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PFIの一番重要なこと(施設の買取義務についての考察)


2007,12,19



1.PFIとは

 「PFIにおける施設の買取義務」と突然聞かれても答えられる人は少ないだろう。PFIそのものを説明できる人間も多くはないのでなおさらである。
 そこで、まずPFIとは何かを簡単に説明してから本論に入る。

 PFIとは何かと聞かれて。
「民間の資金を活用して、公共事業を行うもの」
そう答える人は、PFIを全く分かっていないといってもよい。PFIには、(特に日本版PFIには)DBOという公共が資金調達をする方法も含まれているのである。公設民営という従来方式の中で、運営だけを長期に渡り民間事業者と契約するだけでPFIと呼ぶこともあるので、「民間の資金調達...」は、半分間違えていることになる。

 PFIの書物にざっと目を通しても、PFIとは何かが、ど素人が分かるように書いてあるものが見当たらない。そこで、もっと平たく誰でも分かるように、卑近な例を通してPFIを説明する。

 ここでは、ある親子を想定する。ここでは、我が子を育てることを公共事業と考える。
 親Aは、子Bを育てようとしているのだが、自信がない。また、資金の面から見ても、その道のプロである事業者に頼んだ方が良いのではないか、と考えている。
 子育ては親にとって、最大のイベントの一つであるため、これを民間事業者に委託するPFIはよほどの決断が必要だとわかるであろう。

 この子育ての15年ないし20年間を全く1つの契約書で赤の他人にゆだねてしまうのである。しかし、一番重要なことは、自分で育てるよりも安くする(安くする提案をVE、安くなったことをVMFがでた、という)、これがPFIの本質といっても良い。またPFI事業は公募であり、事業者は公正な審査で決められる。


2.施設の買取義務とは

 ここでは、事業者が破綻した場合のことを想定して話を更に進める。
 PFIは、このように重要なイベントを、契約書一つで長期に渡り他人に任せるということである。当然のことながら、その長期の期間で何があるか分からない。事業者が破綻することもあり得る。ここでは、破綻したらどうなるかを説明する。

 PFIでは、通常は箱物の建設も伴う。ここでは、子ども部屋を造ることを考える。子ども部屋の建設費も15年ないし20年間の分割払いとなる。さらに、子ども部屋を自宅の庭に作るのか、事業者の土地に作るのかも重要な決め事である。
 ところで、事業の途中で事業者Cが破綻した場合の建物の取扱をどうするのかは、予め契約書に記載しておく必要がある。つまり子ども部屋を買い取るのか、そのままにするのか、である。
 買取について契約書に全く触れない場合もある。親Aが、買い取ることも出来る(買取権)、と書く場合もある。これらの場合は、事業者Cの破綻時に協議になるに違いない。
 さらに、親A(公共側)が事業者Cから買い取らなければならない(買取義務)、と定める場合もある。


3.買取義務によってどうなるか

 買取権の場合は、将来、事業者が破綻するかどうか、また、破綻時にどうなるか予測がつかないため、親Aの有利な条件で協議が行われるだろう。建物を安く買い取ることも出来る。他方、買い取り義務の場合は、最初から買い取る約束をしてしまっているため、事業者はいつでも破綻して逃げることが出来るのである。
 そのところを踏まえて記述する。

 まず、買取権が定められている場合のことを述べる。
 親Aは、大切な子Bを全くの他人である事業者Cにあずけようとしている。その事業者Cが破綻してしまうのである。親Aは、途方にくれるであろう。これから改めて自分が育てるのか、また他の事業者に依頼するのか。それ加えて、立ててしまった子ども部屋はどうなるのだろうか。真っ先に行うことは契約の解除、違約金の支払(事業者C→親A)である。これは、当然のことである。次に子ども部屋をどうするのか。親としては、2つの選択が考えられる。そのまま残して、次に自分で育てるにしろ、新たな事業者が現れるにしろ、その子ども部屋を引き続き使用する。それには、親Aが納得する価格(高くとも残存簿価程度)で、事業者Cから買い取ることになるだろう。もう一つは、事業者Cが子ども部屋を取り壊し全くさらな状態にすることである。事業契約を解除するので当然であろう。
 この場合、最悪、事業者Cは子ども部屋の代金を回収できなくなるばかりか、子ども部屋の解体費用も出さなければならない。よって、そうならないように、事業を継続させようという力が働くことになる。何が何でも事業を続けようとする力は、PFIのもっとも重要なことなのである。

 一方、買い取り義務が契約書にあった場合はどうなるか。事業者Cは、最初から事業が破綻した場合は、親Aが子ども部屋を買い取るという条件で契約することになる。事業者は、違約金を払い、子ども部屋の代金を回収し、簡単に事業から手を引くことが出来る。

 ところで、ここに新たなプレーヤーを登場させることになる。事業者Cにお金を貸している銀行Dである。銀行Dは、買取義務がある場合、事業者Cに貸し付ける元金を、事業が破綻しても親Aから回収できる金額の範囲しか貸してくれない。(買取義務が無い場合は、貸付条件はもっと厳しくなる。)つまり銀行Dは、事業が破綻しても全額回収が可能なのである。銀行Dは、事業が破綻しそうになった時には、真っ先に資金を回収しようとするだろう。よって、PFI事業の破綻が急がれることになる。


4.PFIの一番大事なこと

 最近のPFI事業契約書には、買取義務は入っていない。上記のように公共側(親A)に対して不利に働くからである。しかし、PFIの3大プレーヤーの銀行は、公共とDA(直接契約)を結び、金利を安くする代わりに買取義務を入れるよう要請することもある。

 PFI事業は、本来、公共、事業者、銀行の3大プレーヤーは共にリスクを分かち合うことが最重要事項である。このリスクの分担を理解せずに、行政は、安く事業を行える方法を求め、事業者は新たな公共事業の発掘を求め、さらに銀行はリスクの無い貸し出しを求めるなど、それぞれの思惑をむき出しにするとPFI事業は立ち行かなくなるだろう。


   
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