都理化研大会9

都理化教育研究会 研究発表集録抜粋



 このページはあくまでも北村俊樹(たまきち)の得た情報とその抜粋・要約によって作製されています。したがって東京都理化教育研究会の公式な見解を示すものではありません。各情報の詳しい内容をお知りになりたい場合は、直接、発表者や委員会あてにおたずね下さい。
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1997年度(平成9年度)研究発表抜粋


1.地震予知の一手段
        東京成徳大学高校   大橘猛 小野寺紀子 大隈勉

はじめに
 温泉には自噴と動力汲上げ式、熱水漸次冷却式と湯沸し式とがある。日本の地震の震源が地下5〜30kmというのに対して、泉源は地下0.1〜3kmという比較的に浅い所なので、その塩分含有率の変動と地震の発生にどのような
因果関係があるか末知であるが、データを集積することにより全くデータなしよりは予知し易くなると考え、データのとり方について検討してみることにした。食塩含有率はmg/kgが常用されるが、1リットルの温泉水の水分を全部蒸発させ残った食塩を全部かき集めて精密に検量するには調子よくいって2時間、化学天秤の0点調整に手まどり、検量がスムーズに進行しないと1H仕事になってしまうこともある。そこで迅速な検量は食塩水が濃度により電導度の変化することを応用して、μg−μA、mg‐mA、g‐Aの関係をグラフ化し温泉水の電流を測定すれば含有率計測は5秒以下に短縮できる。

考 祭
 まずグラフ作成用に荒塩A(MgCl。などを含む)溶液と、参考に食卓塩B(主としてNaCl)溶液の1mg/kg〜20g/kgの電導度を調べ、温泉で採取した温泉水の電導度を測定し何mg/kgに相当するかを判定することが考えられる。強塩泉にはバイパス回路5Ω、45Ωの並列回路、または5Ω、495Ωの並列回路を構成して、45Ω、495Ω側に電流計を入れれば1/10、1/100の電流が電流計を流れるだけなので安全が保たれる。温泉水の収集には1リットルの特殊ボトル又はプラスチックカプセルに電極を取り付け毎H正午に4秒通電し3秒後の電流値を白動記録させる。容器の洗浄もタイマーで自動的にさせる。北海道(6)奥羽・束北(9)関東(7)北陸・東海・中部(11)近畿・中国(7)四国(4)九州・沖縄(6)の50ケ所に設置してオンラインで、データをセンターに集めてコンピュータ処理しグラフ化も地区別にして解析し保存しておく。もっと精密なデータが必要な場合はl日24回1時間毎に自動計測させれば年にーケ所で8760のデータ、100年では90万近いデータが得られる。さらに超精密化を期して1日720回2分間毎に自動計測させれば年に26.3万のデータだから、100年で2630万のデータが、50ケ所では実に13憶以上のデータが得られるこ
とになる。設備費とデータ処理費は国庫負担、維持・補修費のみは都道府県負担にするとよい。
 大きな地震は数十年に1度の割で起こるので100年のデータ、牲に震源付近の地震前後の変動のパターンが集積されれば予知の確度が上がる。Na‐Cl泉だけでなくCa‐Cl2泉、Na‐HCO3泉などについても同様のデータをとり更にはガス分析の簡便法を考案して、それらのデータを総合すれば予知精度の向上を期待できる。

おわりに
 塩分の含有率の変動が季節周期によるものなのか、経年変化によるものなのか、それとも地殻変動によるものなのか、その判定は一朝一夕にはいかないであろう。経験の集積で予知確率が上がれば地震対策(家屋・会社・工場・公共
施設・道路・鉄道・橋などの弱所の補強、食料・飲料水の確保、避難所の確認、持出し重要品の整理その他いろいろ)ができるのでパニックを避けることができ、被害を最小限にくい止める可能性が大きくなる。その経済効果は地震
のスケールにもよるが、次世代またはその次の批代以降に、大きな恵みをもたらし復興のテンポも迅速化することになる。このように地道な調査実験も人類が克服すべき初歩的問題と考えられる。東原言う「こじつけとみえる想定外現象も洗い出して潰してゆくことが必要である。」

〈参考文献〉
1)地震の科学竹内均日本放送出版協会
2)温泉工学会誌Vo1.16No.2/3’82
3)科学東原紘道地震科学者の説明責任
Vol.67 No.11 NOV’97 p‐835岩波書店


2.ドライアイス霧を用いたロール状対流の観察
        東京都立葛西南高等学校定時制 井上 健

1.はじめに
 細胞状対流とそれに流れが加わったロール状対流については、気象教育の分野において、冬季日本海・東シナ海・日本付近の太平洋上に生じる筋状・斑点状の雲のモデル実験として、シリコンオイルやドライアイス霧を用いた簡便で
すぐれた実験装置が開発されている1・4)。本実験は、これらを参考に、.@細胞状対流とロール状対流との移り変わりの連続的観察、A対流断面における流体の上下運動のレーザー光による直接観察、を可能にしたものである。

2.実険装置・方法
 図1、図2に実験装置と観察方法を示す。装置本体は、中村理科製「気体の対流実験器」の線香差し込み穴をガムテープでふさいで横倒しにし、側面に整流用の板(電極用アルミ板を便用)を両面接着テープで貼り付けたものである。
この内部に水(20℃〜30℃)を入れ、ケシゴム大のドライアイス片を投入し、スライド式の「裏ふた」(常温の加熱面になる)をわずかのすきま(2mm程度)を残して閉じる。発生した霧を含むCO2冷気が「裏ふた」と容器のすきまから加熱面上にあふれ出し、面上を流れ出す。このとき、流れと平行に加熱面上に3mm程度幅の筋状模様が現れる。「裏ふた」の片面が黒色アクリル板艶消し仕上げとなっているため、霧の中に生じる模様が見やすい。観察器の下流側を上下伸縮架台で支え、上下させると、加熱面の傾斜を変えることができる。これにより、加熱面上を流れ落ちる冷気の流速を変化させ、対流の模様の変化を観察する。また、可視光半導体レーザー(波長635nm)にラインマーカーレンズを装着し、光束を扇面状にして流れの断面を照射し、対流が生じていることを確かめる。これをビデオカメラで拡大撮影し、モニター画面で観察しながら録画する。

3.観察結果
 図3は、加熱面の傾斜が急で流速が速いときの模様である。筋状構造が、吹出し日のすきまからやや離れた所から生じている。ここで、伸縮架台を上げ、傾斜を緩くしてゆく。流速が落ちるにつれ、筋状構造がゆらぎ始め、対流セル
が引き伸ばされながら流されてゆく様子がわかるようになる。図4は、流速を落としたときの網目状・蜂の巣状の対流セルの様相である。この間の連続的変化が観察できるのが、本装置の特長である。図5は、レーザー光による筋状対流の断面の観察結果である。「筋」ごとにキノコ状の対流が生じていることがわかる。「キノコ」の「柄」の部分、筋状模様の黒く見える部分が、上昇流
の生じている部分である。筋状模様で白く見える部分は、下降流の生じている部分である。図6は、照明を消しレーザー光のみで断面だけを観察したものである。一般に流速を速くすると対流ロールの高さ・幅が小さくなり、断面
観察が難しくなる。

4.おわりに
 図7のように、装置を回転台に載せ、流れがコリオリ力や遠心力により曲げられる様子を、筋状模様で観察することもできる。このときは整流用の側板は外す。また、図8のように、プラスチック容器のふたに冷気出日(2m m幅)を切った簡易装置でも、ロール状対流が観察される。ふたの上面をマジックで黒く塗ると、筋状模様が観察しやすい。
〈参考文献〉
1)孫野長治『雲と雷の科学』NHKプックス 94P.46〜P.52(1969.5)
2)木村龍治『改訂版流れの科学』東海科学選書 P.168〜P.175,P.198〜P.199(1985.6)
3)名越利幸・木村龍治『気象の教え方学ぴ方』東大出版会P.89〜P.94け994.3)
4)小倉義光『お天気の科学』森北出版P.88〜P.91(1994.9)


3.3分間で作れるモンキーハンティング
        東京都立小松川高等学校  前田幸正

1.はじめに
 モンキーハンティングは、放物運動を理解する上で、大変重要な実験である。市販晶を含め、多数の研究発表がされている。しかし、工作精度が必要なため、なかなかやっかいな実験であった。非常に簡単に製作でき、なおかつ、命中精度が非常によいものができた。さっそく、班の数だけ製作して生徒実験として、授業で実施した。

2.装置について
 これまでのモンキーハンティングは、電磁石を便用したものが多かった。この方法は、煩雑で生徒実験を用意するのはたいへんである。後藤道夫先生が考案された、糸を使った方法が、製作も簡単で、しくみも一目でわかるので、一
番優れている。図のように、パイプ(内径13m m。長さ30〜50cmぐらい)の口に、クリップを2個セロテープでつける。l個のクリップは、丸い部分をパイプの口より少し出してつける。もうl個のクリップは、伸ばして切り、針金状の部分をパイプの口より少し出してつける。スタンドに固定する。
ジユースの空缶に裁縫の糸をつけて品るし、的とする。糸の他端を大きめの輪にして、パイプの日につけた丸いクリップの輪の部分を通し、針金状のクリップに引っかける。実験方法は、まず、パイプを覗いて、的に照準を合わせる。つぎに、弾丸を入れて、吹き矢方式で発射する。自分の指で輪を作り、マウス
ビースにすると、問接キスにならない。男子の場合にはかなりの速度になる。発射方向を同じにしたり、人がいる時には発射しないといった安全対策・指導が必要である。2mぐらいの間隔では、ほぼ百発百中である。4mくらいなると、熟練した男子生徒で80%ぐらいの命中確率であったc

3.弾丸の工夫
 弾丸は、ビー王など何でも良い。入手の簡単な、カーテンレールの丸型ライナーとポルト・ワッシャ・ナット(直径6mmφ首下20mm)を、使用した。吹き加滅を変えると、弾丸の初速度を変える事ができるが、結構難しかった。
そこで、弾丸の質量を変える事によって、初速度を変えると、生徒でも簡単に実験できるようになった。(小)ライナー、(中)ポルト・ワッシャ・ナッ
ト、(大)ナットを2個にする。

4.生徒実験を実施してみて
 まず、モンキーハンティングの理論をやる前に、生徒実験を行った。試行錨誤の後、まもなく命中できるようになった。しかし、期待する程喜んでくれなかった。次のクラスは、埋論を教えてから、生徒実験を行った。こちらの方が、
生徒の反応は度かった。最後には、的を台に置いて、打ち落とさせた。動かない的の方が、命中させるのが難しい。モンキーハンティングは、理論をやってから実験した方が効果的であると思った。授業について、より良い方法があれば、ご意見をお願いいたします。


4.誘導モーターを利用した探求学習−
        東京都立世田谷工業高等学校  上田悦理

1.はじめに
交流電流の学習において、誘導モーターはいろいろなとらえ方のできる教材の一つと考えられる。そこで、この誘導モーターを用いて生徒自らが工夫できるような実験方法は無いものかと検討した。その中で、コイルの部分については最も手がかかる所でもあるので、極力簡素化し、なおかつ現象がはっきり把握できるようなものを探してみた。今回は、作成した誘導モーターの紹介とその応用等について報告する。

2.誘導モーターの作成
 交流電流によって、非接触のコマが回る現象は生徒にとってかなり不思議に感じる事柄の一つであろう。また、コマについてもさまざまな条件によって回転の様子が異なるので、その点を探求する形で生徒実験ができないかを検討し
た。

2.1 回転磁界
 作成した誘導モーターの外観写真を写真1に示す。回転磁界の部分には、一般的によく作られている、コイルを4つ正方形に配した形とした。今回は、一辺の長さを約3cmとして両面テープで固定した。ここで用いたコイルは、電磁石用コイルとして市販されている0.4mm工ナメル線400回巻きのものを使用した。各コイルに発生する磁界の位相が90度づつずれるようにコンデンサーを直列に挿入して配線した。回路図を図1に示す。
2.2 回転子
 極力少ない電流で誘導モーターの現象を確認できるように考えた。そこで、回転部分を軽くするためにケント紙を円形に切りだし、そこにアルミ箔を張り付けたものとした。さらに、支点での摩擦を低滅するために、回転子の中心に画鋲を刺し、上方から磁石で回転子を懸垂する構造を考えた。アルミ箔の張り付けにはスプレーのりを便用した。支持用の磁石は強すぎると画鋲が吸い付けられてしまうので、磁気健康貼布材に使われていた、小さな磁石を4個東ね
て便用した。

2.3 回転子の運動
 位相を変えるためのコンデンサーは、電解コンデンサーで500[LLF」程度のものが最も良く回転するようだった。スライダックでコイルに流れる電流を調整した結果、電流で1.5A程度でも十分に回転子が回りだした。2A程度でかなり速く回転する様子が観察された。回転子に張り付けるアルミ箔はできるだけ厚くした方が速く回転するようだが、あまり厚く重ねてしまうと白重に耐えきれずに磁石から落下してしまった。実践ではアルミ箔4枚程度の重ね張りが適していたようだ。

3.回転磁界の測定
3.1 測定方法
 それぞれのコイルに流れる交流の位相を測定するために、回転磁界用に使用したものと同じコイルでピックアップコイルを作成した。この計測用ビッグアップコイルを用いることで、回路に電気的に接続する千間が必要なくなった。回転磁界用のコイルに挿入されている鉄心に、ピックアップコイルをかぶせ、その時に発生する誘導起電力を、直接シンクロスコープに接続させることが可能である。従って、4極のコイルで発生している磁界を相互に比較するのに、
簡単な操作ですませられるようになった。

3.2 測定結果
 各コイルに発生した変動磁界の様子について、L1とL4を土記の方法で測定した。その時の正弦渡形とリサージュ図形を写真2、写真3に示す。完全な円にはならなかったが、位相が約90度ずれている様子が確認できた。きれいな円にならない理由としては、コンデンサーを通過することで交流の波形が若干歪んでいるためと思われる。また、当然のことではあるがL1とL3、L
2とL4の磁界の位相は180度ずれている。その時の正弦渡形とリサージュ図形を、写真4、写真5に示す。

4.授業実残
 回転子の回転速度について、生徒自身で王夫できるような形で探求的な実践を検討した。生徒には、どのようにしたら速く回せるかということをテーマとして与えた。コマの形状が簡単で、使用している材料も身近な物だったことから、生徒にとって取り組みやすかったものと思われる。位相の測定についてもシンクロスコープヘの接続に戸惑うこともなく、正弦波のずれている様子が観察できた。

5.まとめ
 交流電流は日常最も多く接している電気と考えられる。しかし、何となくわかりにくいというイメージが持たれているように思う。今回、簡単なコマを利用して交流に接することができたので、少しは交流を身近なものに感じられるようになったのではないかと考える。交流回路での位相の説明にはよくリサージュ図形が用いられている。しかし、リサージュ図形はX軸Y軸の双方に三角関数が入って作られる図形なので、生徒にとってわかりにくい事柄の1つでもある。今回の装置では、このような内容に対しても実際にずれている渡形を簡単に確認できるので、多少は理解しやすくできるのではないだろうか。交流の分野はなにかと気ぜわしく過ぎてしまうように感じられる。実験に十分な時間を割くことは難しい状況ではあるが、交流であるからこそ現れるおもしろい現象について他にも探して検討してみたい。

〈参考文献〉
・物理実験事典1968
・おもしろ実験・ものづくり完全マニュアル 左巻健男1993


5.グラフ電卓を用いた生徒実験の展開
        東京学芸大学教育学部附属高等学校大泉校舎 後藤責裕

1.はじめに
 グラフ電卓は、関数等のグラフ表示機能を持ったハンディな電卓であり、「パソコンより操作が簡便で、数学の原理の実証に効果的である」と期待され、数学教育を中心として探究活動を支援する道具として洋目されており、教材開発も進みつつある。理科実験ではパソコン等が、計測、データ分析、シミュレーションなどで有効とされ教材研究も行われているが、機器の環境・展開などさらに王夫を要する点もある。これに対する一方策として、物理実験においてグラフ電卓の活用を試みた。

2.物理実験でのグラフ電卓の役割
 パソコン等の情報機器を用いて生徒の自在な探究活動を支援するには、「全員が利用・操作可能な環境(一人一台)、いつでも、どこでも使用できる。(実験室でも、家庭でレポート作成時でも)」環境が理想的である。
 しかし、実験室に多数パソコンを設置することは本来の実験室の機能を損なうばかりか、逆に機器を使うことで時間・空間的な制約を受けたり、操作上の過度な負担なども憂慮される。これに対する方策としてグラフ電卓を用いた。ハンディな電卓上で実験データ分析(統計処理や回帰計算等)からグラフ表示までの一連の処理をパソコンの表計算と同様な操作感覚で行える。また専用のデータ収集装置CBL(Calculator・Based Lab)を併用することで簡便にコンピュータ計測も行え、実験・解析システムを廉価に用意することも可能である。これは小型軽量であるため屋外での使用も可能であり、実験・解析・考察を校外(家庭や図書館)で、独自のアプローチで自由に探究できるなど、新たな実験展開の可能性を広げるものと期待できる。

3.物理実険(生徒実険)での展開
 物理実験においてグラフ電卓を用いることで得られるメリットに留意して展開を王夫した。実践例とその特徴を簡単に示す。
3.1 グラフ電卓のみを利用
 従来と同じ方法で測定する。得られたデータを電卓でグラフ表示・回帰計算等を行い、効率よくデータ処理と考察を支援する。
◎バネの弾性力(フックの法則)
力Fとバネの伸ぴ1をグラフ化・回帰計算。グラフの傾きaからバネ定数たを求める。
◎円運動の周期と向心力(円運動)
円運動の周期と向心力、周期と半径の関係をグラフ化・回帰計算により関係を特定する。
◎単振り子(単振動)
振り子の長さLと周期Tの関係を実験データ(グラフ化・回帰計算)から特定し、結果よりT=2秒の周期を得るために必要な振り子長を推測し、追実験を行う。

3.2 CBL計測とグラフ電卓を利用
 ハンディな装置で、パソコン計測と同様に多様な物理現象を計測対象とする。
◎白由落下運動(速度・加速度の原理)
 超音波距離センサーで物体の落下運動を測定・解析する。x−tグラフと回帰計算で落下距離と時間の関係を特定する。LlSTの表計算機能で単位時間の変位を算出してッイグラフを作成。回帰計算で傾きが一定であることを確認し傾きが加速度を示すことを理解する。記録タイマーではテープ処理等に時間を要すが、電卓では即座に1ゴグラフが表示でき、実
験の成否を即座に判断することができ、繰り返し実験が行える。速度の算出では個々人がLlSTの表計算機能で個々のデータについて微分処理を行い、速度の原理を理解する。
◎斜面の運動(運動の法則)
 超音渡距離センサーで斜面上の台車の運動を測定する。傾斜角と加速度(測定結果から任意の傾斜角での加速度の推潮・検証)、質量と加速度の関係を調べ、作用する力と質量や加速度との間係について考察する。途中で運動方向が変わる運動も連続的に計測可能。
◎力学的エネルギー保存
自由落下運動と同様な計測を行い、LlSTの計算機能を利用して、時系列データとして高さ(位置エネルギー)と速度(運動エネルギー)を求め、力学的エネルギーを計算しグラフ表示することで、連続的に力学的エネルギーが保存されていることを確認する。上図は質量用=0.05(kg)、高さh=L2、L4=mghで位置エネルギーを算出したものを示す。

◎バネ振り子(単振動)
反射板を取り付けたバネ振り子の振動の様子を超音波距離センサーで計測する。
振動が周期閣数(sin)に従っていることを確認するとともに、周期7と質量7郷の関係を特定する。実験データの関係を数式モデルで表す(回帰計算)Yl直線回帰、Y2べき乗回帰、Y3公式をグラフ表示して比較する。
 理論的に導出した公式が振動現象(データ)をよく表していることが確認できる。ァTとmの関係を特定するのに必要なパラメータを考察するなど測定方法についての検討もできる。

◎音の共鳴(昔波の測定)
音センサーから得た音の波形から振動数を測定する。水を人れた試験管に息を吹き込み共鳴させた音の振動数を測定し、振動数fと気柱長Lの関係をグラフ・回帰計算して関係を特定する。結果からC音の振動数の共鳴音を発する気柱長Lを推測し追実験を行う。

◎FFTによる渡形解析
 音センサーから得た昔の渡形をグラフ電卓でFFTを行いスペクトル分析することを通して、波形から音色と発生機構の関係を理解する。FFTの扱いは数学的原理にはふれず、波の合成などを通して分析法の意味を学習した。
(a)複雑な渡形の作成
 複雑な渡形も単調なSlN関数の重ね合わせで形成されることをグラフ作成(Y=SinX+Sin2X/2+…)を通して理解した。(下図左)
(b)ヒトの母音
 最も身近な音源として白分の母音の波形を分析することで多様な周渡数成分が含まれていることを観察する。(上図右)
(c)和音(うなり)の渡形分析
 電子楽器の和音(ド・ミ)の測定・分析を通してうなり現象の学習をする。下図上部が計測渡形で、周期的に振幅が変化するうなり波形の特徴を観察できる。右図下部がスペクトルで、ドとミの2つのピークを確認できる。ぴーくの振動数を読みとることで、うなりの振動数ともとの振動数の関係も定量的に求められるc
(d)管楽器の楽音の発生機構
 楽器の多くは共鳴を利用して音階を発生させる。フルートの吹き口部を用いて端を開いた時の波形(開管共鳴)、閉じたときの波形(右図:閉管共鳴)を測定した。スペクトルから開管では基本振動が強い倍音で構成されているが、閉管では基本振動と3借振動のみが強いことが分かる。また、開管の振動数が閉管の約2倍となること等を通して、管内の音響構造が気柱の共鳴(定常渡)モデルで説明できることが確認できる。

4.物理実験における効果と課題
 グラフ電卓を活用することで、実験(計測)対象の拡大、データ解析の多様化・高速化、実験課題の応用的展開、等の効果が得られたが、有効数字や操作性の間題等も残る。展開を工夫することで生徒の主体的な実験・探究清動を効果的に支援できるものと考えられる。


6.波動現象の理解を助けるための器具の考案
        聖ドミニコ学口高等学校 竹中福太郎

1.はじめに
 波の重ね合わせの原理で、変位の合成を教える際に抽象的になり易い。これを解決するために、変位の合成をモデル的に示す演示装置(以下、重ね合わせ器と祢す)を考案した。渡の反射についても同じで、反射波だけを取り出すことは不可能で抽象的になり易い。このため、反射をモデル的に示す実習用の観察器(以下、反射観察器と称す)を考案した。

2.重ね合わせ器
a.装置の概要
 プラスチック板とアルミ製H柱をねじ止めした基板に、算盤玉を入れた真ちゆう棒を等間隔に固定してある。(図1)中央部付近の棒に凶1重ね合わせ器はストロウ片を接着した算盤玉を入れ山の波形を作ってある。図2は基板の下部H柱に波形板を差し込んだ写真である。算盤玉の位置は変
位0を示す。渡形板は山の渡形用の他に谷の波形用もある。
b.操作方法
<山と山の重ねあわせ>
図2の状態から左へ渡形板をずらしていくと、渡形板とストロウ部の山と山の渡形が重なる。この際に波形板の山にストロウが乗っかり、変位が合成される。(図3)
く谷と山の重ねあわせ>
図2の基板を逆さまにして波形板を差し込むと、ストロウ部に谷波形が現れる。(図4)波形板をずらしていくと波形板の山にストロウが下向きに乗っかり、合成渡形が現れる。(図5)
くその他の重ねあわせ>
谷と谷、ストロウ部の山と谷(谷用の波形板使用)の重ねあわせが可能である。なお、多人数に見せる場合、提示装置を用いて大写しにすると効果的である。

3.反射親察器(白由瑞用)
a.装置の概要
軟質ビニール製ソフトカードケース(B6サイズ)を約半分に切り、SlN渡形を描いた透明シートを真ちゅう棒に巻き付け、ケースに納めてある。(図6)
b.操作方法と見方。
シートの一端ABを引くとSlN波形が真ちゆう棒に向かい、そこで反転すなわち反射して返ってくる。生徒は自分自身でシートを引きながら自由端での反射波と進行渡を観察する。

4.反射親察器(固定端用)
a.装置の概要
波形シートが異なるだけで、あとは自由端用の反射観察器と同じ仕組みである。波形シートは図7の様に2つ折りにして、表にSlN波形裏にそれに重ねて逆位相のSlN波形を描いてある。このシートを図8の様に表のSlN波形だけを真ちゆう棒に巻き付けケースに挟んである。

b.操作方法と見方
折り目の部分ABを引き出してゆくと、同位相の反射渡(白由端による反射渡)と逆位相の反射渡(固定端による反射渡)が両方現れる。
固定端による反射渡は自由端による反射波とは変位が逆になって反射された渡であることが観察できる。

5.おわりに
初めにに述べたように、重ね合わせ器や反射観察器は、渡動現象の中で抽象的説明に終わりがちな部分の補助教材である。この発展として、重ね合わせ器の仕組みを応用し定常渡やうなりの演示装置を現在開発中である。

7.ビースピの授業への活用
        白百合学園中学高等学校 馬目秀夫

1.はじめに
 ビースピとは、昨年12月にミニ四駆などの速度やラップタイムを測定するために発売されたものである。表示できるのは、時刻・速度・ラップタイム・積算ラップタイムの4つのモードである。コンパクトで安価(定価1800円)であり、これらをうまく使うと、授業に大変有効である。今年、いくつかの補助的な器具を工夫しながら、授業に使用してきたのでVTRで報告する。

2.実施例
(1)平均の速さ・瞬間の速さ
 チョロQのレーシングコースを使い、平均の速さと瞬問の速さの考え方を指導する。まず、ビースビ1個を積算ラップタイム・モードにして、コースの一カ所に置く。チョロQを走らせ(5周ほどする)、積算ラップタイムを記録する。これをもとに一周ごとの時間を計算し、ひもなどでコースの長さを測って、一周する間の平均の速さを求める。次に、ビースピを速度モードにして、4カ所ほどに置く。ビースビを走らせ、各場所の速ざを測定するc
(2)加速のようすを調べる
だんだん速くなるようすを表すのに、距離に対して表したらよいか、時間に対して表したらよいか。ガリレオは加速度の定義をするのに、悩んだそうである。この点を調べる。チョロQのレーシング・コースにビースピを4個接して置き、速度計測モードにする。チョロQを端のビースピに接する位置からスタートさせる。客位置での速さを記録し、距離と速さの関係をグラフにする。
 次に、各ビースピを通過した時間を測定する必要がある。それには、ビースピをラップタイム・モードで、4個同時にスタートさせ、チョロQが通過したときに、時計が止まるようにすればよい。そこで、図のようなスリットを製作した。これを使って、時間を測定し、時間と速さの関係をグラフにする。その結果、距離に対してはグラフが曲線になるが、時間に対しては、直線になることが分かる。さらに、運動の再現性の点から、図のような斜面を便って再確認した。
(3)重力加速度の測定
上のスリットを使うと、時間測定ができるので重力加速度を測定できる。ポールを落下させるとき、手に持って落とすと不安定である。そこで手軽に実験できるように、図のような装置(自由落下実験器)を作った。ビースピを2カ所に取付け、速度モードで連度の差をラップタイム・モードで時間差を測定して、加速度を求める。結果は、生徒実験でも9.7〜10程度の値が得られた。
(4)落下距離と落下速度
前記の自由落下実験器にビースピを1台セットして、速度計測モードにし、落下距離と落下連度の関係(v2=2gh)を検証する。落下装置をスライドさせ、高さを変えて実験する。
(5)水平到達距離
水平投射の初速度と水平到達距離の関係を検証する。図のように斜面台、上下伸縮台などをセットし、ビースピを斜面台の先端に速度計測モードにして置く。ビースビの中央部分の速度を測定することになるので、ポールもその部分から飛ぴ出すように、斜面台には切り込みが入れてある。
(6)運動の第2法則の検証
図のような装置で、台車をおもりで引く。静止の状態からスタートしたとき、v2=2axで、xを固定しておけば、加速度は連度の2乗に比例
することを利用して加速度と力、質量の関係を検証する。この方法だと、1時問の授業の中で実験し、結果をグラフに書き、考察をするとこ
ろまでできるので大変効果的である。
(7)白由落下における力学的エネルギー保存
図のように白由落下実験器にビースビをセットし、速度測定モードにす
る。ある高さからボールを落下させ、重力による位置エネルギーと運動エ
ネルギーの和が常に一定であることを検証する。
(8)振り子による力学的エネルギー保存
自由落下実験器に図のような形で、振り子を取付け、ビースピを速度計測モードにして、最高点での重力による位置エネルギーと最下点での運動エネルギーが等しいことを検証する。その際、ビースピの表示が裏返したまま正立して見えるように、∠形に曲げた鏡をビースビの下に置く。また、スケールバーを上下することでおもりの長ざすなわち最高点の高さを自由に変えられるようにしてある。なお、おもりを放すとき、指が空中に洋いていると、おもりの動きが不安定になる。ポールとスケールバーを指で
挟むようにして放すと、安定する。
(9)振り子の周期と重力加速度
前記の装置を便うと、簡単に振り子の長さが変えられ、ビースビを積算ラップタイム・モードにすれば周期を測定できる。振幅と周期、おもりの重さと周期の関係も簡単に調べることができる。あわせて、γ=271ノ丁一から重力加速度を求めることができる。

3.おわりに
 それぞれの実験でかなり良い結果が得られた4月からビースビを授業で利用してきたが、それによって、実験が簡単になり、幅広く便え、授業の流れが大変スムーズになった。大変利用価値が高いものであり、今後もざらに検討を進めていきたい。先生方からのご指導・ご助言が頂ければ幸いである。


8.物理IB探究実験を行ってみて
        東京都立都立南高奪学校 大山慶記  山崎松吾
1.はじめに
 平成8年度に束京都理化教育研究会物理専門委員会から発表ざれた、「物理好きを育てる、物理探究実験プリント(力学編)」は、日々の授業の中にすぐ取り入れ、役立たせることができるという点で、注目されるべき内容のものである。
 そこで、都立南高等学校では、発表された内容の実験を今年度行った。ここでは、「運動の第二法則」の実験を中心に、実験結果や生徒の取り組みについて報告する。実験を行った生徒は、生活・科学コースの物理選択者である。

2.「運動の第二法則」の実験
 この実験は、巻尺を使って台車を引っぱり、力と加速度の関係、質量と加速度の関係を求める実験である。
◎実験準備
発表された資料には、実験の略図があるだけなので、事前に実験を行い、実験器具などを確認し、自分の学校でできるか検討しなければならない。本校では具体的に、次のような準備を行った。
@力学台車…巻尺の先端の部分を引っかける部分がなかったので、ベニヤとガムテープで、引っかける部分を作った。(本校の台車は、中村の車輪3つのタイプ質量1kg)
A巻尺…・実験書の指示どおり「yamayoメートル目盛オストップ16」を使用したが、生徒2人に対して3個必要なので、相当数用意しなければならない。また、巻尺3個がずれないように、ガムテープでの固定が必要だった。
Bおもり…・…・・実験書では、砂袋になっているが、本校では、力学台車とセットで購入した鉄製1kgのおもりを使用した。
C記録テープ・・・本校で普段使用していたテープは、幅が12mmのものであったが、今回のデータ整理のためには、10mmのものが必要なので購入した。
◎授業内容
この実験は、2時問続きの授業の中で行った。実験本体は、「質問・課題」の時間を含めて、l時問で終わり、後半の1時間でデータ整理を行った。
実験書では、探究実験を「生徒が興味関心をもち、自分でやっていることがわかり、常に考えながら行う活動」ととらえており、「質問・課題」をその導入部分としている。そこで、実験書の趣旨をふまえ、実験前にプリントの「質問・課題」を生徒に提示し、教員はなるべく解説をせずに、生徒が自ら興味関心を持ち、主体的に実験に取り組めるように努めた。実際には、「質問・課題」に10分程度時問を取り、解説をなるべくせずに生徒に考えさせ、関心がでてきたところで実験を開始した。実験を開始すると、生徒は普段以上に真剣に取り組んだ。そのため、1時間で実験を終了することができた。データ整理も、生徒は積極的に取り組み、単純作業にあきることなく1時問で完成させていた。
◎データ整理と実験結果
この実験では、テープを貼ってから線を引き、それから傾きを求める方法をとっているが、テープを貼ることによって、方眼の目盛りが消え、本校の生徒からは、直接グラフに点をプロットしたほうがわかりやすいという意見が多くでた。また実験結果は思った以上に誤差がでた。これは、今回使用した台車が車輪3つのタイプで曲がりやすい、引き方がおかしくてもやり直している班が少ない、データ数が少ない、などのせいと考えられる。時間の関係上、班でのデータ回数を、これ以上増やすのには無理がある。
 そこで、各班のデータを黒板に板書し、平均させてグラフ化させればよいと考えられる。本校で実際その方法でグラフ化したものは、よい結果が得られている。また、データのグラフ化で、1/mを横軸にとるところがあるが、本校の生徒には、あまりに唐突に出てきたため、その意味を理解した生徒は、ほとんどいなかった。やはり、はじめのグラフ化では、mを横軸にとりグラフ化し、考察で、説明して1/mのグラフ化を出した方
がよいと思われる。
◎まとめ
@実験書の実験を行う時は、必ず予備実験を行い、実験器具など、白分の学校でできるか確認する。
A「質問・課題」の効果で、生徒は、興味を持って実験を行うことができた。
B実験器具が実験書と異なる場合は、その器具で精度が保てるのか検討が必要である。
C自分の学校の生徒の実状をよく考え、説明文書、データ処理の方法、考察を改良する必要がある。

3.その他の実険の緒果
自由落下運動、運動量保存の法則、力学的工ネルギー保存の法則の実験結果の誤差をまとめると、次表のようになる。

 誤差率  落下運動  運動量保  力学的エネ
  %         存の法則  ルギー保存
 0〜4.9  50   11   47
 5〜9.9  36   11   27
 10〜14.9    9   56   14
 15〜      5   22   12

 この表は、例えば、落下運動の実験では、班の結果の50%が、重力加速度9.8m/s2に対して誤差率が5%未満であることを意味する。この表が示すように、落下運動と力学的エネルギー保存の法則の実験では、半分近くの班が5%未満、8割近い班が10%未満に収まっており、高校生の実験として考えれば、十分な精度ヒ考えられる。逆に、運動量保存の法則では、.0%未満で収まっている班は、2割しかない。これは、精度よく実験を行うためには、2球の束さを等しくする位置の決定、その位置の再現生など、実験する生徒の注意深ざによる、人為的誤差が大きいからだと思われる。本校でこの薬験を精度よく行うには、ざらなる工夫が必要
だと思われる。

4.生徒へのアンケート桔果
回答者数14名(3年物理IB選択者15名中)
・従来の実験では、いきなり、目的、方法に入っていきますが、今年は、質間、課題をもうけてから、実験を行いました。そのことで、以下のことでそう感じたものには、番号に○をつけなさい。
複数回答可
@なぜ?という疑問がわいた。3
A問題意識が芽生えた。4
B興味をもって実験にのぞめた。7
C従来よりは、よくなった。2
D従来と変わらない。2
その他
質問・謀題の意味がわからなかった。2
・このプリントは、みんなが、プリントを読めば、理解して先に進めるように、説明、計算の仕方、など詳しく示してありますが、どう感じましたか
@よくわかった。0
A説明はわかったが、計算の仕方がよくわからなかった。6
B先生の説明を聞けば理解できた。5
C先生の説明を聞いても理解できなかった。3
・実験中自分でやっていることがわかった実験には、すべて○をつけなざい。
@歩行7A自由落下7B運動の第二法則5C運動量保存の法則9Dカ
学的エネルギー保存の法則4

5.おわりに
 今回の授業実践で「質問・課題」の導入部分が生徒の興味を引き出すのに大きな効果があることがわかった。今回の実践を生かし、本校の生徒によりあった形に実験を改良していきたいc


9.扇風機つき帆船の動きについて
        東京都立都立保谷高等学校(元)飯村博
            都立戸山高等学校  岸田功

1.はじめに
 「帆掛け舟に取りつけた扇風機でその帆に風を送ったら舟はどう動くか(図l)」という問題は、「科学クイズ」としてよく知られている。代表的な答えは次の2つで、舟が前進するという解答はない。
(a)帆に作用する力の反作用が扇風機に作用する。作用と反作用は大きさが等しいから舟は動かない。
(b)扇風機で起こした風が少しは帆から漏れるだろうから、舟は後退する。これに対し、朝生は図2のようなプロペラ台車を作り、条件によっては、台車は前進もすることを実験により確かめた1)。しかし、惜しいことにこの報告文はそれぞれの場合に働く力の大小関係を述べるのみで、ど
んな条件なら前進するのか、などもう一歩突っ込んだ解明がなされていない。前進や後退、それに静止が起こるのはそれぞれどのようなときか、帆の周囲にはどのような空気の流れが生じるか、また、舟を動かす原因
は何かを明らかにする目的で研究をした。

2.実険器具の裂作
プロペラ台車の動き、帆にあたった後の空気の流れ、およぴ両者の関係を調べる目的で次のような器具を作った。
(a)台革の仕様(基本的には朝生と同じ)
(ア)モーター…・マプチ280
(イ)プロペラ・・・模型飛行機用(全長15cm)
(ウ)帆とプロペラとの距離・約5cm
(エ)帆の材質・…バルサ材(厚さ0.5cm)
(オ)帆の形状…一平面、非平面の両種
 ○平面状の帆・縦はすべて18cm、幅は9、11、12、13、14、15、20cmの7種
 ○非平面状の帆…一縦20cm、横18cm(図5B、C)
(b)空気の流れを見る器具
ベニヤ板を黒く塗り、全面に2cm間隔にあけた小さな穴に長さ約2cmの細くて白い糸(仕付け糸をばらしたものがよい)を1本ずつ立て、接着剤で止めた(図3)。この糸のなぴき方で風の向きと強弱がほぼ読みとれる。

3.実験結果
平面状の帆では、プロペラ(15cm)よりも短い13cm幅のとき静止、12cm以下のとき後退、14cm以上で前進した。この13cmの帆について、帆にあたった後の空気の流れを調べてみると、図5Aのように
面に平行なb方向を中心とする扇形に広がり、a方向にもc方向にも流れていることが分かった。aは帆から漏れた空気、cは帆で反射した
空気の流れである。台車が後退する9cmの帆の場合も基本的には13cmのときと同じく扇形に広がるのだが、a方向が強まり、c方向は弱くなっている。台車が前進する20cmの帆では、a方向が非常に弱くなっており、c方向は強まっている。
以上から、a方向の流れが強ければ後退し、c方向が強ければ前進するものと考えられる。この考えを確かめるために、図5Bのような帆を作って観察してみたが、予想通り空気の流れは矢印のようになり、台車は左に前進した。
同じ帆を裏返しにして立てると、流れは図5Cのようになり後退したのである。このように、帆にあたった後の空気の流れの方向が前進、後退に対して決定的な意味を持つと分かった。

4.従来の説明の間題点とクイズの解答
この舟の動きはずっと、作用反作用の法則によって説明ざれてきた。朝生も例外ではない。彼は、扇風機と空気問の作用・反作用け)と、帆と空気間の作用,反作用(2)の大小関係で舟の進み方が決まるとし、(1)>(2)なら後退、(1)=(2)なら静止、(1)<(2)なら前進と言っている。しかしこの説明では、次のような矛盾が生じるようにみえる。
舟が左に前進する場合を考えてみよう。
図4のように作用と反作用(1)をF、F’(2)f、f’とすると、前進するとき、(1)<(2)ということはF<fであるから、帆と扇風機に挟まれた空気に作用する力Fとfの合力が右を向いていることになる。すなわち、扇風機で起こした左向きの風がその扇風機に向かう右向きの加速度をもつということになってしまうのである。クイズの解答(a)はF1をジの反作用と勘違いしたもので論外である。
従来の説明ではいずれも帆と扇風機に働く力を考え、作用反作用の法則を利用しているが、力関係だけでこの間題を解くことは無理である。この「科学クイズ」は、実は運動量保存の法則によって解明すべき問題なのである。扇風機と帆およぴ船体を一体としてとらえれば、この舟全体が一つの送風機になっているといえる。この送風機は周囲の静止している空気を取り入れて、これに運動量を与える装置である。この送風機によって空気に後向きの運動量を与えれば、舟は前向きの運動量を得るから前進し、前向きの運動量を与えれば後退、与えなければ止まったままとなるのである。そしてどのような運動量を与えるかは、既に述べたように、主として帆の大きさと形状による。なお、実験にあたっては、摩擦が大きな影響をもつので、これを考慮しなければならないのは言うまでもない。

5.おわりに
古くから、「この舟は前進できない」という解答が受け継がれてきた。実験によってこの誤りを証明した朝生の功績は大である。しかしながら、舟の動きを作用反作用の法則によって説明するという手法は変わらなかった。
舟の動きはこの法則に深い関わりを持つとはいえ、運動量保存の法則によって解明すべき現象だったといえるのである。
〈引用文献〉
l)朝生邦夫:力と反作用「プロペラョット」の迷信 高校理科研究(大日本)1996.2学期号




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