●当院は厚生労働省が認定する緩和ケア研修会を受講し、済生会日田病院麻酔科等と連絡を取りあい、在宅での緩和ケアを行っております。
世界保健機関(WHO)の定義)

緩和(かんわ)ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に 対して、疾患の早期より痛み身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな (霊的な、魂の)問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフ(生活の質、生命の質)を改善するためのアプローチである。」


                 
広島緩和ケアセンターのHPより引用)
●はじめに
 誤解のないように、最初にことわっておきますが、緩和ケアとは、決して、現在行っている治療を中止することではありません。抗がん剤や放射線を併用しながら、人としての尊厳を大切に生きていく治療です。またがん患者さんだけを対象とするものでもありません。耐えがたい痛みや、苦しみがあれば、すべての患者さんが対象であると思います。

病院と縁が切れたり、治療を中止したりするわけでもありません。

 緩和ケアやホスピスという考えは、私が医学生として教育を受けたとき(27年前)には、ほとんど知られていない分野でした。  

医師となってかなりの時間がたち、開業医となりたくさんの患者さんと直接向き合う中で、医学が助けられない患者さんの多さ、老いていくということが、確実に死に向かっていくという意味などを、強く感じる毎日の中で、緩和ケアやホスピスという考えこそが、現代医学にかけている何かではないかと感じています。

 研修会やたくさんの先輩に恵まれ、どうやら緩和ケアの入り口にたどりついたばかりですが、患者さんの苦しみをすこしでもすくうことができれば、幸せです。


※病院で、癌の末期の患者さんが点滴を受けて、機械にかこまれてすごす姿を見るのは、つらく悲しいものです。在宅で家族にかこまれて、無理のない最後をすごすことは人間の最後の権利ではないでしょうか?
●緩和ケアの実際

 81歳の男性、膵臓癌で腹水がたまってきている。
市内の病院から紹介されて、国立大学の病院の外来に受診したが、すでに治療不可能で、ご自宅ですごしたらといわれて、家族がこまって来院、ご相談をいたしました。
 早速、当日にご自宅に訪問し、エコーで腹水が大量にたまっていることを確認。食事もはいっていませんでした。痛みはあまり強くはないようですが、気分がすぐれないご様子でした。困ったことに病名は
告知されていましたが、生命に関する説明はされておらず、時期をみて私が行いました。
 まず、行ったのが、腹水の穿刺です。エコーで見ながら、一番細い管をいれさせていただきました。ここから毎日500mlくらいの腹水が排出されました。
 さらに、塩酸モルヒネ30mg/1日を、シリンジポンプという機械で持続皮下注射を始めました。
翌日には痛みは全くなくなり、お腹のはりもとれて、昨日のような苦痛にゆがむ顔がなくなり、食事もすこしづつ入り始めました。バクスターインフューザーという簡易持続注射器に切り替えました。

 それから2週間、痛むことはなく、ご機嫌に経過し、お孫さんたちともたくさんお話をして、本を読んだり、音楽をきいたり、お庭を眺めたりしてすごされ、家族に見守られながら、静かに死んでいきました。
なくなる前の日に、私に”ありがとう”と言って、握手されたのは、忘れられない思い出です。痛みがないということが大切なことだという貴重な教訓をいただきました。
告知に関する問題

シリンジポンプ

塩酸モルヒネ持続皮下注射のための
バクスターインフューザー

●我々が現在行っている緩和治療・在宅医療の種類など


1、
麻薬などあらゆる手段での疼痛緩和 
     経口、注射、貼付剤、座薬,、塩酸モルヒネ持続注射
         (シリンジポンプ、バクスターインフューザーなど)

2、
胆汁婁からの廃液、胸水や腹水の穿刺による管理   腹部の不快感や呼吸苦が軽減します。
        超音波下での穿刺、持続排液

3、
認知症や精神面での対応   面談、行動療法、抗精神病薬、音楽療法など

4、
在宅での高度医療検査
   超音波検査、心電図、心電図モニター、酸素飽和度の測定、電解質、血液ガス検査、迅速生化学検査など


5、在宅酸素療法
   慢性呼吸不全、心不全の方の呼吸苦を軽減します。

6、点滴、CVポートによる輸液、中心静脈栄養
   カフティーポンプなど

7、胃ろうの管理

8、人工呼吸器の管理
    現在2名の在宅人工呼吸器管理をしています。
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