The Waste and Garbage Club Home Page
国家戦略的環境アセスメントのあり方について
2006,8,16
川崎市の扇島で火力発電所の建設計画がある。
120万kwの大規模な発電所なので、アセス法によるアセスメントを実施する必要があり、ちょうどそのアセスメントを行っているところである。
アセス法により様々な手続きがあり、私が傍聴した審議会(平成18年8月9日)は、事業者が作成した準備書に対する国の意見をまとめるものであった。
アセス法による手続きを簡単に説明すると。
方法書の作成(アセスの設計書といわれるもの)
↓
準備書の作成(事業実施による環境影響の予測と評価を行うもの)
↓
評価書の作成(準備書に国などの行政機関と市民の意見を加え、様々な対策を行い最終的に提出されるもの)
である。
この3つの報告書を作る間に関係機関との調整や市民からの意見を取り込む。
アセス法は、30年程前に上程されたが、その度に継続審議となり、平成9年度にやっと法制化された経緯がある。
反対の理由は電気事業者に対して負担が大きいためである。
アセスメントそのものに数億円かかり、その報告書に書かれた対策を施すためにさらにその数倍のお金がかかることになるからである。また、アセスメントは通常2年から3年かかるため、事業実施が大幅に遅れることになる。
今回の審議会は事業者が提出した準備書に対し、国が審査し意見を出す場である。しかし、国がどこを審査しているのか、またその審査のスタンスに問題があると考えた。そして、このようなエネルギー問題を含む重要な案件に対しては、個々の事業アセスよりも「国家戦略的アセスメント」なるものが必要ではないかという思いで綴ってみた。
国としてはアセスメントが法制化された以上、法律に則って準備書を審査するのは当然だが、はじめに事業ありきのアセスメントに対し、それをスムーズに通しましょうという意図が見え隠れする。
つまり、もともと電気事業者が嫌がっているものを強引に行うため、国・事業者双方の面子を立てるため、形だけでも行おうというのだろうか。
事業者も大変なお金をかけて調査する。それに対し国もたいそうな組織で対応する。国の審議会は火力部会、大気部会、水環境分科会、自然環境分科会の4つの部会で、それぞれ10から20名程度の有識者を集めている。また事務局の役人も5名ほどいる。そして、会合も年数回行われるため、トータルで相当の予算を使うことになる。
やっとの思いで通したアセス法であるため、事業者も国もまじめに取り組んでいるのは分かるが、各界の一流の有識者を招いて、これくらいの問題点しかでないのか、とがっかりしてしまった。
主な問題点は、
1)トリハロメタンなどの発生量(海水電解装置から発生する塩素が原因)
2)ハクセキレイの繁殖テリトリーの減少
3)海水の取放水システムとその温度差
4)排ガス中の窒素酸化物
5)二酸化炭素の発生量
などである。
これらの問題点に対して事業者は、小手先の方法や言葉の問題で対応しており、アセスメント上では影響のないようにしてある。
例えば
1)トリハロメタンについては、発生量が少ない
2)ハクセキレイについては、繁殖の代替地を作る
3)取放水システムについては、取水から排水の温度上昇を7℃以下にする
4)窒素酸化物については、現状が環境基準を超えているため、本事業の排出量は影響がない
5)二酸化炭素の発生量については、天然ガスは二酸化炭素の発生量が少ないため、電力1kwhに対する二酸化炭素の発生量(原単位)の軽減につながる
というものである。
一般的なアセスメントでは、個々の事業として予測を行い、対策を行って、環境への負荷を減らすことが目的となる。しかし、どんな事業でも環境負荷は必ずでてしまうため、一般的には、発生量が少ないという理由など「言葉のあや」で逃げてしまうことがある。しかし、例えば二酸化炭素で、「発生原単位」が減るから「環境に影響ない」などの理屈をつけると非常に分かりづらくなってしまう。
1)から4)までの原因に対しても個々の事業体として対策を施すよりも、もっと大きな視点から見ないと、矮小な対策に終わってしまう。個々の対策をとっても少なからず環境に影響を与えてしまっているからである。アセスメント上ではこれらを含め「環境に影響はない」と総括してしまう。
国家戦略というものを考えると、天然ガスを使った発電所はきわめてクリーンはずである。だから、日本全体を考えるとより多くの二酸化炭素やSOXを発生してしまう石炭火力と置き換える必要がある。
逆に、すでに窒素酸化物の環境基準を超えている場所に、クリーンといえども天然ガス発電所を建設するのも問題である、と考えることも出来る。
また、ハクセキレイの繁殖の代替地を考えてみても、事業地とは別の場所で作ることを考えると、広大な土地を与えることが出来るかもしれない。取放水システムについても、もっと大きな視点から考えれば、温水を必要としている場所もあるため、温排水(ただしその場合は淡水にする必要があるかもしれないが)を有効に利用できるかもしれない。
このように個々の事業として環境影響を考え、その対策を考えるときわめて矮小な方法となり、その効果はきわめて怪しくなってしまう。
やはり、広い視野で考える「国家戦略的環境アセスメント」が必要になる。特に資源・エネルギー問題に係る発電所ではなおさらである。