自己作動、自己言及と相互浸透

自律型システム論・自己組織性

アップデート:June 1, 1998 by マコト

オートノミー(Autonomy)

オートポイエーシスとは、生命に備わったオートノミー(Autonomy)のひとつ の説明である。オートポイエーシスは物理的空間内に生きている有機体が単位体 としての特徴を持つという点にかかわっており、オートノミーは、その他の相互 作用に空間にも適用可能な一般現象にかかわっっている。

■有機構成の閉鎖性

システムのい同一性はそれが機能することで保持されているが、その際の観察は単位体が作動している領域内で、観察者と単位体がカップリングしていることで成立している。全ての自律的システムに共通するのは、有機構成的に閉じている  という点である。

■自律的システムの定義

有機構成的なレベルで閉じている単位体とは構成素間の相互作用が織り成すネット  ワークにより、複合単位体と定義される。また、こうした構成素は  1.相互作用を通してこれらの構成素を産出した相互作用のネットワークを再帰的 に再産出し、 2.このネットワークを、構成素の存在する空間に、一つの単位体として実現する。  このことより、以下が帰結される。  

□物理空間内における有機構成の閉鎖性: 物理空間内で生じる構成素の産出過程を考慮に入れた場合であれば、有機構成   の閉鎖性は、オートポイエーシスと等しいものである。  □円環性(トーラス) :  ひとたび円環性がたち現われてしまえば、諸過程は、自己計算を行う有機構成を構成し、その結果として有機構成は環境からの偶然性の介入を経ずに有機構   成それ自体の作動を通じて一貫したものになる。またもし、有機構成の閉鎖性が崩壊するようにことがあれば、単位体は消滅する。  

□観察者との相互作用: われわれは、認識された自律的システムと相互作用することができる。

□観察者と認知活動:  有機構成の閉鎖性の特徴を浮き彫りにするにあたっては、観察者自身、当該のシステムを特定する過程の一部となる。これは観察者がシステムを記述しているからだけではなく、システムを規定する諸過程のネットワークのリンクのひとつとなっているからである。この状況の特異性は、観察者がおのれの境界と環境を同時に考察しようとしても単位体の外部へは足を踏み出せないがにもかかわらず観察者は規定的な構成素として単位体の働きと結び付いているという点である。つまり、システムの記述それ自体がシステムを異質なものとしてしまうことを意味する。観察者は、自分とシステムとの関係を変容するような了解を通じてシステムと関連している。  

□閉鎖性と認知領域:  単位体がひとたび閉鎖性を通じて確立されると、単位体は自らが同一性を失うことなく相互作用しうる領域を特定することも明らかである。こうした領域は観察者の眼に捉えられた環境に関する記述的な相互作用の領域である。それは単位体にとっての認知領域にほかならない。オートノミーが意味するところは、自己ー法則である。オートノミーとは、作動、内部規則および、それ自体のアイデンティティの維持といった内部からの規定を表わす。それに対する外部からの規定としての消費、入力と出力、他者のアイデ  ンティティの維持、といった制御がある。  両者の相互作用は、遺伝学から心理療法にいたるまでの広大な領域に及ぶもの  である。われわれとの両者の相互作用のパラダイムは、以下のようなものである。   

制御システムとの相互作用       : 指令

制御システムとの相互作用の不満足な結果: 語謬

自律的システムとの相互作用       : 会話

自律的システムとの相互作用の不満足な結果: 了解の不成立


ハイパーサイクル(Hyper Cycle)

自己触媒システム(I=F(...,I,...))の最も複合的な形態。 個々の触媒が自己複製を行うと同時に、この複製を通じてサイクルの各段階の生成 プロセスを媒介するようにサイクルが閉じたとき、ハイパーサイクルが成立する。 そのためひとたびサイクルが閉じた段階では、自己複製サイクルと循環的な生成 プロセスが組み合わさったように図式化される。


 ハイパーサイクル


Ii+1:自己複製とEi+1を生成するプロセスの触媒
 Ei :次の触媒であるIi+1を産出するプロセスの触媒 

このサイクルができ上がったとき、サイクル全体で見ると、自己複製することが 同時に全サイクルを作動させることにつながる(システムの二重化)。 ハイパーサイクルからの帰結は以下の通りである。

■ハイパーサイクルの成立しているシステムでは、自己複製的な構成要素の自己と システム全体の自己とが一致する。 構成要素のシステムは盲目的に自己複製し(独立性)、また全サイクルの作動を 通じて自己複製が触媒される。全システムは、要素的システムの作動に依存しな がら(従属性)にもかかわらず要素システムを他の代替可能な1システムとする。

■ハイパーサイクルによって、先見的な全体性を全面的に廃棄できる。 独立したシステムが他に代替可能な1システムとしてハイパーサイクルに参加できる

■ハイパーサイクルの形成は階層分化に新たな機構をもたらす。 自己維持するものが、自らの維持を促進するような新たなサイクルに参加するとき 階層分化が生じ、各システムの内部に機能分化が生じる。 ハイパーサイクルは円環的な作動を維持するために、必要な素材を取り入れ、 様々な生成産物を円環の外に放出している。動的に自己維持し、しかも自己維持 することによって新たなサイクル形成へと参加しうる開放系のシステムがハイパー サイクルである。 システムがハイパーサイクルに代表される階層構造を備えるようになると独立 したシステム間に新たな段階の関係が形成されることがある。ハイパーサイクル においては、下位の自己複製システムは代替可能な構成要素である。そのため、 複数のハイパーサイクルが下位の自己複製システムを共有したり、一方のハイパー サイクルが要素サイクルの一つを他方のハイパーサイクルから全面的に借り受ける 事態が生じる。これがシステム間の「共生」である。共生によるシステム統合は、 独立したシステム相互による新たな段階の階層生成である。


オートポイエーシス(Autopoiesis)

網膜に代表される神経システムは、外的刺激を受容してそれに対応した反応をする のではなく、むしろそれ自身の能動的な活動によって視覚像を形成する。 そのような神経系をモデルにして有機体論として、マトウラーナとヴァレラの 共著論文「オートポイエーシス・システム-生命の有機構成」 (1972)で構想。永久生命機構または、自己制作システムとも呼ばれる。 オートポイエーシス・システムは、自らの作動を通じて存在領域を定め、空間的 位相領域を決定し、さらに高次の自己言及作動を通じて時間を獲得する。 オートポイエーシスの機構の定義は以下である。

オートポイエーシス・システムとは、構成素が構成素を産出するという産出 (変形および破壊)過程のネットワークとして、有機的に構成(単位体として規定) されたシステムである。このとき構成素は、次のような特徴を持つ。

1.変換と相互作用を通じて自己を産出するプロセス(関係)のネットワークを絶えず再生産し実現する。

2.ネットワーク(システム)を空間に具体的な単位体として構成し、また空間内において構成素は、ネットワークが実現する位相的領域を特定することによって自らが存在する。

オートポイエーシスの強調点は、以下の2つである。

1.システムは自らを産出するような構成素を産出するようになったとき、システムが作動し、システムが成立する。産出プロセスのネットワークであるシステムの側から見れば、このネットワークを再産出するような構成素を見出すことができればその構成素がどのようなものであってもただちにその構成素を利用してシステムは作動を開始し、その構成素を基に空間内の構造を形成する。

2.システムの作動によって、システムは、構成素に応じて空間内の位相領域を定め構成素に応じた構造を形成する。 ここで重要な事は、オートポイエーシスの定義を満たす構成素であれば、 物理空間内に場所を占めるものでなくてもオートポイエーシス・システムが 成立するということであり、システムは、構成素を指定することにより、 位相領域を確定することができればよい。つまり、システムが、自らを再産出 する構成素を産出して、作動することによって位相領域を定め、システムと構成素 がその位相領域に存在することを意味する。 オートポイエーシスの規定には空間の概念が含まれていないが、システムの実現を 考えた場合に必然的に位相空間を導入せざるを得ない(空間の概念の変更)。

これがシステム実現の位相的構造分析と呼ばれるものである。  例)細胞システムの実現  空間的な3次元ではなく、システムの作動継続の必要条件の側から設定される

位相空間として

  第1軸:構成関係の軸、第2軸:特定関係の軸、第3軸:秩序関係の軸というx−y−z座標を設定し、産出機能の面から細胞システムをこの3次元位相空間に投影する。


社会システム

ルーマンは、「社会システム」を 「コミニュケーションを産出するプロセスがコミニュケーションによって再生産され反復的にコミニュケーションが産出される、コミニュケーション を構成素とするオートポイエーシス・システムである」とした。

社会システムは、コミニュケーションを産出することを通じて自らの位相領域 を定め、コミニュケーションはその領域に存在する。 社会システムは、連続的にコミニュケーションを産出するシステムであり この構成素の産出を通じて、社会システムは自らの境界を区切る。この境界 によって区分された領域が、社会システムの位相領域である。


心的システム

心的システムは、オートポイエーシス・システムの中でも最も複雑な機構で 作動しつづけるシステムである。しかもシステムの作動が当初よりほぼ全域に わたって自己自身に関与するという意味で、心的システムは高次の自己言及システムである。

心的システムの第1次的行為は、作動を通じて構成素である 思考を産出し、それによってそれによって自己と環境を区切ることである。 この境界が、感知しうるもの/感知しえないものの2分法コードになる。 環境は、システムそのものによって区切られた感知しえないもの、見えない ものである。


システムのカップリング

オートポイエーシス・システムは、自らの作動を通じて一貫して自己を維持する 単位体である。複数個の単位体の関係を「カップリング」と呼ぶ。マトラーナ は次のように規定している。

「2つ以上の単位体の行為において、ある単位体の行為が相互に他の単位体の行為の関数であるような領域がある場合、単位体はその領域でカップリングしているといってよい。カップリングは、相互作用している単位体が同一性を失うことなく、相互作用の過程でこうむる相互の変容の結果として生じる。」

■要素システム複合の3パターン

オートポイエーシスの要素システムが複合する際の形式として、3つのパターン がある。

1.高次従属型:

要素システムのオートポイエーシスが高次システムのオートポイエーシスに従属するように維持される。要素システムのオートポイエーシスが放棄され、高次システムだけがオートポイエーシス単位体となる。  例)原核細胞から真核細胞への移行

2.ハイパーサイクル(ネットワーク)型:

要素システムが融合し、高次の複合体を形成するが、この複合システムはオートポイエーシス的な作動をせず、要素システムのゆるやかなネットワークを形成する。個々の要素システムは、オートポイエーシスとして作動しながら、次のシステムの作動の触媒となるようにして、次々と連鎖しながら円を描くように一まとまりの複合体を成す(アイゲンのハイパーサイクル)。

例)近接した組織細胞同士のコミニュケーション

3.階層関係消滅型

要素システムが複合して高次システムを形成し、高次システムはオートポイエーシス単位体となり、要素システムもオートポイエーシスを維持し続ける。このとき、高次システムは、要素システムを単位体とするのではなく、新たな構成素を設定  して新たなオートポイエーシス単位体となる。  

例)多細胞個体における新たな媒介物質を利用したコミニュケーション


相互浸透

複数のシステムが作動を通じて互いに他のシステムを環境とするような事態 (システムのカップリング)が生じている場合のモードの1つが相互浸透である。 しかも観察者から見て、複数のシステムが連動し共作動している場合のみ、 相互浸透を適応できる。

■階層関係の消滅

システムが複合体を形成する際、複合体において新たな構成素が設定されて反復的に作動を継続すれば、新たなオートポイエーシス単位体となる。 オートポイエーシスは、システムの作動をシステムの位置から捉えるため、 要素システムは新しいシステムの基礎構造ではなく、システムの作動そのものによって区分される環境となる。 そのため、要素ー複合体関係で組み立てられる一切の階層関係が消滅する。 階層関係に見えるものは、システムー環境関係に変換され、相互浸透の関係となる。 オートポイエーシスでは、システム間(システムー環境)に上位も下位もなく、 ただ多様なシステムが交叉しながら作動している。経済の下部構造や コミニュケーション行為の基礎構造は、基礎づけ関係から解き放たれて、 一つの位相領域に過ぎなくなる。(還元主義の不可能性)

■固有の位相領域の交叉

相互浸透は位相空間が交叉していて、2つのシステムのそれぞれの作動に相互に 潜在的なパラメータを提供している場合である。例えば、人間と社会は、 それぞれ独自のシステムとして作動し固有の位相空間領域を形成する。そして この位相領域が相互に他を貫くように交叉している。

訳)人間個人のシステムの作動は、どのように社会システムに浸透されていよう    とかけがえなく自分自身であり、またコミニュケーションの産出を通じて不断にシステムに浸透している。ここでは、個人のかけがえのなさと個人が社会に巻き込まれていくことが、無理なく両立する。


自己言及的作動

コミニュケーションを構成素とする社会システムと思考を構成素とする心的 システムは、本来観察者の視点をとることができない。それぞれ、システムを 捉えようとするとき、高次の作動が生じてしまうからである。このような自己 自身についての構成素の産出を行う機構を自己言及的作動という。

心的システムの作動を行い、心的システムについての思考を産出  → 自己反省(思考についての思考の産出)

社会システムについて巻き込まれながら、社会システムについての語りを産出  → エスノメソロドジー(コミニュケーションについてのコミニュケーション)

オートポイエーシスにおける自己言及的作動は、システムの構成素の産出的作動 によってシステムそのものの境界が形成され自己が区切られた後に自らの構成素 と相互作用するように成される高次の産出的作動である。


心的システムの構造構築分析

心的システムの構造建築の分析にオートポイエーシスは威力を発揮する。オート ポイエーシスでは、心的システムは構成素を産出することによって、構成素を もとに構造を構築するものとする。そのため、構成素の産出連間を通じて、 構成素そのものの分析から、構造形成へと至る回路を明らかにすることができる。 その際、作動を継続することの必要条件の側から、心的システムの位相空間を 構想することができる。

1.境界の軸

反復的に作動するシステムは、作動することによって自己の境界を区切る。 ひとたび境界の位置を定めれば、システムは反復的作動を通じて同じ位相学的  位置に境界を区切り続ける。  例)人には聞こえない音が聞こえる(特異な例)

2.同一性の軸  

心的システムが一貫して作動を継続するためには、作動の同一性を支えるために  何らかの同一性の核になるようなもの(構成素)を産出しているはずである。

例)原風景、原体験

3.構成産物の軸

作動を通じて言明と物語を紡ぎ、構造の内容を満たす。これによって、構造が 安定すると共に、かえってシステムの作動そのものを制約することになる。

 例)自己宿命の物語、他人からの見てくれを想定した自己イメージ化の産出

これらの境界の軸、同一性の軸、構成産物の軸によって張り出される位相空間に 心的システムの構造が投影される。オートポイエーシス・システムは、自らの 固有性を構造構築を通じて実現する。


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