ルゲドルフ・ツァイツング(Bergedorf Zeizung)紙(1992年11月11日 15面)に掲載された、ハンブルグでのデビュー・コンサート評より
若きピアニスト、加藤雅己がラインベック城で将来を期待されるデビューを果たした。この演奏会は満員で、加藤はまさに拍手の嵐で祝福を受けた。モーツァルトの幻想曲K.397とピアノソナタK.332では、音楽の持って行き方にたいへん好感が持たれた。この若きピアニストは、各楽章の意味関連を明瞭に浮き彫りにした。彼の演奏は落ちついた冷静なものであった。バッハのシャコンヌでは、加藤はその注目されるべき力量を遺憾なく発揮した。このテクニック的にたいへんな難曲を、彼はペダルをうまく多用しながら大熱演した。彼は明らかに自分でもロマン派作品の方が肌にあっていると感じている。リストのバラード2番を力強く、テンペラメントたっぷりに、見事に弾いてのけた。ショパンの小品3曲では、夢見るような雰囲気から音響の瀧に至るまで、美しい音で多様にニュアンスを弾き分けてみせた。まさに、満場の会場からの割れんばかりの拍手にふさわしい演奏会であった。

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