非常識経営(中小企業のマネジメント2.0)

2009年12月20日更新

何千年もの間、人間の活動を持続させる手段は市場と階層構造しかなかったが、今では第三の選択肢がある。
リアルタイムの分散型ネットワークである。
ウェブは人間がこれまでに生み出したどんなものよりもハイペースで進化してきたが、その大きな理由はそれが階層構造ではないことにあった。
ウェブはすべてが周縁であって、中心は存在していない。
その意味で、それは人類の歴史が始まって以来ずっと主流を占めてきた組織モデルに真っ向から対抗するものだ。(中略)。
ウェブに古いビジネスモデルを打ち負かす力があることは、なかには理解している者もいるが、ウェブは我々の古びた経営管理モデルを早晩、覆すことになるという事実を直視しているものはほとんどいない。

(Gary Hamel, Bill Breen, THE FUTURE OF MANAGEMENT", Harvard Business School Press, 2007(ゲイリー・ハメル、ビル・ブリーン、藤井清美訳、『経営の未来』、日本経済新聞出版社、2008年))より引用。


◎非常識経営のケース
木村誠、"メガネ21(トゥーワン)の非常識経営"、早稲田大学IT戦略研究所ケーススタディ、No.15、全27ページ、2009年12月.

要旨:
 本ケースは、「内部留保のない会社」、「原価率70%の会社」、「人事破壊を実践する会社」として知られるメガネ21こと株式会社21について、経営管理の仕組みとそれを支援する情報システムの運用に焦点に当てて記載している。
 21は、イントラネットとグループウェアを活用し、あらゆる経営情報(店舗別売上、財務、人事評価、社員借入金等)の社内公開、稟議書なし提案の黙認制、ネット上の株主総会を実施している。21グループは、広島県に所在する株式会社21を中心に、全国各地のグループ会社から構成されている。21グループでは、各店舗が独自に発注と品揃えを行い、ロイヤリティは店舗売上の約1%に設定されている。


◎論文(査読レフリーなし)
木村誠、"非常識経営の動的安定性 −「遊べる本屋」ヴィレッジヴァンガードの内部モデル分析"、長野大学紀要、第31巻、第2号、pp.1-15,2009年11月.

要旨:
 非常識経営とは、現在、当然と見なされている職業観および企業内制度が否定あるいは廃止されており、逆に通常と異なる職業観を推奨、あるいは通常と異なる制度を積極的に採用しているが、結果的に収益性を向上しており、企業として存続しうる経営のことを指す。
 木村(2009)は、非常識経営(あるいは反常識的経営)の企業を、その施策による経営要素の間接的コントロールとコントロール放棄の組合せ方がユニークであり、結果的に合理性が成立している企業と位置づけ、経営の内部モデル(経営者のメンタルモデル)として因果ループ表記法(Senge,1990、Kim,1994,1998)を用いた、従業員のやる気・ループと企業の差別化・ループから成る2重ループ構造モデルを導出している。そして非常識経営の経営者は、常識的経営を好ましくない因果関係の連鎖である悪循環モデルとして意識することで、それと相反する因果関係の連鎖である良循環モデルを内部モデルに形成している可能性が高いことを指摘している。
 本稿の目的は、非常識経営と呼ばれる企業の事例研究として、良循環モデルと悪循環モデルの一対構造となる内部モデルの図式化(木村,2009)を試みることで、経営者がメンタルモデルとして保持していると想定される、多様な経営変数を取り込んだ経営の仕組みを論じることである。
 今回は非常識経営と自称あるいは他称される企業として、「遊べる本屋」であるヴィレッジヴァンガードコーポレーション(以下、ヴィレヴァン)を事例として取り上げた。その創立者兼代表取締役の菊池敬一のインタビュー記事およびビデオ内容等を中心に、ヴィレヴァン独特の価値観と用語を抽出し、ヴィレヴァンの内部モデルとして、良循環モデル(アンチチェーンオペレーション・ループと人本主義経営・ループから構成される2重ループ構造モデル)と悪循環モデル(チェーンオペレーション・ループと資本主義経営・ループから構成される2重ループ構造モデル)の図示化を試みた。
 ヴィレヴァンの内部モデルを、良循環モデルと悪循環モデルの一対として表現するならば、正にその両方のモデル間における「ゆらぎ」それ自体も、経営者のメンタルモデルとして捉えることができる。ヴィレヴァンの経営においては、店舗運営の方針と従業員雇用の方針の2軸が大きな位置を占めている。店舗運営の方針には、アンチチェーンオペレーションとチェーンオペレーションの対極がある。一方、従業員雇用の方針として、人本主義と資本主義の対極がある。ヴィレヴァンの良循環モデルは、アンチチェーンオペレーション×人本主義経営の組み合わせと見なすことができる。一方の悪循環モデルは、チェーンオペレーション×資本主義経営の組み合わせと見なされる。チェーンオペレーションを推進することは、本部の権限増大であり、トップダウンによる事業のプラニングとその展開が可能となる。資本主義経営においては、効率化を推進し、市場圧力そして株主からの要求に応えた従業員雇用と、短期間における従業員の職能向上を果たさねばならない。
 本稿で提示した良循環モデルと悪循環モデルが一対となった内部モデルの視座から、非常識的経営の特殊性を次のように記述しうる。非常識経営では、その経営者の主観的な良循環モデルの実現が主要目的となりうるが、副次的に、常識的経営を主観的に評価した悪循環モデルの実現へのゆらぎとなる施策の採用とそのゆれ戻しも起きており、結果的に動的安定性を確保している。

キーワード:非常識経営、内部モデル、人本主義経営、アンチ・チェーンオペレーション、ヴィレッジヴァンガード

木村誠、"反常識的経営の一対型内部モデル −間接的コントロールとコントロール放棄の事例分析−"、長野大学紀要、第31巻、第1号、pp.13-27、2009年7月.

要旨:
 本稿の目的は、特に反常識的経営と呼ばれる企業に焦点を当て、その経営者のメンタルモデル(反常識的経営の内部モデル)の図式化を試みることで、多様な経営変数を取り込んだ経営の仕組みを論じることである。
 反常識的経営とは、現在の所、当然と見なされている職業観の否定、企業内制度の禁止が見られる一方で、通常と異なる職業観の推奨や、通常と異なる制度を実施しながら、結果的に収益を確保しており、企業として存続しうる経営の仕組みを指す。この反常識経営の仕組みの変数として、従業員の労働意欲、企業内の施策、会社の業績を含むためには、全体をシステムとして考える(システム思考)の方法論およびツールを用いることが有効である。
 そのために反常識的経営と自称あるいは他称される1組の企業、未来工業(電設部品製造業)とヒューマンフォーラム(古着販売業)の比較事例分析を行い、因果ループ表記法を用いた内部モデルの図式化を試みた。事例分析では、反常識的経営の施策が間接的にコントロールできる経営変数を見いだし、その変数からなる因果ループを作成した。
 この探索的な事例研究から、反常識的経営の内部モデルとして、従業員のやる気・ループと企業の差別化・ループから成る2重ループ構造モデルを導出した。この内部モデルは、反常識的経営の施策がループ内変数に向かう外部変数として配置されており、従業員のモチベーションと企業の差別化が共に進行するというメカニズム(良循環)を説明しうる。  この反常識的経営の施策は、反常識的経営のための間接的コントロールの側面と、その反対のコントロール放棄の2つの側面を持ちうる。つまり、ある変数を企業経営の構成要素(因果ループ内変数)として成立させ、それを間接的にコントロールする一方で、別の変数を企業経営の構成要素から外し、そのコントロールを放棄する作用も合わせ持つことができる。すなわち、各反常識経営の施策に、間接的コントロールする経営変数と、コントロールを放棄する経営変数をそれぞれ対応づけすることができる。
 この見方を2つの事例に適用することで、反常識的経営の施策がコントロールを放棄していると想定される別の経営変数を類推し、それらの因果関係の連鎖である因果ループを作成し、経営の悪循環となるモデル(悪循環モデル)として導出した。
 本稿の事例分析結果とその考察から、次の仮説が提示される。

「反常識的経営の内部モデルは、良循環モデルと悪循環モデルの一対として分析可能である」。
 本稿が提示する仮説は、反常識的経営の内部モデルの形成と更新プロセスとして、以下の2種類のパターンがありうることを示唆している。

@良循環モデルの構想→成功経験の学習→悪循環モデルの類推。
A悪循環モデルの構想→失敗経験の学習→良循環モデルの類推。

 @のパターンが未来工業の事例、Aのパターンがヒューマンフォーラムの事例に対応している。
 本稿の結論は以下である。反常識的経営の企業は、その施策による経営要素の間接的コントロールとコントロール放棄の組合せ方が独特であり、結果的に合理性が成立している会社である。その外部観察者は、反常識的経営の仕組みを説明可能とするために、その経営者の内部モデルを良循環モデルと悪循環モデルの一対として分析することで、その目的に接近することができよう。


キーワード:非常識経営、内部モデル、未来工業、ヒューマンフォーラム、システム思考


◎研究会・学会発表等

検討中…

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