●コレステロールって、動脈硬化を促進して、狭心症、心筋梗塞の原因となるこわいものでしょうか?

コレステロールは本来は細胞の壁をつくる壁土のようなものですが、血管のあちこちに放置されたコレステロールは、血管を狭くして交通のじゃまになります。特に心臓では、心臓自体を栄養する血管、冠状動脈はこれほど重要なところなのにたった3本しかありません。それが狭くなったりすると、ちょうど指をひもでしばると先が青白くなっていくように窒息していくのです。これが心臓におこると胸が痛いという症状になります。つまり狭心症です。
一方、心筋梗塞と言うのはこの狭くなった血管に血の塊りなどがつまって、流れなくなった状態で、現在でも発病と同時に5人にひとりの方がなくなる怖い病気です。ちょっとこわいことには、冠状動脈が狭くなっても最初の直径の1/4以下にならない限り、胸が痛くなったりすることはありません。そしていきなり胸が痛くなり、狭心症となるのです。
コレステロールが静かな殺し屋と呼ばれるわけです。病気が進行しても症状からは程度がわかりにくいということです。成人病とよばれる病気はほとんどがそういう経過をたどるのです。


●コレステロールはどのくらいから治療が必要なのでしょう?

血液中のコレステロールは220mg/dlまでが正常です。220となったのはいろいろな調査の結果、220以上の人がそれ以下のひとにくらべて、狭心症や心筋梗塞をおこしやすいと考えられるからです。
250を越すと非常に危険です。このように調査からわりだした正常値はそれ以上あればすぐに入院しなければいけいないという値ではなく、それ以下にしたほうがよいというもので、何の症状もありません。ですから検診でコレステロールが220以上と診断された方はぜひもういちど詳しい検査をうけてください。
かなりコレステロールが高いひとでは、目の上に白い黄色腫ができたり、アキレス腱が肥厚したりすることもありますが、大抵は症状に乏しいのが特徴です。


●コレステロールには善玉と悪玉があるそうですね?

 脂肪は身体の中、つまり血液の中では、脂肪をタンパク質がまぶしたような形(アポ蛋白)で存在します。この油の部分が大きいものと小さいものがあり、大きいもの、つまり油っぽくて比重が軽い低比重コレステロール(LDLコレステロール)をいわゆる悪玉コレステロールとよびます。LDLコレステロールは脂肪をたくさんふくんでいるので、血管にのり、全身をかけめぐり、やがて血管の壁にある細胞にコレステロールを捨てにやってくるのです。

 悪玉LDL  善玉HDL

 これに比べて、善玉コレステロールといわれるHDLコレステロール(高比重コレステロール)はコレステロールをすこししかふくんでいませんので、むしろコレステロールを引き取ってきて、肝臓にもどしてやる作用があります。
現にHDLコレステロールの高い人では、動脈硬化が少なく、長生きする事がわかっています。とくに遺伝的に高HDL血症の人では、長生きする事が証明されており、長寿症候群とさえ呼ぶのです(不思議な名前ですが)

●コレステロールを減らす食事や注意をおしえてください。

まず食事の中のコレステロールを減らす事です。それにはタマゴを減らす事が重要です。卵は1個で200から250mgのコレステロールを含んでいます。
また簡単に手に入り料理の応用が広いので、現実の食事ではコレステロールのかなりの部分を卵からとっているようです。コレステロールが高いといわれた人では1週間に2個までにしてください。できればやめたほうがよいです。
卵のコレステロールは99%が黄身にあり、白みにはほとんどありません。しかし白みは卵アレルギーの原因になりやすいので、白みばかり食べるのもちょっと問題があります。プリンやカステラなど卵製品はひかえてください。その他コレステロールを含んでいるものは、動物の内臓、卵、脂身です。いくら、すじこやたらこ、牛肉、豚肉の油の多いところ、レバー、もつ、ホルモンなどの内臓類、いか、海老など。牛乳は1日1本はよいと思います。せいぜい22mgですから。
植物に含まれる脂肪は逆にコレステロールを減らす事が分っています。ですからべにはな油、ひまわり油などはとってよいものです。もちろん動物の油、とくに固まりの油はよくありません。
 もうひとつは肥満の問題です。肥満は根本的にはカロリーのとりすぎですから、総カロリーを調節するのが大切です。あまったカロリーは肝臓が油にして保存するので肥満はよくありません。糖分のとりすぎはこのようにしてコレステロールを増やすのです。

控えたほうがよい食べ物



●薬で調節できるのでしょうか?

薬には大きく分けて、まずコレステロールそのものの吸収を防ぐ薬と、コレステロールの代謝を促進する薬、コレステロールの肝臓での合成をおさえる薬などがあります。どのコレステロールが高いかで少しずつお薬が異なりますが、最近になり肝臓でのコレステロール合成をおさえる薬が、非常にコレステロールをさげる力が強く安全なのでよくもちいられるようになりました。
これによりコレステロールの治療はかなり確実なものになり、コレステロールを下げる事により、現在ある動脈硬化を軽減できる事もわかりました。遺伝的にコレステロールが高い家族性高脂血症では、コレステロールが400以上にもなり心筋梗塞を高率に発生します。このような患者さんでは血液をろかして、コレステロールだけを選択的にとりのぞき、もういちど身体にもどす治療をすることもあります。

●中性脂肪だけが高いといわれましたが、悪いのでしょうか?

中性脂肪は身体に脂肪がとりこまれるときに、最初にできる大きなコレステロールを含んだかたまりです。そしてこの固まりが分解を受けることで悪玉LDLや善玉HDLとなるわけです。しかしその調節をしているLPLという酵素が決っているので、中性脂肪が高いからといってLDLやHDLが高くなるわけではありません。中性脂肪そのものは大き過ぎて悪さをしないと考えられています。
中性脂肪は150以下が正常です。しかし一部の調査では中性脂肪が高い人に動脈硬化が多く見られる傾向がありますが、肥満や糖尿病の影響もあり、まだはっきりとした結論がでていません。けれどあまりこれが高いと膵臓をいためて脂肪性の膵炎を起こす事も事実ですので300を越すようならば治療が必要です。肥満や運動不足、炭水化物、糖分の多い食事が悪いようです。

Dr.クマ ~{^_^}~ 1996-04-15 10:33:23