ダイオキシンの危険性神話

2001,2,20

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ダイオキシンの危険性神話

 なぜ、私たちはあの時マスコミに踊らされてしまったのだろうか。そして、法律まで作ってしまった。しかし、実際、それほど危険性のある物であったのだろうか?

 再びダイオキシンの話である。

 ダイオキシン問題について、これほど巷に情報が流れているのにまだ的確な情報が流れていないようである。ここでは、ここ数年である程度まとまってきた情報を話したいと思う。あくまでも客観的なデータに基づいての話である。

 ダイオキシンで騒いでいる人はマスコミと一般市民と議員である。この構図を見れば自ずとダイオキシン問題が政治問題に発展していることが分かる。つまり、マスコミが報道するときにはフィルターがかけられていて「危険である」という情報しか流れないのである。

 しかし実態は違う。

 ダイオキシンを一番知っているのは科学者である。もちろん全ての客観的な情報は科学者から発せられている。しかし、この科学者はダイオキシンに対して危険とも安全とも言っていない。ダイオキシンは物質であって、研究の対象でしかないためである。であるからこそ客観的なデータが豊富にある。ただし、データを公表するだけでは科学文献にはならない。科学者本人の考え方を入れてデータを解析する。結論的には危険とも安全とも書くことができない。あくまでも他の物質に対して、死亡する確立が増加するだの、減少するだのという相対的なことしか書けない。

 それをまた加工して発表するのがマスコミである。ご存じの通りマスコミはあらゆるネットワークを駆使して、視聴者、読者にインパクトのある題材を選ぶ。客観的に書かれた科学文献(または科学文献の集まり)は都合の良い部分を抽出し、再加工される。このような過程を経るため一つ一つの事例は真実だが、相対的にある方向に持っていくことができる。このような事情を知らない市民は恐れおののいてしまう。また、それに輪をかけて議員が叫ぶ。これは一種のプロパガンダである。一つの結果が「ダイオキシン類対策特別措置法」であった。

 

 以上は概略である。ここでは、今まで分かってきたことを順に追って説明する。安全か危険かを判断するのは読者である。

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1.ダイオキシンの毒性

 ダイオキシンに対して一番敏感なモルモットの実験では、(ちなみに()内は一番鈍感なハムスターの数値である)

 半数致死量は600ng-TEQ/kg(5000000ng)、クロロアクネなどの症状がでる亜慢性毒性0.6ng/kg/day、13weeks(10ng)、発ガン性は1〜10ng/kg/day、100weeks、変異原性・遺伝毒性は10000ng/kgの一回投与又は2〜4ng/kg/day、13weeks

 また、人の事例ではイタリアのセベソでの事故で、推定300g〜130kgのダイオキシンが狭い地域で降り注いだという記録がある。(ちなみに日本全土で発生する一年間のダイオキシンの量は4,300g-TEQである。)ウサギ、猫、ネズミ、牛の相当数が死んだが、人は2日後にクロロアクネの症状が出ただけであった。

 イギリスでも200〜500gのダイオキシンが工場内にまき散らされたがクロロアクネが多数見られただけでその後回復した。

 ダイオキシンに対して一番敏感な動物はモルモットであり、一番鈍感な動物はハムスターと書いたが、人間は鈍感な部類に入りそうである。そして、現在巷にピコグラムオーダーの数値が溢れているが、上記の毒性はマイクログラムやngのオーダーである。問題になる量ではないのではないか?

 ダイオキシンは史上最強の毒物というのを聞いた人もあると思う。しかし、これは嘘である。確かに青酸カリの1000倍の毒性があるが、世の中にはもっと毒性を持った物質がある。ポツリヌス毒素は0.6〜1.1ng/kg、破傷風トキシンは2.5ng/kgでダイオキシンの1000倍程度の毒性がある。しかもこれらは生物兵器で人為的に作ることができるものである。ダイオキシンの毒性が高いことは確かであるが。

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2.体内のダイオキシンの由来

 焼却施設の近くや処分場の近くに体内のダイオキシン濃度は高いのではないか?と一般の人はそう思うであろう。マスコミもそこを一生懸命報道していた。しかし、焼却炉からの距離と体内のダイオキシン濃度には因果関係はない。以下の数値を見れば一目瞭然である。

 大気由来・・・0.07pg-TEQ/kg/day

 土壌由来・・・0.0084pg-TEQ/kg/day

 食品由来・・・2.00pg-TEQ/kg/day

 つまりほとんどのダイオキシンの由来は食物を食べることにより摂取されてしまうからである。ある焼却炉の近くの大気が環境基準の100倍も高い場合には問題があるが、通常は2倍とかちょっと越えた程度である。とてもじゃないが食品由来のダイオキシン濃度を越えるとは思えない。これが因果関係が成立しない理由である。しかし、食品の嗜好によっての因果関係はある。それは魚を多食する人としない人との関係である。

 魚介類のダイオキシン濃度は一般に肉類に比べると多い。野菜の濃度は比較にならないほど低いが、野菜のダイオキシンについては後で述べる。魚の種類毎のダイオキシン濃度を示す。

アジ0.597pg/g, 0.921, カレイ0.181, ヒラメ0.159, サバ0.312, スズキ2.642,タイ0.274, ホッケ0.204, サバ0.01, アカスエビ(中国)0.17 , サバ0.54, エビ(小)0.00, サバ2.16, ブラックタイガー0.01, ハマチ0.61, イカ(冷凍・南太平洋)0.00, ハマチ1.20, シシャモ(北欧産)0.31, ハマチ1.10, キス(オーストラリア)0.00, マイカ(生・沿岸)0.12, 白魚(愛媛)0.22, マイワシ(沿岸)1.95, マイワシ0.47, キハダマグロ0.01

魚介類に含まれる総水銀濃度(ppm)も示す。

イワシ0.027 ,マグロ0.383, タラ0.04 , イカ0.046 , アサリ0.058, アジ0.072 , サバ0.113 , カツオ0.310

 日本の近海でとれる魚介類にダイオキシン濃度が高いことが分かる。これは日本の沿岸にダイオキシンを含んだ排水(一般的には農薬が起源といわれている)が流れ込み、それをプランクトンが食べるなどの食物連鎖で魚介類の体内に高濃度に蓄積されたものと思える。

 日本の一日耐用摂取量の基準値が4pg-TEQ/kg/dayであるため、60kgの体重の人は一日当たり240pg-TEQまでなら安全といわれる。仮に100gのイワシを食べた場合に47〜195pg-TEQのダイオキシンを取り込むことになる。もうこれ以上のダイオキシンを摂取することができなくなる。これでは好きな魚も食べられなくなってしまう。それではイワシをやめてマグロにするか。これならば1pgですむ。

 しかし、これで安全な食生活といえるのだろうか?マグロには高濃度の水銀が含まれている。マグロ100gを食べると38.3マイクログラムの水銀を摂取してしまうが、イワシならば2.7マイクログラムですむ。人の一日耐用摂取量は50マイクログラム程度であるため、マグロではオーバーしかねない。それではイワシとマグロのどちらを食べたらよいのか?

 答えはバランス良く食べるしかないだろうと思われる。どちらかというと水銀の方が健康被害は直接的で短期的であるが。

 この食品由来のダイオキシンを減らすことが国の責務である。(近海魚の水銀濃度が低いのはかつての水銀対策が功を奏しているからではないだろうか?)国の計画では現在のダイオキシンの総発生量4,300g-TEQを20年後には20gにする計画である。

 ダイオキシンの対策は速くも効果が出ていて、母乳の脂肪に含まれているダイオキシン濃度は1973の30pg-TEQ/gから1996年には17〜18pg-TEQ/gに減少している。農薬の取締の効果だと思う。

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3.海外と比べてダイオキシン対策は遅れているか?

 単純にドイツとの比較をする。(一般の人にはドイツは環境の先進国に感じられていると思う)

項目        ドイツ        日本

焼却炉の排出基準  0.1ng/Nm3        0.1ng/Nm3

一日耐用摂取量   1〜10pg-TEQ/kg/day   1〜4pg-TEQ/kg/day

大気の環境基準   なし          0.6pg-TEQ/Nm3

土壌の環境基準   40〜10000pg-TEQ/g   1000pg-TEQ/g

 何だ日本の方が厳しいじゃないかと思われるだろう。事実日本はこれほど厳しくしないとヨーロッパ諸国に追いつかないのである。ましてやドイツは焼却をほとんど行っていない。広大な土地をどんどん掘って埋め立てている。同じ基準にしては日本の方がはるかに不利であるためである。

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4.なぜ野菜は安全なのか?

 かつて所沢市の野菜がダイオキシンで汚染されていると報道されたことがあった。その結果野菜の不買運動が広まってしまった。しかし、今では野菜類にはダイオキシンは極めて低い濃度(ほうれん草で0.072pg/g、洗うと0.044pg/g)しか含まれていないことが分かっている。理由は食物連鎖の影響がなく、野菜の中で濃縮されていないためだと思われる。また、地上に出ている時間がたかだが数ヶ月程度であり、濃厚なダイオキシンの大気に触れても影響が少ないためである。また、通常は洗って食べるため更にダイオキシン濃度が下がるのである。国家的に解決しなければならないのは魚介類のダイオキシン濃度の低下である。野菜をターゲットにすべきではない。

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5.最後に

 世の中には危険がたくさんあるが、ダイオキシンは比較的安全なようである。怖いのはそれを武器に扇動するマスコミではないだろうか?人の健康に関することは、もう少しバランス感覚を持つ必要がある。ダイオキシンを取りたくないために多量の水銀を取るようなことはしてはならない。また、たばこ一本を吸うと100pg-TEQのダイオキシンを取り込んでしまう。たばこを吸いながらのダイオキシン反対運動は慎んだ方がよい。

 ダイオキシンのように毒性は強いが極薄く広く拡散した物質に対しては、広い意味での対策が必要である。海を越えての拡散は少ないため、ヨーロッパのような地続きのところとも違った対策が必要である。日本の場合は最終的に海に流れ込み、魚介類の体内の中で濃縮されてしまう。局部的に減らしても意味のないことが分かる。いくら大気からのダイオキシン濃度を減らしても、高濃度のダイオキシンの含まれている食品を食べると、その減らした効果がなくなってしまうからである。現在の対策は、お金をかけて比較的大きな目立った焼却炉の改造などを行っている。近くに住む住民の対策のためであるが、よほど近くに住んでいない限り、ダイオキシンの影響はない(煙突の真下とか)。それでいて、小型の焼却炉や野焼きに関してはまだ十分な対策がなされているとはいえない。目の前の目立った焼却炉の対策だけをおこなっても、その周辺でちょっと野焼きをすればその辺一体のダイオキシン濃度は上がる。全体的に濃度を落とす必要がある。別に一回限りではダイオキシンの問題はないが、回数を重ねると問題である。野焼きの問題は、どちらかというと道徳的な問題だと思うが。