経営情報科学修士論文研究テーマ1998年3月末当時


1.研究テーマ ウェブ・コマースがもたらすトータル・サプライ・チェイン新展開 −電子市場におけるサプライ・チェイン・ナレッジ・マネジメント−

2.研究の目的と意義(価値)  経営と情報技術の統合化を最終目標とする本研究の目的は以下の2点である。  2.1.電子市場におけるビジネス・モデル(As-Is Model)の明確化  電子市場とは、特にインターネットを利用して事前に特定されていない  相手との通信による商取引を行う地球規模の市場である。誰でも低い固定  資産費用で、世界中の消費者にアクセスできる。インターネットという  情報ネットワーク上で不特定多数の主体と24時間、常に取引するために  ウェブ・ソフトウェア・エージェントが最大活用されると期待される  ウェブ・コマースのケース・スタディを米国SupplyWorks[9]、  PeasonaLogic[5]、identify.com[7]などで行う。  このとき、  ・経営戦略:明文化された経営方針  ・ビジネス・システム:   最終消費者との相互作用、信用(情報提供)、取引手順、物流との統合  ・情報インフラストラクチャ:情報システムの基盤、プラットフォーム  ・企業文化  の4つの視点から分析し、今後の展開を予測する。  2.2.ウェブ・コマースがもたらすトータル・サプライ・チェイン     新展開の解釈モデル作成  インターネットを通じた全ての企業、業態が直接、消費者とコミュニケー  ションを行い、市場動向の的確な把握が必要とされる時代が到来しつつある。  このとき重要な役割を持つのが、ウェブを通じた電子商取引(ウェブ・コマース)  である。企業−企業間(B to B)、企業−消費者間(B to C)電子商取引が  本格化するとき、従来型の製販統合型供給連鎖パートナーシップの形態が  大きく変化する。さらにウェブ上でのデジタル・コンテンツの扱いに特化  した新規参入者が、寄生的に既存業者と様々な形態でパートナーシップを  持つようになる。このときに企業が、市場動向の学習能力を高めて行く  ために役立つ、トータル・サプライ・チェイン新展開の解釈モデルを作成し  あるべきウェブ・コマースのビジネス・モデル(To-Be Model)を明確化する。 3.研究の背景  研究の背景として以下の3つがある。  3.1. 消費者−メーカー企業間、消費者−小売業双方向     コミュニケーションの変化  メーカーは生産し、最終消費者に直接販売するような製販会社に変わりつつある。  顧客との結びつきは強固になり、顧客の固定化も促進され、顧客から商品改善の  アイデアや商品開発のヒントを得ることも可能となる顧客参加型経営が実現  されつつある。  また、小売業にとって、メーカーや卸売業はチャネル・パートナーであったが  メーカーが直接販売を行うと小売業と顧客を奪い合う競争が始まり、小売業者は  在庫・宅配センターに変わる。その対応策として、小売業自らネットワークを持ち  消費者が自宅で直接注文できるようなオンライン・ショッピングを始めてきた。  3.2.ウェブ・コマースの触媒としてのソフトウェア・エージェント  ソフトウェア・エージェントは、ウェブ上での商取引のための触媒[1]である。  エージェント効果モの重要な点は、顧客独自のコンテンツ、インタラクション、  サービスを提供するためにソフトウェア・エージェントを利用できることである。  地球規模の分散コンピューティング環境であるウェブとソフトウェア・エージェント  の能力は親和性が高く、ソフトウェア・エージェントは、ウェブを受動的、静的、  退屈なメディアから、洗練された高付加価値の環境への進化を加速させる。  ウェブは、ソフトウェア・メディアであり、インタラクションとトランザクション  を発生と同時に記録できる。ウェブ・エージェントの価値は、以下の2つである。  ・コンテンツ、インタラクションとサービスのカストマイジング化  ・インタラクションとトランザクションのデータ解析  3.3. ウェブ・ソフトウェア・エージェントのニーズを高める要因  ウェブ・コマースを円滑に発展させるためのソフトウェア・エージェント  のニーズを高める要因として以下があげられる。  ・顧客ロイヤリティを維持させるアクセス容易なウェブと付加価値型   インターネット・サービス  ・アクセスしやすく、個人に的を絞った広告宣伝が行なえるようなウェブ   のカストマイジング化  ・バスケット分析に代表される大規模データ資源の迅速かつ詳細な分析 4.研究の分析手法(研究の出発点)  本研究では、以下の研究を出発点とする。  4.1.自律的システム論とポリエージェント組織論  出口[12]らは、組織システムを「自律したエージェント」の相互関係として  捉えるポリエージェント組織論を提唱している。これは、内部モデルと  役割セットを持ち、自らこれらについて学習、再組織化が可能な自律的主体、  行為者、組織をエージェントと呼ぶ考え方である。ポリエージェント組織論  では、サービスおよびプロダクトをオブジェクトと見なし、組織は、何らかの  オブジェクトを生成するエージェントである。このポリエージェント組織論  の延長として、手島[14]はビジネスの世界をモデル化するとき、オブジェクト、  エージェント(代理人)、アクター(主体またはクライアント)の3つの要素  に分類できることを提案している。 アクター、エージェント、オブジェクト関係図  4.2.ウェブ・ソフトウェア・エージェントの分類  Guttan[3]によると消費者購買行為(CBB:Customoer Buying Behaviour)  モデルを用いてウェブ・コマースにおける代表的ソフトウェア・エージェント  を以下の様に分類できる。 ソフトウェアエージェントの分類 5.研究の方法  SupplyWorks、PeasonaLogic、identify.comなどの事例分析から  明らかにする。 6.研究計画案  本研究は、以下のように進めることを計画している。  6.1.ウェブ・ソフトウェア・エージェントの現状  1995年6月30日、世界初のショッピング・インテリジェント・エージェント  であるBargainFinder稼動以降、PersonaLogic、Jango、AuctionBot  などの様々な商用エージェント・ソフトウェアが現れはじめた。  「ニーズ発掘、品定め、店定め、交渉、購入、アフターサービス」の役割  で分類したウェブ・ソフトウェア・エージェント活用の現状を調査する。  6.2.ウェブ上で展開されるビジネス・モデルの調査  SupplyWorks、PeasonaLogic、identify.comなどを取り上げ、ウェブ・  コマースを前提としたビジネス・モデル(組織モデル、機能モデル、業務処理  フローなど)の現状を調査する。  ・経営戦略、・ビジネスシステム、・情報インフラストラクチャ、・企業文化  の4つの視点から分析し、今後の展開を予測する。  6.3.トータル・サプライ・チェインのためのソフトウェア・エージェント適用  電子商取引の触媒として、ウェブ・ソフトウェア・エージェントが活用される  ための要件、適用の有効性評価、適用範囲および問題点、その将来性を検討する。  6.4.トータル・サプライ・チェイン新展開のポリエージェント組織論的解釈  インターネットによる企業−企業間(B to B)、企業−消費者間(B to C)  電子商取引において、全ての企業、業態が直接、消費者とコミュニケーション  を行い、市場動向の学習/習得能力を高めて行くようなトータル・サプライ・  チェーン新展開をポリエージェント組織論の概念を用いて解釈する。 7.研究の達成基準  研究の達成基準として以下を考える。  ウェブ・コマースを通じたトータル・サプライ・チェイン新展開のための  ウェブ・ソフトウェア・エージェント適用の提案とサプライ・チェイン・  ナレッジ・マネジメントを成立させる経営戦略、ビジネス・システム、  情報インフラストラクチャ、企業文化の提案  ウェブ・コマースを通じたトータル・サプライ・チェイン新展開の解釈  モデル(As-Is Model)の作成と、サプライ・チェイン・ナレッジ・マネ  ジメントを成立させる、あるべきウェブ・コマースのビジネス・モデル  (To-Be Model)の明確化による経営戦略、ビジネス・システム、情報  インフラストラクチャ、企業文化の提案 エージェントコミニュケーションモデル

■参考文献 [1]"Agent on the Web: Catalyst for e-commerce - A white paper", by Heather Stark, Principal Consultant, Ovum, Ltd. 1997, URL:"http://www.ovum.com/innovate/ia2/ia2wp" [2]"Bruce Krulwich's ideas page", URL:"http://www.geocities.com/ResearchTriangle/9430/" [3]Robert H.Guttman, Alexandros G.Moukas, Pattie Maes, "Agent-mediated Electronic Commerce:A Survey", Software Agent Group, MIT Media Laboratoy, URL:"http://ecommerce.media.mit.edu" [4]:BargainFinder URL:"http://www.bf.cstar.ac.com/bf" [5]PersonaLogic URL:"http://www.personalogic.com/" [6]Jango URL:"http://www.Jango.com/" [7]"House of Zebra", identify URL:"http://www.identify.com/2 [8]"Open Buying on the Internet: A Standard for Business-to-Business Internet Commerse", [9]SupplyWorks White Paper, URL:"http://www.supplyworks.com/obj/white-paper.html" [10]荒川圭基+青木輝夫著、「デジタル流通革命」、ダイヤモンド社、(1997) [11]松下芳生、「戦略的ビジネス・システム構築への5ステップ」、ダイヤモンド社、(1997) [12]高木晴夫、木嶋恭一、出口弘他、「マルチメディア時代の人間と社会   ポリエージェントソサエティ」、日科技連出版、(1995) [13]根来龍之・河野宏和・逆爪裕・小野桂之介、「トータルサプライプロセス  の中の企業間関係見直しのフレームワークの提案」、  「経営情報学会97年春季予稿集」、(1997) [14]手島歩三著、「組織構造のモデル化の視点について」、経営情報学会誌、  Vol.6, No.3, Dec.1997, P79-87 [15]出口弘著、「ポリエージェントシステムとしての組織構造」、  経営情報学会、1995年、春期全国研究発表大会予稿集


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UPDATED April 1, 1998