************************************************************************* 阪神大震災 須磨区大黒小学校24時間救護所での経験  平成7年2月10ー12日 (5/5) *************************************************************************  神戸の言葉は大阪弁ともすこし異なっており、優しい響きがあります。私も診 察を続ける内に、”どないですか?”と口をついてでるようになりました。それ でもみんなが口にするのは”しんどい”という言葉。体がきつい、だるいという 意味でしょうが、どのカルテにも”しんどい”という言葉が目につきます。  ボランテイアの若い人達にたくさん会いました。すこしの気負いもなく、淡々 と仕事を片付け、人を助ける意気込みに燃えている人達にこんなにたくさん会っ たのははじめてでした。汚い仕事や危険な仕事でも喜んでとびこんでいく彼等の 目は、純粋でおだやかな色にあふれて、ひさしぶりに気持の良い仕事をさせてい ただきました。まだ日本も捨てたもんじゃないなあと、いささか年寄りじみた感 慨さえ持ってしまいました。 焼け跡を歩いて、不思議に思うのは、見事なまでに開き直った明るさのようなも のがあることです。もう失う物も無い明るさの中から、きっとこの人達は回復し ていくにちがいないという確信をもったものでした。  これから春が来て、梅雨や、夏の猛暑を考えると、避難所の生活はかなり困難 なものがあります。無料救護所も撤退を始めており、また地元の開業医の先生も 再開に向けて、努力しています。都心部の人口は疎開などで、どんどん減ってい きつつあり、看護婦やスタッフなどの不足も問題です。長田区や灘区などの被害 の激しい地域では、医療機関の半分以上が休診しています。  電柱に張紙がしてありました。”がんばろや神戸 映画無料上映会”。焼け跡 の中、新しい生命力が生れています。一刻も早く人間的な生活を取戻させてあげ たいと思い、痛む足をひきずり、帰りの新幹線にのりこみました。  たった3日間でしたが貴重な経験をさせていただいた、徳州会病院の皆様、中 村先生、山本先生、夏目先生に感謝いたします。おそらくローテーションに無理 やり押込んでいただいたのでしょうが、中村先生のおだやかな話しぶりには、震 災の直後から活動している人とは思えないほどでした。全国から神戸徳州会病院 の援助に集ってきていた先生がたの御努力にも敬意を表し、この拙い文章を読ん でくださった皆様がさらに震災の復興と現地の援助、ボランティア活動に関心と 御協力を持って頂けることを願って止めません。 -*- Dr.KUMA ~{^_^}~ Medical library -*-