選別される錦鯉




ふだん私たちが見る錦鯉は上の写真のようなもの。ゆったりと水の中を進む様子を「泳ぐ宝石」とたとえることもありますが、「宝石」になるまでの間には、とても厳しい試練があるのです。

錦鯉の産卵は5月。立派なお父さんとお母さんから小さな子供たちが何万尾と生まれます。生け簀の中ですくすくと成長する子供たちですが、メダカくらいの大きさになるとそろそろ色や柄が出てきます。中には全身が赤かったり黒かったりという無地ものもいます。この時点で無地ものは選別されてしまいます。

選別と簡単に書きましたが、小さな網ですくわれて捨てられてしまうのです。私の妹のうちでは家の裏を流れる小さな川に放流されます。



生け簀の中の稚魚たち
小さな金魚くらいの大きさです。




それからさらに1ヵ月間、生け簀で育てられて2度目の選別が行われます。

体長3センチから4センチくらい、小さな金魚くらいの大きさに育った稚魚たちは、生け簀の網から引き上げられて、柄がくっきりと出ているものだけが選ばれていきます。

大きなザルのような網で20〜30尾くらいがざっとすくい上げられて、その中から1尾くらいが拾い出されて大きな水槽に移されます。残りの大部分は足元のバケツへどんどん放り込まれていきます。

バケツの中の稚魚はやはり裏を流れる川に放流されます。



見えづらいのですが、水溜りの上のほう、
水がすこし赤くなっている部分には、
錦鯉の稚魚が数百尾くらい
集団になって泳いでいるのです。



こんなにたくさんの鯉がすくすくと成長したら、川の水は足りるのだろうかと心配になるほどの集団なのですが、そこはうまくしたもので、というか過酷な自然によって川は鯉でいっぱいにならずにすんでいるのです。

このあたりの田んぼには鷺が住んでいて、小さな鯉は鷺の餌になることが多いそうです。そういう試練をくぐり抜けたものだけが大きな鯉になって川面に姿を見せながらゆうゆうと泳ぐのでしょう。



7月の魚沼地方
鷺の姿を見かけることもあります。



2度目の選別が終わった錦鯉の稚魚は山の池(野池)に放されます。夏の太陽を浴びながら、餌をたくさん食べて秋を迎えるのです。このときの体長は20センチくらい。

さらにもう一年かけて大きくすると40センチくらいに成長します。

稚魚が一人前の錦鯉になる確率は100分の1から1000分の1くらい。そこまで数を減らさなくても・・・と思いますが、大きくするための餌代も実際のところバカにはならないのです。また、野池にたくさんの鯉を放すと成長が遅くなってしまうのです。

錦鯉が育つまでの確率を聞くたびに「ああ、錦鯉に生まれなくてよかった」と思うのですが、本当のところはどうなんでしょうか。いつもちょっと複雑な気持ちになります。



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