よせなべ物理142号

よせなべ物理サークル会誌142号

(旧 教材・教具を工夫する会)

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第142号抜粋

1.142回例会の案内 


2.次回以降の予定


3.紙でぜんまいカー

      野呂 茂樹
 出典:「紙の力で動く」成井俊美著 草土文化社

 紙でぜんまいを作るアイデアに感嘆。よく走ることに感動。ダッシュタイブはチョロQがなぜプルバック以上に走るのか.泥や雪道でアクセルを強く踏んではいけないのか。
 機関車の車輪の摩擦と客車の車輪の摩擦の違いなどを考察するのに好適です。
 是非、挑戦してください。

ポイント
・シャーシー:厚紙(プラ)段ボール、デコパネなど
       紙箱、トイレットペーパーの芯、紙コップなど
・車輪:直径は4cm程度。後輪(駆動輪)は、輪ゴムを巻くなどして床との摩擦を大きくすることが肝心.
 1)プーリー、牛乳びんのふた(軸穴の部分にデコパネや発泡スチロールの小片をつけると安定がよい.)
 2)片面段ボールを巻く。(見映えがよい.)
 3)デコパネから切り取る.(安価・容易)
 4)プラ・ボビン

・車軸:竹ぐし:(輪受けにストローを用いると回転がよくなる.)
・ぜんまい:ケント紙
 1)基本タイプ 幅1cm 10〜20回巻き(50cm程度の長さ)



 2)ダッシュタイプ  幅2〜3cm 2枚童ね(のりづけしない)(ブラ板も利用できる.)






4.力の場について  ・・・生徒の解答・・・

 1996(平八)年度第3学年学年末考査回答
      埼玉県立和光国際高等学校物理科  千野 司

問い。力の「場」について簡単に説明せよ。
3組
・物体がある性質を帯びたときこその物質の周辺に影響を与えること。
・電子よりもはるかに小さい素粒子による情報交換が力を作り、場となる。
・物体がお互いに及ぼし合う力。
・力の「場」は電気のカ、強いカ、弱いカ、万有引力からできている。
・その場が特別な性質を持つために離れていても力が働くこと。
・物質が存在することによって性質を持った空間。
・力が働いているところ。
・ある力が働くことによってその場の性質が変わること。
・ある力がある場所にあると、そのカの回りにも影響を及ぼす。
・物体がまわりの空間に何らかの影響をあたえその空間に性質をもたせる。このような事を「場」という。
・そこに物が存在すると認織することによって発生する力。例.A君がいると明るく感じる等
・質量や電荷をもって物質や粒子等によって性質が変化した空間。
・カには4つ「万有引カ」、「電気カ」、「中間子カ」、「弱いカ」があり、それぞれその力を媒介する粒子「引力」->重カ子、「電気カ」->光子などが「場」の中で仲だちとなって作用する。
・物質のまわりの空問に生じる・・・・・・例.あまりよくないけどヤクザ屋さんのまわりにはひとがよりつかない等々
・力の「場」物質的なカがおよぶ限界の位置(所)をりんかいという。
・力が及ぷ範囲。電場
・何もない所にある物が置かれるとそのものの周りの募囲気が変化する。このことを場が生じるという。
・空間にある例えぱ磁石とかが目にみえない影響を空間にあたえること。空間が変化していること。
・「あいつがいると周りの雰囲気が明るくなる」というように、ある物体が周りの空間に何らかのカを発していること。
・例えぱ、+が入ると、−が引き付けられる。−が入ると、+が引き付けられる。
・カがその物体に何らかの影響や変化を及ぽすことのできる、範囲またはその場所。
・核力は狭い距離で働く。他は遠くはなれていても働く。磁カ、電気カ
・場はその場所に1つしかいられないこの場を示す「場」
7組
・物質の原子核の中に遠心力=電気の力が成り立っており、陽子の周りを回っている粒子は段々と場をつくる。
・ある1点で起こった力が及ぼす範囲。(空間など)
・あるカがその空間に影響を与えてしまうと「場」が発生する。
・互いに影響を及ぽす場所。
・力が働いている空間を場という。

5.「場を物理の主役に」についての反響と回答

     埼玉県立北本高校  石井登志夫

◎西尾先生より
 ア 重カや電磁気カをバネに例えるときは、そのバネが自然長0で引カのみを及ぼすという仮想的なバネであることに配慮が必要。
−>逆に弾性カによるいわゆるバネの性質が、「場」によって引き起こされる性質であり、ものの性質ではないと考えます。また、私ほ一般に伸び縮みする物をバネと呼んでいるのであって、フックの法則が成り立つかどうかなどについては考慮していません。
 イ 線密度がものの勢いを表す量とあるが、慣性を表す量であるとした方がよい。
−>その通りだと思います。
 ウ 「熱」「物理IA」「偏差値輪切り」については異論があり、、もっと丁寧な議論が必要。
−>是非そうしたいと思いますが、私にとっては重要な主張なので今のところ訂正するつもりはありません。
 エ (放射についてのくだりで)分子間カの場と電磁場が同じものという誤ったイメージにつながらないか。
−>私も自身はないのですが、分子間カの起源は電磁気カではないのでしょうか。だとすれぱ分子間カの場と電磁場が同じと考えても良いのでは。
 オ カの位置エネルギーや弾性エネルギーも物体が持つと考えても、生徒が形式的にに統一して理解する便宜を考えれば、かえって良いのでほないか。
−>結局は自然観の問題だと思いますが、できればこの多様な宇宙をできるだけ少ない原理で説明するのが物理だと思います。すると、ものが動き、場が伸縮するということで、少なくとも高校物理の範囲はほば網羅的に説明できるはずで、その点に注目して欲しいと思います。

◎千野先生の試験「カの場について簡単に説明せよ。」に対する生徒の解答。
 大きく分けて3通りの考え方があるように思いました。
 ア 雰囲気のように心理的なものを考えている。
−>やくざ屋さんのまわりには人が寄りつかない。
 イ 幾何学的な位置、範囲を考えている。
−>ある一点で起こったカが及ぼす範囲。
 ウ 実体として場をとらえている。
−>空間にある例えば磁石とかが目に見えない影響を空間に与えること.空間が変化していること。
 このような意見を対立させて考ええさせてみても面白いのではないてしょうか。

◎根本先生(日立第一高校)からの質問
 ア 回路で、エネルギーが空間を伝わってくることを示す実験とは具体的にはどんなものか。
−>のらねねこの挑戦」参照。
 イ 「場には慣性のような性質がある」ことはどんな実験で示すのか。
−>慣性という言葉は誤解を与えるかもしれません。私は一定の状態を保とうとするという意味で使いました。具体的にはレンツの法則などを実験で示します。


6.総合理科における環境教育の試み

     上尾東高校  西尾真一
−−上尾東高校研究紀要 第11号 1997 より−−

1.はじめに・・・・総合理科という科目
 総合理科は、現行の教育課程で導入された新しい科目で、本年度が本校において,初の実施年度てある.従来の物化生地と異なる総合科目てあるので、各学校における開設が少ないことが予想されたため、教科書会社が二の足を踏み、今年度まては教科書が全く発行されていない(来年度より1杜のみ発行)そこで、やむなく文部省自身が指導資料をあわてて編集したといういわく付きの科目である.
 学習指導要領によれば、扱う内容の大項目は、(1)自然の探究、(2)自然界とその変化,(3)人間と自然、(4)課題研究の4つからなっている.そして、(3)の小項目や「肉容の取り扱い」を見ると、エネルギー教育・環境教育・STS教育(科学・技術・社会の相互関係を扱う教育)をやりなさいということらしい。本校の理科の話し合いでも、かねてよりこの科目て環境教育をやろうということになっていたので、1年間を通して環境教育の科目として進め、(3)以外の内容は触れられるところで適宜扱うということにした.


2.1学期の取り組み
 まず、地球環境問題のアウトラインを俯瞰させることを考えた.そこで、1989年にNHKで放送された「地球汚染」という番組の録画ビデオを見せることにした.本当は、もっと新しい番粗を見せたいのだが、残念ながら,最近は地球環境間題全般を扱った特番はほとんどと言ってよいほど放映されない.バラエティー番組やクイズ番組などにもよく環境問題が話題に上がるようになったかわり、環境問題,そのものを扱った番組は意外にないのである.
 さて.番組「地球汚染」は「大気編」と「海洋編」に分かれ、扱われているテーマは、主として1)オゾン層の破壊、2)地球温暖化.3)海洋・湖水汚染、4)有害化学物質の拡散の4つである.番組内容の紹介とそれをさらに深めた解説の載った同名の書籍が刊行されているので、詳しい内容はそれを参照されたい
本校図書館も所蔵)。生徒には、ビデオを視聴する度にメモや感想を書かせ、後で講義形式でプリントを使ったまとめを行った.
 この地球環境問題の概論の後には、2つのモジユールの各論をしいて内容を深めた.最初「オゾン層の破壊」で、2番目のテーマは「地球温暖化」である.教材は、テレビ番組の,録画ピデオ、表・図・グラフ主体のプリント、新聞記事のコピーのプリントなどてある.ただし、地球温暖化については、後で述べるSAAPの数材プリントも使用した.
 なお、4月には、この総合理科の授業に活用するつもりもあって、「地球にやさしい高等学校環境境づくり推進事業企画」として「ゴミの排出抑制とリサイクルの推進」を提案した。幸いこの提案は採用され、1学期(6月未〜7月初め)と2学期(10月末〜11月初め)の2回にわたって、学校で出るゴミの計両作業を実施できた.
 それから、授業に関連する適当な実験がなかったので、NGOの「NO2酸性雨全国ー斉測定実行委員会」が6月6〜7日の24時間で行っている二酸化窒素の全国一斉測定に協力する形で、生徒に自宅での二酸化窒素測定をさせた.

3.2学期の取り組み
(1)SAAP
 国際的な環境教育プロジェクトであるSAAP(Science across Asia Pacific:アジア太平洋地域の科学)に参加することにより、地球温暖化の学習を探め、合わせて国際交流も行うことを年度当初より考えていた.SAAPとは、7つのモジュールに分かれた科学およぴ環境問題の学習プログラムて、アジア・太平洋地域の十数カ国が対象になる.各国の参加学校の生徒は、SAAPで用意された共通の数材プリントで学習する.各教材にはいくつかのアンケート項目が載った情報交換用紙があり、参加学校の生徒はその教材に沿って調べたり.討論したりして、その情報交換用紙を作成する.そして、作成した情報交換用紙をいくつかの他国の参加学校と交換することにより,他国の現状を把握し、比較検討してさらに考察を探めるのである.
 本校が取り組んだのは、「地球温暖化の影響」というテーマだが、その他の6テーマは以下のとおりてある.
 「飲料水」「食べ物」「家庭での工ネルギー利用」
 「再生可能工ネルギー」「熱帯雨林」「家庭ののゴミ」
 なお、この教育プログラムは、英国科学教育学会のジョン・ホルマン氏の助言により、マレーシアに事務局があるアセアン地球科学・数学数育センター(PRESCAM)と世界最大の石油会社である英国石油会社(BP)との共同事業として91年にスタートしたものて,ヨーロッバ,アフリカ.北米の3地域でも同時に実施されており、その集合体はSAW(Science across the World)といい、インターネットのホームページも次のアドレスて開設されている.
  http://www.campusu.bt.com/public/BPSAW
さて、情報交換用紙送付まての展開は次のとおりてある.
 1)個人回答レポート作成<図書館にて2.5時限>
 図書館にある参考図書を司書の方に協力してもらつて1カ所に集め、それらと手持ちの資料や授業で用いたプリントを参考にさせた.必ずしも情報交換用紙のすべての項目の答えが書けなくてもよいが、その場合は取り組んだ項目については、なるぺく深く調べるように指示した.そして、使用した授業時間は有効に活用すること、レポートの評価は取り組む姿勢も加味することの2点について釘を刺しておいた.授業を図書館で行い、自由に作業させたが、多くの生徒はまじめに取り組んだ.教師飾の活動は、調べ方がわからないで立ち往生している生徒にアドバイスを与えることと、たまにくる質問に答えるるくらいである.この時間で終わらない生徒は、宿題とした.
 2)グループ分け<図書館にて0.5時間>
 実際にに他国の学校へ送る情報交換用紙は、一人一人が1枚ずつ作るのが理想かもしれないが、英語で書かなければならないことと時間の制約を考え、総合理科を選択している2クラス(3年6粗および8組)で各1枚とした.1)で作成した個人のレポートを集めて、それをまとめて(よいものを集めてて)クラスで1枚の情報交換用紙を作るということである.
 その1枚を作成するために、図書館を使った授業の最後の時間の後半を使つて、クラスを次のような14グループに分けた.その際、1グループは1〜3人とし、クラスでこの14グループがすべてできるように(つまりどのグループも3人で、クラスでは10グループしかできなかったということがないように)指示した.グループの構成メンバーとテーマ決めは、生徒同士て話し合いをさせ、早く決まつたグループから黒板にメンバーとテーマを書かせ、重複したテーマについてはじゃんけんで調整した.なお、各グループには班長と副班長を置き、各グループとの連絡・調整は原則として班長もしくは副班長に対して行った.

 Aグループ(A1〜A6の6グループ)提出された個人のレポートをまとめて、情報交換用紙のアン
ケート内容の成文を日本語で作る.アンケート項目が6項目なので、1項目1グループとした.
 Bグループ(B1〜B6の6グループ)それを英語に訳す.やはり1項目1グループとした.
 Cグルーブ 情報交換用紙を送付する相手校を英文の「学校リスト」の中から探し、情報交換用紙のアンケート回答項目以外の記入欄(本校と相手校の名前や住所など)を英語で書く。
 Dグループ 情報交換用紙を、清書して完成する.

 3)AおよぴCグループの作業<教室にて1時限>
 Aグループの生徒を、グルーブごとに座らせ、提出されていた個人のレポートを各グループに5枚ずつ程度配り、順に回覧させることによりまとめをさせた.自分たちのグループが一度見たレポートには、グループの担当設問の番号にチェックをつけるように指示してやらせたところ、生徒たちは漏れなくうまく回覧していた.
 また、Cグループには、SAAP事務局から送られてきた学校リストと情報交換用紙の英文記入例を渡し、相手校の選択と英文による必要事項記入を行わせた.
 BとDグループは、AおよぴCグループの作業が終わらないと何もできないので,他のグループの手伝いもしくは自習としたが、幸いそれほどの混乱はなかった.
 4)AおよびBグループの作業<教室にて2時限>
 まず、Aグループがまとめた日本文には、内容的に不十分であったり、そのままでは英語にしくい文であったりするものもあったので、それらをアドバイスまたは添削により加筆・修正させた.完成した項目のものは、順次Bグループに渡した。
 Bグループには、英語科と図書館より借りた和英辞典を与え、日本文に出てくる単語を調べさせ、英文(らしきもの)を作らせた.
 CおよぴDグループの5〜6人は、自習である.
 6)Bグルーブの作業<宿題>
 生徒には,作った英文は、英語の教員に見てもらい、きちんとした英文にして提出するように指示した.期限は1週間としたが、それは守られず、最後のグループが提出するまでには2週間以上もかかってしまった.また、出てきたレポートも、英文が不完全なものが多く、緒局、英語科の原島先生にお願いして、全てをチェックしていただいた.
 6)Dグループの作業<宿題>
 BグループとCグループが作成した,情報交換用紙の下書き原稿を渡し、宿題で清書させた。
 7)情報交換用紙の送付
 2クラスで2枚の情報交換用紙は、できたものからこちらで送付した(1枚はファックスでマレーシアヘ、もう1枚はエアメールでオーストラリアヘ).当初の計画では,11月には送付するばずであったが、途中の遅れで結局12月にずれ込んてしまっていた.
 実施した結果や過程について.簡単に考察する.まず、肝心の海外との情報交換は、十分な成果をあげることができなかった.こちらから情報交換用紙を送った学校からは、学年末考査が始まってからやっと1枚の返信が届いた.また、(本校を相手校に選んでくれたのであろう)タイの学校からエアメールで情報交換用紙が1通届いたのだが、何かの手違いかそのテーマは本校がが取り組んでいない「再生可能エネルギー」であった。.なお、学習活動として比較的スムーズにいったのは、3年生て落ち着いたクラスであったこと、少人数であったたこと(31名と32名)、1学期の授業で生徒との関係が悪くなっていなかったこと、などであろう。
 問題点としては、試行錯誤の連続て思いつきの指導が多く、計画的に進められなかつたこと、無理を承知で生徒に英作文をさせたわけだが、緒果的に英語科の先生方の多大な援助を受けざるを得なかったこと、情報交換用紙の完成が予定よりも遅れたため.他国の相手校からの返事が3学期の授業に問に合わなかったこと,などである.
 なお、苦労したことは,当然の事ながら慣れない海外との通信である.例えぱ、1学期の最初に、SAAPのマレーシアの事務局に登録用紙をエアメールで送ったのだが、待てど,暮らせど,事務局からは「学校リスト」が届かない.そして、しばらくしてから、インターネットのSAAPのホームページを覗いてみると,登録学校のリストに本校の名前がない.幸い、そのホームページでは、電子登録もできたので、何とか英文を読みながら登録をしてみたが、それでも音沙汰がないのである.結局リストが送られてきたのは、半ばSAAP参加をあきらめかけていた2学期になってからである.これは、今にして思えば、海外の多くの学校の新学期が9月スタートで、登録も9月から新年度がスタートなのであろう.1学期に見た登録リストは、前年度の登録学校だったに違いない.

(2)授業書「ゴミと環境」
 SAAPプロジェクトの授業が一段落し、作業としてはBおよびDグルーブの宿題になった頃、次のテーマとして「ゴミとリサイクル」を取り上げた.これまで、地球環境問題が主であったので、今度は足元の環境問題を見つめてみようという意図である.
 教材は、仮説実験授業の授業書「ゴミと環境」を用いた.仮説実験授業とは.問題−>予想−>確認実験の流れを基本とするもので、そのまま授業プリントとして使える「授業書」が市販されており、それに従ってやれば誰でも一定水準の効果的な授業ができるという.授業は,この授業書のコピーを1枚配っては、説明や作業や実験をし、また次のプリントをやる、というスタイルになる.テーマは、主として理科であるが、社会科や数学のテーマも若干あるようである.
 この仮説実験授業も、初めて試みたものだったが、良い点はいくつもあったように思う。プリントはB5で見開き2ぺ一ジというコンバクトな内容なので、1時限の授業の中で何回も配布することになり、居眠りの生徒をその都度起こせるし、教科書と違って先が読めないので、生徒の注意を喚起しやすいように感じた.また.授業書の内容は、よく展開が練られてるし、とくに「身につけさせたい概念」の習得に目が向いていて、教師にとっても「目から鱗が落ちる」ような思いをすることができる.
 ただ、授業の流れが細かいところまで縛られるのは、自分のスタイルの授業ができないためやりにくい面があるし、授業書で指示されている実験や作業、教具などの準備や手間があるといった問題も感じた。実際、今回の「ゴミと環境」でも、用意して生徒に見せるように指示されていた「地球の1千万分の1の模型」や「立木の模型」などは調達できなかった.また、「ゴミと環境」はテーマがテーマだけに、実は実験は1回しかなく、後は作業課題や社会科クイズ的な設問が多く、本来の仮説実験授業の使醍醐味を味わえなかったのは残念であった。

 4.3学期の取り粗み
「ゴミと環境」の授業が続くわけだが、それと並行して、課題研究として、ゴミのレポートを作らせることにした.2クラスを10グループに分け、そのうち1グループに「ゴミの計量作業」のまとめと広報プリントづくりをさせ、残りの9グループに,事務室・資源ゴミ回収業者・近隣の事業所・白治体などに取材をさせた.上尾市のゴミ工場や遠く滑川町投場まで出かけて意欲的に取り組んだ生徒たちもいたし、有意義な経験であったと答えてくれた生徒もいた.

 5.終わりに
 環境問題の解決は、究極的には政治による意志決定と経済・社会全体の変革に委ねざるを得ず、個人個人の省エネルキギやりサイクルの努力の寄与はとても小さなものだろう.しかし、個人やNGOなどの言論・行動も、政治や社会を変える大きな力を持ちうるし、環境保全や持続可能社会の実現を経済成長や目の前の欲望の充足と同列以上に価値を置く人が市民の多数派になるのは夢物語ではないと思う.実際、北欧諸国のように、炭素税の導入などにより、その方向で動き始めている国はある.
 ところが、日本はエネルギー消費の増大が続いており、95年度の一人当たりのエネルギー関連CO2排出量は対90年度比で6.3%もの増加であり、「地球温暖化防止行動計画」に盛り込まれた「2000年度において一人当たりのCO2排出量を90年レベルにする」という国際公約の遵守は極めて困難な現状であるのに、相も変わらず経済優先で炭素税などの規制措置には消極的である.今年の12月に京都で開かれる気候変動枠粗み条約の策3回締約会議では、2000年以降のCO2の排出削減目標を決めるというが、日本は議長国としてどのような役割をするつもりなのであろうか.
 また、翻って目の前の生徒たちを見ると、ぽとんど飲んでいない缶飲料を置き捨て、赤い顔をするほど室温が上がっても灯油がある限りストーブを焚き統けている.省資源・省エネルキーの精神がある者は、残念ながら多くない.最近のエネルギー消費の増加は、主に民生部門と運輸部門であって、95年度は両者のシェア合計が初めて生産部門よりも多くなった.しかも、その要因は「暖房などの灯油・ガス需要の増加」や「乗用車の台数増加」などてあるという.生徒たちは今のライフスタイルのまま大人になり、これまでどおり(あるいばそれ以上?)に灯油など工ネルギー資源を浪費し、豪華なクルマを必要以上に乗り回すのだろうか.
 悲観的な材料も多いが、目の前の生徒の中には、純粋で問題意識を持ってくれる者もいる.この1年間で、彼らを見直すこともしばしばあった.彼らへの環境教育が、多少なりとも将来の具体的行動に結びつき,少しずつ社会全体が方向転換していくことを信じて、これからも足元の小さな努カを積み重ねていきたい.

7.マジカル科学「マジック 念力で電球光らせる」

  1997.5.27 東奥日報 その13
  省略

文献紹介 「資源物理学入門」 槌田 敦著(NHKブックス)

         紹介 石井登志夫(埼玉県立北本高等学校)

 食わず嫌いかもしれないのですが、どうも環境教育というものはやる気がしないでいました.生徒たちがその学習の中で何をつかんでいくのか、私にはヴィジョンが持てなかったのです.ごみ問題にしろエネルギー問題にしろ、普段の消費を指摘し、生徒達の日常に反省を強いるだけのような気がしていました.それも形だけの反省になりそうです.何かを発見して感動するような授業はとてもできそうにありません.問題を指摘して反省するだけ(解決がないのだ)の授業を、わざわざ画工で時間をとって行う必要があるのか.そう思って敬遠していた問題でした.
 しかしながら環境問題は差し迫った問題です。しっかりと投げかけて、考えさせなけれぱならない問題です.しかし、環境という複雑でとりとめなさそうなものを物理的にどうとらえるのか、自分の中でもすっきりしていませんでした.強制的ではなく、環境を物理的にまとめた参考書はないかと思っていましたが、以前、岐阜のサークル誌で見かけこの「資源物理学入門」をとりあえず読んでみました.あまり期待しないで(義務感で)読み始めたのですが、案に相違しておもしろいのマす.たいへん刺激的で、私にとっては発見がたくさんありました.
 例えばエネルギーという用語です。世間に一般ではエネルギーという言葉は燃料という意味で使われていて、物理のエネルギーとは意味が異なるのです。経済学ではエネルギーを消費することになっていますが、物理ではエネルギーは消費しません。(保存します.)私はその意味では、区別をハッキリしてこなかったと思いいます.物理の教科書でも2つの意味のエネルギーが渾然として使われています.エネルギー行政の中でもこの2つの意味が区別されていないことが混乱を招いていると、この本の著者は指摘しています.では本当に消費しているのは何なのか。拡散する能力、言い換えるとエントロピーを出す能カです.ポテンシャルエントロピーという言い方もされています.(私ば初めて見ました.)熱力学の法則からも、拡散能力は消費され(エントロピーが増加し)、本には戻せないことは分かります。自然、人為的を問わず、全ての営みに廃物、廃熱というエントロビーが伴います.そういう意味では「生産」はあり得なくて、会ての営み「消費」です.具体的には鉄鉱石から鉄を”生産”するという営みについて書かれています.石の中で分散している鉄原子がまとまるのだからエントロピーが減少しているようですが、、代わりに炭素原子が二酸化炭素になって大気中に拡散して行くわけですから全体としてエントロピーの増大になるわけです.また、光合成は光よりも水の方が本質的に重要であると述べられています.光は本来エントロピーが大きいので使いものにならないのを、水が蒸散という形でエントロピーを廃棄してくれるので、化学反応が進むのです.我々の体でも、汗や尿という形で廃熱や廃物を捨てているわけで、これが生命活動にとって重要なのです.すると我々の文明にとって、ごみ問題というのは案外本質的に重要な問題であることが分かります。全ての活動はエントロピーを捨てることで成り立っているわけですから、捨て場所が無くなったらその流れが途絶えてしまうのです.また、原子カ文明は成り立たないという結論にもなります.つまり、原子力発電に伴って発生するエントロピー(廃棄物)は捨てることができないのですから。(核分裂のエネルギーが大いという議論は意味がないとも著者は言います。本質的なのはエネルギーではなくてエントロピーなのです.また、原子力は石油の代替にはならないとも書かれています。石油文明の担い手は発電所のような大型のエンジンばかりではなく、輸送に使われる中型、小型のエンジンがあり、それらは原子力で実現されていないからです。)また、下水道やリサイクルもエントロピーを、増加させるだけで、無意味だと言います。そして最終章には著者の哲学、理想とする社会について述べられています。かなり思い切った提案で、異論も多いだろうと思いますが、私には共感できる部分が少なからずありました。
 さて、経済学で言うエネルギーは、物理学で言うエネルギーとエントロピーを合わせたような概念です.そして消費活動という観点で見た場合、どららかというと重要なのはエントロピーの方です。以前から物理のエネルギー学習で、エネルギー保存だけでは片手落ちではないか、エネルギーの質についての学習が重要ではないかと考えておりました。この本を読むむことで、拡散能力、エントロピーという視点を与えられ、その辺がすっきりと自分の中ではまとまったような気がします.今年のエネルギー学習では、このエントロピーの視点を積極的に取り入れてみたいと考えております.また、本を読みながらひらめいたことが一点。この本の中では簡単な熱カ学の数式が若干登場しますが、その中でも
  S=Q/T
が繰り返し登場します.学生時代はあまり意識していなかったのですが、Q=STと変形することで、イメージが明確になることに気づきました.つまり、熱(Q)を与えるということは、内部エネルギー(T)の増加だけでなく、エントロピー(S)を増加させるのてす.こんな解釈はどうでしょうか。そう考えると、熱というのは仕事とはずいぶん違った意味を持つことになります.仕事はエネルギーを伝えるだけでエントロピーを増加させないからです.これまで私は、熱はミクロの世界の仕事だという点ばかり強調してきましたが、エントロピーという視点からすれぱずいぶん違ったものになります。
 エネルギー学習を保存則で完結するのでなく、環境問題につなげていくには、エントロピ一という概念は必要なものようです。また、熱概念の学習では、仕事と等価性(仕事当量)ばかりでなく、仕事との違い(エントロピーを増加させる)も強調しなければならないと思いました.環境学習だけでなく、エネルギーや熱の学習の前に是非ご一読をお勧めします。

9.第141回例会の内容

  5月17日(土) 15:30〜19:00
  場所:上尾東高校 物理実験室
 <参加者>石井登志夫(吉見) 千野司(和光国際) 西尾信一(上尾東) 増田益(巣鴨) 湯口秀敏(浦和一女)
 <内容>
 重力的な作用・反作用を見る実験装置 石井先生


 (1)の方向から押されると、プラバンはへこみ、ボール紙の位置が移動する。この移動距離が加わった力の大きさを示す。



 ***97年度;年間通信費 1、000円又は80円切手13枚***
   送 り 先;〒336 浦和市本太 1ー33ー6
   郵便振替;00150−8−560437 加入者名;湯口 秀敏
 <<連絡・問い合わせ先;電話 048ー881ー2782>>
 サークルニュースの抜粋、要約、転載は北村が行いました。ニュースの原文・図など詳しい内容を知りたい方は、直接湯口先生まで連絡をとって下さい。

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