されますし、険しいところ以外はファンブル以外で登れます。
ルール的には険しいところ(盗賊、狩人ならファンブル以外、他は5割成功くらい)が1−2カ所、ファンブル以外が3−4カ所、戦闘の軽いシステムなら戦闘も混ぜます。
しばらく進んでいくと、岩山のかなり上のほうに翼人の姿が見えます。
風が吹いていたり、距離が遠かったりと魔法などの攻撃が届かないようにしてください。
翼人はすぐ姿を消し、何人かの仲間を連れてきます。
そして遠くから「あんたはリーレル(長老の名)さんの知り合いなのか?」とAにむかって尋ねてきます。もちろん魔法で。
PCたちが変なことをしないようなら翼人たちは近寄ってきてPCたちを歓迎します。
むかし、この翼人の部族はリーレルに世話になったことがありそのとき天使の水晶像を渡したのです。
翼人たちはPCたちを族長のところへ連れていってくれます。空を運んでくれます。
族長の洞窟には、リーレルの絵(PCのAにそっくり) が飾られている。
族長たちは過激派が攻めてくるのをどう防ぐかを議論していました。
PCたちはリーレルの再来ということで大歓迎されます。
4:翼人の遺跡
歓迎会の途中で翼人のひとりがリーレルの謎のことを言います。
この近くの洞窟の奥に翼人の遺跡があり、リーレルはかつてここに来たときにメモを残していったそうです。
翼人たちはそのメモを石碑に刻んで遺跡においてあるそうです。
かつては気にもとめなかった翼人たちはいま、窮状を打開するものではないかと、その遺跡のリーレルのメモの謎を解いて欲しいとPCたちにもちかけます。
メモは文字ではないので、できれば遺跡にいって欲しいそうです。
翼人の遺跡は洞窟の奥に祭壇と壁画があるだけというさっぱりしたものです。
翼人たちは昔、風の神をここで祭っていたそうです。風の吹く方角が変わった今は神棚を移動させ、他の場所で祭事を行っているので翼人はとくに神聖な場所とは感じていません。
リーレルのメモは種族語の身振りをデフォルメしたようなもので、PCのAならあっさり理解できます。
イメージとしては、ブロックサインです。
内容は、遺跡、宝、奥、入り口、机(みたいなもの)、飾り?
(遺跡にはもっと奥がありそうだな。祭壇(机)が動くみたいだが、飾りがカギだろうか?)
祭壇には彫り物の飾りがついており、よく調べると動く部分があります。動かすと祭壇がスライドし、下に向かう階段が現れます。
翼人の族長はPCにここを調査することを依頼します。翼人にとってリーレルは種族を越えた英雄なので、Aが祭壇の秘密を解いたことも、Aがこの時期に現れたこともリーレルの策だと信じています。そして、Aとその仲間が翼人の窮地を救うため、リーレルがこさせたと思っています。翼人から風の神の神官のパルックという女性がついてきます。
遺跡内部の地図はこちらです。
パルックは神官系の魔法と風の精霊魔法を使えます。レベルはPCと同じくらいです。
ここで、PCが素直に祭壇に潜ってくれればありがたいのですが、人によっては翼人からなんらかの報酬をねだってくるかもしれません。私はこういうPLの方が好きなので、対応として、
Aにリーレルから「困ったときに開け」と封筒を3つもらったことにしました。
そして開いた場所によって内容を変えて助言しました。
街でだれに像をわたせばよいかわからないときは、封筒の中の紙に”探しまくれ”、
この洞窟のシーンでは”絶対入れ”としました。
遺跡内部説明:
入り口:祭壇からは、じめじめとした階段が上へと続いています。階段の壁には翼が6枚ある天使が優雅に空を舞っている姿が記されています。
ここで天井から巨大ナメクジが襲ってきます。(戦闘が軽い場合)
部屋A:この部屋は床に水がたまっています。深さは普通の人間でひざくらいです。
水は濁っていてよく見えません。
この部屋をわたろうとするなら、幸運でチェックして下さい。ところどころに深い穴があいており、なかにはヒルがうようよいます。
部屋B:この部屋は奥に階段があるだけです。
階段は、途中で段がひとつだけ赤く塗られています。ひとつひとつの段は奥行き60cmくらいです。
実は赤く塗られた段の次の段がトラップになっており、赤い段をジャンプして防御姿勢が崩れたところに
毒矢が飛んできます。
部屋C:この部屋には薬瓶のたながあります。
どんな薬があるかは各GMが決めてください。
部屋D:かべにおおきな穴があいており、強い風が吹き抜けています。
風がつよいハウリングを起こしています。
体力ロールをして下さい。重いものや表面積のちいさなものはボーナスをあげて下さい。
部屋E:この部屋にはとくに何もありませんが、部屋Dのほうからおおきなうなり声のような音が伝わってきます。
この部屋から部屋Dに向かう通路は上り坂になっています。
部屋F:この部屋には音があふれています。
ネズミがはい回るような音、川のせせらぎ、木が風になびく音、動物の吠え声、ありとあらゆる音があります。
かわりに、光りがいっさいありません。ランタンや魔法でもこの中に光を入れることはできません。
ここで不意打ちをかけてもいいでしょう。
部屋G:この部屋は巨大な吹き抜けになっています。
中心には翼が6枚で腕が4本ある天使の巨大な像があります。イメージとしては自由の女神です。
大きさとしても自由の女神くらいで、頭の冠のあたりからまばゆい光が見えます。
もし行くのなら像を登ること。もちろんパルックは飛行できるのでPCが登るのを手伝ってくれます。
冠は直径5−6mくらいで中心部に2mくらいの祭壇があり、そこにミイラ化した,翼が6枚で腕が4本の天使型?の生物が横たわっています。
天使の胸には1本の武器が突き刺さっており、見る人の理想の武器(戦士なら剣、魔術師なら杖など)
に見える幻影がかかっています。もちろん魔法がかかっており、光輝いています。
武器は、抜いたPCの望んだ姿で固定します。+1の威力で、攻撃されたもののMPを1点削る効果があります。
武器を抜くと天使のミイラは襲いかかってきます。魔法で武器と盾をつくり、魔法と武器で攻撃してきます。
強敵にデザインしてください。
ミイラを倒すと、冠の床部分が光り、PCたちは上空へとエレベータのように上昇していきます。
5:天空の城
PCたちは上空にとばされる時も意識を保っており、かなり高い位置にある天空の城に自分たちが飛ばされたことがわかります。
城は基部に穴を開き、PCたちを迎え入れます。PCたちが降り立ったあと、地面はもとに戻り、傷ひとつ見つけることはできません。
城の内部は荒廃がひどく、大声をあげてもなんの反応も返って来ません。
あたりを調べても崩れ落ちた生活道具などが見あたるだけです。
中心部分には西洋風の城が立っており、周りを街が囲んでいます。
PCたちが周りを調べたら、何もなかったと答えてください。財宝のたぐいを欲しがれば、ダイスで適当に
決定して下さい。
城は簡単に中に入れます。内部は普通の城と似たり寄ったりのつくりで衛兵室や謁見の間、居住区などが
あります。財宝はある程度多めに渡して下さい。
玉座の後ろには階段があり、地下深くへとつながっています。
階段の下には扉があり、湾曲した廊下が続いています。こちら
しばらく歩くと後ろのほうから轟音が聞こえてきます。
たとえるならダンプトラックのような音で、音の主は巨大なヒドラです。ヒドラは通路の幅より少し小さい程度の大きさなので、つぶされる可能性があります。
ヒドラのスピードはPCたちの全力疾走と同じくらいです。
もし、財宝などで遅くなっているなら潰される危険のあることを注意して下さい。
この戦闘のルールは、ヒドラに追いつかれたら挽肉になるため、荷物を捨てさせることと、
走りながら噛みついてくるヒドラの首を攻撃し、ヒドラを倒すことです。
ルールによって移動攻撃が異なっているので、GMは気をつけて下さい。
ヒドラを倒すと落ち着いて扉を調べられます。扉にはカギがかかっています。
扉の奥はこの城のメインコントロールルームになっています。
メインコントロールルームにはコンピュータのようなものが並び、壁面は巨大なディスプレイになっています。
PCたちがいろいろといじくっていると(どうせ捜索を行うでしょう。)誰何の声が電子音で聞こえてきます。
その後、床が割れてゴーレムが現れます。
ゴーレムはラスボスなので派手な戦闘にして下さい。
戦闘の勢いでコントロールルームのディスプレイにはひびが入っています。
そして、コンピュータは「自爆装置作動、自爆装置作動、ただちに脱出して下さい。」と点滅を繰り返しています。
ディスプレイには避難経路が示されています。
避難経路に従って逃げるのは簡単です。
ここで敏捷力と知力のチェックをしましょう。
廊下は崩れてくる瓦礫で埋もれてきています。PCたちはおのおの分断されて逃げることになります。
道順を覚えているか、素早く行動できたかです。もちろん荷物の重さで修正をかけて下さい。
チェックにペナルティをかけて成功した人は救命ボートまでたどりつけます。
次にGMはPLに見えないところで崩壊チェックをします。
これにも修正をかけます。
救命ボートはいつでも離陸できますが、1台しかありません。
先にボートにたどり着いたPCは遅れているPCを待って命を縮めるか、さっさと脱出してしまうかの選択を迫られるわけです。
無事脱出できれば、天空の城が崩壊したのがちょうどアル・ジェラートのそばで、翼人攻略のため集結していたサイラ教過激派の上にふりそそぎます。
PCたちは翼人の山のはずれに降り立ち、翼人の長老と出会うころには、サイラ教の新大司教から友好条約の話がでていることを聞かされます。
城の破片は、過去の魔法時代の代物がサイラ教の神の怒りとして天から降り注いだことになってしまいました。
落ちた天空の城は、これからは冒険者のたまり場になるでしょう。
かんじんの水晶像は、長老はPCにリーレルのところへ持ち帰ってくれないかと持ちかけます。
リーレルは、PCのAから詳細を聞き、水晶像はPCに渡すと言ってくれます。
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