よせなべ物理128号

よせなべ物理サークル会誌140号

(旧 教材・教具を工夫する会)

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第140号抜粋

1.140回例会の案内 


2.次回以降の予定


3.場を物理の主役に!!

      埼玉県立北本高等学校 石井 登志夫
      (1997年4月より。3月までは吉見高校)

1.はじめに 
 物理的な概念にはいろいろあろが、体積・質量・密度・運動・慣性・・・などは「もの」の属性である.これらについては小学校、中学校の頃から「もの」の性質として、「もの」を主役として学んでいる。ところが、磁石・電気・重さ・弾性・温度・光・音・・・などは「場」の性質、あるいは「もの」と「場」の相互作用である。小・中学校では「もの」を中心に学習を進めるのは当然としても、高等学校の物理では、もっと「場」を中心に、主役にした展開を考えても良いのではないだろうか。

2.これまでの「場」の扱われ方
 磁場についてはイメージを作りやすく、地学を始め、物理以外の場面でも利用されている。一般に普及している概念と思われる。電場は旧来から物理ではしっかり扱ってきたもののようには思う。ただし、場を実体として扱ってきたかどうかは疑間である。重力場は、重カ加速度(=場の強さを表す定数)をかなりしつこく扱っているにもかかわらず、場そのものにはあまり言及されていない。
 いずれの場合も、相互作用を媒介するための補助的な概念として扱われており、「脇役」という印象は拭えない。「遠隔作用」説に徹しているわけではないが、「もの」と「もの」とが直接作用するというイメージで教えてきたように思う。それが悪いというわけではないが、「近接作用」説に立った方が、全体がすっきりと体系的にまとまるように感じている。少なくとも高校で扱う物理の範囲内ではそう思う。

3.こんなにある、身近な「場」
 冒頭にも少し触れたが、「場」というのは高等な物理で扱う特別なもの、ではない。身近な現象にごく普通に含まれるものである。以下に「場」が登場するいろいろな現象を挙げていきたい。
(1)磁場、電場、重力場
 磁石と磁石の間に”見えないバネ”を感じることはほとんどの人に経験があることだろう。磁石のまわりに砂鉄をまいて、磁場を示す教材がよく用いられている。高校の教科書で扱われるのは主に電場である。ビニール袋に、少量の米粒を入れ、しぱし振り回すと米粒が帯電してお互いに反発する様子が見える。ここでも米粒間士の間に見えないパネを感じることができる。

重カ場については見えないパネを感じるのは難しいかもしれない。磁場や電場は教科書にも取り上げられているが、私が読む限り、あまり明確なイメージを描いているとは思えない。すなわち、N極とN極が反発するのではない、ということをもっと明離にすべきである。正確には、「N極とN極の間の見えないバネが伸びようとする」のである。正電荷と負電荷が引っ張り合うのではなく、「正亀荷と負電荷の間の見えないバネが縮もうとする」のである。地球が物体を引っ張るのではなくて、「地球と物体の間の見えないパネが縮もうとする」のである。

(2)弾性
 前項で”見えないバネ”という言葉を多用したが、そもそもバネとは何か。中には空気バネのようなものもあるが、たいていイメージするのは弾性変形する固体であり、その起源は分子間カにある。すなわち、どんなに「もの」が変形しているように見えてても、その「もの」を構成する原子が変形するのではなく、原子と原子(あるいは分子と分子)の間の隙間が変形するのだ。その隙間にあるのは見えないバネ=「場」である。つまり、ゴムやバネを伸び縮みさせたとき、実際に変形しているのは「もの」ではなく、「場」である。

(3)音、振動
 物体中を音(振動)が伝わる、このときには「もの」と「場」の両方が関わっている。振動とはまず物体が変形し、それが元に戻ろうとする(弾性)、それが行き過ぎる(慣性)、また戻ろうとする・・・・の繰り返しである.弾性は分子間カの「場」の性質であり、慣性は「もの」の性質である。弦の振動数を決定する要素に、張カと線密度があるが、前者は「場」の強さを反映する量で、後者は「もの」の勢いを表す量である。物理では様々振り子の振動を求めることが問題にされる。しかし、私が重要だと思うのは、「場」の強さと「もの」の勢いいのせめぎ合いの中で振動が起こるのだというイメージである。
(4)電磁場、電磁波(光)
 電磁誘導はもちろん「場」を持って語られるものである。「場」の性質をじっくり調べるのに丁度良い分野である。レンツの法則などを学ぶと、「場」にも慣性のようなものがあることが実感できる。弾性は元々「場」の属性である。慣性と弾性があるということになれば、当然、振動が伝わっていくという現象が考えられる。すなわち電磁波だ。光が電磁波、つまり「場」の振動であることは是非、高校物理で扱いたい内容である。私自身の学生時代の学習を振り返ると、実は、光と電磁場がなかなか結びつかなかった。しかし、一度理解してしまうと、金属に金属光沢があるのは白由電子の存在によることなど、いろいろと納得させられたものだった。私にとって自然観が描き換えられた瞬間だったようにも思う。
(5)温度
 温度とか内部エネルギーと言うと、分子運動がまず目に浮かぷ。教科書を読んでも、内部エネルギーは原子や分子が持つエネルギーだと記述されていたりする。しかし、それと同時に分子と分子の間の見えないパネが揺れ動いていることも忘れてはならない.「熱」だけなら、分子運動で話は済む。分子が衛突によって隣の分子を突き飛ばすという、ミクロの世界の仕事が「熱」の正体だからだ。(熱については教科書をはじめとして誤解が多い。熱をエネルギーと呼んだり、放射や対流を熱と言ったり。)また、気体同士、金属同士の暖まり易さを比較するだけなら、分子運動で済む。場の強さはほぼ同じようなものだからだ.しかし、三態変化、全く異なる材質の暖まり易さを比較するなどの場合では、「場」の強さを比較する必要が出てくるのである。そして、分子のでたらめな動きと「場」の揺れ動きで内部エネルギーをイメージしたとき、その揺れ動きは物体の外にも伝わってくるだろうということは、容易に導ける。すなわち、温度に応じて放射が起こることも理解できるのである。


  以上、思いつくままに身近な「場」を取り上げてみた。

4.エネルギーの展開〜物理IAでの実践より
 実はここにまとめた内容は、96年度に吉見高校で行った物理1Aの中のエネルギ一の授業が元になっている。まず、本校の概況と授業の様子について述べたい。
(1)授業の方針 吉見高校は荒川沿いの農業地帯の真ん中にあり、自然が豊かに残されている。物理室から窓の外へ目を転じれば、ムクドリやヒヨドリが鳴き叫ぴ、遠く田圃の中ではサギが乱舞している。空を見上げればオオタカが悠然と舞っている。川を渡った北本の森は、まさに野鳥の楽園で、バードウォッチャーにはたまらない場所である。授業時間や放課後に生徒と一緒に校外を歩けば、イタチやタヌキ、野うさぎを見ることもある。水田や用水路の中にはタニシやメダカ、ホウライエビ、カブトエビなどがいる。ここに通う生徒や,職員も含めて、のんびりとした、牧歌的なすばらしい学校だ。ところが、交通の便が悪いためか、中学生には人気が無く、ここのところ定員割れを繰り返しているのは何とももったいないことである。本校に通う生徒は、いわゆる学校知(計算ができるとか、漢字が書けるとか)には乏しい。しかしながら、大胆な着想、豊かな探求心など、優れたた能カをたくさん持った生徒達である。 96年度の授業に先立ち、私は次のような方針を立てた。
 1)数理的な扱いはせず、直感的なイメージで概念をつかませる。
 2)獲得した概念を用いて思考できるよう、体系立てた展開を心がける。
 3)生徒との対話を中心に授業を進める。
 4)対話のきっかけとして、生徒が興味を持ちそうな実験を準備していく。
 数理的な手法は物理の伝統でもあるが、物理を専門とする子以外には、学習の障害になりやすい。物理は知的好奇心を満たす楽しい学問のはずが、訳も分からず計算する苦行に化けてしまう。数字は大きさを比べる程度、数式は比例・反比例を半定量的に抜う程度で十分だと思う。また、体系的に概念を獲得していくことも重要である。我々は、断片的な雑学知識を授けてクイズ王、物知りを養成しているわけではない。現実世界の様々な現象を物理的に考え、判断していくには、体系的な概念群が
必要になると思う。しかし物理1Aはひどい。指導要領を見ても、教科書を見ても、センター試験を見ても、と
ても物理とは思えない。「なぜそうなるのか」を探求する行為が物理なのであって、雑学知識を蓄えても物理の
学習にばならない。あんなものに「物理」の名前をかぶせせられたら、物理が腐っててしまう。はやいところやめて欲しいものだ。
 対話によって授業を通めることについては、様々な機会に経過報告をしてきた。授業技術の未熟さ故、まだま
だ納得がいくものではないが、それでも1年間の実践の中で分かってきたことがいくつかある。1つは生徒の認識を出発点にして授業を組み立てなければいけないんだ、ということ。当たり前のことのようだが、私は、中学校でここまでは勉強しているはずだ、高校生ならこのぐらい知っているはずだ、というつまらない常識にとらわれていたような気がする。私が「交流ってどんな風に電気がが流れるの?」と問うたところ、生徒「コウリュウってな一に?」って聞き返されてしまったこともあった。
 その後、このクラスでは直流と交流の比較実験で1時間盛り上がったのは言うまでもない。逆に、おそるおそる「場」概含を提案してみたところ、すでに半数近くの生徒が「場」という言葉とある程度のイメージを持っていて、驚かされたこともあった.コンビューターゲームやアニメの影響らしい.生徒はこのようにいろいろな知識をアンバランスに持っていたり、いなかったりする。こちらの思いこみでは授業は通められないな、と思い知らされた。もう1つ気が付いたのは、学校は集団のカで学ぶ場所だ、ということ。授業中、生徒は様々な意見を発表表する.どちらかというと成績が芳しくない子の方が、大胆な意見を無遠慮にぶつけてくる。他の生徒も私も想像もしなかったような意見が出てくる。そうして出てきたいろいろな意見に助けられて、私は授業を進め、生徒は理解を探める.意見が対立したり、補足しあったりして初めて、理解が進むものなのだということがよく分かった。いろんな子がいて、いろんな意見を出し合うことで、白分とは異なる考えに触れて生徒は学んでいく。それが学校という場所なんだとつくづく思った.ところが、偏差値輪切りで学校を振り分けたり、さらには習熟度別と称して校内でも細分化するなど、ぜっかくの学校教育をぶち壊しにしている例は多い.本校でも一部の教料で習熟度別が導入されてしまった.痛恨の極みである。

(2)位置エネルギー
 話が少々はずれたが、授業の雰囲気は多少でも伝わったであろうか。生徒の大胆な発想は、私にインスビレーションを与えてくれるぱかりでなく、私のミスコンセプションを指摘することさえある。私が「場」の概念が重要であるど思う様になったきっかけも、何年か前の授業中の会話がきっかけだった.物体が落下するときに位置
エネルギーを失うという話の中で、「物体は重力に仕事をされている。なぜ、エネルギーを失うことになるのか。」という趣旨の疑問が出された。物体は仕事をされれぱエネルギーが増え、仕事をすればエネルギーが減少するということを学んでおり、この生徒はそれを適用したのだ。
 私は、三カによる仕事は運動エネルギーの増加に寄与していることを説明したものの、位置エネルギーの減少についてはすっきりとした説明ができず、しどろもどろになったものである。しばらくはすっきりしない状態が続いたが、バネの単振動にエネルギーを適用しているときにひらめいたのである,位置エネルギーは物体ではなく、「場」に蓄えられたのではないか。


 バネに固定した物体の単振動を考えよう。まずバネがのびた状態から手を放す。はじめ、バネに弾性エネルキ
一が蓄えられている.縮むにつれて、物体はバネから仕事をされて(引っ張られて)、(運動)エネルギーが増加する.逆にバネは仕事をするので、(弾性)エネルギ一が減少する.次に自然長を過ぎると、物体はバネに仕事をする(押す)ので、(運動)エネルギーを失う。バネは仕事をされるので(弾性)エネルギーをもらう。教科書には、この弾性エネルギーを物体が持つエネルギーと記述するものもあったが(ひどすぎる)、それは明らかに,誤りで、ぽとんどの先生がバネが持つエネルギーとして扱っていることと思う。この問題では、仕事とエネルギーの関係がすっきりとまとまっている。

 そこで、前述の重カ中の物体の通動でも同じように考えてやるのである.まず物体を高く持ら上げるのだが、このとき、地球と物体の間の見えないバネが引き延ばされている。すなわち、ここで蓄えられる位置エネルギーは、物体ではなく見えないバネ(=場)に蓄えられる.落下するにつれ、物体は「場」に引っ張られれ(仕事され)、(運動)エネルギーを得る,逆に「場」は物体を引っ張るという仕事をするので、(位置)エネルギーを失うのである。こうすれば仕事とエネルギーの関係はすっきりと自然にまとまるのである。ところが、私の見た範囲では、どの教科書にも重カの位置エネルギーは物体に蓄えられると記述されでいる。高校生には重カ場の概念ば,難しいという判断だろうか。しかし、先ほどの生徒の疑問にも現れている通り、仕事とエネルキーの関係をすっきりと矛盾なくまとめるには、重カ場を導入した方が、よほど簡単にまとまると思うのである.私ははこの問題を検討することで、初めて重力場というものを実体として認識したように思う.ところで、バネの単振動のアナロジ一からこの「場」のエネルギーがひらめいたと響いたが、よく考えてみると、バネの弾性エネルギーも「場」の工ネルギーである.つまり、前項でもまとめた通り、弾性とは原子と原子の間の隙間の変形によって起こり、これは「場」そのものである。物理では似たもの探しをしていくと、結局本質的には同じものであることが多く、おもしろい。
(3)「場」の導入
 見えないバネを実感することが第1歩であろう.私は、表面張力を利用したモデル実験をまず行っている。水に1円玉が浮くかどうか問うと、大抵浮くと答える。そこで、適当に放り込んでみると決して浮いてこない。水面に水平にそっと置いてやると浮く(ように見える)。これは本当に浮いたのかと、しつこく問い直すと、乗っかったのではないかという意見が提案される。ふつうは考えにくい意見だと思うが、前時にシヤボン玉を使って、表面張力について学習し、水面にはゴム膜のような性質があることを学んでいるためだろう。とにかく、1円玉は水面に乗るのだということを確認する。次に、もう1枚の1円玉をその近くに乗せる.すると、はじめの1円玉と、すーっと引き合ってくっついてしまう。1円玉と1円玉が引き合ったのかと問うと、違うという。1円玉を引っ張ったのは水(面)であるということで一致する。これは不思議なほどどのクラスでもうまく展開した。なぜ、他の1円玉がある方にだけ引っ張られるかは、水面の形を観察させ、カを図示することで解決した。ここで重要なのは、離れた1円玉が直接引き合うことはないということ。間にある水面が縮もうとすることで1円同士が引き寄せられろということである。


 そして次の時間に、静電気や磁石を使って、見えないバネを実感させ、「場」を導入するのである。後で書か
せた感想を辞むと、やはり「場」は難しいという印象が多かったようである。ただ、私が想像していた以上に生
徒は食らいついてきてくれたと思う。離れた静電気同士がカを及ぼすのはなぜかという問いには、テレビをつけ
ているとき、ブラウン管の表面にできる何かもやもやした雰囲気のものがあり、これがカを伝えるのでないか、という発言もあり(生徒は日常的に「場」を体得していたのだ!)、感動したものである。重力場の話をしたら、それではニュートンの法則は誤りなのか、という嬉しい反応もあり、ついつい重力レンズの話なども出て、アニメおたく達と盛り上がってしまった。しかし、96午度の授業展開では、「場」の導入が遅すぎた。できれば、かなり早い時期に導入して、様々な場面で「場」を使う機会を作りたかった。物理概念は様々な現象を考えるための武器であり、使わなければ生きてこないのである。
(4)エネルギーは2種類しかない!!
 エネルギーは物理だけでなく、白然科学にとって重要な概念であり、しっかりと扱いたい部分である。私は、
カ学的エネルギーに限らず、様々なエネルギーについてかなりの時間を割いて扱っている。その授業中に気づい
たことがある。あれっ、もしかしてエネルギーって2種類しかないの?見かけ上いろいろな形態をとるエネルギ
一だが、よく考えると次のいずれか、あるいは両方を含むものに分類されることが分かる。
 (1)「もの」の運動エネルギー
 (2)「場」の伸び縮みのエネルギー
 重力のエネルギーや弾性エネルギーは前述したように「場」の伸び縮みである.昔は「もの」の運動(振動)
と分子間の「場」の伸び縮みの両方である。光(電磁波)はもちろん「場」の伸び縮みが伝わる現象である.内部エネルギーは分子の乱雑な運動と分子間の場の揺れである.化学エネルギーは原子間の「場」で説明できる.さて、それでは電気エネルギーはどちらであろうか、コンデンサーなどの場合は、「場」のエネルギーであることは自明である.問題は,電流の場合である.私は恥ずかしながら、電子の運動がエネルギーだと、ずーっと考えていた.ところが,最近になって電流も「場署」のエネルギーであることを指摘された.よく考えてみれば、電子が抵抗を通過してエネルギーを放出(ジュール熱)した後も、電子の移動速度が衰えることはない.従って電子のの運動が電気エネルギーではないことは明らかだったのだ.

 実は電気エネルギーは,導線中ではなく、空間の中を電場のエネルギーとして伝わっていくのである。空間を金属板で静電遮蔽すると、導線に亀気を流してもエネルギーが伝わらないことを示す実験もあるようだ。私はまだ追試していないのて、詳細はは割愛する。


 放射線のうち、α線・β線は「もの」の運動、γ線は電磁波だから「場」のエネルギーである。原子カエネル
ギーは核子間の「場」のエネルギーで説明できるだろう。ただし、この辺のレベルになってくると、「もの」と「場」の区別が曖昧になってくる。核子間の結合(場)が変わる原子核反応では、「もの」の性質であるはずの質量が欠損する.γ線ぐらい波長が短くなると、粒子(もの)として振る舞うようになってくる。逆に電子のような「もの」でも、波という「場」のような性質を持つ。実際に現代物理では「もの」と「場」を区別していないのである。しかし、高校の範囲ではそこまで言う必要はなかろう。宇宙は「もの」と「場」の2つでできており、「もの」は動くことでエネルギーを蓄え、「場」は伸び縮みしてエネルギーを蓄える。物理の学習では、こんなイメージができればいいと思う。エネルギーの展開の最後のしめくくりに、学習してきたエネルギーをこの2つに分類させてみた。平均的な生徒のまとめを次にボす。

 ★生徒のまとめ
 「もの」の運動
   音エネルギー、運動エネルギー、内部エネルギー
 「場」の伸び縮み
   光エネルギー、重力エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー
 分からなかったもの
   化学エネルギー
 私白身がこのような視点を持ったのが年度の途中だったため、当初は「もの」と「場」を意識してエネルギーを展開していたわけではない。(はじめの予定ではエネルギーの学習を終えてから場の学習に入ろうと思っていた。)その割には生徒はまずまずのまとめ方をしたと思っている。次年度には、はじめから「もの」と「場」を意識した授業展開を工夫してみたいと考えている。
(5)エネルギーの大きさ
 光が電磁波だという話をしていたときのことだ。生徒から、じやあなぜ電波は目に見えないんだという質問が出てきた。共通点ばかり強調したので、違いが何だか気になったのだろう.電波と可視光では波長、振動数がまるで違うこと、人間の目に見える電磁波はごく限られた振動数のものだけてあること、その可視光は太陽の光に一致しており、おそらくは進化の問題であることなどを説明した。そこで、電波と可視光ではどちらのエネルギ一が大きいと思うか質問してみた。すると、振動が速いので可視光の方だと答える。他のクラスでも同じ質問をしてみたが、やはり同じように答える。

 細かいことを言うと、光量子1個あたりのエネルギーで比較しなければいけないのだろうが、あまり踏み込んでも混乱するだけだろう.生徒の答えを正解として、次に進めた.もっと波長を短くすればどうなるか.だんだんとエネルギーが大きくなるだろうということは容易に想像がつく。生徒の意見を確かめた後、紫外線、X線、γ線を順次説明した。γ線は電磁波の中でも極端にエネルギーが大きいことを説明した。「もの」の運動の方でも、極端にエネルギーが大きいものがわることを話し、α線、β線を紹介した.はじめから、電磁波の後は放射線を扱おうと決めていたので”渡りに舟”の展開であった。
 この部分の授業の流れの中で、定量的な扱いも、ときには生徒の理解を助けるのだ、ということが分かった。私はどちらかというと数理的な扱いは極力避けてきた人間である。我々のように物理を専門に学んできた人間が物理の問題を考えるとき、ついつい数式に頼ってしまいがちである。そういった手法に慣れた人間なら良いのだが、生徒や世間一般にとってそれは異次元の言葉であり、物理を縁遠いものに感じさせてしまう。実は物理概念はもっと直感的にイメージが可能で身近なものなのだ。そんな思いが強かったので、できるだけ数字や式には触れないようにしてきた。しかしながら、この部分の展開で、定量的な扱いも強ち捨てたものではないなと思えるようになってきた.今までは毛嫌いしすぎていたようだ。特に量を比較したり、大きさを実感するには数値は有効だ。数式に頼った展開はやはり良くないと思うが、理解を助ける程度には有効利用していきたいと考えている。

5.今後の展望
 単位数が限られた厳しい現状の中で、普通教育の一環としての物理では何を扱えばいいのだろうか。私は次のような到達目標を提案したい。
 (1)宇宙は「もの」「場」からできている。
 (2)「もの」は動く。
 (3)「場」は伸ぴ縮みする。
 (4)これらは相互作用する。
 このようなイメージで物理的な自然観を伝えたいと思う。普通教育として必修させるのはこの部分までで、専門的に学びたい子にはさらに数理的な手法に習熟させればよいと考えている。現在の物理の枠組みからすれば突飛なものに見えるかもしれない。しかし、教材の精選が叫ばれている今、旧来のの分難分けにこだわってカ学が必要だ、電磁気を残したい、という時間数の奪い合いのような議論をするよりも、よほど現実的なように思えるのだが。上述したような目標の中で、具体的な教材肉容については、学校の実状にあわせて準備すればよいと思う。如何なものだろうか。

6.さいごに
 1年間の実践の総括をするつもりでまとめてみた。自分なりには重要な提案をしているつもりではいる。いつも思うのだが、発表や投稿をして、何の反応もないときほどつまらないものはない.どんな意見でも良いので反応を寄せてもらえれば幸いに思う。本論の中でも途べたが、対話、議論が成り立ってはじめて理解が探まり、勉強になるのである。この文章をまとめるに当たって、最も参考になったのは吉見高校の生徒達との対話である。また、エネルギーの展開については、さいたま教育文化研究所理科研究委員会や全教の特王県教育研究集会、全国教育研究集会などでの議論、埼玉科教協の方々の意見が参考になったた。また、場の概念については、よせなべ物理サークルでの議論を参考にした。吉見高校生と関係諸氏に感謝したい.また、下記の文献を参考資料とした。

 参考考文献
 よせなべ物理(埼玉県理化研物理研究委員会編)
 理科教室(新生出版)96年6月号
 三段アンプで広がる物質の世界(石井登志夫)
 理科教室(新生出版)96午12月号
 対話のある物理授業(石井登志夫)
 物理教育(日本物理教育学会誌)第45巻第1号
 相互作用の学習−対話のある物理授業(石井登志夫)
 のらねこの挑戦(新生出版)岐阜物理サークル
 「物理」学ぶことと教えること(高校出版)久保田芳夫


4.「万葉集が物理の間題になる」の解答と新たな問題(俳句)


 サークルニユース第138号の問題の解答と新たに俳句の問題です。
青野修先生(自治医科大学)から昨年の11月にいただいていました.紹介が遅くなって申し訳ありません。(湯ロ)

 昨年の問題の解説と解答状況を報告します.
問題(少し簡略化して示します。)

 東の 野にかぎろひの 立つ見えて 返り見すれば 月かたぷきぬ
           (柿本人麿)
 上の短歌に詠まれた情景が起きた日の三日前から、起きた日の三日後までの間に生じる可能性のある情景を詠んだものは、下の俳句の中のどれか。
 (1)日食を 撮り終えし子の 玉の汗  浩子
 (2)星月夜 空の高さよ 大きさよ   尚自
 (3)菜の花や 月は東に 日は西に   森村
 (4)炎天に すむ三日月や あづさ弓  信徳

 答(3)
 解説(独協大学の田代カ也先生から寄せられた名答案を紹介します。)
 「独協大学ニュース」1996年3月11日号に問題、4月1日号に解答が掲載されている。
 (1)日食は季語と関係ないが、「玉の汗」で夏の句。
 (2)「星月夜」「空の高さ」で秋の句。
 (3)月の出は一日約一時間ずれる事も含め、日と月の位置関孫は、例えば、十二時間差で元歌の情景と重なる。「菜の花」「かぎろひ」は春の季語。
 (4)「炎天」で夏の句。

 幾つかの大学で学生達に出題した。解答状況ほ下表の通りであっだ。
        正答率 受験者数
  某工業大学 26%  321
  某医科大学 51%  102
 正答率が低いのは、受験や専門と関係無いことには、あまり関心を持とうとしない学生気質を示しているのではなかろうか。
 俳人が自然現象を観察する眼カにほ驚かされることが多い。下の俳句は、いずれも著名な俳人が椿の花の落下現象を詠んだ句である。しかし、実際に観察した現象を詠んだのかどうか疑わしい句がある。最も疑わしいものを、ア)〜オ)のうちから一つ選べ。
 ア)赤椿 咲きし真下へ 落ちにけり   暁台
 イ)岩すべる 水にうつぶす 椿かな   素十
 ウ)落ちざまに あぶを伏せたる 椿かな 減石
 エ)落ざまに 水こぼしけり 花椿    芭蒸
 オ)椿落ちて きのふの南を こぼしけり 蕪村
  常用漢字表にない文字は仮名にした(椿はもとのまま)。

5.新聞記事より「電磁調理、アルミ・銅なべOK」'97 2.20(木)朝日

   資料提供、工藤貴正先生(責森・板柳高校)
         (省略)

工藤先生より:東芝に問い合わせたところ、周波数を2倍にコイルの巻き数を3倍にして、磁力線を増加させて中まで入っていくようにしたとのことです。きらきらモールがくるくる

6.科学英語に関する本の紹介

  970215 埼玉県立和光国際高校物理科 千野 司

科学英語関係で比較的安価に入手できるものを紹介します。
 1)「科学のことば雑学事典 語源からさぐる英単語」久保田博南著 講談社プルーバックス 1995 800円
 2)「サバイバル英語のすすめ」西村肇著 ちくま新書 1995 680円
 3)「理系のためのサバイバル英語入門 勝ち抜くための科学英語上達法」東大サバイバル英語実行委員会著 講談社ブルーバックス 1996 760円
 4)「英単語を増やそう」忍足欣四郎著 岩波ジュニア新書 1992 600円
 5)「理科系の英語」志村史夫著 丸善ライプラリー 1995 680円
 6)「科学英語に強くなる ことぱの歴史重視の攻略法」池辺八洲彦著 講談社プルーバックス 1991 640円
 7)「理科系のための英文作法 文章をなめらかにつなぐ四つの法則」杉原厚吉著 中公新書 1994 680円
 8)「理科系の英語読本」志村史夫著 丸善ライブラリー 1995 700円
 9)「OXFORD MINIPREFERENCE SCIENCE」 OXFORD UNIVERSITY PRESS
 10)「MINIDICTIONARY OF PHYSlC」OXFORD UNIVERSITY PRESS
 ・1)4)6)は英語の科学用語の解説である。4)は科学用語のみではないが参考になる。
 ・2)3)は東大の理系の専門外語の講座がもとになっているものらしい。
 ・9)10)はオックスフォード大学から出版されている分野別の辞書である.この他にも生物や化学分野のものも本屋にはあった。購入時(1996年)には9)が700円、10)が840円であった。掲載されている図は小さいが、プリントなどに利用しやすい。
 ・授業に使えるという点でば1)がお奨めである。時間に2〜3分の余裕があれぱ、言葉の解説にちょっと付け加えれぱ興味を示す生徒もいる。
 ・7)は英文を書く時のみならず、日本語の科学関孫の文章を書くときの参考になる。ちなみに4つの法則とは、「話の道筋に道標を」「中身に合った入れ物を」「古い情報報を前に」「視点をむやみに移動しない」である.
 ・5)8)は高校の授業に直接反映できるものではない。私も途中で挫析したままである。理科系の英文を読む時の参考になる注意が多く記述されている。

7.第139回例会の内容

<期日>3月15日(土) 15:30〜19:00
<場所>大宮高校  物理実験室
<参加者>石井登志夫(吉見) 岸澤眞一(越谷総合)暮泉 武(埼玉栄東) 斎藤邦夫(川越) 千野 司(和光国際) 西尾信一(上尾東) 徳富英雄(豊島区立・朝日中) 丸茂克広(大宮) 湯口秀敏(浦和一女)


 <内容>
 (1)VTR「シャボン玉を使った波の実験」川上晃先生(三重・名張桔梗丘高校)
 シャボン玉のダイナミックな動きに感動。実際にやってみよう。次回の例会で。

 (2)VTR紹介 徳富先生
 日本列島小さな旅 NHK総合TV 96’12.21(土)録画
奈良県大宇陀町 「かぎろひの空を夢見て」
柿本人麿の短歌(8ページ)に出てくる「かぎろひ」を実際に紹介しています。(一瞬ですが)奈良県大字陀町は人麿が、この歌を読んだとされる所。かぎろひはめったに見られない現象ですが、これにこだわっている人の多いのにはびっくりしました。これをよい条件で見るために家を建て直した人もいる位です。

 (3)透明ビニルパイプを用いた音声定常波の観察
     徳富先生のテキストより


 図1−1のような装置で、一方の端から、大きな声で「あ〜」と叫ぶとアラ不思議、チューブの中の発泡スチロールビーズがおどりだす.


 図1−2のように、カレンダーチューブに発泡スチロールビーズを入れ、空気をいっぱい入れる。
 カレンダーチューブに唇をつけ、「あ〜」と声をだすと、アラ不思議チューブの中の発泡スチロールビーズがおとりだす。
<観禁してみよう>
 ・図1一1、図1一2で大きな声、小さな声で発泡スチロールビーズのおとり方にちがいがあるだろうか。
 ・図1−1,図1−2で高い声、低い声で発泡スチロールビーズのおどり方にちがいがあるだろうか。

 (4)「場」を中心にした授業展開:石井先生の論文を元に議論
 ・場を「エネルギーを蓄えるもの」と考える。
 ・エネルギーは 大部分が変形で蓄えられたエネルギー −>「場」
    あとは
         動くエネルギー(運動エネルギー)
   エネルギーはこの2つで説明できる。
 ・このような説明の仕方は他に見たことがない(少なくとも私たちは)。新しい体系(統一的な世界観)が必要。
 ・エネルギーを考えようとすると最終的にバネに到達する。

 (5)総合理科による環境教育の試み  西尾先生
  今年(1996年度)から開始。3年生。新しい試みとしては、
   a.SAAP(国際的な環境プロジェクト)に参加
   b.仮説実験授業「ゴミと環境」を実施
    これらの詳細は5/17の例会で
 (6)ワンダーボックス(組み立てたり動かしたり実験したりできる絵本) 千野先生
    物理的な内容もある


8.おわりに

 新学期が始まりました.毎年のことですがこの時期は1週閣がことのほか長く感じます.春休みにやるぺき課題を残し、新学期の準備も整わないまま、ただ健康であることを頼りにこうしてニュースを作っています。来年はこんなわけにはいかないと感じていますが、まずこの1年頑張ろうと思っています.(H.Y)
◇◇◇97年度(1997年4月〜1998年3月)の通信責について◇◇◇
 金額:1,000円または80円切手13枚

 よせなべ物理ホームページ  http://www.bekkoame.or.jp/~kitamula/


 ***96年度;年間通信費 1、000円又は80円切手13枚***
   送 り 先;〒336 浦和市本太 1ー33ー6
   郵便振替;00150−8−560437 加入者名;湯口 秀敏
 <<連絡・問い合わせ先;電話 048ー881ー2782>>
 サークルニュースの抜粋、要約、転載は北村が行いました。ニュースの原文・図など詳しい内容を知りたい方は、直接湯口先生まで連絡をとって下さい。

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