コンテンツビジネスのケース


■まえがき(2012年度版)
 2004年のe-Japan加速化パッケージで明言されて以降、我が国ではコンテンツビジネスについて、経済学、経営学、経営情報学から論じようとする動きがあります。異口同音に語られるのは、卓越したプロデューサーの育成が急務だということです。
 ハーバードビジネススクール(HBS)の教材が有名ですが、まずは事例を把握することからはじめて理論的にも接近していこうとするケースメソッドという教育手法があります。これは、特に例外が成功事例に直結するようなコンテンツビジネスの教育にも有効だと思います。現在、コンテンツビジネスのケースを作成して共有することで、アカデミックなレベルを高めようとする動きはないようです。個人的にこつこつとケースを増やしています。
 このように公開できるケース原稿は、基本的に公開資料から作成したもののみです。ただし、RIIM-CaseNo21_WeiβSchwarzは、供給元の(株)ブシロード様からお聞き取りを行い、公開許可をいただいております。また、RIIM-CaseNo23_Coloplは、コロプラ様から年表の確認をいただいております。CaseNo24_HatsuneMikuに掲載されているイラスト、写真はクリプトン・フューチャー・メディア(株)様、Lat様、(株)グッドスマイルカンパニー様より許可をいただいています。重ねてお礼申し上げます。
コンテンツ産業界にかかわる皆様方のご理解とご協力の程、宜しくお願い申し上げます。

VOCALOID2「初音ミク」(2007〜2011)):2012年9月23日掲載 RIIM-CaseNo24_HatsuneMiku
要旨: 「初音ミク」はヤマハが開発した音声合成技術VOCALOID2を用いた、クリプトン・フューチャー・メディア社製のCV(キャラクター・ボーカル)シリーズのソフトウェア(2007年8月31日発売)である。キャラクターとしての「初音ミク」は、緑色の長髪のツインテールに、大きなヘッドフォンとヘッドマイクのキャラクターデザインであり、その衣装は、1980年代に大ヒットしたヤマハのデジタルシンセサイザー「DX7」のユーザーインタフェース等の意匠デザインを取り込んでいる。初音ミクがヒットした背景には、視聴者がコメントを書き込める動画配信サイト「ニコニコ動画」の影響が大きい。初音ミクに歌わせた多くの楽曲がニコニコ動画に投稿されて話題を呼び、その派生作品、あるいは多くのオリジナル作品がアップロード・公開されるようになった。  本ケースは、初音ミクを中心としたコンテンツのエコシステム(生態系)の発展に焦点を当て、記述したものである(※)。(※)「VOCALOID」はヤマハ株式会社の登録商標である。「ニコニコ動画」は株式会社ドワンゴの登録商標である。「初音ミク」はクリプトン・フューチャー・メディア株式会社の登録商標である。

コロプラ「コロニーな生活」(2005〜2011):2012年8月16日掲載 RIIM-CaseNo23_Colopl
要旨: 旧名称「コロニーな生活☆PLUS(略称コロプラ)」は、携帯電話やスマートフォンのGPSモジュール(位置情報登録機能)を利用した育成ゲームである。ユーザーの移動距離に応じて獲得する仮想通貨「プラ」を用いてコロニーを育てるだけではなく、隕石落下などのイベントに対処したり、他コロニーのユーザーたちとのコミュニケーションやアイテム等の取引、さらには全国各地のお土産アイテム収集などの多様な遊び方が提供されている。さらに、コロプラカード(コロカ)も提携店で配布されている。  2008年10月にコロプラの運営組織が法人化された後、約1年間でユーザー数が10倍以上増えて100万人以上が登録会員となり、20〜40代のユーザーの割合が多いことから、「大人がハマる」位置ゲー(携帯位置情報ゲーム)と呼ばれている。2011年7月末より、従来のゲームコンテンツサービスとしてのコロプラは、「コロニーな生活」と呼ばれるようになった(※)。本ケースは、コロプラの運営の変遷、株式会社コロプラと他会社の連携事業の展開についてまとめたものである。(※)「コロプラ」、「コロニーな生活」、「コロカ」及び「位置ゲー」は(株)コロプラの登録商標である。

ブシロード製トレーディングカードゲーム:ヴァイスシュヴァルツ(2007〜2010):2011年3月31日掲載 RIIM-CaseNo21_WeiβSchwarz
要旨: 本ケースは、木谷高明が創業した日本初のトレーディングカードゲーム(TCG)専門会社である株式会社ブシロードの成長を、ブシロード製TCG第一弾である「ヴァイスシュヴァルツ」の関連事業を中心にまとめたものである。「ヴァイスシュヴァルツ」は、多数の作品のキャラクターが一つのカードゲームのシリーズとして登場する「キャラごちゃまぜ系」TCGであり、発売前から「ヴァイスシュヴァルツ 五箇条の御誓文」をゲームプレイヤーおよびTCG専門ショップに確約、年間イベントスケジュールを宣伝、全国規模で体験会を開催していった。発売後は、新商品の定期的なリリース、秋葉原で開催する「ブシロードカードフェス」等の恒例イベントを通じて、TCG市場で確固たる地位を形成した。

ポケモンビジネスの10年間(1996〜2007):2009年3月26日掲載 RIIM-CaseNo14_Poke10yrs
要旨: 本ケースは、「ポケットモンスター赤・緑」(1996)以来、子供たちを中心に人気が高い、我が国の代表的コンテンツである「ポケットモンスター」の関連ビジネスを「ポケモンビジネス」と総称し、その10年間に渡る事業の変遷をゲームソフト、テレビアニメ番組、映画作品のシリーズ化に焦点を当てて記載している。 ポケモンビジネスの仕組みは、その原作ゲームソフトのプラットフォーム(ゲーム機)更新(ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンス、ニンテンドーDS)、その派生コンテンツであるテレビアニメ番組「ポケットモンスター」シリーズ更新(ポケットモンスター、ポケットモンスターアドバンスジェネレーション、ポケットモンスター ダイヤモンド&パール)に合わせて変化を続けている。

UniversalCentury.net GUNDAM ONLINE(2000〜2006):2007年4月10日掲載 RIIM-CaseNo9_UCGO
要旨: UniversalCentury.net GUNDAM ONLINE(UCGO)は4年以上の開発期間を経て2005年9月29日に正式サービスを開始したPC向けMMORPG(Massive Multiplayer Online Role Playing Game:大規模多人数オンラインロールプレイングゲーム)である。UCGOは1979年にテレビ放送されたガンダム・シリーズの第1作「機動戦士ガンダム」で描かれた「宇宙世紀0079年における1年戦争」の世界が完全3Dグラフィックで再現されている。cheat、dupe、macroの使用は不正行為である。プレイヤーたちはゲーム仕様と開発進捗にさまざまな不満を持ちながらも、楽しくプレイをするために独自ルール(local rule)を採用、オンラインマニュアルの作成と公開、日々の戦闘活動の記録と公開、プレイを補完するための外部ソフトウェアの並列的使用を行った。UCGOの部隊システム実装後には部隊内プレイヤー間そして部隊間におけるジャーゴン(専門用語)、プレイスタイルの共有が一挙に進行していった。

ポケットモンスター(2002〜2005):2006年5月12日掲載
要旨: ポケモンは任天堂製ゲームボーイ専用ゲームソフトウェアとして1996年2月に発売された「ポケットモンスター 赤・緑」の略称である。任天堂、ゲームフリーク、クリーチャーズの3社は1998年に設立されたポケモン専門店の運営を行う株式会社ポケモンセンターを2000年10月に改称し、共同出資会社ポケモンとして12月からポケモン関連商品の一括管理を行わせることにした。株式会社ポケモンは、ポケモン原作者からの業務委託を受け、ポケモンに関する知的財産権管理とブランドマネジメントを行うことになった。(株)ポケモンの重要な役割は、ビデオゲーム、テレビアニメ、映画、ポケモンセンター各店とカードゲーム、イベント(ポケモンフェスタ)間の調整である。

アニメ作品∀ガンダム(1997〜2002):2005年5月15日掲載
要旨: 株式会社サンライズは、キャラクターマーチャンダイジング(キャラクター商品開発、製造、販売)を手がける株式会社バンダイの子会社であり、数多くのオリジナルアニメーションシリーズを保有するアニメ制作会社である。1999年にサンライズは、その代表作である「機動戦士ガンダム」放映20周年をむかえようとしていた。その前年の1998年にバンダイとサンライズは、ガンダム20周年記念事業を「ガンダム・ビックバンプロジェクト」と名づけて、次々と事業展開していった。そのメインは1996年末に終了したガンダムシリーズのテレビ放映再開である。本ケースは、1997年から2002年に渡って制作・テレビ放映・映画公開されたアニメ作品ターンエー(∀)ガンダムの歴史をまとめたものである。

ケータイ小説Deep Love(2000〜2004):2005年4月10日掲載
要旨: 携帯電話へのメール配信とリンクを通じた携帯電話向けサイトへのアクセスという情報技術(IT)の応用は、電子メール向け文体を小型液晶ディスプレイに表示するケータイ小説という新たな表現方法を可能にした。オンラインで作者と読者がつながるケータイ小説の成功は、従来の連載小説とは異なる速さと拡がりをもった作者−読者間の情報交換、インタラクティブな小説作法をもたらし、従来の紙媒体による書籍出版の体裁にも影響を及ぼした。本ケースは、2000年から2004年に渡ってケータイ小説「Deep Love」の原作者兼プロデューサーであるYoshiが推進したコンテンツ表現形式の変化(メディア変換)の歴史をまとめたものである。

ポケットモンスター(1996〜1998):2005年3月23日掲載 RIIM-Case_Pokemon
要旨: ポケモンは1996年2月に任天堂ゲームボーイ専用ソフトウェアとして最初に販売された後、月刊誌コロコロコミックでのコミック連載、テレビ放映、各種プレミアムのプレゼントやイベントの実施という広がりを見せていく。原作者によるゲーム進行ルール、インタフェースとキャラクターの卓越性に加えて、プロデューサーたちによって別表現形式への変換(メディア変換)が推進されていったのである。本ケースは、1996年から1998年の間に一気に進んだこのメディア変換の歴史をまとめたものである。


■ちょっといいわけ(2006年度版)
 「なんで今、コンテンツビジネスのケースなの?」 「5年、10年前だって作れたんじゃないの?」
その通り。全面的に同意です。ですが、個人的にも世の中の流れ的にも、アカデミックにとりあげようとすると「きわ者」扱いされる嫌いがあるために皆が避けていたということがあります。
個人的なことですが、小・中・高校生といわゆるアニメオタク(そのころ、そういう呼び名はなかった)でとてつもない貴重な時間と資金を費やしていた者として、「あまり振り返りたくない...」という思いが20代位からずっとあったのが一番の理由でしょう。
なんでって、あんな恥ずかしい格好や生活習慣は二度とできません。でもないかな。(^^;)
ですが、不惑の年を迎えてもう振り返ってもいいかな、と他人事のようにとらえることがやっとできるようになりました。逆に熱狂的な消費者だった側として、歴史をきちんと残しておいた方がいい、残しておくべきだと思えるようになったからです。まぎれもなく「アニメ新世紀宣言」は、いわゆる落ちこぼれのぼくたちが支援して今にいたるのですから。大体、ヤマトやガンダムの映画初日を徹夜で見に行くぼくたちを蔑んでいた方々が何を今さらおっしゃいますか? 最後はちょっと暴言。

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