経営情報科学修士論文研究テーマ1998年4月当時


(修士論文計画)  B to Bインターネット・コマースにおける   ビジネスモデルの分析と提案    No.8975011、木村誠   (指導教員 主査: 根来龍之教授)

1.研究テーマ   B to Bインターネット・コマースにおけるビジネスモデル  の分析と提案を行う。ここで、B(Business) to B(Business)  とは、B(Business) to C(Consumer)に対する言葉で、企業間  取引を意味する。 2.研究の目的と意義(価値)   本研究の目的は以下の2点だと考えている。 2.1.B to Bインターネット・コマースにおけるビジネス・モデル   (As-Is Model)の明確化    一般に公開された通信回線であるインターネットを利用して、  企業を買い手とする商取引を行うB to Bインターネット・コマース  の事例研究を米国SupplyWorks[9]、FASTChange[5]、industry.net[7]  などを対象にして行う。このとき、特に  ・仕入先と顧客とのパートナーシップ(組織間関係のモデル)、  ・ウェブアプリケーションを活用したビジネスプロセス連鎖(プロセスモデル)、  の2つの視点から分析し、現状のビジネス・モデル(As-Is Model)の明確化  を行う。  2.2.B to Bインターネット・コマース本格化に向けたビジネスモデル    代替案(To-Be Model)の提案  B to B電子商取引が本格化するとき、従来の調達形態が大きく変化する。  さらにウェブ上でのデジタル・コンテンツの扱いに特化した新規参入者が  寄生的に既存業者と様々な形態でパートナーシップを持つようになる。  このときに企業が他企業との電子取引を容易に行うための、B to Bイン  ターネット・コマースにおけるビジネス・モデル(To-Be Model)  代替案を提案する。 3.研究の背景  研究の背景として以下の2つをあげうる。  3.1.インターネット新潮流のためのキラー・アプリケーション   キラー・アプリケーションモとは、企業活動における主流のプラット  フォームとなる製品を示す用語である。プラットフォームとは、企業活動の  前提となる場を意味する。たとえば、コンピュータOSはコンピュータアプ  リケーションのプラットフォームであり、通信衛星はデジタル放送のプラ  ットフォームである。B To Bインターネット・コマースは、インターネット  新潮流のためのキラー・アプリケーションとなり、また新しい商取引の機会  をもたらすための不可欠な手段となることが期待されている。  Forester Research社調査によると、B to B電子商取引は、1997年時点では  80億ドルであるが、西暦2002年には、3,270億ドルの規模に達すると推定  されている[13]。  電子商取引は、ネットワーク上の商品とサービスの売買いと決済送金を指し、  Web、電子データ交換(EDI)、電子決済送金(EFT)、電子キャッシュなどのよう  な関連する手段によって実現する。インターネット・コマースとは、インター  ネットをプラットフォームとする電子商取引のことである。  3.2.B to BとB to Cインターネット・コマースの差異  B to B電子商取引と企業−消費者間(B to C)電子商取引におけるインターネット  の利用方法は大きく異なる。B to B電子商取引における企業の購買担当者の  行動には、一般消費者の行動と較べて以下のような違いがある。   ・ネットサーフィンを行う時間は、はるかに少ない。   ・衝動買いをする可能性は、非常に少ない。   ・製品探しから発注までの手続きを簡単にする必要がある。   ・得意先インセンティブプログラムにより敏感に反応する。 4.研究の分析手法(研究の出発点)  本研究では、以下の研究を出発点とする。  4.1.情報ネットワーク上のプラットフォーム・ビジネス  国領[12]は、情報ネットワーク上で不特定多数の主体が取引しようとするとき  コンピュータ・ネットワークだけでは取引が成立しないことから、「誰もが  明確な条件で提供を受け入れられる商品やサービスの供給を通じて、第三者間  の取引を活性化させたり、新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割を  私的なビジネスとして行っている存在」としてのプラットフォーム・ビジネス  の重要性を提唱している。プラットフォーム・ビジネスは、具体的に以下の  ようなビジネス機能を提供する。  ・取引相手の探索  ・信用情報  ・経済価値評価  ・標準取引手順の提供  ・物流など諸機能の統合  4.2.一般化したビジネスモデル作成のためのフレームワーク:    「自律型システム論」   手島[11]は、ビジネスの世界をモデル化するために、オブジェクト、  エージェント(代理人)、アクター(主体またはクライアント)の3つの概念  区分を提案している。オブジェクトは、属性をもちビジネスルールと自然法則  に従って動く存在。エージェントは、アクターの要求に応えてサービスを提供  する。アクターは、エージェントの力を借りてオブジェクトを操作できる存在  である。本研究では、この3つの概念区分によるビジネス世界のモデル化理論  を、「自律型システム論」(仮称)を呼ぶ。   このモデル化理論の効用として、以下を挙げうる。  ・自律的に行動できる存在とそれ以外の物理的存在を概念として明確に区別   できること  ・目的を持った主体を明確化できること  ・階層性を持ったコミュニケーション構造を明確化できること  ・インターネットというネットワーク環境上にも展開ができること  ・自動化できる部分とそうでない部分を明確化できること アクター、エージェント、オブジェクト関係図  ※手島[11]を参考に作成 5.研究の方法  SupplyWorks、FASTXcange、Spree.com、industry.netなどの事例分析  から明らかにする。 6.研究計画案  本研究は、以下のように進めることを計画している。  6.1. B to Bインターネット・コマースにおけるプラットフォーム・ビジネス   SupplyWorks、FASTXcange、Spree.com、industry.netなどを取り上げ  B to Bインターネット・コマースにおけるプラットフォーム・ビジネスが提供  するサービスおよびビジネス機能の現状を調査する。  ・ SupplyWorks: B to Bインターネット・コマースに特化したOpen Buying   on the Internet(OBI)という独自のB to Bインターネット・コマースのプラット   フォームを展開中。現在、Fortune500の55社が会員企業。  ・ Spree.com: 花、贈り物、音楽、本、紅茶、コーヒーを中心としたB to C   インターネット・コマースを行う傍ら、Spree Independent Partner Program   (ISP)を展開し、仕入先への参加のインセンティブプログラムを提供中。  ・ industry.net:製造業における専門技術を17種類に分け、製品メーカー、   部品業者、製品リスト、販売店リスト、業界団体コミュニティを用意。登録会員   数は280,000、登録企業は40,000以上である(1997年1月)。   6.2.B to Bインターネット・コマースにおけるビジネスモデルの調査  SupplyWorks、FASTXcange、Spree.com、industry.netなどを取り上げ B to Bインターネット・コマースのビジネスモデル(組織間関係、業務処理 フローなど)の現状を調査する。業務処理として、データベース登録、購買 発注、受注処理、支払処理などがあげられる。 6.3. 自律型システム論によるB to Bインターネット・コマースにおける   組織間関係のモデル化  B to Bインターネット・コマースにおける、事業主体と、仕入先、プラット フォーム・ビジネス、顧客との組織間関係について、オブジェクト、エージェント、 アクターの3要素から成る自律型システム論によるビジネスモデルを作成し、 今後の展開を予測する。 6.3. B to Bインターネット・コマースのTo-Beモデルの作成    B to Bインターネット・コマース本格化に向けた仕入先、プラット  フォーム・ビジネスと顧客から成る、企業が他企業との電子商取引を容易に行う  ための、あるべきB to Bインターネット・コマースにおけるビジネス・モデル  (To-Be Model)を提案する。  ここで、「容易」とは以下を意味している。  ・ 時間やコストがかからない  ・ 処理が単純  ・ 買手と売手関係の評価が良好である 7.研究の達成基準  研究の達成基準として以下を考える。  7.1 作成したAs-Is Modelが、十分明確であること。また、現状の表現として    的確であること。  7.2 提案するTo-Be Modelが、現状と異なること。また、そのモデルによって    B to Bのインターネットの電子商取引がより容易になると言えること。

■参考文献 [1]"Agent on the Web: Catalyst for e-commerce - A white paper", by Heather Stark, Principal Consultant, Ovum, Ltd. 1997 [2]"Bruce Krulwich's ideas page" [3]Robert H.Guttman, Alexandros G.Moukas, Pattie Maes,
"Agent-mediated Electronic Commerce:A Survey", Software Agent Group, MIT Media Laboratoy
[4]"industry.net URL" [5]"Spree.com URL" [6]"Open Buying on the Internet: A Standard for Business-to-Business Internet Commerse", [7]SupplyWorks White Paper [8]"FASTXchange.com URL" [9]David Kosiur、株式会社スリーエーシステムズ訳、「エレクトロニックコマース」、アスキー出版、(1997) [10]根来龍之・河野宏和・逆爪裕・小野桂之介、 「トータルサプライプロセスの中の企業間関係見直しのフレームワークの提案」、  「経営情報学会97年春季予稿集」、(1997) [11]手島歩三、「組織構造のモデル化の視点について」、経営情報学会誌、Vol.6, No.3,  Dec.1997, P79-87 [12]国領二郎、「プラットフォーム・ビジネスの構造」、DIAMONDハーバード・ビジネス、  ダイヤモンド社、1997年11月号、P34-41 [13]山川裕、「インターネット・コマース」、98年度版最新経営イノベーション手法50、  日経BPムック、(1998)、P80-83

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UPDATED April 4, 1998