(修士論文要旨)

インターネット・コマース発展のための

プラットフォーム・ビジネス類型化の試み

−知識チェーン/知識インタラクション相互発展ビジネスモデルへの展望−
A Theoretical Approach to classify the Platform Business for developing Internet Commerce

産能大学大学院経営情報学研究科課題研究コース、起業・戦略サブ・コース

  • No.8975011 木村 誠(Makoto Kimura)

    1999年1月29日

    (主査:森田一寿教授 副査:根来龍之教授、宮俊一郎教授)

    Abstract This paper proposes a reference model of Platform Business (PFB) that would develop the Value Chain through Internet Commerce (IC) such as Business-to-Business and Business-to-Consumer in the near future.To reach this purpose, this paper firstly argues: 1) some advanced Internet Technology, 2) difference between traditional PFB and IC-PFB, 3) two Basic Models which are Knowledge Chain Model (KCM) and Knowledge Interaction Model (KIM). Then, the paper tries 1) to classify 5(five) types of IC-PFB based upon KCM and KIM,and 2) to analyze the weakness and strength of each 5 types of IC-PFB speculatively. And, this paper seems IC-PFB could contribute the development of Value Chian as a catalyst to split or merge Value Chains on Internet. Finally, the paper proposes the Mutual Development Model between Knowledge Chain in Supply chain and Knowledge Interaction in Community. As a conclusion, "Multi-Stages and Open Community" type of IC-PFB should be a reference model for IC-PFB from the point of views of developing Value Chain in Internet. The paper proposes IC-PFB properties comparison sheet summarizing case studies of IC-PFB as conformance procedure for this hypothesis, and verifies its consistency for each 5 types of IC-PFB speculative properties compared with "Multi-Stages and Open Community" type of IC-PFB as a reference model.

  •  

    1 はじめに
    2 研究で着目するインターネット応用技術動向
    3 研究の対象と背景
    3.1 インターネット・コマースにおけるプラットフォーム・ビジネスの定義
    3.2 バリューチェーンの定義
    4 IC-PFB類型化の2つの基本軸
    4.1 知識チェーン・モデル
    4.2 知識インタラクション・モデル
    5 IC-PFBの二つの指向性
    5.1 サプライチェーン指向PFBモデル
    5.2 コミュニティ指向PFBモデル
    5.3 コミュニティでのオープン・ソーシング
    6 IC-PFBの5つの基本類型
    6.1 無段階型PFB
    6.2 一段階型PFB
    6.3 多段階型PFB
    6.4 クローズド・コミュニティ型PFB
    6.5 オープン・コミュニティ型PFB
    7 IC-PFBの発展像
    7.1 バリューチェーンの分流と合流
    7.2 オープン・ソーシングによるバリューチェーンの発展
    7.3 知識インタラクションから見たIC-PFBの発展像
    7.4 知識チェーンから見たIC-PFBの発展像
    7.5 知識チェーンと知識インタラクション相互発展から見たIC-PFBの発展像
    7.6 IC-PFBの5つの基本類型からの発展形
    8 事例によるIC-PFB問題点の検証
    9 まとめ:今後の課題
    <参考文献>
     

    1 はじめに

     地球規模のインターネット一般普及の速度は凄まじいものであり、人類史上未曾有の経験といってよい。現在販売されているパーソナル・コンピュータにはウェブブラウザが事前に無償インストールされており、インターネット接続ツールとして利用されている。米国ではケーブルテレビ送受信用の光ファイバーを利用した一般家庭のインターネット常時接続が普及しつつあり、日本でも試験的導入が始まっている。そして電子商取引と和訳されるエレクトロニック・コマ−スが新規ビジネスの場でのバリューチェーンを実現するものとして期待されている。現在の所、エレクトロニック・コマ−ス推進のためのニュービジネスは模索段階にあるが、新聞紙上に関連記事が掲載されない日はほとんどない。最近では、超エクセレント・カンパニ−であるMicrosoftよりも消費者間中古希少品オークションをインターネット上で行うebay,Inc.の方が高い株価がついたのも記憶に新しい。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    2 研究で着目するインターネット応用技術動向

     本研究では、今後のインターネット応用技術として、XML、ソフトウェア・エージェント、インターネット・プラグイン製品に着目する。
    XMLとは、eXtensible Mark-up Languageの略称である。XMLはウェブブラウザで人が文書を見たり読むためにしか利用できないHTML言語と異なり、タグを業務アプリケーションの要件に応じて設けることができるためにコンピュータ利用のためのデータ構造記述標準言語となることが確実視されている。XML標準はウェブ技術の標準化を行う中立団体であるWorld Wide Webコンソーシアム(W3C)によって定義され、Microsoftも1998年10月13日にXMLを全面支援する方針を発表した。WWWサーバから受け取られたXML文書は、ウェブブラウザと業務アプリケーションの両方で取り扱うことができる。さらにXMLに基づいたOSD(Open Software Description)データにより、インターネットを介したソフトウェアのプッシュ型配送と自動インストールが既に技術的に可能となった。
  •  ソフトウェア・エージェントは、エージェント(自律的な活動主体を意味する)の機能をソフトウェアが実現するものである。1995年、特にネットワーク上のアプリケーションを開発するのに適したプログラミング言語Javaが現れた。Java言語はエージェント・プログラミングにも利用でき、ウェブ上で動作する。ソフトウェア・エージェントはユーザの要求と整合性を持った情報をインターネット上のウェブ・サーバから自動的に検索して引き出すことができる。XML言語でオンライン・カタログが記述されれば、Java等の実行アプリケーションであるソフトウェア・エージェントは消費者のニーズ(商品名または特徴、予算)を基に、インターネット上のウェブ・サーバを渡り歩き、XMLデータを引き出して評価を行い、商品検索と購買行為の代行を行うことができる。

     5年以内にインターネットの常時接続が一般家庭に普及するだろうと予測されている。このとき、一般家電製品が「インターネット・プラグイン製品」となり、電源プラグに指すように容易にインターネットに常時接続されるようになる。インターネット・プラグイン製品はソフトウェア・エージェントを内蔵し、インターネットにプラグを差し込めば、ネットワーク環境で製品が稼動し、保守も非常に容易になる。逆に、個人のプライバシーに近い情報が製品パフォーマンス情報および顧客フィードバック情報としてリアルタイムでモニタリング、検索されることも可能となる。

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    3 研究の対象と背景

  •  本研究では、インターネット・コマースを「企業間、または企業対消費者間コミュニケーションの一部または全部をインターネット上で行う商取引」であると定義する。本研究の目的とはインターネット・コマ−スにおけるバリューチェーンの発展に貢献できるプラットフォーム・ビジネスの発展像を示すことである。そのために以下のような小目的に分けて結論を導くことにする。

    第1目的:インターネット・コマ−スに貢献するプラットフォーム・ビジネスの類型化を行う。

    第2目的:プラットフォーム・ビジネスの発展像を明確化する。

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    3.1 インターネット・コマースにおけるプラットフォーム・ビジネスの定義

     國領二郎・今井賢一(1994)におけるプラットフォーム・ビジネスの定義は以下である。
    「だれもが明確な条件で提供を受けられる商品やサービスの供給を通じて、第三者間の取引を活性化させたり、新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割を私的なビジネスとして行っている存在」
     國領(1995)は、プラットフォーム・ビジネスの具体例として、問屋・卸し・商社などの中間流通業者や銀行、クレジットカード会社、運送会社、不動産流通業者、広告代理店、旅行代理店のほか電気通信事業者などの公共事業者をあげている。國領はエレクトロニック・コマ−スが実現される電子市場において、電子商取引が成立するための5つの機能をネットワーク上の私的ビジネスとして提供する取引仲介型プラットフォーム・ビジネスの重要性を指摘している。
     
    1)取引相手の探索:アドホックな取引相手探索
    2)信用情報の提供:信用担保
    3)経済価値評価:取引される財の価格評価
    4)標準取引手順の提供
    5)物流など諸機能の統合
     
    さらに必ずしも取引仲介型プラットフォーム・ビジネスに必要な機能ではないが、重要なものとして以下の2つの機能を追加している。
     
    6)固定費を変動費に変換する手段の提供
    7)顧客間インタラクション:「場」の創造性の提供
     
     本研究では、インターネット上で重要な役割を担うプラットフォーム・ビジネスは、上記の取引仲介型プラットフォーム・ビジネスと異なる性格を持つと考える。これをインターネット・コマ−スにおける介在型プラットフォ−ム・ビジネス(IC-PFB:Internet Commerce ― PlatForm Business)と名付け、次の様に定義する。
     
    インターネット・コマ−スにおける介在型プラットフォ−ム・ビジネスの定義
     
    「複数のバリューチェーンに介在し、インターネットを利用した商取引を活性化させる私的ビジネス」
     
     さらに、インターネット・コマ−スを活性化させる介在型プラットフォーム・ビジネス(IC-PFB)の5つの基本機能を以下に示す。
     
    1)オンラインカタログ編集: アクセス者の照会に応じて、一元管理されたデータベースから必要なデータを引き出し、リアルタイムに作成されるカタログ編集。
    2)ウェブリンク:他ウェブサイトが持つ内容を結びつけて表示を行う。
    3)相手と製品の検索:アクセス者の照会に応じて、相手と製品について必要な情報をインターネット上で検索し、相手と製品についての情報一覧を提供する。ソフトウェア・エージェント(ボッツ)と共に利用される。
    4)信用供与:顔が見えない売手と買手の与信査定。
    5)評価:製品またはサービスの批評情報、お薦め情報の提供、消費者からの評判の通知。
     
     さらに必ずしもIC-PFBに必要な機能ではないが、重要な副次機能として次の3つの機能を追加する。
     
    6)電子決済:機密保護された電子決済手段の提供。
    7)知識リンク:情報リンク、電子メール、電子掲示板、他メディアを利用したコミュニケーションによって実現されるIC-PFBと各アクセス者間の結びつき(リンク)。この知識リンクによってアクセス者間の知識交換を実現する。
    8)代行:個別評価、交渉、購入、配送について、アクセス者から依頼を受けて代行する。
     
     上記のIC-PFBの基本機能は、経験上多くのIC-PFBに見られる機能を抽出したものである。このとき、基本機能1)、2)、3)はIC-PFBにとって必要不可欠な機能だと考え、ひとまとめにして考える。基本機能4)と5)は、その機能を保持しているIC-PFBが多く見られる。おそらく、基本機能4)、5)を持たない介在型IC-PFBは、私的ビジネスとして成立しにくいものと考えられる。以上の事項を考慮して、取引仲介型PFBIC-PFBにおける基本機能の対応関係を以下に示す。
     

     

    PFBのビジネス機能

     

    取引仲介型PFB(國領(1994))

     

    インターネットにおける介在型PFB(IC-PFB)

     

    PFBのビジネス機能

     

    基本機能1

     

    取引相手の探索

     

    オンラインカタログ編集

    ウェブリンク

    相手と製品の検索

     

    基本機能1

    (必須機能)

     

    基本機能2

     

    信用情報の提供

     

    信用供与

     

    基本機能2

     

    基本機能3

     

    経済価値評価

     

    評価

     

    基本機能3

     

    基本機能4

     

    標準取引手順の提供

     

     

     

    基本機能5

     

    物流など諸機能統合

     

     

     

    副次機能1

     

    固定費を変動費に変換する手段の提供

     

     

     

    副次機能2

     

    顧客間インタラクション

     

    知識リンク

     

    副次機能1

     

    副次機能3

     

     

    電子決済

     

    副次機能2

     

    副次機能4

     

     

    代行

     

    副次機能3

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    3.2 バリューチェーンの定義

     バリューチェーンはサプライチェーンと対比して理解することができる。バリューチェーンとは価値連鎖であり、サプライチェーンとは供給連鎖を意味する。両者の関係は次のように表現できる。
     「バリューチェーンはサプライチェーンの本質である。サプライチェーンはバリューチェーンの実現形である。」
     バリューチェーンは価値付加活動の本質的つらなりに着目した表現であり、設計の対象にはなりえるが、目に見えない価値を積上げていくためのプロセス連鎖である。一方、サプライチェーンは価値付加活動を通じて作られる実際の製品/サービスに着目している。そのため、仕掛品や最終製品がいつどの場所を経由して目的地に届けららるかといた物流的視点が入ってくる。企業間取引が成立する根拠はバリューチェーンの存在であり、そのオペレーション管理であるサプライチェーンとは企業間取引そのものであるといえる。このときのバリューとは、「利用者から見た素材、部品、製品の価値(素材、部品、製品の利用目的)を意味すると見なされる。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    4 IC-PFB類型化の2つの基本軸

     本研究では、IC-PFBの類型化のために「知識チェーン」と「知識インタラクション」という2つの概念を利用する。
     知識チェーンとは、「サプライチェーン上の主体間のコミュニケーション活動」である。これは、サプライチェーン上の他主体の「目的(構想)」の解釈と他主体への「要求」から成り立つ。
     知識インタラクションとは、「主体同士がある場(コミュニティ)において、情報交換と知識共有を行い、場に知識を蓄積していく活動」であると定義する。
     この知識チェーンと知識インタラクションに基づいた基本モデルとして知識チェーン・モデルと知識インタラクション・モデルを採用する。
     
    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    4.1 知識チェーン・モデル

     根来(1998)はサプライチェーンと同じ方向性を持つ知識チェーンがサプライチェーン・マネジメントにおいて本質的に重要なものであると主張し、次の様に述べている。
  • 「知識は、サプライ主体(引用者注:供給者)が自己の価値付加活動の内容を決める際の基盤になる。各サプライ主体はバリューチェーンを作りながら、他社の知識を解釈することで自社の知識を変化させていく。そして、各主体の知識が変化していくことで、知識のつらなり(知識チェーン)が整備されていく」

     根来(1997)は、二者間取引モデルを用いて、サプライチェーン上の知識チェーンの視覚化を行っている。本研究では、この根来の二者間取引モデルを修正して基本モデルの一つとして利用する。下図の大きな矢印は供給者の価値付加活動を意味する。価値付加活動の中にある交差する矢印は、供給業者のサプライ活動の前提になる知識内容である「主体満足目的(事業構想)」と「顧客貢献目的(製品構想)」を表現している。主体者(顧客)と直接供給者間の直接的コミュニケーションは、下図において供給者と主体者を結ぶ実線の矢印で表現されている。

  • 主体者の直接供給者との間には製品を通じた間接的コミュニケーションも存在する。すなわち、顧客(主体者)の製品評価を「売上動向」を通じて間接的に推定するコミュニケーションである。この間接コミュニケーションは、下図では点線矢印で表現されている。
  •  本研究においては、このバリューチェーンにおける直接的そして間接的コミュニケーションを視覚的に表現したモデルを知識チェーン・モデルと呼ぶ。
  • オープン・ネットワークとしてのインターネットが持つ、広範囲のアクセス可能性により、企業間の継続的取引がインターネットを通じて行われる場合においては、他業者との代替可能性は通常取引よりも活発になりうる。これは、インターネットでは、誰でも情報発信の送り手となりうるので、主体者の「主体満足要求」と「顧客貢献要求」の伝達能力が非常に強化され、結果的に知識チェーンの形成・再形成が容易になることを意味している。また、インターネット・プラグイン製品は、「主体満足要求」と「顧客貢献要求」を供給者に自動的に伝えて知識チェーンを形成する強力な媒体になりうる。
    最終消費者における知識チェーン・モデルは、次図のようになる。最終消費者においては、「顧客貢献目的」が存在せずに「主体満足目的」だけが、最終供給者に伝えられる。次の顧客が存在しないので、顧客貢献目的は存在しないのである。このため、最終消費者との関係においては、「顧客満足目的」の信号を自動的に受け取ることができるインターネット・プラグイン製品の存在がさらに重要になる。つまり、インターネット・プラグイン製品は、サプライチェーンの外側にいると見なしうる最終消費者の製品使用環境及び状況情報を供給業者に向けて発信することを可能にするものである。
     また、最終消費者に関係する下のモデルは、サプライ主体間のモデルとは異なり、顧客を複数設定したモデルとなる。最終消費者が一人である製品は希だからである。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    4.2 知識インタラクション・モデル

     國領(1998)は、「コンピュータ・ネットワーク上のコミュティの上で、従来はコミュニケーションの物理的制約から交流することのなかった消費者たちが商品やサービスの情報を交換・共有し合い、それが商品の売れ行きや顧客満足に大きな影響を与えるようになってきた。」とし、ネットワーク上の顧客間の相互作用を顧客間インタラクションと呼んでいる。そして、「顧客サイドにむしろ情報が多い時代には、顧客コミュニティの知恵と相互作用しながら価値を創造し、それを内部化して利益とするビジネスモデルが求められる」と主張している。
    本研究では、国領の顧客インタラクション概念にヒントを得て、知識インタラクションを以下のように定義する。
    アクセス者同士が、インターネット上のある場所においてお互いの知識を交換・共有することによって相互作用を行うこと」
     
     国領の顧客インタラクション概念と知識インタラクション概念は以下の点で異なっている。
     
    1)顧客インタラクションは、最終消費者間のコミュニケーションに着目した概念だが、知識インタラクションは企業間のコミュニケーションを含む、アクセス者間のインターネット上のある場における相互作用すべてを対象にしている。
     
    2)知識インタラクションのモデルでは、アクセス者は、主体満足目的や顧客貢献目的を持つ存在である。そのため、図中のアクセス者は矢印で表現される。知識インタラクションは、図のように表現できる。(この図は、David Ticoll他(1998)からヒントを得ている)
     
     また、コミュニティの特性を示すための指標として、本研究では、コミュニティが閉鎖的(参加資格を限定する)か開放的(参加資格を限定しない)であるかに着目して二分類化を行う。前者をクローズド・コミュニティ、後者をオープン・コミュニティと呼ぶ。
     バリューチェーン終端における最終供給者と最終消費者間における知識インタラクション・モデルを次図に示す。
     
     この図における知識インタラクションは、知識チェーン・モデルにおける消費者満足目的(生活願望)が交差して情報交換と知識共有を行うものである。知識インタラクションからのコミュニティ貢献要求は、知識チェーン・モデルにおける顧客貢献要求とは同一ではない。顧客同士の相互作用の結果として生まれた要求となっているからである。これを「知識インタラクションによるコミュニティ貢献要求」と呼ぶ。知識チェーン・モデルにおける「顧客貢献要求」との違いは、「個」と「コミュニティ全体」の違いである。供給者は、個々の顧客と別々にコミュニケーションと持つのではなく、コミュニティとコミュニケーションを持つのである。このコミュニティ指向の活動における知識インタラクション・モデルを考えることにより、個別情報ではない集団情報を得る方策を見つけることができる。これは、情報技術を利用して個々の「顧客満足目的」の信号を受け取ることができるインターネット・プラグイン製品の存在とは、また別の意味で重要なものである。知識インタラクションによるコミュニティ貢献要求とは、顧客集団としての知識(製品構想)の発信、そして顧客の知識が具現化したハードウェアあるいはソフトウェアのプロトタイプの顧客側からの発信と提供までを可能とするものである。これは、インターネット・プラグイン情報が供給業者に向けて発信する個々の顧客の環境・状況情報と異質の情報である。
  • 「顧客間知識インタラクションによるコミュニティ貢献要求」が生じるコミュニティは、サプライチェーンを形成する各段階のサプライ主体(供給業者)においても成立するものとして拡張できる。これを知識インタラクション・モデルの一般形として次図に示す。この知識インタラクション・モデルにおいてアクセス者間に共有されるものとして業界特有の商習慣、業務規約、技術ノウハウ、事業構想などが含まれる。供給業者同士のコミュニティは、前提資格、参加条件が厳格なクローズド・コミュニティとなる傾向がある。
  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    5 IC-PFBの二つの指向性

     IC-PFBには、二つの指向性がありうる。サプライチェーン指向とコミュニティ指向である。前者は、知識チェーン形成に貢献するIC-PFBであり、後者は知識インタラクション形成に貢献するIC-PFBである。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    5.1 サプライチェーン指向PFBモデル

     
     本研究で採用するサプライチェーン指向PFBモデルとは、サプライチェーン上での各主体間のコミュニケーション活動による、各主体が持つ知識の交換と共有を促すための「知識リンク」機能を提供するIC-PFBである。サプライチェーンにおけるリンク媒介とは、IC-PFBが提供する知識リンクによってサプライ主体間の知識チェーンが強化されることを意味する。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    5.2 コミュニティ指向PFBモデル

     
     本研究で採用するコミュニティ指向PFBモデルとは、主体同士がコミュニティにおいて行う知識交換と共有を促すための「リンク媒介」を提供するIC-PFBである。そして、コミュニティにおけるリンク媒介とは、知識リンクにとってコミュニティにおける知識インタラクションが強化されることを意味する。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    5.3 コミュニティでのオープン・ソーシング

  •  フリーウェアであるPC版Unix OSのLinux形成の過程をコミュニティ指向モデルの視点で見ることができる。Linuxは別名、「オープン・ソースのソフトウェア」とも呼ばれている。このオープン・ソースとは、GPL(General Public License)に基づいていることを意味している。GPLに基づいているとは、そのプログラムについて以下の内容が成り立つことである。

    1)オリジナルソースの著作権は作者に帰属する

    2)オリジナルソースは全て公開される

    3)公開されたソースについては複製、配布、変更が可能である

    4)オリジナルソースに何らかの追加、変更を行った場合にはその公開が義務付けられる。

    5)GPLのライセンスに規定がある場合には、それに従う。

    オープン・ソースを行い、あるウェブ運営者がウェブサイトから配布を行えば、インターネットを通じてウェブ自体がコミュニティとなり、電子メールやニュースグループを通じて知識インタラクションが形成される。ボランティアがソースを更新し、機能修正および拡張されたソースコード(の一部分)がコミュニティに集まることによって知識インタラクションが深化されていく。これは、いわゆるアウト・ソーシングとは異質のものであり、企業知識資源のオープン・ソース化、すなわちオープン・ソーシングと呼ぶべきものである(出口(1997)参照)。

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6 IC-PFBの5つの基本類型

     サプライチェーン指向PFBモデルとコミュニティ指向PFBモデルに基づいたインタ−ネット・コマースにおけるプラットフォ−ム・ビジネスの理論的な5つの基本類型化を行う。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6.1 無段階型PFB

     無段階型PFBとは純粋に市場機能を提供するPFBであり、ウェブリンクは存在するが知識チェーンおよび知識インタラクションは存在しない。無段階型PFBでは、経済評価機能として最も単純かつ効率的な競り(オークション)のシステムが適用される。
    例:FastParts(余剰半導体部品オークション)

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6.2 一段階型PFB

     一段階型PFBでは、サプライチェーン指向PFBモデルが適用され、知識リンクに媒介された知識チェーンが成り立つ。一段階型PFBでは介在するサプライチェーンは、供給者とその直接顧客との間だけであり、直接顧客への知識チェーンのみに介在することができる。この場合、最終供給業者と最終消費者との間に介在するB-to-C PFBだけでなく、供給業者間に介在するB-to-B PFBも一段階型PFBである。一段階型PFBの特別な形態として、一定の属性を持つ買手を絞り込んで会員制情報を適宜に提供し、消費者の目的にかなう最適な商品の紹介を行うバーチャルモールがある。一段階型PFBでは、既存の流通業者が介在型PFBとしてインターネット市場に新規参入する余地が大いに残されている。この際には、一段階型PFBとして高速かつ効率的な検索を行うためのソフトウェア・エージェントの積極的導入が効果的である。
    例:Marshall Industries(電子機器部品流通業)

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6.3 多段階型PFB

     多段階型PFBとは、サプライチェーンを構成する各段階での供給者間に介在するPFBであり、一段階型PFBを多段階に拡張したPFBである。多段階型PFBは一段階型PFBが持つ特性以外に、直接顧客より先の相手との知識チェーン形成にも貢献する。最終顧客のニーズである使用時の環境・状況情報を川上側の供給業者に文字通り、効率良く効果的に汲み上げていくインターネット・プラグイン製品は、この知識チェーン形成に貢献する可能性がある。しかしながら、インターネット・プラグイン製品は未だ世の中に普及しておらず、多段階型PFBの成立と運営は容易ではない。
    例:VerticalNet(垂直市場における電子展示場)

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6.4 クローズド・コミュニティ型PFB

  •  クローズド・コミュニティ型PFBとは、コミュニティ指向PFBモデルにおけるクローズド・コミュニティを運営する私的ビジネスであり、知識リンクに媒介された知識インタラクションが現出しやすくなるように、コミュニティ参加企業(組織)または個人に介在する。クローズド・コミュニティは、事前に限定された参加者間での運営をはかるので、会員参加料、運営費用といった形式で市場対価をPFBが運営組織として得ることが可能であり、コンソーシアム、フォーラムといった名称での私的ビジネスとして成立することができる。

    例:SupplyWorks(OBIエキストラネット構築)

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    6.5 オープン・コミュニティ型PFB

  •  オープン・コミュニティ型PFBとは、知識インタラクション・モデルにおけるオープン・コミュニティを運営する私的ビジネスであり、知識リンクに媒介された知識インタラクションが現出しやすくするためにコミュニティ参加企業(組織)または個人に介在する。オープン・コミュニティとは、参加資格を限定しないコミュニケーションの場を意味する。私的ビジネスとして、オープン・コミュニティを運営する場合は、登録料、アクセス料金、広告費、協力金などが収益源となりうる。ただし、登録料、アクセス料金を課すことは、オープン・コミュニティへの参加者を減らすので好ましくない。

    例:VerticalNet(業界オンライン・フォーラム)

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7 IC-PFBの発展像

  •  インターネット・コマースにおけるバリューチェーンの発展に貢献するという視点からIC-PFBの発展像について論じる。本研究では、バリューチェーンの発展は以下の様な活動が起こるものと考える。

    1)バリューチェーンの創発

    2)バリューチェーンの分流と合流

    3)バリューチェーンの改善と安定

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.1 バリューチェーンの分流と合流

  •  バリューチェーンの発展において、バリューチェーンの分流と合流という2つのパターンをとるものと見なすと視覚的にバリューチェーンの発展を理解しやすい。そして、価値付加活動自体を行わないIC-PFBはバリューチェーンの分流と合流が行われる場を提供することによって、バリューチェーンの発展に貢献することができる。この貢献とは、知識インタラクションを通じて新しく確立が求められているバリューチェーンが明らかになり、それが実現されていくプロセスにIC-PFBが貢献できることを意味している。

    上図で示したIC-PFBが貢献するバリューチェーンの分流の例は新しい知識チェーンの創発と知識リンクを通じた新しいバリューチェーン創発の促進を示している。

     また、次図で示したIC-PFBが貢献するバリューチェーンの合流の例は、従来の知識チェーン間の比較と知識リンクを通じたバリューチェーンの選択と淘汰の推進を示している。

  •  
     
    このように、知識インタラクションから現出されるバリューチェーンの分流と合流が行われることによりIC-PFBは媒介するバリューチェーンの再構築を通じてバリューチェーンの発展に貢献することができる。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.2 オープン・ソーシングによるバリューチェーンの発展

     5.3章で前述したLinuxの例のようにオープン・ソーシングはコミュニティにおける知識インタラクションの活性化、新たな情報資源としての共有と共用の実現のために非常に重要である。このとき、オープン・ソーシングとは、バリューチェーン発展の視点で以下のような利点があるものと考えられる。
    1)他主体への解釈と要求のための情報資源となる
    2)企業間取引におけるコミュニケーション障壁が低くなる
    3)サプライ主体間のコミュニケーションを促す
    4)主体間の新しい結びつきを生み出しやすい
    5)主体間の結びつきを強化する
    6)多くの主体の結びつけを促す
     
     企業の知識資源の持ち主でないIC-PFBは当然ながら、オープン・ソーシングの担い手そのものではない。しかしながら、IC-PFBは企業が自らの知識資源のオープン・ソーシングを行うための場をインターネット上で提供することができる。サプライ主体は、IC-PFBがサプライ主体に提供する中立性、アクセス容易性、比較容易性を利用し、バリューチェーンの改善を促すことができる。また、オープン・ソーシングに参加するサプライ主体とIC-PFBの間には知識リンクが強化され、それを通じたバリューチェーンの分流と合流が行われることも可能となる。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.3 知識インタラクションから見たIC-PFBの発展像

     コミュニティにおける知識インタラクションの発展にIC-PFBが貢献するということは、クローズドまたはオープン・コミュニティ型PFBを介在して情報交換と知識共有が促進されることを意味する。IC-PFBがオープン・コミュニティ化することによって貢献できるバリューチェーンの発展として以下を想定できる。
     
    1)サプライ主体と顧客の欠損情報(各主体が知らないこと、足りないものに関する情報)の交換と充足、知識共有が促しやすい
    2)より多面的なコミュニティ貢献要求(コミュニティからサプライ主体への要求)が生まれる可能性が高まる
    3)欠損情報充足のために有効となるバリューチェーンの発見と創発を促しやすい
    4)バリューチェーンの分流または合流による選択と淘汰を促しやすい
     
    IC-PFBにおける知識インタラクションの発展を次図のように示すことができる。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.4 知識チェーンから見たIC-PFBの発展像

     バリューチェーンにおける価値付加活動を行う主体そのものではないIC-PFBが(バリューチェーンの実原形である)サプライチェーンにおける知識チェーンの発展に貢献するということは、IC-PFBを介在した主体情報の交換と取引継続性の拡大が促進されることを意味する。知識チェーンの範囲拡大と安定性の拡大にIC-PFBが貢献するためには、IC-PFBは多段階型PFBに移行することになる。IC-PFBが多段階化することによって貢献できるバリューチェーンの発展とは以下ようなものであると想定できる。
     
    1)サプライチェーンの本質であるバリューチェーンの上流から下流における多くの主体との知識リンクが多段階型PFBによって形成される
    2)直接取引を行わないサプライ主体(あるいは最終消費者)とも、多段階型PFBを介した知識チェーンが形成される
    3)主体情報の交換と取引継続性の拡大がより促される
    4)バリューチェーンの改善と安定化が促進される

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.5 知識チェーンと知識インタラクション相互発展から見たIC-PFBの発展像

  •  IC-PFBの発展は、サプライチェーン指向とコミュニティ指向の二つの方向を持つ。IC-PFBの発展は、まず商取引の効率化への貢献(サプライチェーン指向)とアクセス者間知識インタラクションのための場の提供(コミュニティ指向)として始まると考えられる。サプライチェーン指向とコミュニティ指向の活動は、相互作用しながらIC-PFBの発展をもたらす。コミュニティにおける欠損情報交換と知識共有は、サプライチェーンの競争力を強化する機能をPFBに与える。すなわち、知識インタラクションの発展が知識チェーン発展に作用することになる。

     コミュニティ指向のPFB機能は、アクセス者との知識リンクの確立へと向かい、知識インタラクションを強化するためのオープン・ソーシングが行なえる場を提供するに至る。この過程で、コミュニティの発展は潜在的なバリューチェーンを明らかにし、この結果、PFBはバリューチェーンの分流・合流を促す。これは、新たな知識チェーンの創発を意味する。このようにIC-PFBは、サプライチェーンとコミュニティの相互作用が行われるための媒介となって、両者の発展に貢献することができる。この知識チェーンと知識インタラクションの相互発展モデルは、インターネットが本来持っているコミュニティとしてのボランティア的精神と対立をせずに、インターネット・コマースによる複数のバリューチェーンの発展に貢献できるモデルであると考えられる。

  • ■◆◇最初に戻る◇◆■

    7.6 IC-PFBの5つの基本類型からの発展形

  •  IC-PFBの基本5類型を知識チェーンの発展性の視点から見るとIC-PFBの形態変化の順序を次の様に示すことができる。

     無段階型PFB → 一段階型PFB → 多段階型PFB

    次にIC-PFBの形態変化を知識インタラクションの発展性という視点から見れば次のように順序づけされる。

  •  無段階型(ノン・コミュニティ)PFB → クローズド・コミュニティ型PFB
         → オープン・コミュニティ型PFB
  •  一方、知識チェーンと知識インタラクションの相互発展性という視点からPFBの形態変化を表現するとき、PFBの5類型を組み合せた新たな2類型を考えうる。すなわち、一段階型PFBとクローズド・コミュニティ型PFBの両面性を持った一段階クローズド・コミュニティ型PFBと多段階型PFBとオープン・コミュニティ型PFBの両面性を持った多段階オープン・コミュニティ型PFBである。知識チェーンと知識インタラクションの相互発展によるPFBの形態変化は以下のように表現できる。
  •  無段階型(ノン・コミュニティ)PFB → 一段階クローズド・コミュニティ型PFB 
      → 多段階オープン・コミュニティ型PFB
     インターネット・コマースにおけるバリューチェーン発展への貢献という視点で見た理念型としてのIC-PFBの発展像とは、知識チェーンと知識インタラクションが十分に相互発展できるような「多段階オープン・コミュニティ型PFB」となるべきだというのが本研究の結論である。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    8 事例によるIC-PFB問題点の検証

     多段階オープン・コミュニティ型PFBから見たIC-PFBの基本5類型の問題点を仮説として導出し、その検証を行うため、IC-PFB17社の事例分析を行った。IC-PFBの特徴を明確化するために作成した特性比較表は事業内容、オペレーション内容、そしてプラットフォ−ム・ビジネス機能の三領域から構成される。項目内容は以下の通りである。
     
    ■事業内容項目(8項目):商取引種別、事業領域定義、製品/サービス、サービス魅力など
    ■オペレーション項目(7項目):広告宣伝、インタラクション性質、アクセス者性質など
    ■プラットフォ−ム・ビジネス機能(7項目):オンラインカタログ編集、ウェブリンク、検索、評価、信用供与、電子決済、知識リンク
     
     この結果、事例から得られたIC-PFB基本5類型の問題点と、IC-PFB発展像の理念型である多段階オープン・コミュニティ型PFBを参照モデルとして利用することによって理論的に導出した各IC-PFB基本5類型における、仮説としての問題点が矛盾なく対応していることを検証できた。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    9 まとめ:今後の課題

    IC-PFBの発展像としての多段階オープン・コミュニティ型PFBは、インターネット上のバリューチェーン発展を意味する、バリューチェーンの合流と分流、合流と分流を通じたバリューチェーンの創発、そしてバリューチェーンの改善と安定に貢献することができることを示した。しかし、予想されるIC-PFBの発展阻害要因として以下を挙げることができる。
    1)インターネット・プラグイン製品による生活情報の透明化への最終消費者の反発
    2)サプライ主体がソフトウェア・エージェントに対して設ける意図的障壁
    3)オープン・コミュニティ化による収益性低下
    最後に、暫定的な整理段階ではあるが、多段階オープン・コミュニティ型PFBの私的ビジネスとしての収益性確保の手段を提示する。
     
    1)ポータル・ビジネスによる収入確保
     例:バナー広告料、商品情報登録料
    2)マッチング・ビジネスによる収益確保
     例:取引成立時の仲介料、会員登録費
    3)コミュニティ運営による収益確保
     例:コミュニティ参加費
     多段階オープン・コミュニティ型PFBによる収益確保のための具体的なオペレーション手順は今後の研究課題である。

    ■◆◇最初に戻る◇◆■

    <参考文献>

    [1]根来龍之:"サプライチェーン・マネジメントのエージェント・モデル",経営情報学会誌,12月号,(1998)
    [2]国領二郎:"オープン・ネットワーク経営",日本経済新聞社,(1995)
    [3]国領二郎:"顧客間インタラクションによる価値創造",DIAMONDハーバード・ビジネス,ダイヤモンド社,11月号,pp.102-109,(1998)
    [4]David Ticoll,Alex Lowy, Ravi Kalakota:“JOINED AT THE BIT”, BLUEPRINT OF DIGITAL ECONOMY, pp.19-33, McGraw-Hill, (1998)
    [5]出口弘:"オープンソーシング経営"、経営情報学会97年春季大会予稿集,(1997)

    ■◆◇最初に戻る◇◆■


    最初のホームページに戻る