(2000年度経営情報学会秋季全国研究発表大会予稿)

顧客間ピアツーピア通信メソッドプロバイダーによる情報交換・共有 -Napster, Gnutella

Peer-to-Peer Telecommunication Method Provider for Information Exchange and Sharing - Napster , Gnutella

東京大学大学院工学系研究科博士課程先端学際工学専攻 木村誠

Makoto Kimura (Research Center for Advanced Science and Technology, The University of Tokyo

要旨
本稿は電子ネットワークを再構成し、ユーザー(愛好者・消費者)同士の情報交換と共有する手段を提供するメソッドプロバイダーの特性について述べる。情報交換と共有の事例として、MP3フォーマットに代表されるデジタル音楽ファイル交換のために利用されているNapsterGnutellaを取り上げる。そして、事業者としてのメソッドプロバイダーにおけるビジネスモデルの可能性を考察する。システムアーキテクチュアとして現在主流のクライアントサーバ・システムアーキテクチュアの他にピアツーピアシステムアーキテクチュアがあり、新しいネットビジネスの可能性がある。
 
Abstract
This paper argues the properties of Method Provider which plays a role of reconstructing the internet and provides the method to information exchange and sharing among users such as music lovers and music consumers. As case studies of Method Provider, author describes the Napster and Gnutella for the exchange of MP3 format files. And author discuss the potential of business model of Method Provider. Currently, the Client Server Architecture is in, moreover, Peer to Peer System Architecture has the potential for the new age of Business Players.
 
1 はじめに
 
 本稿は電子ネットワークを再構成し、ユーザー同士の情報交換と共有する手段を提供するメソッドプロバイダーの特性について述べる。情報交換と共有の事例として、デジタル音楽ファイル交換のために利用されているNapsterとGnutellaを取り上げる。そして、メソッドプロバイダーにおけるビジネスモデルの可能性を考察する。本稿ではメソッドプロバイダーによるビジネスについて問題となる法制度である著作権・著作隣接権の拡張可能性については検討しない。
これまでのネットビジネスはクライアントサーバ・システムアーキテクチュア上でどの様にサーバに対応する固定的なURLにアクセスを集中させて売上に結びつけるかに主な関心があった。一方、システムアーキテクチュアとしては他にピアツーピアシステムアーキテクチュアがあり、新しいネットビジネスの可能性がある(表1)。
廣松・大平(1990)は情報財を次のように定義した。「情報財は経済財であり、それを創造・生産するためには経済資源の投入を必要とする」[8]。そして情報財の必要条件として、 (1)容易に一つの媒体から別の媒体への記録または複製が可能、(2)複製を行うのに元の財の生産に投入されたほどの資源量を必要としない (3)複製の価値は元の財と比較して差がない、の三点をあげている。また情報財において同じ内容を伝達する媒体は一つだけではなく、代替的な媒体も多く存在することに注意を喚起している。しかしながら、顧客属性情報等について情報と情報材の区別は主体によって見解が異なり、明確な区分が困難である。本稿では、廣松・大平(1990)の情報財の特性も情報に含まれるものとして議論を進める。
 本研究で対象とするデジタル音楽フォーマットであるMP3ファイルについて簡単に述べる。MP3とは MPEG-1 Audio Layer 3(MPEG(Motion Picture Experts Group))の略語であり、最も普及している音楽圧縮方式である。オリジナル音楽ファイル容量を約十分の一に圧縮できる。各種プレーヤー、あるいはソフトウェアで容易に再現でき、再生音質は通常のCDと遜色がない。LycosのMP3 サーチエンジンによると、500,000以上の正式登録されたMP3ファイルが検索される。現在、正式登録されていないMP3ファイルは数十億以上あると推測される。代表的なMP3ファイル関連サイトとして以下があげられる。
eMusic.com: MP3音楽ファイルをクレジットカードを利用して購入できる
MyPlay.com:所有済CDからMP3音楽ファイルを複製し、ウェブサイトに格納。いつでもどこでも音楽を聞ける
MP3.com: CDからアップロードする代わりに利用者所有CDと同じ音楽のMP3ファイルをユーザ領域に複製
 一方、アーティストにとってもデジタル音楽配信は魅力が多い。現在のCDは録音、CD化、ジャケット撮影、プロモーションなど、ファンの手に届くまで最低2カ月を要する。日本で2000年7月7日に開設したウェブレーベル『スターダストテーブル』では、アーティストにとってのデジタル音楽配信のメリットとしてアーティスト主導のメディアとなりえること:「柔軟な発想で楽曲を発信できる、アーティストの今の気持ちを一番近い形でそのテンションで配信できる、大規模な宣伝やプロモーションが不要、約1万枚の売り上げで採算が取れて次の新曲を作れる、アーティストにとっては自分がやりたい音楽活動により近づけ、ファンもよりアーティストに近づける」等をあげている。
表1 サーバ集中方式とピアツーピア分散方式
サーバ集中方式
ピアツーピア分散方式
 
・クライアントサーバ・システム
・固定された階層構造をもつ静的ネットワーク
・唯一のドメイン名(URL)にアクセス集中管理
・URL別に大規模データベース・サーバ存在
・http対応ウェブブラウザを利用
 
・ピアツーピア・システム
・接続毎に構成が異なる動的ネットワーク

・ネットワーク全体にアクセス分散

・ネットワーク接続したシステムにデータベース分散

・独自ネットワークプロトコル対応クライアントソフト利用
2 Naspter訴訟と音楽愛好者の特性
 
 NapsterはNortheastern大学学生であった当時19歳のSean Fanningによって開発された。Napsterの初開放は1999年6月であるが8ヶ月後に1千万ユーザに達したといわれている(今の所、独立機関によって正確には把握されていない)。比較例として、AOLが 1千万ユーザに達するまでに6年間かかった。Napster クライアントからサーバNapster サーバに接続したユーザ同士がMP3またはWPA(Windows Player Audio)ファイルを検索し、ピアツーピア通信でお互いが持つ音楽ファイルのみを交換・共有することができる。今の所、 Napsterサーバから他のNapsterサーバにアクセスできない。1999年12月に米国大手レコード会社はRIAA(Recording Industry Association of America)を通じてNapsterを著作権侵害と数億ドルの機会損失を基に起訴した(RIAAは音楽の物理的媒体(カセット、CD)が全世界で毎年500億ドルの売上げを得ていると推定)。
 Pew Institute & American Life Projectは2000年6月8日にレポート「インターネットのフリーローダーは全米1,300万人:今、10億のフリー音楽ファイルがNapsterユーザのコンピュータに」を公表した[2]。2000年4月当時のNapsterでは、平均約5,000ユーザがいつでも500,000 〜600,000音楽ファイルをユーザのPC間で共有することができた。平均的Napsterユーザは約100の音楽ファイルを所有し、他の人と共有できる。ユーザ当たりの100ファイルをNapster ユーザ数である1千万倍すると、Napsterシステムとして、10億ファイルが存在すると推測される。彼らは電話による聞き取り調査結果を集計し、無償で音楽をダウンロードするユーザをフリーローダー(Freeloader)と名づけた。Freeloaderは全米インターネットユーザ14%の約1300万人に相当、Freeloaderの約半分の600万人以下が18_29歳、残りのFreeloaderは30_49歳(42%)、50歳以上のFreeloaderは全体の9%である。全米インターネットユーザの16%である約1500万人は、ソングサンプラー(Song Sampler)と呼ばれる部類に入る。彼らはRealAudio等を利用し、ウェブサーバからファイルにアクセス、ストリームされるファイルから音楽を聴いたりするだけで音楽ファイルを保存しない。全米インターネットユーザの2/3以上(79%)は今まで音楽ファイルをダウンロードしたことがない人であり、彼らを寡黙な多数派(Silent Majority)と名づけている。Silent Majorityの62%はオンライン音楽ファイルを聞いたこともなく、ダウンロードしたこともない。
 一方、Napster側の要請により学識者による数々のレポートが作成されている。Fader [3]では、Napsterによる音楽産業への影響力として二つの仮説を提示している。仮説1:Napsterは音楽コンテンツの売上をなくす(売上激減をもたらす)、仮説2:Napsterは音楽コンテンツの売上を刺激する(売上増加に貢献する)。そして市場レベルと消費者調査の視点から事例を示している。市場レベル:SoundScan,Inc.の調査によると、音楽アルバム小売総額は、前年と比べて8%増加している。CD出荷量は2000年末に10億を超える見込である(1999年末の総出荷量は9億4千万枚)。「音楽産業全体ではCD、DVDを150億ドル以上出荷する見込である。レコード盤でさえ2000年出荷量は10年前の二倍である」[1]。消費者調査:Rolling Stone誌2000年夏季読者調査では、「回答者の90%が以前にインターネットでフリー音楽として聞いた音楽をCDで少なくとも1枚以上購入したことがある。36%がNapsterや他のMP-3ダウンロードサイトで聴いたことによって音楽をより多く購入するようになった。結果として83%がオンライン上で無償音楽を入手することによってCDを購入しないと決心したことはないと答えている。また、1週間に一度はダウンロードを行う人の内、22%がインターネットでアーチストの音楽を聴いた後にCDを購入すると答えている」 [10]。また、Hall [4]では、「大手オンラインCDショップであるCD Now!の年間売上高推移が、1999年12月31日末で前年度比161%上昇の1億4,720万ドルであった(1998年12月31日末の売上高は5,640万ドル)」として、Napsterの登場によってCDの売上が減少したという音楽産業の見解に反駁している。サイバー法を専門とするLESSIG [5]は、「12.この場合、特に重要なことはサイバースペースのアーキテクチャまたはデザインが、サイバースペースのふるまいを規制することである。19.もし、インターネットで最初にあったイノベーションや拡張が持続すべきものであるならば、私の視点としてインターネットの規制は、その基本アーキテクチャのデザインと整合性がとられているべきだ」と述べられている。
 彼らのレポートの結論として、個人的消費者のレベルでは、公開されたあらゆる調査が消費者のファイル共有プラットフォームの利用から、CDの販売損失よりもより多くのCD販売を刺激するという証拠を提出している。「12. データによると、Napsterを複数回利用することは、新しい音楽の購入決定前のサンプル入手のためのプラットフォームとして利用するためである。さらにユーザの多数は、すでに所有する音楽を他の再生可能な媒体に「シフト」させるための便利で効率的なツールとしてNapsterを利用している。19. Napsterおよび他の類似したデジタル音楽ファイル共有のプラットフォームは、音楽産業における需要を喚起し、売上の増加に貢献する」Fader[3]。「19. Napsterは、デジタル音楽にアクセスするための市場のただ一つの参加者ではない。さらにデジタル音楽の便利さを楽しむ音楽愛好者の強い要望が、デジタル音楽の交換または配布のためのメソッドのサプライヤーからの広域な応えを受けている。Napsterは時代の寵児として、過去の技術を改善したことで悪名を受けている。しかしながら、消費者の利益に応えようとさせる市場の大きな圧力がある。もし、Napsterのその行いが中止されても、広範囲な代替業者が参入し規模が拡張されるだろう」Hall[4]
 そしてNapsterを支持するアーティスト側発言としてPRINCEの発言がある [11]。彼は音楽鑑賞には二種類のアプローチがあることを述べている。
・真の音楽愛好者(Real Music Lover)とは単に音楽を消費しない。そして、好きなアーチスト作品と特別な関係を結ぼうとする。いい音楽を知ったときに他の人にも伝えたいと思う。アルバムパッケージをアーチストの声明も含まれた音楽体験として扱い、一次品を所有しようとする。
・音楽の消費者はまさに音楽を消費し、飽きたら使い捨て用品として扱う。その場限りの娯楽である。音質にこだわらず、複製品でもかまわない。
 PRINCEはさらにNaspterが問題なのではなく、現在の音楽産業システムそのものが大きな問題を持ち、そのことに視聴者が気づいているとも述べている。彼が指摘する音楽産業における問題点は以下である。
・真の音楽愛好者のニーズではなく、音楽消費者のニーズに応える仕組みができている。
・知的所有権や著作権について述べるとき、自らが関与する商品の売上損失についてしか、関心がない
・何がよい音楽を評価するセンスを育てるシステムについて興味がない
・Napseter等の登場によって、人が耳にする音楽が何であるかを制御できなくなることに大いに不満である
 
3 Napsterが提供する機能
 
FaderはNapsterの機能として次の7つをあげている。
1) 購入前の音楽サンプル入手のために利用できる
2)「音楽空間の移動」ツールとなる
3) オンラインコミュニティを提供する(チャットルーム、ホットリスト、インスタントメッセンジャー)
4) インディーズ系アーチストがブレイクするためのプラットフォーム(artist.napster.com
5) 宣伝用デジタル音楽交換のための施設(ライブ音源やアルバムの一部を宣伝用として配布)
6) MP3ファイルの再生と再構成のためのソフトウェア(AOL Winamp, MS Windows Media Playerの追加インストールの必要なし)
7) 音楽ファイル以外に適用の可能性(ヒトゲノム解析情報共有プラットフォーム等)
 特に注目すべきは「音楽空間移動ツール」としてのNapsterである。
「ユーザはしばしば、CD、カセット、レコード等ですでに所有する音楽ファイルをダウンロードすることを行う。物理的CDを運ぶよりも、圧縮されたデジタルファイルを自宅や職場、学校のコンピュータに格納、あるいは携帯可能なMP3再生デバイスにダウンロードして持ち運ぶ方が便利なことに気づいた。MP3フォーマットでは消費者が、かさばるカセットやCDを持参することなしに、音楽をより便利なフォーマットで聴くことが可能となった」。
 また、Napsterはオンラインコミュニティ形成を支援するための音楽ジャンル別のチャットルーム(70', 80', Alternatives, Blues, Clasical, Country, Funk, Hip Hop, Jazz, Ska, Techno)を提供している。さらにHotList to Logonを利用してお好みの音楽を多く持つユーザを登録することもできる。インディーズ系アーチストがブレイクするためのプラットフォームとして、2000年4月より開始した新人アーチストプログラム(Napster's New Artist Program )では23,000のプロフィールが届き、その内で17,000以上が登録を承認されている。
 
4 GnutellaNetによる情報交換と共有
 
 GnutellaまたはGnutellaNetはインターネット上にユーザ間ネットワークを作成し、ユーザからユーザに検索該当ファイルが見つかるまで、検索要求が転送される。GnutellaはNapsterと大きく異なり、MP3やWMA以外のファイルにも利用できる。GnutellaNetを運営する企業は存在しない。Napsterサーバのような集中サーバも存在せず、根絶したり規制するのは極めて困難である [7]。 Nullsoftに勤務するJustin FrankelとTom Pepperの二人がGnutellaを開発。2000年3月14日に公開したが、数時間内に経営者からソフトウェアをウェブ上から削除するように命じられた。しかしながら、すでに約1万人がこのソフトウェアをダウンロードしており、明確な経済的支援のないままにソフトウェアは存在し、別の開発者たちによって開発が続行され、複製されている。ソフトウェアとしてのGnutellaはGNU GPL にもとづくオープンソースソフトウェアであり、誰でもそのソースコードにアクセスし、変更することができる。現在、クライアントソフトウェアとして20種類以上のGnutella別バージョン(例:Gnumm, Gnotella,Toadnode)が存在し、開発が続行されている。いつ誰がGnutellaを利用しているか、その規模を推測することは、アクセスを記録できる集中サーバが存在しないために困難であり、GnutellaNetにPCを接続すればいつでもすぐに約数万の他PCを見つけて検索することができる。ユーザがGnutellaNetに検索照会を発行すれば、4時間以内に十万以上のコンピュータから応答が得られる。
 
5 メソッドプロバイダーの特性
 
 上述したNapsterとGnutellaの共有特徴として以下があげられる。
・デジタル通信回線基盤を持たない(ISPではない)
・デジタルコンテンツに関する集中データベースを持たない(ASPではない)
・各主体間における多重ピアツーピア通信のための情報インフラストラクチャを提供する
・コンテンツの所有元をリアルタイムに検索できる(現主流のURL登録型検索エンジンとは構成が異なる)
・各主体間のデジタルコンテンツの交換と共有の方法(メソッド)提供を行う
・固定されたURL(ドメイン取得)の前提が成立しなくても良い
・相互に複製して再配布されるデジタルコンテンツの著作権・隣接権問題(人格権・財産権)が浮上してくる
 本稿では、上記のような特徴を満たす提供者(または事業者)をメソッドプロバイダーと呼ぶ。メソッドプロバイダー自体は基本的に、ユーザーが保持する情報(デジタル音楽ファイル等)の保管を行わないことがこれまでのさまざまなプロバイダーと異なる。このときのメソッドとは、「ピアツーピア通信による電子ネットワークを動的に構成し、ユーザー同士の情報交換と共有する手段」を意味する。この情報交換と共有のためのメソッドにより、メソッドプロバイダーは以下の機能を提供する。
・既存デジタルネットワーク稼動を前提とした動的ネットワーク形成
・ネットワークにアクセス中の主体の一覧を示すインターネットディレクトリ提供
・多対多のコミュニケーション
・ネットワーク上の各主体に向けたコンテンツの照会(検索、一覧表示)
・主体間におけるデジタルコンテンツ形式の情報交換
・主体間での情報の複製による共有
 上述したように、Napsterはデジタル音楽コンテンツは保管しないが集中サーバの存在が必要であり、集中サーバ同士での通信ができない(スタンドアロン型メソッドプロバイダー)。Gnutellaではその存在を必要としない(ピアツーピア型メソッドプロバイダー)。
 
図1 スタンドアロン型メソッドプロバイダー:Napster
 
図2 ピアツーピア型メソッドプロバイダー:Gnutella
 
 
 新たなビジネスモデルの考察と事例
 
 事業者としてのメソッドプロバイダーは、ユーザー同士の情報交換に着目した新たなビジネスモデルを提供する可能性がある。例えば、アーティストにとってはメソッドプロバイダーを通じて複製を許可したプロモーション用コンテンツなどをURLドメインを取得せず、容易かつ大量に配布できるのは魅力である。メソッドプロバイダーのビジネスモデルを考えるために、情報の送り手に受け手に着目する。情報の送り手が対価を払う場合と情報の受け手が対価を払う場合に分けて考える。顧客(ユーザ)の存在を消費者と愛好者の二者に分けた主体間の情報交換と共有のモデル図を図3に示す。
 
図3 情報交換と共有モデル
 
今までの情報(デジタルコンテンツ)の電子商取引は供給元主導型といえる。これは情報の一次・二次交換と呼べる。このときの送り手は著作権・隣接権者またはその受託人である。受け手が一次送り手に対して直接に対価を払う場合(直接取引モデル)、受け手が二次送り手に対して対価を払う場合(仲介取引モデル)がある。その他の電子商取引として顧客主導型もありえる。これは情報の三次交換と呼べる。このときの情報の送り手は著作権・隣接権者保持者でも受託人でもない第三者であるユーザー(愛好者・消費者)である。受け手が情報財の一次・二次送り手に嗜好度合に順じて対価を払う場合(施与モデル)、付加情報提供者が情報の一次・二次送り手に対価を払う場合(広告宣伝モデル)がある。
 
図4 情報交換・共有のビジネスモデル
 
広告宣伝モデルの実現可能性を示す事例として、MP3ファイルへの広告媒体埋め込みを可能とするDigital Payloads社があげられる。同社はインターネット初のデジタル・メディア・プロモーション企業を自称し、新たなソリューションを試みている。特許申請中(2000年8月現在)のPayloads技術のライセンス供与によってMP3ファイルに記録用ラベル、広告宣伝文章そしてウェブリンクを貼り付けることができる。Payloads技術の利用によって無償のデジタル音楽ファイル配信を通じた広告宣伝モデルから対価を得ることが可能となる。Applesoup社Lightshareが競合している。
 施与モデルの実現可能性を示す事例として、Stephen Kingが始めたオンライン連載小説“Plant”がある。2000年6月9日、彼は運営サイト上でオンライン書籍を提供すべきかどうか、そして人々が後で対価を支払ってくれると信用すべきだろうかを尋ねて投票してもらうアイデアについて説明した。6月13日夕方まで総投票5,490数の内95%がオンライン書籍の提供に賛成した。そして総数の72%が人を信用しても良い方に賛成した。7月24日より開始した “Plant”ホームページでは、「もし、他ならぬあなたが払ってくれるのなら物語はつづく。もし、払ってくれないのなら、この物語はこれで終わり」と記した。もし、対価支払い意思表示のクリックをした場合、支払いはAmazon.com経由の“Plant”購読1ドルである。その1週間後の7月31日に経過報告がウェブ上で行われた。結果は、152,132回のダウンロードを記録。116,200件の支払い回数(ダウンロード総数のうち、76.38%に相当)があり、23,000件が後に支払う意思のあることを表明した。Stephen Kingの場合も消費者がデジタル書籍を購入するとみなすよりも読書愛好者が著者と読み手という関係継続のために対価を払うと解釈することが妥当である。
 
7 まとめ
 
 本稿では、Naspter訴訟問題を中心にデジタル音楽に関する情報交換・共有の現状を述べた。デジタル音楽をダウンロードする人ほどCD、DVD等の物理メディア購入機会が増えている調査結果がある。電子ネットワークを再構成し、ユーザー同士の情報交換と共有する手段を提供するメソッドプロバイダーの特性について述べた。
 顧客を消費者と愛好者に分けることにより、デジタル情報ファイルにおける情報交換・共有モデルを示した。
 情報交換に着目したビジネスモデルとして供給元主導型と消費者主導型(施与、広告宣伝)を示した。メソッドプロバイダーは情報交換に着目した顧客主導型(施与、広告宣伝)ビジネスモデルを採用することが可能である。
 
■参考文献
 
[1] Alex Berenson and Matt Richtel, “Music Industry Heartbreakers, Dream Makers”, The New York Times June 25, 2000
[2] ”13 million Americans Freeload music on the Internet; 1 billion free music files now on sit on Napster usersユ computers”, Internet Tracking Report, Pew Institute & American Life Project, June 8, 2000
[3] Expert Report of Peter S.Fader,Ph.D, Wharton School of The University of Pennsylvania
[4] Expert Report of Robert E. Hall, Economics at Stanford University
[5] EXPERT REPORT OF PROFESSOR LAWRENCE LESSIG PURSUANT TO FEDERAL RULE OF CIVIL PROCEDURE 26(a)(2)(B) Case Nos. C 00-0074 MHP(ADR)
[6] Jane Martinson , “Freenet takes music copyright battle to US”, Guardian Newspapers , August 1, 2000
[7] Gnotella ver.0.70ヘルプファイル、よく聞かれる質問(FAQ)
[8] 廣松穀・大平号声、『情報経済のマクロ分析』、東洋経済新報社、1990
[9] 根来龍之・木村誠、『ネットビジネスの経営戦略:知識交換とバリューチェーン』、日科技連、1999
[10]“RS Readers Poll: Music and the Internet” Rolling Stone, p.45, July 6-20, 2000
[11] PRINCE COMMENTARY: “4 The Love Of Music”

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