平成18年4月8日(土) 横浜・三渓園にて
桜満開の翌週の土曜日、横浜・三渓園にて栄えある熱闘句会の第1回吟行が行われました。
集合は朝10時。この時点でまず吟行メンバーは二手に分かれました。体力温存・吟行集中派は桜木町駅に9時40分に集まり、ここからタクシー相乗りで三渓園へ向かいます。相乗り組は、西北氏、松子庵主、まゆ子さん、風子さん、凡凡さん、犬客さん、兎々さん、芽笹の8人。出発時点からして吟行にかける意気込みが違う、たいしたものだと思っていたのですが、さらにこれを上回る2名がいることが判明。この2名は屁散人師匠と八王子さん。直接徒歩にて三渓園に乗り込むとのこと。余分な体力発散し、リラックスして吟行に臨むらしい。われわれ体力温存・穏健派が三渓園正門に向けてタクシーを走らせて、正しくはタクシーの運転手さんにお願いしてあらん限りのスピードで向かっているところへ「集合場所はどこだっけ?」と問い合わせが。ありあまる体力発散・俳句格闘技系の2名は、よりよく発散させるために正門とは反対側の南門から入園したらしい。早くも園内を下見し、句作に励んでいるのか。遅れてはならじとタクシーから鼻息荒く下り立つ8名。正門を入ったところで全員がようやく集合。松子庵主から「12時にこの場所に集合。おやつは食べ過ぎないように」との訓示を受けてすばやく解散。池をめぐって右回り派と左回り派の二手に分かれて、いざ吟行。
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これがその池ね。 松の花も咲いていました。 藤棚の下にて句作に没頭する屁散人師匠。 山吹は大人気で、句がいくつか出ましたね。 落花で地面が彩られています。 可憐な菫もありました。 句にもなった三重の塔 竹の秋です。
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昼食後、会場を元町に移して、いよいよ句会です。
会場へ乗り込む面々。 作句に没頭する人、タバコを吸いに行く人。 投句締め切りまであとわずか。 推敲を重ねる屁散人師匠。
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お待たせしました。句会の結果です。
熱闘句会 吟行 | ||
2006年4月8日(土) 於 横浜「三渓園」 | ||
投句 5句 選句 7句 | ||
◆自選句 | ||
春の塔虫にくわれし太柱 | 松子 | |
桜しべ降るやわが娘の旅立ちに | 八王子 | |
猫とゐて桜吹雪の眠くなり | 屁散人 | |
淡墨の桜は空の色になり | 風子 | |
車椅子囲みて笑顔花の下 | 兎々 | |
花冷えの園に集いし友やさし | まゆ子 | |
花の昼女のこゑに囲まれて | 犬客 | |
句帳手にただ春風を聴くばかり | 凡凡 | |
アルミ貨を掌に載せ日永の観世音 | 西北 | |
茶屋の脇子猫の丸き目に出会ふ | 芽笹 | |
◆屁散人さん特選句 | ||
分かちあふ黙の歩みに竹の秋 | 犬客 | |
花なくて天満宮の昏きかな | 風子 | |
◆屁散人さん入選句 | ||
句帳手にただ春風を聴くばかり | 凡凡 | |
さくら散る日の明るさに耐えかねて | 凡凡 | |
ひと休みすればいいよと春の川 | 凡凡 | |
アルミ貨を掌に載せ日永の観世音 | 西北 | |
のどけしや餌ねだりゐる鯉の口 | 凡凡 | |
◆互選結果 | ||
6点句 | ||
分かちあふ黙の歩みに竹の秋 | 犬客 | |
5点句 | ||
茅葺きに人住むごとく花こぶし | 風子 | |
春の鴨ひかりの水脈をひろげたり | 屁散人 | |
4点句 | ||
句帳手にただ春風を聴くばかり | 凡凡 | |
山吹の川面に光集めたる | 八王子 | |
老いひとり来て芽柳に吹かれをり | 屁散人 | |
3点句 | ||
さくら散る日の明るさに耐えかねて | 凡凡 | |
花散るや風の道筋そのままに | 芽笹 | |
亀浮いて花の疲れと思ひけり | 屁散人 | |
父親という名さびしき花吹雪 | 八王子 | |
2点句 | ||
ひと休みすればいいよと春の川 | 凡凡 | |
連翹の花は水面を重くして | 八王子 | |
亀鳴くを是非に聞きたき春の池 | 芽笹 | |
満開の花の日射しに眠りゐる | 犬客 | |
淡墨の桜は空の色になり | 風子 | |
遅桜蕾みたちまち日を紅に | 屁散人 | |
1点句 | ||
花なくて天満宮の昏きかな | 風子 | |
アルミ貨を掌に載せ日永の観世音 | 西北 | |
川べりの山吹きの黄の濃かりけり | 風子 | |
桜しべ降るやわが娘の旅立ちに | 八王子 | |
猫とゐて桜吹雪の眠くなり | 屁散人 | |
婆の居ぬ炉辺に春光届かざる | 凡凡 | |
花吹雪ものともせずに絵筆持つ | 兎々 | |
板葺きの屋根の古色や花馬酔木 | 西北 | |
葉桜の向うに塔のイヤリング | 西北 | |
花の昼女のこゑに囲まれて | 犬客 | |
風よ吹け桜散れ散れ吾ここに | 八王子 | |
得点なし | ||
のどけしや餌ねだりゐる鯉の口 | 凡凡 | |
花筏和装の女とすれ違い | 兎々 | |
春の塔虫にくわれし太柱 | 松子 | |
稜線に日が射し頬に木の芽風 | 西北 | |
春風に異国人らのカメラ音 | まゆ子 | |
風の歌しっぽふるごと諸葛菜 | 松子 | |
散る花に国際ケータイ鳴りひびき | まゆ子 | |
車椅子囲みて笑顔花の下 | 兎々 | |
指にほふ花韮白く輝けり | 松子 | |
花冷えの園に集いし友やさし | まゆ子 | |
追ひかけて追ひかけられて春の鴨 | 犬客 | |
落下花ふまれて土の刺青に | 松子 | |
落花舞ふ日には集ふたり俳句好き | 芽笹 | |
花冷えや茶店の玉子湯気ぬくし | 兎々 | |
松の花塔にのぼれば人にあふ | 犬客 | |
膝をつき菫ひともと嗅ぎてをり | まゆ子 | |
この道はいつか来た道花吹雪 | 兎々 | |
熟年が手を執り合いて鳥曇 | 西北 | |
藁葺きの庵にありし文思ひ | まゆ子 | |
落花して流れとどまる溜まりかな | 風子 | |
大石の所々に桜花 | 松子 | |
茶屋の脇子猫の丸き目に出会ふ | 芽笹 | |
風鐸の春風に鳴る三重塔 | 芽笹 |
さて、これで句会が終わったと思ったら大間違い。今回は宿題も出たのでした。
芽笹投句の「茶屋の脇子猫の丸き目に出会ふ」、上五はいただけないけれど直せばなんとかなると、みんなで上五を考える宿題が出されました。
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宿題の結果です。
◎は屁散人師匠の選。(難しいので2句選となった由)
○は芽笹の選。(題材の句の作者ということで選をさせていただきました。)
嫉妬して子猫の丸き目に出会ふ | 八王子 | |
◎ | ひとり旅子猫の丸き目に出会ふ | 凡凡 |
○ | 地震(なゐ)のあと仔猫の丸き目に出会ふ | 屁散人 |
◎ | 朝帰り子猫の丸き目に出会ふ | 風子 |
来ては啼く子猫の丸き目に出会ふ | まゆ子 | |
そよ風や子猫の丸き目と出会ふ | 芽笹 | |
ディープキス子猫の丸き目と出合ふ | 松子 | |
大願成就子猫の丸き目と出会ふ | 犬客 | |
雨の中子猫の丸き目と出合ふ | 兎々 | |
屈託や子猫の丸き目と出会ふ | 西北 |
吟行で苦しみ、宿題で苦しみ、するめのようにしゃぶりつくした句会でありました。
苦しみながらも、しっかりと楽しんだけれどね。
(芽笹 記)