「よくわかる高校物理の基本と仕組み」追加文章

「図解入門 よくわかる高校物理の基本と仕組み」追加文章

2004/09/08



本の紹介 社会人のための再入門 「図解入門 よくわかる高校物理の基本と仕組み」

  北村俊樹 著   秀和システム  定価1600円(本体)+消費税=1680円
            2004年9月7日刊  A5版 2色刷  352ページ
     書籍コード ISBN4-7980-0865-6    対象  社会人、物理初心者



インターネット追加版の作成について
 この本の原稿執筆の段階では、高校物理の全分野と現代物理学の一部を取り上げました。
 原稿を書き上がって出版社で割付を始めたところた、当初予定のページ数をかなりオーバーしてしまうことがわかりました。このため、出版本では全体を削らざるを得ず、重要度の高いところを選んで出版本の形となりました。
 削除したところには、小中学校で習った基礎的な内容、また高校の応用編や計算編、物理現象としておもしろかったり身近なものなどが含まれます。、

 これら、削除された原稿をインターネットを利用して公開することにします。

なお、以下の文章の図は手書きですが、出版本の図はきれいに製図されています。




1章 力学@ 運動の表し方

1−1 運動の表し方       運動の要素とグラフ
1−2 速さとは何?
1−3 向きと大きさのある量=ベクトル
1−4 速さ+向き=速度ベクトルv
1−5 加速度とは何?
1−6 速度が変わらない運動   等速直線運動
1−7 速度が変化する運動    加速度運動
1−8 重力による運動1   自由落下と真上投げ上げ
1−9 重力による運動2   xy方向の投射と放物線
1−10 スポーツと投射運動    走り高跳び、走り幅跳びの物理



2章 力学A 力と運動

2−1 力の性質と表し方 力の作用とベクトル表記
2−2 いろいろな力 作用点と力の種類
2−3 摩擦力がなければ進めない     摩擦力
2−4 力はペアで生ずる   作用・反作用の法則
2−5 合力0なら物体は等速直線運動     力のつり合い  

2−5追加 複雑な力の求め方

○クイズ A,B、2人が押し合いをしている2人とも押されてはねとばされた。作用・反作用の法則からAがBを押す力が20N(右に+20)なら、Bは逆向きに20(右に−20)だとわかっている。でもこの2力の合力は0だからどうしてはねとばされてしまったのだろうか。

○つり合いの力と作用・反作用の力
 つり合いの力と作用・反作用の力の特徴をあげると、
 つり合いの2力:一つの物体に働き、互いに向きが逆、大きさが等しい力。
作用・反作用の力:2つの物体に働き、互いに向きが逆、大きさが等しい力。
 両者とも、2つの力が互いに向きが逆で大きさが等しいことから混同してしやすい。両者の違いを考えてみましょう。



 つり合いの2力の場合、1つの物体働くいろいろな力のうち、2力がたまたま同じであった時をつりあいといいます。また2力の作用点は必ず同じ物体内にあります。作用点が同じ物体内なので、2力の合力を求めることができます。
 作用・反作用の力の場合は、2つの力がペアで生ずるという宇宙の基本法則から来るもので、常に成り立ちます。一方、作用点は互いに相手側の物体にあるので、合力は求めっれません。
 クイズの答えは、自分が相手を押した力の反作用でとばされたのであって、つり合いの力でなく、足し合わせることができないから合力は0ではない。

○物体に働く力の入れ方
 定まった規則はありませんが、次の順序で考えていくと力を求められます。
@重力mgを入れる。向きは下向き、作用点は重心。
A物体が面と接しているとき、垂直抗力Nを入れる。向きは物体内部に垂直。
垂直抗力N:A面(物体A)が物体Bを押す力。作用点は物体B表面下。
B Aの力の反作用(垂直抗力N')をいれる。向きは物体内部に垂直。 
垂直抗力N':B面(物体B)が物体Aを押す力。作用点は物体B表面下。
Cつり合い(物体が静止しているとき)の関係から必要な力を入れる。
 大きさ、関係式は合力F1+F2+F3+・・・=0を使う。
D作用・反作用の力を入れる。
E CとDを何回か行いすべての力を求める。




2−6 物体に力が加わらなければ   慣性の法則
2−7 物体に力が加わるときは    運動の法則
2−8 運動の法則を使ってみよう

2−8追加 運動の法則を使ってみよう2  摩擦力、 雨粒


○クイズ 自転車を一定速に保つには、自転車をこぎつづけなければならない。これはなぜでしょうか。

○運動方程式の応用2
このページではおもに摩擦力の働く現象を取り上げてみましょう。
(1)物体を引きずって動かす場合
 摩擦のある水平面上で、質量M=5.0kgの物体をおき、F=10Nの力で右に引いたところ、物体は一定の速度で右に進んだ。動摩擦係数μ'を求めなさい。
 答え 鉛直方向の力は重力Mgと垂直抗力N、鉛直方向には静止しており、つり合いの力なので N=Mg @
 水平方向は等速直線運動なので、加速度は0となる。また、 水平方向の力は外力F(右向き)と動摩擦力f=μ'N(左向き)である。
 水平方向の運動方程式は   F+(−f)=M・0 A
よって、F=f=μ'N=μ'Mg μ'=F/Mg=10/98=0.10
例えば100kgの物体を持ち上げるのは難しいが、地面に置いて引くと動く。μ'が1以下では100kg重×μ'の力で動かせます。さらに車やコロを使ってμ'を0に近づけると、さらに小さい力でも動かせます。例えば、車のギアをニュートラル(中立)にすると、質量1tonの車でも人の力で動かせます。



(2)自転車の摩擦力
 クイズの答えです。自転車のペダルによる推進力を右向きFとします。自転車が右に進むとき、タイヤと地面が接しているので、動摩擦力f'=μ'N(左向き)が発生します。こぎ続けなければ動摩擦力のために減速します。一定速(等速直線運動)を保つには合力=0にしなければならないため、右向きにペダルによる推進力F(大きさμN)を加え続ける必要があるのです。
 物体が一定速度を持つには、力を加え続けねばならないという誤解がありますが、これは摩擦力のためです。摩擦力が0ならこぎ続けなくてもよいのです。



(3)雨粒の落下速度があまり速くないのはなぜか
 雨粒(質量m)には、落下速度vに比例した空気の抵抗力f=kv(k比例定数)が進行方向逆向きにはたらきます。このため雨粒の運動方程式は
    mg+(−kv)=ma
これをグラフにすると図のようになります。最初は速度が小さく抵抗力も少ないので加速します。しかし速度が速くなると抵抗力も増え加速度が小さくなります。ある一定の速度v1に達すると、そのときの抵抗力kv1と重力が等しくなり、合力0で等速直線運動になります。この速度v1を終端速度と呼びます。
 雨が地表に降ってくるとき、目に見える速度になっているのは終端速度だからです。抵抗力の比例定数は粒の大きさや質量で変化し、半径が小さいとkが大きくなるので、霧のように粒子が小さいとゆっくりと落ちるようになります。




2−9 力が物体を回転させる 力のモーメント
コラム 重心の簡単な求め方


2−11 単振動

○クイズ ばねにおもりを付けてなめらかな床の上におき、一端を右に引いてから離すと振動する。一番おもりの速度が速いのはどの点か。
  1)右端  2)左端 3)ばねが元の長さになる位置

○単振動とは
 おもりのついたばねを、なめらかな水平面におき、右に引いてから離すと、左右に振動をします。このような振動を単振動といいます。
 おもりの質量をm[kg]として、自然長の位置(つりあいの位置)を基準に距離をxとします。ばねをx=Aまで引いてから手を離すとき、
@自然長の位置x=0を中心に、左右にx=±Aの位置まで振れる。
A両端x=±Aでは物体は一瞬静止する
Bつりあいの位置を過ぎると速さが遅くなり、近づくと速くなる。




 では、上の運動が起こったり、単振動が続くのはどうしてでしょうか。
 おもりにはばねから弾性力が働きます。弾性力は、ばねの伸びx[m]に比例し、向きは伸びと逆向きです。よって、おもりに働く力は
   おもりに働く弾性力F=−kx (k:ばね定数p.**参照)
の形になります。実は、この形が単振動をする力の条件式なのです。
一般に物体に    F=−Kx (Kは比例定数)復元力
の形の力が働くとき、物体は単振動をします。この形の力を復元力といい、
 @つりあいからずれた位置xと逆向きに、力が働く。
 A力の大きさは、つりあいの位置からの距離が大きいほど、大きい
という性質があります。このため、つりあいの位置を速さvで進む物体は、復元力(ばねの復元力=弾性力)で減速し右端に行ったとき速さは0となります。
 右端では左向きの力が最大なので、左向きに加速していくことになります。このとき、左向きの速度は自然長の位置x=0で最大となります。左側でも今と逆の運動をし、2つの運動を繰り返して、全体で単振動が続くわけです。  単振動の代表的なものに、上のばね振り子と糸とおもりからなる単振り子があり、ともにF=−Kxの形の復元力が働いています。
クイズの答えは、3)の自然長の位置(ばねが元の長さになる位置)です。  
○単振動の周期T
 単振動する物体が1回振動する時間=周期Tは
(1)ばね振り子の場合は、ばね定数kより、T=2πルートm/k    @
(2)単振り子の場合は、振り子の長さをLとして、T=2πルートL/g   A





○振り子の等時性
 単振り子では、振り子の周期Tは、振り子の糸の長さLによって決まり、おもりの質量m[kg]には無関係です。これを、振り子の等時性といいます。たとえば、周期1秒の振り子の糸の長さLは A式より両辺を2乗して
 T^2=4π^2L/g  T=1[s]、g=9.8[m/s2]を代入してL=0.248[m]



2−12 円運動

○クイズ  等速円運動をする物体に、どのような力がかかっているか。
1)円の中心む向かう力 2)円の中心から外側に向かう力
3)円の接線方向に向かう力
○等速円運動
 糸におもりをつけ点Oを中心に一定の速さで円運動をさせます。この運動を等速円運動といいます。このとき、物体にはどのような力が働くのでしょうか。
 このとき、ひもを離すと、おもりは円の接線方向に飛んでいくことがわかります。すなわち、円運動の運動の方向は円の接線方向です。
 一方、ひもから物体には「ひもが物体を引く力」張力Tが働きます。張力は糸が物体を引く向きに働くので、円運動では物体を中心O向きに引きます。
この力を向心力といいます。



 糸がないとき、すなわち向心力がないときは、物体は慣性の法則により直進を続けます。糸があると、物体を中心向きに引くため、物体の軌道は中心側に曲がり、接線方向に当たる速度の向きも曲がります。また、その地点で向心力により曲がり速度を変化することを続けて、全体で円軌道を描いているのです。
 この向心力F[N]の大きさは、物体の質量をm[kg]、速さをv[m/s]、円の半径をr[m]として   向心力F=mv^2/r 向き:中心向き @

で表されます。よって、クイズの答えは、1)の円の中心に向かう力です。
 一方、円運動の周期(1周にかかる時間)T[s]、回転数(1秒間の回転数)f[回/s]として、時間と回数の比より T:1=1:f なので
T=1/f   A
また  T=1周の距離2πr/速さv B の関係があります。



○等速円運動の例
(1)円運動と向心力
 円運動をしている物体にはかならず向心力が必要です。例えば、地球は太陽の周りをほぼ等速円運動をしますが、このときの向心力は万有引力です。
また、水素原子では中心部の+の陽子の周りを−の電子が円運動をしています。このときの向心力は、+と−の静電気の引き合う力(静電気力)です。
(2)カーブを曲がるときに、体や自転車を傾けるのはなぜか
 円運動をするためには向心力が必要です。体を傾けることで、円運動の中心向きに、向心力を作るためです。例えば、図では面からの抗力Rと重力Wの合力が、円の中心を向きます。



(3)カーブの半径や、物体の速度が変化すると向心力はどうなるか
 Aの式より、半径を小さく(例:半分)すると、向心力は大きく(例:2倍)なります。運動会でトラックを走るとき、内側のコースほど体を内側に傾けて走る必要があります。一方、速さが2倍になると、向心力は4倍になりますが、車の中にいる人は遠心力(p.**慣性力)を感じるため4倍の大きさで壁に押しつけられます。




2−13 運動している物体の受ける力     慣性力

○クイズ 遠心力という言葉を聞いたことがあるでしょう。いま雨の日に傘を回すと、傘についた水滴が飛びだす。水滴の飛び出す向きはどの向きか。

(1)円の中心と逆の向き (2)円の接線方向 (3) (1)と(2)の間の斜め方向

○慣性力は見かけの力である
 静止していた車が右向きに加速するとき、車の中に乗っている人は、慣性のため元の場所に残ろうとし、左向きにつんのめることになります。このとき、中に乗っている人は左向き(加速度と逆向き)の力を受けたように感じます。
 逆に右に進んでいる車が急ブレーキをかけて減速するとき(右に負の加速=左に加速)、人は右側へつんのめり、右向きの力を受けたように感じます。



 このように、正の向きに加速度運動する物体があるとき、物体内の観測者が逆向きの力を感じます。このような力を慣性力といいます。慣性力は、加速度運動をしている観測者だけが感ずる見かけの力で、実在の力ではありません。
 質量mの物体が加速度aで加速度運動をするとき、物体が受ける実在の力は
   外力F=ma  で、正の向き(例:右向き)に受けています。
 これに対して、加速度運動をしている物体自身が観測者には、
   慣性力F'=m(−a)  逆向きのの見かけの力を感じます。



○遠心力
 車が急なカーブを左に曲がるとき、車にいる人は右向き(円の外側)に力を感じ、車のシートや壁に押しつけられるように感じます。これも慣性力で遠心力といいます。車がカーブを曲がるには円の中心(左向き)に向心力mv^2/r(p.**)が働いており、これが実在の力です。一方、円運動は加速度運動なので、車に乗って人には、これと逆向き(右向き)の慣性力−mv^2/rを感じます。これが遠心力で、この力によりシートに押しつけられたと感じます。
ではどうして右に押しつけられるように感ずるのでしょうかか。まず、車自体が円運動をしているので、壁が人を押す垂直抗力N(左向き)があり、これが向心力を作ります(作用の力)。これに対し、作用反作用の法則により、人が壁を押す垂直抗力N'(反作用、右向き)が発生します。人は、壁から左へ押されるても、自分自身が壁に右に押しつけられても感覚では区別できず、右に押しつけられると感じるのです。



○慣性力は見かけの力か。
 慣性力が見かけの力かどうかは車から飛び降りてみればわかります。遠心力(慣性力)は円の中心から外側に向かうわけですから、飛び出したら外側に進むはずです。実際に飛び降りるのは危険ですから、ひもで円運動をしている物体でひもを切ればわかります。かならず、接線方向に飛んでいき外側には行きません。同じことはカーブで転倒したスケーターがカーブの接線方向に滑っていくことでもわかります。やはり、慣性力は見かけの力なのです。
クイズの答えは、円運動なので2)の接線方向です。







3章 力学B 運動量とエネルギー

3−1 物理の仕事とは 仕事
3−2 仕事の原理を知れば得をする? 仕事の原理と仕事率
3−3 仕事の貯金「エネルギー」   力学的エネルギー
3−4 力学的エネルギーの導出 位置エネルギーと運動エネルギー
3−5  仕事とエネルギーの関係はいかに? エネルギーの原理
3−6 力学的エネルギーが保存する場合  力学的エネルギー保存則1

3−6追加 落下運動をエネルギーから考える 力学的エネルギー保存則2

○クイズ  物体を真上に投げ上げる時、最高点では速さはいくらに。      1)必ず0である  2)正の速度を持つ 3)負の速度を持つ

○自由落下とエネルギー
 高さhの地点から質量mの物体を自由落下させたます。地表に達する直前の物体の速さはいくらになるでしょうか。
 働く力が重力だけなので、力学的エネルギー保存則が成り立ちます。
地表を位置の基準とすると、
最初の力学的エネルギーE1=E重+E弾=mgh+m0^2/2=mgh
後の 力学的エネルギーE2=     =mg0+mv^2/2=mv^2/2
力学的エネルギー保存則より mgh=mv^2/2   
     これを解いてv=ルート(2gh) @



○鉛直投射とエネルギー
地表から初速度v1で質量mの物体を真上に放り出します。1)高さがhの時の速さvとv1との関係 2)最高点の高さH 3)地表に戻る速さv2
を求めましょう。
1)地表を位置の基準とすると、
 最初の力学的エネルギーE1=E重+E弾=mg0+mv1^2/2=mv1^2/2
 後の 力学的エネルギーE2=     =mgh+mv^2/2
重力だけ働くので力学的エネルギー保存則よりmgh+mv^2/2=mv1^2/2A
2) 最高点でv=0(静止)するため、Aより mgH+0=mv1^2/2
これを解いてH=v1^2/2g
3)地表に戻るのでh=0 これをAに代入して mv2^2/2=mv1^2/2
これを解くとv2=±v1 下向きなのでv2=-v1
 地表に戻ってくる時は、力学的エネルギー保存則より速さが同じになります。
クイズの答えは 1)の必ず0です。最高点では運動エネルギーがすべて位置エネルギーにかわるので、速さが0となります。

○斜面の飛び出し運動
斜面とそれに続く発射台で飛び出す時の物体の速さを求めましょう。
これは摩擦のないジャンプ台と考えても良いです。いま、地表を基準にして最高点の高さをh1,飛び出し地点の高さをh2、飛び出す速さをv2とします。
最初最高点で初速度0で滑り始めるとします。
 摩擦力が無く重力の働く運動なので、力学的エネルギー保存則より
 最初の力学的エネルギーE1=E重+E弾=mgh1+m0^2/2=mgh1
後の 力学的エネルギーE2=     =mgh2+mv2^2/2
よって mv2^2/2=mg(h1−h2)
よってv2=ルート(2g(h1−h2))
これは2地点の高さの差だけで飛び出しスピードが決まることを意味しています。一方、どの方角に行くかはわかりません。ある速度で飛び出すことだけはわかります。飛び出し地点の角度を変えてもそのときの速さ(速度ベクトルの大きさ)は保証されます。最初の状態さえ決まってしまえば、力学的エネルギー保存則により、物体の速さや位置などは簡単に決定できるのです。




3−7 ジェトコースターの物理 力学的エネルギー保存則2
3−8  エネルギーは使っても減らない?     エネルギー保存則
3−9 運動のいきおい「運動量」     運動量と力積
3−10 衝突しても運動量は変わらない 運動量保存則


3−11 衝突の物理学    はね返り係数と衝突

○クイズ コンクリートの壁に10m/sでボールをぶつけたら、9m/sで返ってきた。同じボールをコンクリートの地面から1mの高さから落とすと、何mの高さまではね返ってくるだろうか。

○はね返り係数
 ピンポン球やサッカーボール、スーパーボールなどを異なる種類のボールを壁にぶつけると、それぞれはね返り具合が異なります。衝突のときの物体のはね返り度合いを表したものが、はね返り係数(反発係数)eです。
 1つの物体の衝突ときは、元の速度vとはね返り後の速度v'を使って
e=|衝突後の速度/元の速度|=|v'/v|
2つの物体の衝突の時は、衝突前の速度v1,v2、衝突後の速度v1',v2'を使い
  e=|衝突後の相対速度/元の相対速度|=|v2'-v1'/v2-v1|
で表されます。



@e=0の衝突は、粘土などをぶつけたときで完全非弾性衝突といい、運動エネルギーが物体の変形の仕事、熱や音、光などの形ですべて失われます。
Ae=1の衝突は、元と同じ速さで物体が返るときで弾性衝突といいます。
理想的な衝突ですが、気体分子の衝突などごくまれです。衝突でエネルギーが失われず、力学的エネルギー保存則が成り立ちます。熱や仕事はありません。
B0<e<1 は通常の衝突場合です。非弾性衝突といい、衝突で運動エネルギーの一部が失われます。音や光、熱が出るだけで弾性衝突になりません。



○はね返り係数とはね返りの高さ
はね返り係数e=0.90とは、どのくらいの値でしょうか。高さh=1mからこのボールをおとすと、はね返り後の高さh1はいくらになるでしょうか。
これを力学的エネルギー保存則を使って解いて見ましょう。
最初の高さhの位置エネルギーと はね返り直前の速度v1による運動エネルギーを考えて、 mgh=mv1^2/2  v1=ルート2gh @
はね返り後の高さh1の位置エネルギーとはね返り直後の速度v2による運動エネルギーを考えて、 mv2^2/2=mgh1 v2=ルート2gh1 A
e=|v2/v1|=ルートh1/h  B よって h1=e2h
すなわちh1=0.90×0.90×1=0.81mとなり、元のe2倍となります。
1回のはね返りでe2倍になり、例えば2回目では0.81×0.81=0.68mです。
クイズではね返り係数はe=|9/10|=0.90なので、上の問と同じ0.81mです。

○衝突を物理的に説明する
 衝突の運動のようすは、運動量保存則とはね返り係数を使い解明できます。
例1 10円玉2つのうち、1方(A)を速さvでもう一方(B)に正面衝突させると、Aがとまり、Bが同じ速さvで飛び出していくのはなぜか?
 10円球はほぼe=1と見なせます。衝突後のA,Bの速さをv1',v2'として
運動量保存則よりmv+m・0=mv1'+mv2' よってv1'+v2'=v@
一方 e=|v2-v1'/0-v|=1  よってv2'-v1'=v  A
2つを連立して解くと@+Aより v1'=0(静止)、v2'=v となります。
このように、はね返り係数と運動量保存則を使うと、物体の速度を求めることができますし、さらに力積と運動量変化の関係(p.**)から物体にかかる力F、またエネルギーの原理(p.**)から、衝突の際の仕事などがわかります。
 これらを使い、自動車事故の時のダメージを計算したり、バッターがボールを打つビデオを解析することで加わる力を解析することが可能です。



4章 力学C 万有引力

4−1 万有引力の法則 太陽系、 星と星、地球と物体

4−1追加 万有引力はどうやって発見されたか 落ちない月

○ケプラーの法則
 16世紀の天文学者ティコ・ブラーエは太陽系の惑星の動きを詳細に記録しました。その弟子の、ヨハネス・ケプラーが記録を整理し、惑星の動きを以下の3つの規則からなる、ケプラーの法則にまとめました。
第1法則 惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道をする。
第2法則 一定時間に太陽と惑星の動きを結んだ面積は一定。
第3法則 惑星の周期Tと太陽からの距離rとして、すべての惑星について
    T^2=Kr^3    @ Kは一定値
 このケプラーの法則がニュートンの万有引力の理論的裏付けになりました。



○ニュートンによる万有引力の発見
 ニュートンは、リンゴ(物体)が落ちるのは、リンゴと地球の間に互いに引力が働くためと考えました。また、この引力は月と地球、惑星と太陽の間にも働くこと、そして、惑星や月の円運動は互いの引力が、円運動の向心力(p.**)となっていると考えました。この互いに引き合う力を万有引力といいます。
ニュートンはケプラーの法則を利用し、万有引力の法則を発見しました。
 ここで、ケプラーの法則から万有引力を求めてみましょう。いま、計算を簡単にするため、惑星は楕円軌道でなく、半径rの等速円運動とします。
惑星および太陽の質量をm,M、惑星の速さをv、周期をTとします。
太陽が惑星を引く力F=mv^2/r (向心力) A
一方、速さv=1周の長さ/周期=2πr/T B
AにBを代入して F=m・(4π^2r^2/t^2)/r=4π^2r/T^2 C
ここで ケプラー第3法則@より F=4π^2/k・m/r^2 となります。
ここで 4π^2/k=K1とすると、  F=K1m/r^2
これより、引力が惑星の質量mに比例し、距離rの2乗に反比例しています。
一方、作用・反作用の法則から、太陽が惑星を引く力F(作用)に対し、惑星が太陽を引く力(反作用)−Fも存在するはずです。よって、太陽についても同様に考えて、F=K2M/r^2 の形になると考えました。(K2は比例定数)
 この場合は、太陽の質量Mに比例し、rの2乗に反比例します。
 2つの結論を合わせて、万有引力は、質量mおよびMに比例し、距離の2乗に反比例する力となります。よって万有引力は比例定数をGとして、
F=GmM/r^2
 万有引力の発見は、ブラーエやケプラーらの観測と解析、そしてニュートンによる洞察が合わさって初めてできたものです。



○万有引力による星の運動 星に直進する場合を除く
 物体が星の近くを通るとき、万有引力をうけて、いくつかの軌道となります。
1)吸収される軌道 :星の重力が大きいか、天体の速度が小さいときです。
2)楕円軌道 :星を1つの焦点とした楕円軌道となります。安定した軌道で惑星の軌道がそうです(ケプラー第1法則)。円軌道も楕円軌道の一つです。
3)双曲線軌道、放物線軌道 : 星の重力が小さいか、物体の速さが大きいときなります。この場合は、星の近くまで再び戻ることはありません。




4−2 人工衛星の物理学    人工衛星の軌道


5章 波・音・光@ 波の性質

5−1 波とはどういうものだろうか    波の発生の原理と伝わり方
5−2 横波・縦波 波の進行方向と媒質の振動方向
5−3 波の要素と式     波長と振動数、周期
5−4 波は重ね合う      波の合成と波の独立性
5−5 2つの波源からの波は干渉する        水波の干渉
5−6 進まない波:定常波      定常波発生の原理
5−7 波は反射すると形が変わる?   固定端反射・自由端反射
5−8 波はどうして同じ形で進むのか    ホイヘンスの原理
5−9 波は反射する 
5−10 波は屈折する         
5−11 波は回折する     障害物の後ろに伝わる波


6章 波・音・光A 音の性質

6−1 音とは何か
6−2 音の波としての性質 反射、干渉、回折、屈折
6−3 弦に生ずる定常波     弦の固有振動と波長、振動数
6−4 気柱に生ずる定常波    気柱の固有振動と波長、振動数
6−5 共鳴・共振
6−6 音の3要素とうなり コラム ギターの音が大きくなるのはなぜか
6−7 ドップラー効果1 基本編
6−8 ドップラー効果2  応用編 


7章 波・音・光B 光の性質

7−1 光の波長と速度


7−1追加 光の反射       反射の作図法

○クイズ 鏡を使って全身を写そうと思います。鏡の大きさは最低どれくらいあればよいですか。1)身長と同じ大きさ 2)身長の半分  3)身長の2倍

○光は波なので反射する
 光は波なので反射します(p.**)。このとき、反射の法則が成り立ちます。
    入射角θ1=θ2反射角 @  反射の法則
 ここで、物体Aから出た光が、鏡XYで反射して観測者Bまで達するときの、光の経路を求めましょう。



 物体Aから鏡の表面で反射して観測者Bまで行く道はたくさんあります(例ACB,ADB,AEBなど)。その中で、入射角θ=反射角θとなるのは、ADBの場合でこれが実際の光の通り道になります。
 この書き方は、@点Aに対し、鏡と線対称な点A'を求め、直線A'Bを引きます。AA'Bと鏡との交点をDとします。BADBが光の経路となります。
このとき、観測者にとって物体Aは線対称の点A'にあるように見えます。
 では、どうしてこのADBが光の経路になるかを証明しましょう。
AおよびBから鏡におろした垂線との交点をそれぞれ、P、Qとします。△APDと△A'PDは合同なので∠ADP=∠A'DP、また∠A'DP=∠BDQ(対頂角)よって∠ADP=∠BDQ よって、この経路で入射角=反射角を満たします。一方、A’Bの長さはADBの長さと等しく、A'Bが直線で2点間の最短距離であり、経路ADBも最短距離になります。これは、フェルマーの原理「光は、2点間を最短時間で結ぶ経路をとる」にうまく合っています。

○鏡に映る像と光の進み方の例
(1)物体を床の鏡に反射してみるとどう見える
 上での作図法に従って、物体ABCからでる光の経路を描きます。このとき、目は物体の線対称点A'B'C'を見ています。これは本来の像と逆さまに見えます。富士山が湖に反射して見えると逆さまになる「逆さ富士」はこのためです。
(2)姿見の大きさは最低いくらか
 鏡の中で自分で全身を見るときの経路は図のようになります。このとき、鏡で反射を行っている部分の距離は身長Lのちょうど半分L/2です。すなわち、身長の半分の大きさの鏡があれば、位置を工夫することにより全身を写してみることができます。よってクイズの答えは、2)の身長の半分です。



(3)2枚の鏡を直角に置いて物体を見る
 物体Aから観測者Bに向かう反射光の経路で、反射の法則を満たすものが3つあります。よって、鏡の反射で物体が3つ見えることになります。
(4)キャッツアイとコーナーキューブ
 2枚の鏡が直角に組み合わせて光を角度θ(例30°)で入射させます。すると、反射の法則より、2枚の鏡で反射して、元来た方向(30°)に返っていきます。このような構造を、キャッツアイといいます。通常の鏡では光の方向と鏡が垂直のときだけ元来た方向に返りまが、キャッツアイでは斜めから光が当たってもその方向に返ります。このため自転車の反射板や、道路の反射板に使われています。また立方体のコーナーの内側3面を鏡にした、コーナーキューブではどの方向から来た光も元に返します。(キャッツアイ3次元版)



7−2 光の屈折1   屈折の公式
7−3 光の屈折2 いろいろな屈折

7−3追加1 レンズ      作図法とレンズの公式

○レンズ
 片面が曲面で、もう一面が曲面または平面でできたガラスやプラスチックの板をレンズといいます。中央部がへこんでいるものを凹(おう)レンズ、中央部がふくらんでいるものを凸(とつ)レンズといいます。空気からレンズ(ガラスやプラスチック製)に入ると、屈折の法則に従って屈折し、光を集めたり広げたりします。
 レンズの中心Oを通り、レンズの面に対し垂直な直線を光軸といいます。凸レンズに光軸と平行な光を当てると一点で集まります。この点を焦点といい、レンズの中心からの距離を焦点距離fといいます。凹レンズの場合は、平行光を当てると、ある一点から出ているように広がります。この点を凹レンズの焦点といいます。光がレンズを通過するとき、レンズの左面と右面で2回屈折しますが、作図の時は中心部で1回だけ曲がるように描きます。



○レンズと像
 レンズを通る光には次の3つの規則があります。
@光軸に平行な光はレンズを通過後、右側の焦点を通る。(凸レンズ)
光軸に平行な光はレンズを通過後、左側の焦点から出たように進む(凹レンズ)
Aレンズの左側焦点を通る光は、レンズを通過後光軸に平行に進む(凸レンズ)
レンズの右側焦点に向かう光は、レンズを通過後光軸に平行に進む(凹レンズ)
Bレンズの中心を通る光は、直進する。
 レンズの前に物体をABを置くとき、上の規則によって光の進むようすを作図できます。
 凸レンズで、焦点より外側に物体ABがあると、物体Aから出た光がレンズの右側の一点A'に集まりA'B'を作ります。一点に集まる像を実像といいます。この位置にスクリーンや紙を置くと実際に象が紙の上に観察できます。また、このときは像は上下逆さまになるので、倒立実像といいます。
 一方、凸レンズで焦点の内側や、凹レンズの時は、レンズの右側で光は1点に集まらず、左側の一点から広がったように見えます。この点にスクリーンを置いても像は結ばずまた、像の上下が同じことから正立虚像といいます。この虚像はスクリーンには映りませんが、レンズを通して目で見られます。



○レンズの公式
 物体の位置aとレンズの像の位置bとの間にはレンズの式が成り立ちます。
   1/a+1/b=1/f レンズの式

a:物体からレンズまでの距離、b:レンズから像までの距離
f:焦点距離(凸レンズ+、凹レンズ−の値とする)
また、物体と像の大きさの比を倍率mといい、m=|b/a|となります。  たとえば、f=20cmの凸レンズのa=60cmの点に高さ6cmの物体を置くと、b=20cmの点に高さ2cm(倍率1/3倍)の倒立実像ができます。



7−3追加2  カメラや望遠鏡の原理

(1)目の構造とめがね
 人の目では水晶体が凸レンズとなり、眼球内の網膜の位置に倒立実像を作っています。網膜の位置にある視覚細胞が像を捕らえ像の形が分かります。遠くや近くにある物体の像を結ぶには、水晶体の横にある筋肉を使ってレンズの厚みを変え焦点距離を変えています。
 この像を結ぶ位置が網膜より内側にあるのが近視、外側にあるのが遠視です。近視の場合は、凹レンズのめがねを使って光を前もって広げてから水晶体を通すことで、網膜の位置に像を正しく結ばせることができます。遠視の場合には凸レンズのめがねを用います。



(2)カメラ
 カメラの場合も構造は目と同じです。凸レンズを使って、物体の倒立実像をフィルムの位置に結ばせて記録します。遠くや近くにある物体を撮影するときは、フィルムの位置に倒立実像を結ばせるようにレンズの位置を前後させます。
(3)スライド映写機やプロジェクター
 レンズの式より、物体の位置aが焦点距離fの2倍以下かつ1倍以上の位置にあるとき、倒立実像ができ勝つその倍率は1より大きくなります。このこのaの位置にフィルムや液晶パネルを置き、拡大した倒立実像を見せるのがスライド映写機やプロジェクターです。



(3)望遠鏡
 ケプラーの発明したケプラー式屈折型望遠鏡は、2枚の凸レンズからできています。遠い位置から来たほぼ平行光を1番目の対物レンズで結像させ倒立実像を作り、それを2番目の接眼レンズで拡大し虚像として見ています。
(4)顕微鏡
 顕微鏡の原理も望遠鏡と基本的には同じです。ただし、物体の位置は対物レンズの焦点のすぐ外側に置きます。このときの倒立実像は拡大され、それをさらに2番目の接眼レンズで拡大し虚像として見ています。
(5)欠けたレンズは像を結ぶか
 レンズが像を結んでいるとき、レンズの一部を隠しても光量は少なくなりますが像は見えます。よって欠けたレンズでも像を結ぶことができます。逆に、レンズの面積が大きくなると、光量が増えます。天体望遠鏡では大きな光量が大きくなります。



参考:ピンホールカメラ
 光が直進することを使って、実像を作るのがピンホールカメラです。中を黒く塗った紙箱の一点に針で小さい穴を開け、その反対側の位置に穴を開けて半透明紙を貼り付けます。そうすると、倒立実像が観察できます。レンズと異なり、近いあるいは遠い物体でも全部同時にピントが合っています。



7−3追加3  全反射      光ファイバーの原理

○反射と屈折
 水から空気に向かって光が進むとき、水と空気の境界面で光は反射および屈折をします。入射光の強さを100%とすると、反射30%、屈折70%というように2つに分かれた強さの合計は入射光の強さに等しくなります。



 水(屈折率n水=1.33)は空気(n空=1.0)より屈折率が大きく、水から空気への屈折では、入射角θ1より屈折角θ2の方が大きくなります。(屈折光は面にたてた垂線から遠ざかる方向に向かう)。いま、入射角θ1を図のように次第に大きくしていくと、屈折角θ2が先に90°に達してしまいます。
すると、屈折光がなくなり境界面で入射光が100%反射光となります。このような反射を全反射といいます。また、屈折角θ2=90°となるときの入射角θ0を、臨界角といいます。
 屈折の法則より臨界角の条件を求めると、
  sin90°/sinθ0=n1/n2   よってsinθ0=n2/n1
n1,n2:媒質1,2の屈折率
よって、全反射の起きる条件は
@屈折率の大きい媒質1から小さい媒質2へ光が進むこと。(n1>n2))
A sin90°/sinθ0=n1/n2  
 例えば、屈折率1.33の水から屈折率1.0の空気へ光が進むときの臨界角θ0は sinθ0=n2/n1=1.0/1.33=0.752 このときθ0=49°となります。

○全反射はどのように見えるか
 水面で全反射がおこるとき、どのように見えるでしょうか。いま、観測者がプールの中にいて、水上の景色を見るものとします。
 全反射の時は水面は入射光を100%反射します。反射率の良い銀製の鏡でも反射率は98%以下なので、水面はきわめて良い理想的な鏡になります。よって水中にいる人にとっては、角度θ0=49°より大きい部分すなわち、円錐の頂上の角度(頂角)49°の円錐より外の水面の部分は反射率100%の鏡となり、水面の下の風景をさかさまに映し出して見えます。
 一方、地上の風景は、頂角49°の円錐の中に見えます。ただし。中心部は比較的ゆがみが少ないですが、円錐の周辺部に行くに従い上下につぶれた姿に見えます。
 読者の皆さん、夏のプールでこのことを思い出して、ぜひ試してください。



○光ファイバーは全反射
 光ファイバーは、中心部(コア)が屈折率の大きいガラス(屈折率n1)、周辺部(クラッド)が屈折率の小さいガラス(屈折率n2)からできています。ここに臨界角θ0(ただしsin90°/sinθ0=n1/n2 )より大きい角度で光を入射すると、全反射を起こし、光が弱まることなく数km〜100km程度の距離を中継無しに伝えられます。光ファイバーの太さは0.1mm以下で曲げることもでき、手術用の内視鏡や光通信の伝送ケーブルに使われています。



7−4 光の干渉1  ヤングの実験編


7−4追加1 光の干渉2 回折格子編

○回折格子とは
 透明なガラス板やプラスチック板の表面に、1cmあたり数百本から数千本の平行なみぞを等間隔でつけたものを回折格子といいます。回折格子では光の回折や干渉がよく起こり、白色光を当てると色に分かれたり、位相のそろったレーザー光を当てると特定の位置で明るい点が見られます。



 ここでは、回折格子に位相のそろったレーザー光を当てたときにできる、明るい点の原理について考えてみましょう。回折格子の溝と溝の間隔(格子定数といいます)をd[m]とし、この格子に波長λ[m]の入射光を垂直に当てて、入射光と角θの方向に明点が表れたものとします。
 まず、回折格子の溝の部分を通った光は散乱されます。一方、ガラスの平面部は良く光を通し、平面部から回折による円形波として出て行きます。このとき、平面部に入るレーザー光は同位相なので、平面から出るときの円形波の位相もすべて同位相となります。
 無数の回折光のうち、平面上の点Aと点Bを通る2つの円形波に注目します。この2つの回折光により明点が表れる条件は、ヤングの干渉実験と同じで、
  回折格子の強め合う条件  dsinθ=mλ @  m:整数
です。この関係が満たされるとき、明点になります。一方、この関係が成り立つとき、2つだけでなくすべての円形波についても同位相なので、@の条件が成り立ちます。よって、明点の位置ですべての回折波が重なり合い強め合うことになります。このため、明点がヤングの実験よりもはっきりと点状に出ます。
 ヤングの実験は「2つの波源から出た回折波による干渉」で「明暗の縞」が見えたのに対し、回折格子の実験は「多数の波源から出た回折波による干渉」で「明点のみ」が見えるようになります。



 例えば、1cmあたり2000本の溝がある回折格子に、波長λの単色光を入射して、θ=6.9°(sin6.9°=0.12)で中央以外で初めて明点が見えたとします。波長λを求めると、格子定数d=1cm/2000本=5.0×10^-6m、はじめての回折光なので、m=1 よってdsinθ=mλに代入し、λ=6.0×10^-6m
○回折格子の利用
(1)白色光を色に分ける  回折格子の強め合う条件は@よりdsinθ=mλ です。dは格子により決まっていますので、λとsinθ(スクリーン上の位置)は比例します。このため、白色光を回折格子に入射すると、白色光を作っているいろいろな波長の光に分解して見ることができます(スペクトル)。
 これを利用して、筒と回折格子を使い図の器具を作り、回折格子を通して光を見るとスペクトルを観察できます。このような器具を分光計といいます。
(2)身近な回折格子  鳥の羽やナイロンストッキング、薄いハンカチなどを通して、遠くの街路灯や点光源を夜に見ると、虹状のきれいな模様が見えます。これらは鳥の羽などの素材が回折格子として働いたからです。また、髪の毛の表面の鱗状の溝で光が当たると、部分的に緑や赤などの色がみえるのも、回折格子による干渉です。



7−4追加2 光の干渉3 ニュートンリング・くさび形編

○光の反射と位相
 波が反射するとき、固定端では位相が180°ずれ、自由端では変わらないことを学びました。光の反射の場合も同様に、屈折率が小さい媒質から大きい媒質に進むときの反射では位相が180°ずれ、屈折率が大きい媒質から小さい媒質に進むときは位相は変化しません。



○くさび形の干渉
 2枚のガラス板を重ね、その片方の端に紙などの薄い物体をはさむと、ガラス板の間にくさび形の空気の層ができます。この板に、上から波長一定の単色光(レーザー光など)を当てて、上から観察すると、光の干渉により強め合う部分は明るく弱め合う部分は暗くなり、図のような、平行な縞模様ができます。
 この干渉では、上のガラス板の下側で反射した光と、下のガラス板の上側で反射した光が干渉します。2つの光の距離の差は、くさび形の厚さをdとして、
2dとなります。反射光が同位相になると強め合うので、2波源の干渉と同じように距離の差=波長の整数倍、すなわち2d=mλ(mは整数)で強め合います。しかし、実際には、ガラスの屈折率(例1.5)は空気の屈折率(1.0)より大きいので、下のガラス番の上側の反射の時に、位相が180度ずれます。このため、縞の条件(干渉の条件)は
         2d=mλ 弱め合う条件(暗い縞) @
 2d=(m+1/2)λ 強め合う条件(明るい縞)
 2枚のガラス板が接する左端はd=0で、右に行くとdが大きくなります。よって左端は暗い縞から始まり、右隣は明暗明暗という縞が交互に続きます。



○ニュートンリング
 半径の大きな球面レンズの一部を平面で切り取り(口径の大きい凸レンズになる)、それをガラスの平板の上に置きます。単色光を上から当てると、光の干渉により図のような同心円状の明暗の縞模様が見えます。この干渉縞を、ニュートンリングといいます。縞のできる干渉条件は、くさび形の場合と同じで@式で表されます。(くさび形の干渉と同様、反射で位相が変わります)
 2枚のガラス板が接している中心部はd=0で、レンズの端に行くにつれてdが大きくなります。中心から円周部に行くにつれ、暗明暗明というように暗い縞と明るい縞が交互に続くようになります



○くさび形やニュートンリングの利用法
 くさび形の干渉では、2枚のガラス板の表面が真の平面であれば、等間隔に縞模様が出ます。ニュートンリングでも、真の球面なら同心円の縞ができます。
逆に、少しでも平面や球面にに凹凸があると、それが縞の間隔や縞の形が変化し、これを目で確認することができます。これを利用して、ガラスの表面を磨いて平面やレンズにするとき、その仕上がり具合をチェックするのに使います。


7−5 光の干渉2  薄膜編 : シャボン膜はなぜ色づくか
7−6 虹はなぜ色が見える、空はなぜ青い
7−7 光のドップラー効果で宇宙の構造がわかる




8章 熱@ 熱



8−0 熱と物質の状態 物質の三態

○クイズ 良くかきまぜた氷水の温度は0℃より、1)高い、2)低い、3)同じ、4)何とも言えない のどれか。

○熱を加えていくと物質の状態はどうなるか
 氷をビーカーに入れてガスバーナーを使って熱していくと、氷(固体)が融け、水(液体)になり、最後には水蒸気(気体)となります。同じ水でありながら、さまざまな状態になります。。一般に、物体を加熱していくと、固体、液体、気体の順で形を変えます。これらの変化を状態変化(相変化)といい、この3つの状態を物質の三態といいます。



○融点や沸点では2つの状態が共存している
 水を氷から加熱していくとき、0℃では氷(固体)なのでしょうか、水(液体)なのでしょうか。
 冷蔵庫から氷を取り出して温度を測ると次のようなことがわかります。
 0℃より低い温度では固体の氷だけで、まわりの空気から熱を吸収して氷の温度が高くなっていきます。氷は0℃ではなく、0℃以下です。
 しばらくすると、氷の一部が融けて水が出てきます。でも、氷も水も温度は0℃のままです。このままほうっておくと次第に氷が融け、全部が水になったのちに、初めて温度が0℃より上がっていきます。
 すなわち、融点では、固体と液体の状態が共存していること、いくら加熱しても固体から液体に全部変わるまで温度が変化しないことがわかります。
純物質(一つの化学式で表されるもの、水H2O、酸素O2など)では、融点では固体と液体が、沸点では液体と気体が共存しています。よって、クイズの答えは、水と氷が共存しているので氷の融点0℃となり3)です。ただし、良くかき混ぜない場合は温度にむらが生じ、水温は0℃より上です。



○水の沸騰する温度は100℃か。
 水を熱していく時、周りの空気の圧力が沸点に影響を及ぼします。沸点では熱により、液体の水が周りの空気の圧力に打ち勝って空気中に飛び出していきます。圧力が高くなると、空気の圧力に打ち勝てなくなり、より高い温度でないと出られなくなります。このため、沸点は上昇することになります。逆に、圧力が下がると沸点も下がります。
 ご飯を炊く場合は、大気圧=1気圧では米が100℃まで加熱され上手に炊けます。これが、山の上だと大気圧が低いため、100℃未満で沸騰し、芯が残ったまずいご飯になります。逆に、圧力釜を使うと、1気圧を超えるので、沸騰する温度が高くなり、中まで良く火が通ったおいしいご飯となります。


8−1 熱と温度コラム 氷は0℃、水蒸気は100℃か?

8−1追加 熱の伝わり方3つの方法 熱の伝導、対流、放射

○クイズ 太陽地球は熱を受けています。真空なのにどうして地球には熱が来るのでしょうか

○熱の伝わり方その1  熱伝導
 熱いお茶が入ったお茶碗を持つと、手が熱く感じます。これは、お茶の熱がお茶碗を通って手に伝わったためです。このように、熱が物体中を伝わることを熱の伝導といいます。このとき、熱は高温部から低温部へと移動します。これを分子運動の立場から考えてみましょう。 物体のある一部分が高温になると、その部分の分子や原子は激しく熱運動(たとえば振動や飛び回る)をします。この熱運動が、周りの物体の中の分子や原子を振動あるいは衝突させたりして、周囲に熱運動のエネルギーを与えていきます。このため、高温部はエネルギーを失い低温へ、周囲の低温部は熱運動のエネルギーをもらい高温になり、「高温部から低温部へと熱が移動」します。



○熱の伝わり方その2 熱の対流 
 鍋でみそ汁をわかす時に、味噌の小さい粒が鍋の下の方からわき上がって、その後下に沈んでいくようすを見たことがあるでしょう。これが熱の対流です。 熱を持った気体や液体自身が移動して熱を伝える現象を熱の対流といいます。例えば、ストーブで部屋を暖める時、暖められた空気は膨張し密度が小さくなり天井に昇ります。一方、天井の低い温度の空気は重く下がります。下がった空気はストーブで熱せられまた上昇します。この繰り返しで部屋が暖まります。熱の対流では、気体や液体自体が移動して風や流れを作ります。冬に暖かい部屋で窓を開けると、冷たい空気が入り暖かい空気が逃げるのもこの理由です。風や海流も、太陽の熱が引き起こした大規模な熱の対流で発生します。

○熱の伝わり方その3 熱の放射
 熱が熱を伝える物質を通さず、空間を直接伝わることを熱の放射(または輻射ふくしゃ)といいます。熱の放射では、熱のエネルギーが光や赤外線の波のエネルギーとして伝わります。例えば、地球と太陽の間は真空ですが、光や赤外線が真空を伝わるので、太陽の熱が地球に届くわけです。たき火などで、たき火の横にいる人が暖かく感ずるのも、熱の放射のためです。



○魔法瓶の原理 魔法瓶は内側の容器と外側の容器の2層構造になっており、2つの容器の間は真空です。内側の容器にお湯を入れても、外部に接した外側の容器との間は真空なので、この内側の容器からの熱の対流や熱の伝導はありません。一方、内側の容器の表面が鏡になっているので、放射による熱も反射して戻り熱が失われません。熱の伝導、対流、放射の3つを防ぐ構造のため、長時間内部の温度を保持できます。ただし実際には、蓋と容器が接していたり、内側の容器の固定のため外側と一部分がつながっていますので熱の伝導が若干あります。


8−2 あたたまり方の違い 比熱と熱容量
8−3 熱量も保存する 熱量保存則
8−4 熱と温度の正体は何か 熱運動と温度の関係


9章 熱A 気体

9−1 気体の圧力 圧力の定義、大気圧の導出、単位
コラム  ブラウン運動
9−2 ボイルの法則 水中から急浮上したら肺は破裂する
9−3 シャルルの法則 絶対零度の導出、熱気球の原理
9−4 気体の状態方程式 ボイル・シャルルの法則、理想気体
9−5 分子運動から気体の法則を導く    分子運動論と内部エネルギー
9−6 気体のする仕事・される仕事     体積変化と仕事
9−7 熱の場合のエネルギー保存則    熱力学第1法則

9−7追加 定積変化と定圧変化      与えた熱の何割が気体を温めるのか

○定積変化
 体積を一定に保ったときの気体の状態変化を定積変化といいます。密閉した容器に気体を入れて、熱Qを加える場合です。体積変化が0ですから
     気体が外力にした仕事W'=PΔV=P・0=0
よって  外力が気体にした仕事W=−W'=0
熱力学第一法則より  ΔU=Q+W=Q+0 よって ΔU=Q
ここで理想気体で内部エネルギー変化ΔU=3nRΔT/2なので
       ΔU=Q=3nRΔT/2
 加えた熱が100%気体の内部エネルギー(気体の持つ熱量)に変換されます。最も効率的な加熱方法です。



○定圧変化
 圧力を一定に保ったときの気体の状態変化を定圧変化といいます。なめらかなピストンを持つシリンダに気体を入れ加熱する場合です。定圧変化ではシャルルの法則V/T=一定が成り立ちます。
 熱Qを加えて気体の体積がΔV(=V2−V1)膨張し、気体の温度がΔT上昇したものとします。ここで、状態方程式よりPΔT=nRΔTなので
  気体が外力にした仕事W'=PΔV=nRΔT
よって  外力が気体にした仕事W=−W'=−nRΔT
熱力学第一法則より  ΔU=Q+W=Q−nRΔT
一方、理想気体で内部エネルギー変化ΔU=3nRΔT/2なので
3nRΔT/2=Q−nRΔT Q=5nRΔT/2
 加えた熱5nRΔT/2(100%)に対し、内部エネルギー増加は3nRΔT/2(60%)、気体の膨張による仕事nRΔT(40%)となります。よって、与えた熱のうち60%だけが気体の内部エネルギーに変換されます。気体膨張の分だけ、外部に仕事をして熱を失います。



○気体の比熱 モル比熱
 1モルの気体を温度1K上げる熱量を気体のモル比熱といいます。nモルの気体に熱Qを加えて温度がΔT上昇したとき、モル比熱CはC=Q/nΔTで表されます。
1)定積モル比熱Cv
体積一定の場合のモル比熱です。定積変化でQ=ΔU=3nRΔT/2) よって Cv=Q/nΔT=3/2nRΔT/nΔT=3/2×8.31=12.5J/mol・K。すなわち、気体1モルを1K上げる熱量は、12.5Jです。
2)定圧モル比熱Cp
 圧力一定の場合のモル比熱です。定圧変化でQ=5/2nRΔT/nΔT
 よって Cp=Q/nΔT=5/2nRΔT/nΔT=5R/2=5/2×8.31=20.8J/mol・K。気体1モルを1K上げる熱量は、20.8Jです。膨張の分だけCvより余分な熱量が必要です。このとき、Cp=Cv+R の関係があります。



9−8 等温変化と断熱変化 温度の変化の有無と内部エネルギー
9−9 熱の現象は一方通行   不可逆変化


10章 熱B 熱と仕事

10−1 熱機関と効率       熱機関の原理
10−2 エアコンの物理      なぜ冷やせるのだろうか
10−3 エネルギーの変換と劣化


11章 電磁気@ 電気

11−1 電気の正体
11−2 オームの法則


11−2追加1 抵抗とその接続 直列、並列接続

○クイズ 導線の太さ(直径)を2倍にすると、抵抗は何倍になるでしょうか。 1)2倍 2)4倍  3)0.5倍  4)0.25倍

○導線の電気抵抗の大きさ
 エナメル線など導線の抵抗値R[Ω]は、@銅や鉄など材質により異なります。またA長さL[m]が長いほど、B導線の断面積S[m2]が小さいほど抵抗値Rが大きくなります。材質により異なる定数をρ(ロー)(抵抗率)とすると、
    導線の抵抗値R=ρL/S    @

の関係が成り立ちます。例えば、導線を引っ張って長さを2倍にすると、体積が変わらず断面積は半分になりますので、抵抗値は@式より4倍となります。
 クイズの答は4)の0.25倍です。直径が2倍になると断面積は4倍になり、抵抗は1/4倍になるからです。



○なぜ導体に抵抗があるのか
 金属中では金属イオンが規則正しく並び、その間を自由電子が動き回り電流を生じています。同じ長さ太さの導線でも、金属の種類により、含まれる自由電子の数が異なり抵抗値が異なります。また、金属イオンは熱運動(p.**)により細かく振動しています。この熱運動に自由電子が当たると、自由電子の動きが妨げられるため、抵抗値が大きくなります。熱運動は温度が高くなると激しくなるため、金属導線では温度が高い程、抵抗値も大きくなります。

○抵抗の直列接続、並列接続
 電圧V[V]の電池に、抵抗R1,R2を接続します。回路全体に流れる電流をI[A]とします。抵抗の電圧や電流を水流モデルと対比して見ていきましょう。
(1)直列接続
 抵抗[パイプ]を連続してつなげる方法を直列接続といいます。直列接続では回路のどの点も電流I[A][水流]が一定となります。
電流I=一定   @
 オームの法則から、抵抗R1、R2にかかる電圧V1,V2はそれぞれ、V1=R1I、V2=R2Iとなります。一方、回路にかかる電圧V[V][水圧]は、2つの電圧[水圧]の和なので V=V1+V2=R1I+R2I=(R1+R2)I A
 回路全体の抵抗R(合成抵抗といいます)とすると2つの抵抗の和となり、
    合成抵抗R=R1+R2    B
となります。直列接続は例えば、クリスマスツリーの電飾の接続に用いられています。
(2)並列接続
 抵抗[パイプ]を横に並べてつなげる方法を並列接続といいます。並列接続では2つの抵抗にかかる電圧[水圧]はともにV[V]で一定となります。
電圧V=一定   C
 電流I[A][水流]は2つの抵抗[パイプ]で電流I1,I2に分かれます。
   I=I1+I2  D
 一方、オームの法則から、V1=R1I1、V2=R2I2、V=RI(合成抵抗R)なので、
Dより  I=V/R =V/R1+V/R2=(1/R1+1/R2)V これから
合成抵抗R=1/R1+1/R2 E
となります。家庭の電気器具は並列接続で使用します。また、E式は変形して
R=R1R2/(R1+R2) となり、この方が計算が楽です。



11−2追加2 複雑な回路の接続     キルヒホッフの法則

○電圧降下V=RI
 図のように抵抗R1,R2を直列につないだ回路で、各点の電圧を測るとグラフのようになります。回路を流れる電流Iは同じなので、オームの法則より抵抗R1の両端にはV1=R1Iの電圧が、抵抗R2の両端にはV2=R2Iの電圧がかかります。回路の各点の電圧は、抵抗を通ると下がるため、この抵抗の両端の電圧を電圧降下といいます。電圧降下Vは V=RIと書けます。



○複雑な回路の電圧と電流を求める
 抵抗と電池が1つずつなら、オームの法則V=RIから電流や電圧を求めることができます。これに対し、複雑な回路では次に説明するキルヒホッフの法則を使うことで電圧や電流を求めることができます。
(1)キルヒホッフ第1法則
回路のどの点でも、その点に入る電流の和が、出る電流の和に等しい。 
     入る電流の合計 i1+i2= i3+i4 出る電流の合計 @
 (これは、パイプである点で水がたまらず流れ続けることに対応しています)



(2)キルヒホッフ第2法則  オームの法則拡張版
どのような回路(一周して元に戻れる回路)でも、回路の電源電圧(起電力Eという)の和は、抵抗による電圧降下の和に等しい。
E1+E2=R1I1 +R2I2 A
 これはオームの法則を複雑な回路に適用したもので、オームの法則拡張版といえます。回路に流れる電流の正の向きをまず決め、これと同じ向きに電流を流す時は電流を+、逆向きは電流を−としてA式に代入します。



演習 電池の起電力E1=8.0V、E2=2.0V、抵抗R1=2.0Ω、R2=2.0Ω、R3=1.0Ωの抵抗を図のようにつなぎとき、各抵抗の電流をi1,i2,i3 を求めなさい。
答え 点bで、キルヒホッフ第1法則より i1+i3=i2  @
回路abefで、キルヒホッフ第2法則より 8.0=2.0i1+2.0i2  A
回路bcdeで、キルヒホッフ第2法則より 2.0=2.0i2+1.0i3  B
 @ABを連立して解いて、 i1=2.5A、i2=1.5A、i3=-1.0A


演習2 図のような各辺がr[Ω]の抵抗でできている立方体で、a点とg点の間に電圧Vの電池をつなぎ電流Iを流すとき、ag間の合成抵抗Rを求めよ。
答え (1)キルヒホッフの第1法則より a点で電流はab,ad,aeの各辺にI/3ずつ流れる。同様にg点では電流Iとなるので、cg,fg,hgの各辺の電流はI/3である。点bではabの電流I/3がbc,bf2つの方向に分かれるので、2つの辺ではI/6の電流が流れる。
(2)キルヒホッフの第2法則より、回路abcgaで、辺ab,bc,cgの電圧降下を考えて    V=r×I/3+r×I/6+r×I/3=5rI/6
一方 オームの法則より合成抵抗Rに関してV=RI
両者を比較して、R=5r/6



11−3 静電気とクーロン力   静電気の発生
11−4 電荷があると静電気が生ずる   静電誘導と誘電分極 、箔検電器
11−5 電荷が電場Eを作る   電荷はまわりの空間を変化させる


11−5追加1 電場を遮断するには  飛行機への落雷とシールド線

○クイズ 飛行機に雷が落ちると中の人は感電するでしょうか?

○静電誘導と導体内部の電界
 金属(導体)に帯電体を近づけると、中の自由電子が静電気力により移動して、正と負の電荷を生ずるのが静電誘導でした。このページでは、帯電体の変わりに金属に右向きの一様な電場E(電界の向きと大きさがどこも同じ電場)をかけたときの様子を考えてみましょう。
 電場Eにより金属中の自由電子が静電気力F=−eE(電子の電気量=−e負)をうけ導体の左端に集まり、左端が負に帯電(-q[C])します。一方、取り残された金属の正イオンにより右端は正に帯電(+q[C])します。これらの電荷により、金属内部には左向きの電場E2が発生します。自由電子の移動はEとE2がつりあうまで続きます。EとE2が打ち消し合うときは、2つをたしあわせた合成電界が0となります。すなわち金属内部では電界が0なのでV=EdでE=0より、導体全部が等電位になります。なお、両端には帯電体の場合と同様に静電誘導で正と負の等量の電荷が生じています。
  @金属内部では、電場は0 かつ 等電位である
 また、導体の表面が等電位面なので、電気力線は金属表面に垂直に出入りすることになります。



○接地(アース)とは
 地球は大きな導体と考えることができ、その電位Vはどこでも同じです。電位の基準を地表にとることが多く、通常は地球の電位は0[V]としています。
 家庭の洗濯機や電子レンジなどでは、アース線といって、地面に取り付ける線があります。洗濯機等では電荷がたまることがあり、洗濯機から人を介して地面に流れること(感電)があります。これを防ぐため、アース線を地面につなぎ、洗濯機と地面を等電位にして、電流が流れないようになっています。
このように、導体を地面につなぐことを接地(アース)といいます。

○静電遮蔽
 導体内部に、隙間や空間があるときも、導体内は合成電場が0となるので、隙間や空間の部分も電場は0となります。この現象を静電遮蔽(しゃへい)といいます。例えば、箔検電器を導体の金網でおおって、金網の外側から帯電体を近づけても、静電遮蔽により、箔検電器の箔は開きません。また、外側が金属でおおわれている車や飛行機に、雷が落ちても、表面に電流が流れるだけで、中の人は感電しません。これがクイズの答えです。テレビやマイクのケーブルも、+側用の信号線の外側を網目状の−側電線おおっており、静電遮蔽により雑音を拾わないようになっています(シールド線)
 また、電磁波の場合も、後で説明するように、電場と磁場の変化で伝わるため、電場が0であると伝わりません。鉄筋コンクリートの建物や、金属板でおおわれた部屋では、電波が伝わらないか伝わりにくくなっています。



11−5追加2 電場内での荷電粒子の運動

○一様な電場中での電荷の運動
 +と−の電極に電圧V[V]をかけて、2つの極板の内部に右向きの一様な電場中E[N/C]を作ります。極板間の距離はd[m]とします。このとき、+極から出発した正の電荷の運動を考えてみましょう。電荷の初速度0、質量m[kg]、電荷q[C]とし、−極へ到達したときの速度をv[m/s]とします。
 電荷は静電気力  F=qE    @を受け、右向きに加速します。
電場の強さEは一様な電場ですから  V=Ed  よってE=V/d A
これを@に代入すると  F=qV/d です。
電場が電荷にする仕事Wは、静電気力Fで−極まで距離dを移動するので         W=Fd=qV B
 一方、電場から加速された電荷は、静電気力の仕事を運動エネルギーに変えます。よって  qV=mv^2/2 C
 これは、電荷が静電気力による位置エネルギーqVを失い、それを位置エネルギーに変換したことを意味しています。すなわち、電場中の電荷の運動について、エネルギー保存則が成り立つことを示します。
 −極へ到達するときの電荷の速さvはCより  v=√2qV/m
 このように電場を使って荷電粒子の加速する方法は、テレビのブラウン管に用いられています。電子を電場で加速し、ブラウン管表面の蛍光体に当てて光を出すために使います。また、粒子の研究を行う加速器にも用いられます。



○導体内部の電流と電子の運動
 金属の導線に電池をつなぐと、導体に電場Eが生じます。導体内の自由電子(電気量-e[C])は電場から静電気力F=−eEを受けて加速します。しかし、金属イオンが熱運動しているため、電子が衝突しそのたびに減速します。熱運動が電子の運動を妨げる抵抗となっています。電子は衝突のたびに加速、減速を繰り返します。しかし、たくさんの電子全体として見ると、ほぼ一定の速度vで移動していると考えられます。
 熱運動による抵抗の大きさは電子の速度vに比例しており、抵抗力はkv(kは比例定数)と表せます。すると、電荷にかかる力はeE−kvとなります。
 電子の速度が一定になったときは合力が0なので  eE=kv D
 一方、導線の長さをL[m]とすると、導体中は一様な電場なので、この部分にかかる電圧をV[V]とすると、  V=EL E
DとEよりEを消して    v=eV/kL F



 ここで、導体を流れる電流Iを求めてみましょう。電流は導体断面(断面積をS[m2]とする)を1秒間に通過する電気量で表されます。(p.**) 
 1秒間に平均速度vの電子が進む距離xはv×1[m]です。1秒間には長さL、面積Sの導線内の全電子が通過します。電子の密度を1m3あたりn個とすると、電子数はn×Sx=nSvです。電子1個の電気量が-e[C]なので、1秒間に通過する電気量はenSvとなり、電流Iは    I=enSv  G
FとGから、I=e^2nsV/kL  これを変形して V=k/ne^2・L/S・IH
 ここで、k/ne^2・L/S=R(比例定数:抵抗)I  とおくと 
 V=RIでオームの法則を導くことができます。一方、Iで k/ne^2=ρ(比例定数:抵抗率)とおくと R=ρL/S の式が導き出されます。(p.**参照)
電場中での電子の運動を考えると、オームの法則や抵抗の値を導くことができるのです。



11−6 電気力線が電場のようすを教えてくれる
11−7 電位Vは電荷の持つ位置エネルギー
11−8 コンデンサーの原理   電荷の蓄え方
11−9 コンデンサーの電気量Q=CV



11−10 コンデンサーの接続と静電エネルギー

○クイズ 電気容量Cのコンデンサー2つを直列につなぐとき、全体の電気容量はいくらになるでしょうか。  1)C/2  2)C  3)2C

○コンデンサーの直列接続、並列接続
 電圧V[V]の電池に、電気容量C1[F],C2[F]のコンデンサーを接続します。2つのコンデンサーの合成容量C(回路全体のコンデンサーの容量)とします。
(1)直列接続
 直列接続でC1の上側極板に+Q[C]の電荷がたまると、下側極板に-Q[C]の電荷がたまります。一方、C1の下側極板とC2の上側極板で囲まれた部分は電荷保存則より電荷の合計は常に0です。このため、C2の上側の極板に+Q[C]の電荷がたまります。一方、静電誘導によりC2の下側では-Q[C]の電荷がたまります。すなわち、直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しく+Q[C]であり、全体で+Q[C]の電荷を蓄えているのと同じです。
各コンデンサーの電圧について V1=Q/C1、V2=Q/C2 V=Q/C
また 直列接続なので   V=V1+V2 
 これらをまとめると、 Q/C=Q/C1+Q/C2
 すなわち、     1/C=1/C1+1/C2 A
またはこれを変形して  合成容量C=C1C2/(C1+C2) B
クイズの答えはC'=C^2/2C=C/2から 1)です。



(2)並列接続
 並列接続では、C1とC2にかかる電圧はともに等しくVです。C1,C2、合成横領Cにたまる電気量をQ1,Q2,Qとすると、全体の電気量QはQ1とQ2の合計となるので、     Q=Q1+Q2   C
一方、Q1=C1V、Q2=C2V、Q=CVより  CV=C1V+C2V
よって  合成容量C=C1+C2  D
例 C1=2μF、C2=3μFのコンデンサーを1)直列接続、2)並列接続したときの合成容量を求めなさい。  答 1)C=1.2μF、2)C=5μF



○コンデンサーの静電エネルギー
 コンデンサーに電荷Qが蓄えられていると、外部に対して仕事をすることができるのでエネルギーを蓄えています。このエネルギーを、静電エネルギーといいます。この大きさを求めてみましょう。
 コンデンサーでは電荷Qを、電池の電圧Vで移動させるので、電池がコンデンサーに仕事Wをします。電圧Vが一定ならば、電池が電荷qにする仕事はp.**よりW=qVです。しかし、コンデンサーの充電では、コンデンサーにかかる電圧がQ=CVに従い変化します。よって、q−Vグラフの囲む面積が電池がコンデンサーにする仕事Wです。グラフの三角形の面積はQV/2なので、       静電エネルギーU=QV/2 E 
 一方、電池が回路全体にする仕事W'は、電荷Qを電圧Vで送り出したわけですからW'=QVです。コンデンサーに蓄えられたエネルギーQV/2は電池が回路にした仕事の半分です。残りの仕事QV/2は、回路内の導線の抵抗により熱(ジュール熱)に変わり失われてしまいます。


11−11 電流とエネルギー

○ジュール熱
 ニクロム線や白熱電球など、電気抵抗のある導体(金属)に電流を流すと、熱を発生します。このような、電流による発熱をジュール熱といいます。
 発生する熱量Wは、抵抗をR[Ω]、電流をI[A]、電圧をV[V]、電流を流す時間をt[s]として、実験より次の関係式が成り立つことが知られています。
ジュール熱W=VIt @ ジュールの法則
 この関係式をオームの法則V=RIを使って変形すると
  W=RI^2tA または  W=V^2t/R  B    となります。
 この式を導いてみましょう。抵抗に電流I[A]がt[s]間流れたとき、抵抗を移動した電気量Q[C]は p.**より、 Q=It です。
 一方、電圧V[V]が電気量Q[C]にする仕事Wは p.**より
   W=QV=It×V C となります。これは、@式と同じなので、実験から得られた@AB式が、正しいことがわかります。



○電力量と電力
 電流はジュール熱を発生するだけではありません。電池を使ってモーターを回すと物体を移動する仕事ができます。また電池に発光ダイオードをつなぐと、光のエネルギーを発生します。これらは、電池内の電荷q(電子)が、電池の電位差Vにより電場による位置エネルギーqVをもらって、それを他のエネルギーに変えたためです。電気はさまざまな仕事をすることができます。



 電流がする仕事量W[J]を電力量といいます。また、電流が1秒当たりにする仕事の量すなわち、電気の場合の仕事率P[W](ワット)(p.**)を、電力といいます。 電力量Wはジュール熱と同じ式で表せ、C式の考察から
  電力量W=VIt   Dとなります。
一方、仕事率の定義(p.**)から   電力P[W]=W/t =VI E
となります。VIは電力Pなので、これらから、 
      電力量W=VIt=Pt  F
 電力量の単位には[J]の他に、仕事率P[W]と時間t[s]の積で表した、kWh(キロワットアワー)も使われます。
   1[kWh]=1000[W]×1[h]=1000[W]×3600[s]=3.6×10^6[J]
の関係があります。電力会社からの電気代の請求書は、使用量にkWhが書いてあります。これは使用した電気エネルギーの量に課金をしているわけです。
 一方、電力についてのE式はオームの法則V=RIを使って変形すると
     電力P=VI=I^2R=V^2/R F
演習 100Wの電球を100Vの電源につなぐとき、抵抗Rと電流Iはいくらか。また、これを一時間点灯するときの電力量はいくらか。
答え P=VI=100W よってI=1.0A R=V/I=1.0Ω
W=VIt=P×t=100×60×60=3.6×10^5J



11−12 半導体とは    P型,N型半導体

○クイズ 半導体の代表的な元素は何でしょうか。元素名を上げてください。

○半導体とは
 ケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)などは、金属など電気抵抗が小さい導体と、ガラスやセラミックスなど電気抵抗がきわめて大きい不導体との中間の抵抗を示し、半導体といわれます。半導体にも自由電子があります。半導体は、低温では自由電子が少なく不導体のように抵抗率ρ(p.**)が大きいのですが、温度を上げていくと自由電子が増え抵抗率が下がるという性質があります。これは導体の場合の温度を上げると抵抗率が増加する現象と逆になっています。
半導体は、元素単体で使われるよりも、不純物をごく少量混ぜて使われます。
クイズの答えは、ケイ素(Si)やゲルマニウム(Ge)です。

○不純物と半導体の特性
(1)真性半導体
 ケイ素やゲルマニウムは周期表の14族に属し、炭素(C)と同様に4個の価電子(一番外側の軌道の電子)を持ちます。1個のケイ素原子は、まわりの4個のケイ素原子と結合して結晶を作っています。2つの原子の結合は、互いに価電子を1個ずつ出し合い、2個で1組の電子のペアを作り電子を共有します。これを共有結合といいます。原子1個は4個の原子と電子を共有しています。
 このため、純粋なケイ素やゲルマニウムでは、自由電子が存在せず、電流がきわめて流れにくい構造となっています。しかし、温度を上げると、共有結合の電子の一部がくずれて結晶内を移動できるので電流がごくわずか流れます。純粋なケイ素やゲルマニウムを真性半導体といいます。



(2)P型半導体
 純粋なケイ素(またはゲルマニウム)の結晶に、価電子が3個あるアルミニウム(Al)やホウ素(B)などの13族の元素を、不純物としてごく微量混ぜたものです。価電子3個のアルミニウムが、まわりのケイ素と結びつくとき、電子が1個だけ足りず電子の抜け穴ができてしまいます。この穴は−の電荷を持つ電子が足りないので、正の電荷を持つ穴と考えられます。この正の電荷を帯びた穴を正孔(せいこう)またはホールと呼びます。
 正孔はまわりの電子を捕らえようとする性質があり、半導体内を移動します。正の電荷が移動するので、移動した向きに電流が流れます。このような半導体をP型半導体といいます。Pはpositive(正の)の頭文字です。



(3)N型半導体
 純粋なケイ素(またはゲルマニウム)の結晶に、価電子が5個あるヒ素(As)やリン(P)などの15族の元素を、不純物としてごく微量混ぜたものです。価電子5個のヒ素が、まわりのケイ素と結びつくとき、電子が1個だけ余ります。
 この余分な電子が自由電子となって結晶内を移動します。このとき、電子の移動方向と逆に電流が流れます。このような半導体をN型半導体といいます。Nはnegative(負の)の頭文字です。



11−13 半導体の動作の原理と利用

(1)ダイオード
 P型半導体とN型半導体を接合したものをPN接合といいます。その両端に電極をつけたものをダイオードといい、図のような記号で表されます。
 PN接合では、PからNに向けて(順方向)電流が流れますが、NからPに向けて(逆方向)は流れません。このように、一方向だけに電流を流す作用を整流作用といいます。この原理をくわしく見てみましょう。



 P型半導体を+極、N型半導体を−極につなぎ(順方向)、電圧をかけると、P型中の正孔(ホール))も、N型中の電子も、それぞれPN接合部に向かい電流がP型からN型の向きへ流れます。正孔や電子は、PN接合を超えたところでそれぞれN型中の電子やP型中の正孔と結合し消滅します。
 一方、電池の−極からはN型半導体に電子が供給され、P型半導体からは+極へ向かって電子が移動しP型半導体内に新たな正孔が作られます。よって、順方向に電圧をかけている間中、PからNに向かって電流が流れ続けます。
次に、P型半導体を−極、N型半導体を+極につなぎ(逆方向)、電圧をかけます。P型中の正孔は−極へ、N型中の電子は+極へと移動します。このため、PN接合部付近では正孔や自由電子など電流の担い手がほとんどいなくなります。このような領域を空乏層といい、電流がほとんど流れません。



 PN接合の整流作用は、交流を直流に変換する用途(ACアダプタ)に使われます。図はダイオードを使ったACアダプタの原理図です。



(2)発光ダイオード
 ダイオードの順方向接続では、PN接合部付近で正孔と電子が結合して消滅します。このときに、これらの持つエネルギーが光となって放出されることがあります。この光を利用しているのが、発光ダイオード(LED)や半導体レーザーです。これらは、リモコンやCD,DVDなどに使われています。
(3)太陽電池
 PN接合を使って、光を電流に変換するのが太陽電池です。PN接合に光が当たると、正孔と電子のペアが発生します。エネルギーの関係から、正孔はP型に、電子はN型に移動し、P型とN型の間には電位差(起電力)が生じます。両者に、抵抗をつなぐと起電力により電流を取り出すことができます。



(4)ペルチェ素子
 P型半導体とN型半導体を銅の電極で接合し、N型からP型へ電流を流すと、半導体の上部では熱を吸収(冷却)し、下部では放出(加熱)します。この作用をペルチェ効果とよび、携帯用冷蔵庫やCPUの冷却に用いられます。



(5)トランジスタ
 P型半導体とN型半導体をNPN(またはPNP)の順に並べた素子をトランジスターといいます。NP(またはPN)間に小電流を流すと、NN(またはPP)間には大きな電流が流れます。これをトランジスターの増幅作用といいます。TVやステレオでは、微小な信号をトランジスターを使って大きな音にしています。このほか、トランジスターには交流信号を作る発振作用や、ダイオードと同様に信号のon/offを行うスイッチング作用、また光の吸収や発光作用があり、いろいろな用途に使われています。トランジスターを組み合わせることで、計算やデータ処理を行う論理回路や、データを記録するメモリ回路などが作られており、コンピュータや携帯電話に不可欠な素子となっています。




12章 電磁気A 磁気

12−1 磁場と磁力線
12−2 磁性体の性質、磁性体の例   磁性体
12−3 電流の作る磁場     右ねじの法則
12−4 電流が磁場から受ける力
12−5 スピーカーの原理、モーターの原理
12−6 磁場内での荷電粒子の運動1 基礎編
12−7 磁場内での荷電粒子の運動2 応用編


13章 電磁気B 電気と磁気

13−1 電磁誘導1
13−2 電磁誘導2 渦電流
13−3 自己誘導と相互誘導 磁力線のようす


13−3追加 変圧器の原理 電磁調理器

○クイズ 発電所からの電気は高圧電線で送電されます。これはなぜでしょう。

○変圧器の原理
 2つのコイルの間の相互誘導を利用して、交流の電圧を変化させる装置が変圧器(トランス)です。変圧器は図のように鉄心に2つのコイルを巻いてあります。交流電源につなぐ側を1次側(1次コイル)、負荷(電気器具など電気を使う装置)をつなぐ側を2次側(2次コイル)といいます。



 変圧器による電圧の変換の原理を考えてみましょう。このとき、1次側のコイルの巻き数をn1回、2次側のコイルの巻き数をn2回とします。
 まず、電源の電流により1次コイルに磁束φが発生します。交流なので磁束が変化し、自己誘導起電力が生じます。電源電圧v1が自己誘導起電力に逆らって電流を流し続けるとき、電源の電圧と誘導起電力が等しくなります。
誘導起電力は1巻きコイルで V=−Δφ/Δt、n回巻きではn倍なので
    1次側の電圧v1=−n1・Δφ/Δt @
 一方、磁束の変化は鉄心を伝わり、2次側のコイルを貫きます。2次側のコイルに生ずる誘導起電力v2は、同じ磁束の変化Δφと巻き数n2回を使って        2次側の電圧v2=-n2・Δφ/Δt A
となります。すると、1次側の電圧と2次側の電圧の比は@とAより
v1:v2=n1:n2
となります。すなわち、変圧器の電圧の比は巻き数の比に等しくなります。
 さらに、電流についても関係を求めましょう。1次側、2次側の電流をI1,I2とします。後で学びますが、コイルでの消費電力は0です(導線の抵抗が0のコイルの場合)。このため、電源から1次側コイルに入ったエネルギーは、鉄心内を磁場の変化の形で伝わり、2次側にそのまま減ることなく伝わります。よって、1次側(電源側)の消費電力=2次側(負荷側)の消費電力 です。
       V1I1=V2I2 B
B式を変形して I1:I2=V2:V1=n2:n1 となります。すなわち電流については、巻き数の逆比になります。

○変圧器の利用
(1)ACアダプター
 家庭用の100Vの交流を、電気器具で使う数V〜十数Vの直流に変換する装置がACアダプターです。この中には変圧器が入っています。1次側の100Vの交流を変圧器を使い2次側で低電圧の交流にし、これをさらにダイオードとコンデンサーで直流に変換します。また、ビデオデッキやコンピュータなど半導体を電子機器では、低電圧の直流を使うため、変圧器が内蔵されています。



(2)変電所、電柱の変圧器
 発電所から電気エネルギーを送る(送電)場合にも変圧器を使い電圧を変化させます。これは、次の2つが大きな理由です。また@がクイズの答えです。
@送電線の抵抗Rによるジュール熱P=i^2Rは電流が低いほど小さく、送電の際のエネルギーのロスが少なくなります。電流を小さくするには高電圧(数万V〜数十万V)にすればよいので、変圧器で高圧にし送電しています。
A送電線の抵抗の電圧降下のため、家庭の直前の変圧器で100Vに調整します。


13−4 交流の発生と性質 交流発電機
13−5 コイルと交流       抵抗相当2πfL
13−6 コンデンサーと交流 抵抗相当1/2πfC
13−7 コイルとコンデンサーを使った音のフィルター
13−8 共振回路と振動回路
13−9 電磁波の発生


14章 原子@ 電子

14−1 電子の発見
14−2 光電効果と光の粒子性
14−3 X線の発生と性質
14−4 X線の波動性と粒子性 
14−5 電子顕微鏡の原理   ド・ブロイの物質波
14−6 粒子性と波動性    2重性とは
14−7 原子の構造その1 ラザフォードモデル
14−8 原子の構造その2 ボーアモデル
14−9 原子の構造その3 エネルギー準位と線スペクトル


15章 原子A 原子核

15−1 原子核の発見と構造 
15−2 放射線の種類と性質  α、β、γ線
15−3 原子が崩壊する 
15−4 原子核の変換 原子核反応
15−5 原子核エネルギー 質量がエネルギーに変わる
15−6  中性子が核反応をコントロールする   原子炉
15−7 素粒子の世界    クォークとレプトン
15−8 4つの基本的な力

索 引



16章追加 高校物理を離れて

16−1 量子力学の世界

 いよいよ、最後の章です。15章までは、高校物理の範囲での理論と現象についての解説してきました。この章では、この範囲を超えて、現代物理のいくつかの物理の流れにふれてみたいとおもいます。それは、量子力学、相対論、そして素粒子と宇宙論についてです。

○物理の流れ

 自然現象のなかには一定の法則があります。この法則を探るのが物理です。自然現象の観察や実験から、それらの裏にある法則を見つけ式で記述する、また、その法則のさらに基本的な法則を見つけ出す、これが物理学の発展の過程です。
 300年前、ニュートンによって運動の3つの法則がまとめられ、運動方程式や加速度運動、運動量などが整理されました。力と物体の運動に関する体系である力学(ニュートン力学または古典力学とも言う)が確立されました。本書で取り上げている高校物理の力学分野も、この古典力学に属するものです。
 ニュートン以後、熱や波動、光、電気、磁気などについても実験や観察から理論がまとめられ、19世紀の終わりまでに、熱力学、波動力学、光学、電磁気学などの体系となりました。これらの物理学の分野を総称して、古典物理学といいます。本書で13章までに学んだ内容は、これら古典物理学の分野です。
 私たちの目で見える大きさの世界(マクロの世界、巨視的世界)ではこの古典物理学がうまく当てはまります。しかし、20世紀初頭になり、光電効果や原子の崩壊など原子の大きさのミクロの世界や、きわめて大きいエネルギーや重力の世界では、これらの古典物理学ではうまく説明できない現象が多く観測されるようになりました。このために20世紀初めに発達したのがミクロの世界を扱う量子論や、エネルギーの大きい世界を扱う相対論です。これらは、 現代物理学の基礎となっています。

○量子力学の世界

 ミクロの世界の量子力学は、高校物理でもその一部を取り上げています。ボーアモデル(前期量子力学)や粒子・波動の2重性、また量子力学をさらに発展させた素粒子論でのクォークやゲージ粒子などです。ここでは、量子力学に戻り、量子力学の基本をもう少し詳しく説明し、さらに代表的な現象をとりあげましょう。
 原子の世界では、われわれの世界で成り立つニュートンの古典力学ではなく、異なる物理学が成り立ちます。その中で、電子や光の粒子性と波動性の二重性が大きい問題でした。ここで今まで学んだことを復習しましょう(p.**)。
 @粒子や波動は、粒子としても波動としても振る舞う二重性を持つ
 A質量m、速さvの粒子による物質波の波長λは  λ=h/mv
     逆に波長λの波の運動量p は    p=h/λ
 B振動数νの波のエネルギーE=hν い
 物質波はλ=h/mvで表されますが、原子の世界では粒子の運動量mvや質量mが小さいため、波長λが大きくなります。粒子の大きさに比べて波長が大きくなると、粒子としての性質よりも波としての性質が強く現れてきます。この粒子と波の関係を説明するのが、シュレディンガーの波動方程式とハイゼンベルクの不確定性原理です。この2つが量子力学の基礎となっています。 

○シュレディンガーの波動方程式

 物質と波動の2重性でそのときの波動の状態を表すのが、シュレディンガーの波動方程式です。シュレディンガーはド・ブロイの物質波をヒントにし、物質の状態を波として表す波動関数を考えました。この波動関数を電子の場合について考えてみましょう。
 電子波の式は、水波の式のように振幅と位置と時間を表す波動方程式で表されます。このときの振幅の2乗が粒子の存在する確率に相当します。ミクロの世界では次に述べる不確定性原理からわかるように、一つの値を決めると他方はぼやけてしまい確率でしか表すことができません。電子波の場合は、電子波の波長(運動量)が決まっていると、粒子としての運動する軌道が一つではなくたくさんあり、ある時刻の位置は確率でしか表せません。波動関数とは、電子の存在を確率的に表したものだと言えます。
 電子線の2つのスリットの実験で、個々の電子が波のように干渉していたのは、電子は2つのスリットでスリット1を40%の確率で、スリット2を60%の確率で同時に通過していたため、波動のように干渉したと考えられば理解できます。
 すなわち、物質波の波とはある時刻である位置での粒子の存在を確率的に表した波の状態だといえます。
 このため、たとえば水素原子では、軌道を粒子の電子が回っているのではなく、図のように位置が確率でしか決まらない雲のような状態(電子雲)で表されます。ボーアモデルでは水素原子しか電子の状態をうまく説明きませんでしたが、波動方程式による電子雲の解は、水素を含むいろいろな原子についてよく当てはまっています。
 また、原子の世界では、粒子の位置だけでなく、粒子のエネルギーや運動量も確率的に広がりがあり、これも波動であるといえます。

○ハイゼンベルクの不確定性原理

 ミクロの世界の基本的な原理の一つが、位置xと運動量p(=mv)は同時には正確に求められないという不確定性原理です。位置を決めると運動量が正確には決まりません。逆に速度を決めると位置が正確にはきまりません。
このとき、位置の不確定さ(位置の幅)Δxと運動量の不確定さ(運動量の幅)Δpをかけるとプランク定数hになるというものです。
   Δx・Δp=h @ ハイゼルベルクの不確定性原理
 またエネルギーと時間についても、両方を正確に測定することができません。エネルギーの不確定さ(エネルギーの幅)ΔEと、時間の不確定さ(測定時間の幅)Δtについても
           ΔE・Δt=h A
が成り立ちます。
 これらは一つの量が正確に測定できるとき、もう一方は必ず不正確になることを意味します。我々の見えるマクロの世界では両者を同時に正確に測定できますが、ミクロの世界では片方があいまいになります。
空間のある点に電子が存在する確率は、大きくなったり小さくなったりと変動しています。これが物質波の表す確率波の意味です。
 たとえば、電子の位置xを正確に決めようとすると運動量pあるいは波長λ(λ=h/p)がぼやけてしまい、すなわち粒子としてふるまいます。逆に、運動量や波長を正確に決めようとすると、電子の位置がぼやけ広がりを持つ状態すなわち電子波となり波動性が強くなります。粒子性と波動性の2重性はこのように不確定性原理で説明できます。ハイゼンベルクは不確定性原理で1932年にノーベル賞を受賞しました。

○不確定性原理で表されるミクロの世界の自然観

 私たちの目にするマクロの世界では、物体の運動、たとえば斜方投射では初速度と角度さえ決めればその後の速度や位置など、運動の状態は計算で正確に求めることができます。マクロの世界の自然観は、現在の状態には位置や速度などの物理量はただ一つだけあり、この状態によって未来の状態もただ一つだけ決まるあるいは予想できるというものです。
 これに対し、原子などのミクロの世界は、波動関数や不確定性原理で表されるように、現在の物理量は正確に決めることができず、確率でしか表せない曖昧な状態です。これによって、未来の状態も確率的にしか求めることができません。ミクロの世界ではこの不確実さや曖昧さが自然界の本質です。

○電子雲

 シュレディンガーの波動方程式とハイゼンベルクの不確定性原理から、水素原子の電子のようすは、図に示す雲のような状態の電子雲となります。電子は決まった場所におらずその場所ごとの存在確率でしかわかりません。これが雲のように点の濃度で表わされています。1s,2pなどのうち、数字は量子数を表します。ラザフォードモデル(p.**)でなくこの電子雲の形のモデル(量子力学のモデル)が正確な水素原子のモデルです。

○トンネル効果

 原子核は核力によって一定の大きさを保っています。このとき、核力による位置エネルギーは図のような形になります。(強い力 p.**参照)
 原子核の中の核子が、原子核の外に出るには、この位置エネルギーに打ち勝つ運動エネルギーが必要です。しかし、通常ではそれだけのエネルギーを持ちません(古典力学の考え)。ところが、不確定性原理の式Aからエネルギーの幅ΔEと時間の幅Δt間にはその積がプランク定数hとなる関係があります。すなわち時間を非常に短い時間に固定すると、そのときのエネルギーの幅が広がり大きなエネルギーを持つことが理論上可能になります。(量子力学の考え)
 そのため、核子の中には大きなエネルギーをもらい原子核の外に出るものがあり得ることになります。そしてそれらの粒子は原子核の外に抜け出すことができます。このような現象をトンネル効果といいます。通常越えられない壁をトンネル掘って道を作ったように脱出できることから名付けられました。この例がα崩壊です。通常はα粒子(陽子2個、中性子2個の固まり)は核力のエネルギーの壁を乗り越えられませんが、長い時間の間には、トンネル効果によりごく一部がα粒子を出して崩壊できるのです。

○走査型トンネル顕微鏡STM

 タングステンなどで作った直径数μmの針を正に帯電させて、金属の表面10^-9mぐらいの距離まで近づけます。このくらいの距離まで近づけると、金属の表面からトンネル効果によって電子がしみ出し、針に引きつけられるので、わずかな電流が流れます。針を金属表面に対して水平に動かすとき、針と金属表面の距離に応じてしみ出す電子の数(電流)が変化します。距離が小さいと多く、大きいと少なくなります。この電流を増幅して記録すれば、表面の凹凸や電子の状態、原子の構造などを詳細に調べる、すなわち顕微鏡として使うことができます。この原理による顕微鏡を走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunnel Microscope)といいます。分解能は10^-9mで、原子1個の大きさまで識別することができます。トンネル顕微鏡の発明で、ビーニヒとローラーは1986年ノーベル賞を受賞しました。



16−2 相対論の世界

○特殊相対性原理とは

 この項ではアインシュタインによって開かれた相対論(相対性原理)の世界について説明しましょう。
 まず最初は、特殊相対性原理です。アインシュタインが1905年に提唱したのが特殊相対性原理で、次の2つの原理を基本にして、空間や時間の性質を明らかにしました。
@相対性の原理 (同等性の原理)
 等速直線運動をする物体や観測者には、同じ物理法則(力学、電磁気学)が成り立つ。(ここで相対とは、どのような物体や観測者も同等という意味です。)
A光速度不変の原理
 物体(光源)や観測者がどのような運動をしていても、真空中の光速度cは常に一定である。
 相対性の原理について説明しましょう。物体の運動で、地表で物体を自由落下させる場合と、時速30kmで等速直線運動をしている電車の中で自由落下させる場合を考えてみます。どちらも、重力によって落下し、同時刻の速度や一は全く同じとなります。すなわち、2つの異なる等速直線運動で、同じ物理法則が成り立っています。これが相対性の原理です。
 一方、光速度不変の原理については納得しがたいと思います。しかし次の実験から正しい事実だということがわかっています。
 マイケルソンとモーレーは地球の南北方向と東西方向で往復の時間から光の速度を測りました。東西方向は自転の方向なので、地球の自転による合成速度vが加わり、南北方向の時間と異なるはずです。西から東へ行くときの速さはc+v、東から西へ戻る速さはc−vだからです。しかし実験結果は全く同じでした。これより、どのような運動をしても光速度は一定であることがわかりました。すなわち、光速度一定というのが我々の宇宙の性質なのです。
 この2つの原理から導かれた特殊相対性原理では、次のような奇妙な結論が得られます。
結論1 運動すると時間はゆっくりと進むようになる。
結論2 運動するとその方向に長さが縮む(ローレンツ収縮)
結論3 運動すると物体は質量が増加する。
          (光速では無限大になり加速できない。)
結論4 3次元の空間と時間は互いに密接に関係しており、
  一緒になって4次元の時空を作る。運動によって4次元時空が変化する
結論5 エネルギーEと質量mは互いに変換可能であり E=mc^2 で表せる。

○特殊相対性原理の成り立つ世界はどこか

 もしも私たちが、光速に近い非常な速さで走れるとすると、一般相対性原理から、走っている人には次のような現象が現れます。
 走る速度が速くなればなるほど走者のからだが重くなり加速しにくくなります(結論3)。また、走っている人を、止まっている他の人が見ると背の高さは変わらないのですが、頭や胸、腰が進行方向に薄くなって見えます。(結論2)逆に、走っている人がまわりの景色を見ると高さは変わりませんが、進行方向に縮んで細く見えます。さらに走るスピードを上げるともっと細く見えます。(結論2)。止まっている人からは、走っている人の腕時計がゆっくりと進んでいるように見えます(結論1)。でも、走っている人が同じ速度で並んで走っている他の人や自分の体を見ると、横幅も縮んでいないし、自分の時計もいつもと同じように進んでいます(相対性の原理)。10分ほど走ってから、とまって公園の時計を見ると、20分も経過していました(結論1)。
 これらの結論やそれから引き起こされる現象は、私たちが普段見ている身のまわりの現象世界とずいぶん異なります。私たちのまわりのニュートン力学の世界では、時間の進み方は一定ですし空間(または長さ)が縮んだりなど変化しません、あるいは変化したところを見たことはありません。
 しかし、物体や観測者の速度が非常に速い場合、すなわち光速cに近い場合は、実験や観測から上のような結論がうまく当てはまることがわかりました。
 このため、現在では相対性理論の方が正しいと考えられています。相対性理論の時空で、物体や観測者の速度が小さい場合は、ほとんどニュートン力学の世界と同じ(近似できる)になります。このため、ニュートン力学の成り立つ世界ではなく、一般相対性原理の時空の方が正しい宇宙の姿だと考えられています。すなわち、私たちの宇宙があるいは私たちの周りの時空が、特殊相対性原理の成り立つ世界です。
 これらの証拠は、たとえば、
1)宇宙線に含まれている素粒子のミューオンμ(p.**)は静止した状態で寿命t=2×10^-6秒です。大気圏に突入するときのミューオンの速度は光速に近く、この寿命では、c×t=0.6kmだけ進んで消滅するはずです。しかし実際は地表にまで到達します。大気圏の厚さは600km程度なので、このときの寿命は、本来の寿命の1000倍にあたります。すなわち、ミューオンは光速度に近い速度で運動しているため、時間が1000倍もゆっくりと進んでいるのです。
2)加速器で陽子を光速の10%まで加速すると質量は1.005倍に、60%で1.25倍に、90%で2.3倍に、99%で7.1倍になります。なお、速度v[m/s]で動いている物体の質量m[kg]は、静止しているときの質量m0[kg]、光速度をc[m/s]から   m=m0・√1−(v/c)^2
で表されます。また、このとき運動している物体の長さをLとし、静止しているときの長さをL0とすると、
L= √1−(v/c)^2 ・L0・・・ローレンツ変換の式
となります。
3)核分裂で発生するエネルギーEは、核反応での質量欠損をΔmとして、E=Δmc^2で表されます。このエネルギーは原子力発電に利用されています。(p.**)

○一般相対性原理とは

 特殊相対性原理は、等速直線運動をする物体や観測者の場合の理論でした。これをさらに進めて、加速度運動する物体や観測者について成り立つ理論が、アインシュタインの一般相対性原理です(1916年)。特殊相対性原理を基礎編としたら、一般相対性原理は応用編に当たります。次の3つの原理を基本にしています。
@一般相対性の原理 
 加速度運動する物体や観測者にも、同じ物理法則が成り立つ。
  (等速直線運動だけでなく加速度運動でも成り立つと考えました)
 A光速度不変の原理      特殊相対性原理と同じ
B等価原理
  加速度運動をしている物体の受ける慣性力と、重力は同等で区別できない。
 これらの原理から導かれた一般相対性原理では、次の結論が得られます。
結論6 重力によって時間がゆっくりと進む
結論7 重力によって4次元時空がゆがむ
結論8 重力によって光の進路が曲がる
 特殊相対性原理では、時間と空間が密接に作用しあい4次元時空を作っていることを表しています。これに対し、一般相対性原理は、4次元時空が、重力の作用によって曲がることを表しています。大きな重力、すなわち星や銀河、この宇宙全体の大きさなど、巨大な質量による重力が働く世界では一般相対性原理による現象が、顕著に表れてきます。

○一般相対性原理の例

1)重力レンズ
 一般相対性原理によれば、太陽は極めて質量が大きいので太陽付近は重力により空間がゆがんでいると考えられます(結論7)。ここに光がくると、空間が変化しているのでそこを通る光も進路が曲がるはずです(結論8)。
 実際に、1919年の日食の際に、本来は太陽の後ろにあるはずの星の光が観測されました。その位置は、一般相対性原理を使った場合の予測値と同じ位置でした。このことから、一般相対性理論は正しい理論として認められました。
このように星の重力場で光が曲がる現象を重力レンズ現象といいます。
 大きな質量を持った星や銀河、ブラックホールなどが重力レンズとして作用します。銀河団A370という天体が重力レンズの役をし、その後ろにある渦状星雲が本来の3倍の大きさに見えることが観測されています。
2)ブラックホール
 星は質量が大きく4次元時空を大きく曲げます。また、重力によって、付近のものを星に向かって強く引きつけます。星がその寿命の末期に、自身の重力でつぶれて小さい固まりになると、その付近の重力は元の星の場合より極めて大きくなります。太陽の30倍以上の質量を持つ星がつぶれると、重力が極めて強くなり、光さえ重力のために外側に進めなくなります(結論7,8)。これがブラックホールです。これは、光が出てこないので暗い穴のように見えることから名付けられました。
 ブラックホールは、1916年シュワルツがアインシュタインの一般相対性原理の式からその存在を計算で導き出しました。天体観測の結果、ブラックホールと考えられる星が多数見つかっています。また、ブラックホールの中では時間は止まっていると考えられています(結論6)。
3)超新星爆発
 超新星が爆発したりブラックホールが合体すると、重力が変化し、重力場(重力でひずんだ4次元時空)の変化が波として空間を伝わります。これを重力波と言います。重力波は電磁波と同様に、空間を光速で伝わると考えられています。しかし、重力波による空間のゆがみの量は極めて小さく、いまだに検出はされていません。


16−3 素粒子と宇宙論の世界

 さて、この項では、この宇宙の始まりと進化のようすを物理の立場から見ていきましょう。
(1)この宇宙は約140億年前に、ビッグバンという爆発によってはじまりました。宇宙の初期の状態はよくわかっていません。しかし、ビッグバンが起こった最初のころは、私たちが現在知っている4つの力ではなく、一つの力だけが存在していたと考えられています。
 その後、宇宙は膨張し次第に、温度が下がっていきます。(宇宙膨張説)
(2)ビッグバンから10^-44秒後、温度が下がり10^32K(エネルギー10^19GeV=10^28eV)のころ、まず重力がわかれました。物質はまだ存在していません。宇宙は、高温・高密度でエネルギーの高い光子でできた火の玉の状態でした。このときの宇宙の大きさは10^-35mほどです。
(3)10^-36秒後、温度10^28K(エネルギー10^15GeV=10^24J)のときに、「インフレーション」という宇宙の急激な膨張がおこり、宇宙の大きさが10cm程になりました。(これでも10^34倍です)このとき「強い力」が分かれました。
 光によってクォークと反クォーク、レプトンとその反粒子など、粒子と反粒子が対生成します。ここではじめて、物質(あるいは反物質)が存在するようになりました。しかし、粒子と反粒子は、急激に膨張したため対消滅できず、宇宙は粒子と反粒子のまざりあった高温のスープのような状態でした。
(4)10^-11秒後、温度10^15K(10^2GeV=10^11eV)のときに、弱い力と電磁気力が分かれました。こうして現在私たちが知っている4つの力すべてができたと考えられています。
(5)10^-4秒後(1万分の一秒後)、温度10^12K=1兆度(エネルギー0.1GeV=100MeV=10^8eV)になると、クォークが結びつき陽子や中性子、π中間子などのハドロン(複数のクォークでできた粒子)を作るようになります。クォークが中性子などの中に閉じこめられてもう外部にでることができなくなります。(クォークの封じ込め)
(6)3秒から3分後、温度が10^9K =10億K以下になり、陽子と中性子が結びつき、原子核を作ました(核融合)。重水素2H1やヘリウム4He2やリチウムなどの軽い元素の原子核が形成されました。このときは、電子や原子核は高速で飛びかいスープ(プラズマ)のような状態でした。100秒のときの宇宙の大きさはおよそ10光年です。この状態では光が電子に当たり散乱されたり、吸収されてしまうので、宇宙の内部は見えません。
(7)40万年後、温度が3000Kまで下がると、クーロン力によって電子が原子核にとらわれその周りを回るようになり、水素原子やヘリウム原子が形成されました。電子によって光が吸収されなくなり、光が遠くへ届くようになりました。これを「宇宙の晴れ上がり」といます。このときの宇宙の大きさは現在の約1000分の1です。
(8)その後、宇宙は膨張を続けさらに温度が下がっていきます。この中で水素の薄いガスが、重力によってひきよせられ収縮し、密度や温度が次第に高くなっていきます。温度が1000万度を超えると核融合反応が始まります。これが星の誕生です。宇宙が誕生してから数億年たってからだと考えられています。
(9)そしてビッグバンがたってから約140億年後の現在、膨張により宇宙の大きさは140億光年になっています。膨張は、現在も続いています。

 高エネルギー加速器を使って素粒子の構造を調べることが盛んに行われています。これは、ビッグバンで始まる宇宙の初期の高エネルギー状態を調べることに他なりません。現在計画されている高エネルギー加速器のエネルギーは最大で1000GeV(10^3GeV=10^12eV)なので、宇宙の温度が10^16K、ビッグバン開始後10^-11秒の時の宇宙の構造を調べることになります。
 クォークなど10^-18mという究極の小さい物質を扱う研究が、140億光年の大きさの宇宙の構造の解明に役立っているとは、なんとすばらしいことでしょうか。





◎参考文献

 ○高校教科書などから 

  1.*「定期テストサポートBOOK 理科総合A」共著 ベネッセ 
  2.*「高校物理T・U」共著 三省堂 
  3.「高校物理T・U」数研出版 
  4.「高校物理T・U」啓林館 
  5.*「物理T・U」東京書籍 
  6.*「理科総合A」共著 実教出版 
  7.*NHK高校講座「理科総合A・B」テキスト 共著 
  8.*「シグマベスト 理解しやすい物理T・U」共著 文英堂
   *印は著者が執筆に関わったものです。

 ○一般書 

  1.「Windowsで知る音声と運動の実験室」北村俊樹著 森北出版 
  2.「Windowsで知る電磁気・光と原子の実験室」北村俊樹著 森北出版 
  3.「物理のABC」福島肇著 講談社 
  4.「電磁気のABC」福島肇著 講談社 
  5.「絵でわかる現代物理学」小暮陽三著 日本実業出版社 
  6.「図解 相対性理論がみるみるわかる本」佐藤勝彦監修 PHP研究所 
  7.「図解 量子論がみるみるわかる本」佐藤勝彦監修 PHP研究所


 ○著者紹介

  北村俊樹(きたむらとしき)
   1958年3月生まれ
   1982年 早稲田大学理工学部金属工学科卒
   1984年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
   1984年 都立蔵前工業高校教諭(物理)
    現在 都立青山高校教諭(物理)
    日本物理教育学会理事
    「Windowsで知る音声と運動の実験室」他 森北出版
    「英和物理学習基本用語辞典」アルク
    「高校物理T・U」(共著)三省堂
    「理科総合A」(共著)実教出版
     NHK高校講座「理科総合A」講師

 著者ホームページ「たまきち's HomePage」
 http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/

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