都理化教育研究会 研究発表集録抜粋



 このページはあくまでも北村俊樹(たまきち)の得た情報とその抜粋・要約によって作製されています。したがって東京都理化教育研究会の公式な見解を示すものではありません。各情報の詳しい内容をお知りになりたい場合は、直接、発表者や委員会あてにおたずね下さい。

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1992年度(平成4年度)研究発表抜粋


1.エアーマジックを使って気体の状態や性質を調べる
        東京家政大学附属女子高校 宮澤弘二

 気体の分子運動で手軽な実験はなかった。真空漬物器を実験に用いて、気体の状態や性質について、できるだけ簡単にかつ生徒の視覚に訴える実験方法を開発した。
 準備するもの:真空漬物器(加藤産業、エアーマジック、2500円ぐらい:補足北村)、温度計、ディジタル温度計、小型気圧計、ブザー、ゴム風船、80度の湯、100ccのビーカー、硬貨(1円、10円)、羽毛、ゴム栓(2号と穴のあいたもの)。真空漬物器のふたに2号のゴム栓が入るように電気ドリルで穴をあける。
 実験1:低圧状態にすることによって内部エネルギーが変化するかどうか?
  1)漬物器内にディジタル温度計と気圧計をいれ、気温、気圧を測定。 2)エアーポンプのピストンを上下させて容器内部を低圧にし、温度と圧力を測定。内容積は2.00l 3)内部のモル数を、圧力、容積、温度から計算し、さらに内部エネルギー3/2nRTを最初と変化後で求め、変化分を計算する。
 実験2:低圧沸騰の観察。80度の湯を入れて減圧すると低圧沸騰が見られる。泡がでて再沸騰する。
 実験3:低圧状態下での雲の発生。実験2の後、空気を入れる。
 実験4:ブザーを容器内に吊る減圧していくと音が小さくなる。
 実験5:容器内に風船を入れ減圧すると風船が膨らむ。なぜ膨らむかを考えさせる。
 これらの多くは、定性実験であるが気体の性質を理解するのに適当である。また、収納や持ち運びも簡単で安価で生徒の気を引く。



2.β線測定教材の実用化について.
     東京都立玉川高等学校 名古屋光男

 β線を測れる小型の簡易測定器および線源を開発したので報告する。従来の小型検知器はγ線であること、ディジタル表示であること、待ち時間があることなどを解消した。
 β線測定装置(ベータちゃん)の仕様:1)測定線種β線99%、γ線1%のハロゲンガス封入式GM管、2)検出有効径44.5mm直径、測定範囲0から300cpm、表示はメータ式3)電子ブザークリック音、4)電源006P、20時間使用可能、重量300g、W75、L180、D41mm
 付属線源:1)花崗岩、乾燥昆布、塩化カリ肥料、燐酸カリ肥料、湯ノ花、目覚まし時計(夜行塗料)、取り扱い手引き有り。
 これらを、300rpmになるまでの時間から放射線量率の概略をつかませる実験や、遮蔽、距離依存性、磁界との相互作用などの実験に使用した。



3.手軽にできる生徒実験
「円運動の向心力をはかる」「コンデンサーの理解と容量の測定」
     東京都立西高等学校  桜井康雄

 今までの高校物理は理論が先行し生徒自身がものにさわり実感としてわかるという面が弱かった。抽象的で難しいという評価がある物理は、生徒実験を増やし、体験的な理解と理論の整合性を強調し、自然の法則を知る必要がある。そのためには、手軽にできる精度の良い実験を数多く用意することが必要である。

「円運動の向心力をはかる」
 図のように、糸の一点を固定して鋼球を吊るし、紙に描いた半径rの円周に沿って鋼鉄球を円運動させ、その周期Tを測定する。糸は鉄製スタンドに目玉クリップをつけ、クリップで糸をはさみ、糸の余った部分をスタンドに巻き付ける。円運動している球にはたらく重力と張力の合力が向心力となることを強調し、図のようにして向心力の大きさを測る。このとき、バネ秤の力の作用線が鋼球の中心を通るようにする。このため、鋼球は穴あき球を用いると良い。

「コンデンサーの理解と容量の測定」
 1)1Fのコンデンサーを一定の電流いで時間t充電する。充電後のコンデンサーの電圧Vをディジタルテスターで測る。充電した電気量Qから、コンデンサーの容量Cを求める。抵抗は放電タイマーのテープを用いる。 2)課題実験:2つのコンデンサーの電気容量を求め、1つを充電し、他のコンデンサーと直列につな議、全体を電源につなぐ。それぞれのコンデンサーの電圧を測定し、なぜそうなるかを考える。


4.理科教育の根本問題−今こそ実行のとき−
      明治大学理工学部講師 後藤道夫


 要約すると内容を損なってしまう恐れがありますので、原文にあたって下さい。(北村)


5.簡易加速度計を使った力学の実験
      東京都立荒川商業高等学校 小坂英之

 加速度を直接測ることができる加速度計を開発した。加速度のセンサーには2枚のストレインゲージを使い、厚さ0.5mmの塩ビ板の両端に張り付け、たわみによる抵抗変化の検出感度を増す。これをホイートストンブリッジにつなぎ、たわみによる電圧変化(10mV以下)をオペアンプで増幅しデータを読む。これをパピーのAD232インターフェースにつなぎパソコンで加速度を表示させる。精度は、0.1m/s2である。
 実験法:1)加速度計を力学台車にのせ、生徒に台車を一定の加速度で運動させる。次第に速く動かさねばならぬことを実感させる。 2)円運動する台に乗せ、円周及び、半径方向の加速度を調べる。 3)加速度計にバネを取り付け単振動の実験に使う。



6.強力磁界(組立変圧器)を用いた各種の実験
      東京都立国分寺高等学校  加藤木 淳
      東京都立国分寺高等学校  古澤 佑一

 磁性体の実験には強力な磁界が必要であるが、組立変圧器は1テスラを越える強い磁界を発生できる。断熱消磁、反磁性、着磁などの実験ができる。

 組立変圧器では、図Aのように鉄片を向かい合わせて1cm程の隙間では、電流2.5Aで0.60T、10Aで1Tを越えた。図Bのように先端をとがらせた鉄片を向かい合わせると、電流2.5Aで1Tを越える。(ネオジウム希土類磁石0.50T) 電磁石で永久磁石より強い磁界ができるので、磁石の着磁や消磁ができる。

 1)ネオジウム磁石の消磁着磁
  市販の磁界コイルでは磁界が弱く、直径1.2mmの銅線を1600回巻いてコイルを作った。これにより、棒磁石、U字型磁石、フェライト磁石、強力アルニコ磁石等の着磁・消磁ができる。こいるに磁石をいれ交流100Vを加えると、5.0Aほどの電流が流れ徐々に電流を下げると消磁できる。着辞するには直流35Vを加えるとdennryuu10Aが流れ、再び元と変わらぬ強さにできる。大電流を流すので、着磁・消磁は短時間で行う。
 2)ビスマスなどの反磁性
 組立変圧器の上に先端をとがらせた鉄片を向かい合わせ、その間に細い糸で吊るしたビスマス、シャープペンの芯、10円球をいれ直流5Aを流すと逃げるように力が働き、反磁性を示す。1円玉は0.5Tで磁界から押し出され、1Tで磁界に引き込まれる。これは酸化アルミニウムは反磁性、アルミニウムは常磁性を示すためだろう。
 3)断熱消磁
 極低温を得る方法の一つに常磁性塩を用いた断熱消磁法がある。ディジタル温度計を差し込んだGd2.6g)を発砲スチロールでおおい、これを組立変圧器の磁場の最も強いところにいれるとGd度は1K上昇する。そして、1分間ほど磁界の中で放置してGdの温度が一定になった後、磁場から引き離すと1K程下降する。


7.生徒実験用アンプの製作とその応用
 半導体は多くの生徒にとって興味のある分野であろう。トランジスタの働きについて、手軽な生徒実験を開発した。
 1)ウークマン用の簡単なアンプ   2SC1815、抵抗220kオーム、コンデンサ0.1マイクロF、006P電池、スナップ、コード、ラグ板、バネ、スピーカー、スピーカ箱出作る。回路の結線はラグ板とバネを用いる。トランジスタは前もってラグ板に半田付けする。バネに抵抗やコードの先をはさみこむだけでよい。トランジスタを2SC2298にすると増幅率10000倍となる。
 2)微小信号用簡単なアンプ
  ダイオード1本、手作りバリコン、手巻きコイルから作れるラジオの音を増幅するために用いる。1)の抵抗を2Mオームにかえる。
 3)光通信
  上の2)のアンプのスピーカーをLEDにかえ送信器とする。受信部はファトトランジスタTPS601と抵抗20kオーム、と2)の回路を使う。ファトトランジスタの代わりにクリスタルイアフォンやコンデンサーマイクも使える。



8.水を吹き上げる中国の鍋(魚洗)の利用
      白百合学園中学高等学校 馬目秀夫


 鍋に水をはって取っ手を摩擦すると水が4か所から吹き上げる魚洗という鍋がある。こすり方に6カ所、8カ所から吹き上がる。生徒に定常波の節と腹を実感させるのに大変有効である。魚洗の代わりに、ステンレス製の調理ボールを使い、ゴムホースを輪にした台の上で行うことでも吹き上がりができる。また、直径30cmのステンレス製の寄せ鍋で代用するとより魚洗に近く吹き上がる。生徒実験の班実験として寄せ鍋( 1500円程度)で行ったところ生徒に好評であった。



9.ノート型パソコンを使ったいろいろな物理実験
    東京都立新宿山吹高等学校 安田 明

 パソコン計測を手軽に使うには、モニターや結線などの準備がわずらわしい。これをノートパソコンと、増幅器やAD、DAコンバータなど物理計測に必要な回路を全て一枚の拡張ボード(エプソンLスロット用)にまとめることで、簡単に計測・実験が可能になる。このボードは、2chADコンバータ、6桁カウンタ、3chディジタル入力、1chDAコンバータ、5chディジタル出力、2chアンプを内蔵している。マイク、光センサ、温度センサなどをボードと組み合わせることで、パソコンを万能測定器として使える。ソフトはBASICで作り一部機械語である。使用例として、1)音の波形と振動数表示、2)音叉の波形とうなり(うなりの合成音をDA変換器で音音出力可)、3)ダイオードの電流と電圧の関係、4)電池の内部抵抗と起電力のV−Iグラフ、5)コンデンサーの電荷Qと電圧V、6)LCによる電気振動、7)温度の測定、8)コイルに生ずる誘導起電力、などがある。(中村理科、リカコンとして後に市販された。北村)





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