都理化教育研究会 研究発表集録抜粋



 このページはあくまでも北村俊樹(たまきち)の得た情報とその抜粋・要約によって作製されています。したがって東京都理化教育研究会の公式な見解を示すものではありません。各情報の詳しい内容をお知りになりたい場合は、直接、発表者や委員会あてにおたずね下さい。

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1991年度(平成3年度)研究発表抜粋



1.実験を中心とした「直流回路」
       東京都立西高等学校 桜井康雄

 1990年度の物理専門委員会の「生徒実験によって進める直流」を授業で実際に実施した。6枚のワークシートを利用しながら4名の反実験で進めていく。
 実験器具:可変電圧直流電源、ディジタルマルチメーター(テスター)、抵抗(50、200オームなど値の異なる4抵抗)、一様な抵抗線(ニクロム線)、電流計、電卓を用いる。実験方法は 1)オームの法則、 2)電流の流れ方と電圧、 3)キルヒホッフの法則、 4)ブリッジ回路等である。(詳しくは1990年度の物理専門委員会の資料を見て下さい:北村)



2.教材利用としての環境放射線
       東京都立玉川高等学校 名古屋光男

 環境問題に対する国民の不安が高まっている一方で、核分裂生成物の発生とそれらに対する十分な知識がないため不安も生じている。この問題の解決法の一つは、教育を通して環境放射線に対する正しい理解をさせることである。従来は機器の制約からできにくかったが、新しい測定器を用いると環境放射線がたやすく測定でき、教育効果も大きかった。

 実験法:簡易測定器「はかるくん」や「PAシンチレーション測定器」(ともに堀場製作所製のCsI型シンチレーションカウンタでγ線用:北村)を用い、身近な場所の放射線を計測する。計測例は、1)東京−大阪間の新幹線内(例:新橋0.034マイクロSv/h)、校舎1階(0.056マイクロSv/h)から3階、物理室、体育館など、3)福島第二原子力発電所から10kmの地点、などである。この簡易測定器はピコシーベルト程度の微量測定が可能である。また、PA100の場合は適当な外部装置があれば、波高弁別模できる。



3.重力が行う仕事の性質の指導
   −力学的エネルギー保存の法則に関連して−
       東京都立八潮高等学校 大室文之
 
 平成2年度の都研における物理研修会で図に示す実験装置が紹介された。(後藤道夫先生によるもの、2つのジェットコースター状のカーテンレールでできた軌道をもつ台、開始点、終了点の高さはABそれぞれ同じだが、Aの方は一度下側におりて平行に進んでからあがり終了点に到達する。北村)この装置を、重力が保存力であることを理解させるために利用した。

 実験方法:実験装置の終了点から飛び出す鉄球を、床においたカーボン紙、記録用紙を使って軌跡を記録する。実験開始前に、A,Bどちらのコースが早くゴールに到着するか予想させる。
 実験結果:実験するとAの方が先につく。(用いた装置の場合:北村)この後、A,Bの飛距離を測定させる。飛距離はゴール位置の高さが同じなので、同じである。ここで、生徒同士で理由を考えさせる。こうすると、生徒の解釈は「コースAの方がBよりも球が早く到着するが、ゴールでの速さはABともに等しい」に変化し、「ゴールでの運動エネルギーはABともに等しい」ことに対する理解が深まる。鉄球の移動経路が異なっても、重力のする仕事は変わらないとの認識を深めていった。生徒の予想をくつがえす現象を経験させることで、情意面における興味・関心を高めることができるた。



4.数式を使わない交流の指導
       東京都立西高等学校 森 雄児

 教科書での交流の単元は三角関数、微積分、インピーダンスなど無図下支持公が多い。ようやく交流の中心概念のインピーダンスの公式にいたっても、結局インピーダンスについてよくわからないし、聞く気力もなくなっている。本当に数式を使わないとインピーダンスが理解できないのだろうか。数式を使わずに理解させることはできないかと考えた。そこで、数式を使わずに、1)エネルギー消費から交流にアプローチする、 2)フィルターの概念を導入すること、 で直列共振までその概念を理解させることができた。

 実践例:
 1)エネルギー消費から、抵抗はジュール熱を出し、L,Cは電流を制御するがジュール熱を出さないことを示す。これは、積算電力計にR,L,Cをそれぞれ接続し消費電力を求めさせる。
 2)フィルターの概念を導入する。音楽をL,R,Cを使ってスピーカーから聴かせてフィルターの役割を確かめ、リアクタンスを実験させる。コンデンサーCをスピーカーに直列に入れるとハイパスフィルタで高音がよく聞こえることから、周波数が大きくなるとリアクタンスが小さくなる。コイルLを直列に入れるとローパスフィルターで低音がよく聞こえ、周波数が小さくなるとリアクタンスが小さくなる。さらに、コイルとコンデンサーを直列に接続すると、バンドパスフィルターとなり中間の周波数帯がよく聞こえる。



5.河川の衰亡を数値化する
       東京都立蔵前工業高校 斎藤正一郎

 理科1の範囲ですが、直接物理と関係ありませんでしたので割愛させていただきました。(北村)



6.LOTUS1−2−3によるシミュレーション
       東京都立世田谷工業高校 川角 博

 コンピュータの微分方程式の数値解は、微少変化の累算によって得られる。これは、LOTUSのような表計算ソフトの得意とするところである。これを利用して、実験データの処理・分析と同時に、実験データと様々な条件を考慮したシミュレーションデータとの比較等による考察への利用が可能である。

 1)LOTUSによるシミュレーションの特徴:データ処理・分析が1つのソフトででき、ルンゲ・クッタ方などの計算式も簡単に組める。パラメータ変更が簡単で再計算やグラフにすぐ反映できる。
 2)シミュレーション例:速さの2乗に比例した抵抗を受ける落下運動を取り上げた。dt,v0,cの値を変化させて終端速度に達する様子をグラフで見られる。ルンゲ・クッタ方を用いた。

 コンピュータの利用について:
 データ入力で後の処理は全てコンピュータがやったり、逆に大量のデータを手でけいさんすることは、探求活動においては非教育的である。単純作業のみをコンピュータに任せ、実験中に生徒に考える時間を与え、あるいは生徒の思考を支援するコンピュータの使用法を提案したい。
 1)十分に理解できている単純・大量なデータ処理はコンピュータに任せる。  2)各データ間の関係を調べるために、データの加工・検討をコンピュータに支援させる。
 3)実験や現象をシミュレートさせ実験データをさらに分析的に考察できるようにする。



7.「エネルギー」をいかに教えるか
       東京都立世田谷工業高校 川角 博

 「エネルギー」という言葉は、日常用語として使われているが、物理用語としての意味を理解している生徒はほとんどいない。「エネルギー」がわかるためにまず必要なのは、「仕事」の計算ができることでなく「エンルギー」のイメージを獲得することである。この観点に基づいて、「エネルギー」導入のあり方について私見を述べる。

 1)未知の言葉を教える
 生徒に、「エネルギー」により生まれるべきイメージを与えてやらねばならない。
 2)成長過程で言葉の持つイメージは帰納的に形成される
 「エネルギー」は実体がないが、しっかりと定められた概念である。「エネルギー」のイメージが帰納的に抽出され、育つような体験をたくさんの生徒に与えてやる必要がある。
 3)「エネルギー」をイメージ化するために
 様々な動力源で動くおもちゃを用意して導入・展開をしている。
  (1)ゴム動力、ゼンマイ仕掛け、乾電池とモーター、太陽電池とモーター、斜面を走るおもちゃ、熱で動くおもちゃなど
  (2)どれも結果だけ見れば、動き出すことに関しては同じだが、動き出す原因は異なる。ゴム、ゼンマイ、乾電池、光、熱など。どの原因も、潜在的にものを動かす能力を持ち、この共通なものを動かす能力が「エネルギー」と関わる。
  (3)動かす原因は他の作用もする。他の潜在的な能力を持ち、それらは共通に動かす能力になる。すなわち「エネルギー」はいろいろな形に換わる。
  (4)このようないろいろな形の間での「エネルギー」の交換レートを合理的に決める必要がある。同じ作用をさせて同じ結果が生ずるとき、それらは互いに等しい「エネルギー」を持っていたとなるように交換レートを決めればよい。この作用として「仕事」を使う。つまり、「仕事をする能力」でエネルギーを測ることにする。



8.曲線を描いて進むレーザー光線
       東京都立国分寺高等学校 古沢佑一

 蜃気楼や逃げ水などの現象に役立てるために、食塩水の濃度差を利用して水槽で蜃気楼の疑似現象を作りだした。

 濃度差のある食塩水の作り方:水に食塩を入れよく撹拌して飽和溶液に近い食塩水を作る。食塩が完全に溶けるまで報知して置く。次に、30から50cmの水槽の中に半分くらいの水位まで真水を入れる。なお、レーザー光線の進路を見るために、真水よ食塩水に1リットルあたりに牛乳2、3滴たらしておく。次にロートとゴム管を使って、漏斗から食塩水を水槽の最下部に少しずつ静かにそそぎ込む。急いで注いだり、真水と漏斗内の食塩水の水位の差が大きいと全体が混じり合いうまく行かない。水位の差は5cm以内がよ。ゆっくりとそそぎ込むと、食塩水が層をなすようにたまっていき下半分が食塩水、上半分が真水となる様子がわかる。使用した食塩水の屈折率は1.40であった。食塩水は静かに置いておけば、数日は濃度差を保っている。

 実験法:
 1)食塩水と真水の境界線にレーザー光線を当てると光が曲線を描いて進む様子がわかる。
 2)回節格子を用いて境界部分に当てるとその部分だけ曲線を描いて進む。
 3)豆電球の光を水槽を通して見る。目の位置を境界層の上から下へと動かしていくと1つの豆電球が長細く伸び上がって見える。さらに目の位置を下げると豆電球が3つか4つに見え、さらに下げると再び一つの豆電球に見える。
 4)水槽の向こうに建物の絵を置く。目の位置を上から下にずらしていくと、建物はまずつぶれた形になり、次に伸び上がった形になる。さらに下げると上部に倒立の像、中央部に伸び上がった像、下部に正立像が見えてくる。蜃気楼の疑似現象を作り出すことができる。



9.「物理」としてのコンピュータ学習
       東京都立松原高等学校 伊東 操

 物理1Aの「情報と処理」之中でコンピュータの仕組みと特徴に触れることになっている。こんぴゅーたのおよその仕組みと動作の指導法を考案した。1)コンピュータのブラックボックスをなるべくなくす。2)重要なユニット部分を観察・実験器を大きく作った。3)電気回路の入出力にLEDを付けた。4)説明器にとどまらずコンピュータと接続できるもの。 とした。

 製作事例:1)コンピュータの信号電流観察器。アドレスバス、データバス、コントロールバスの信号の流れをLEDで示す。2)加算器回路観察・実験器の製作。片加算器、全加算器とLED。3)基本論理回路観察・実験器の製作。AND,OR,NOT回路。4)トランジスタの特性実験器の製作。



10.ワンチップマイコンによるパソコン計測の簡易化
       帝京大学高等学校 山本高之
       東京学芸大付属高大泉校舎 後藤貴裕

 手軽にパソコン計測ができるようなマイコン内蔵データロガーの開発を行った。本システムは主にデスクトップ型パソコンに接続する。インテリジェェント型なので1)単体のみで使用可能、2)RS232Cインターフェースで機種依存性なし、3)多彩な機能でほとんどのパソコン計測可能、4)安価、小型軽量、屋外使用可、などの利点がある。

 使用例:1)誘導起電力の測定。コイルに生ずる一過性の誘導起電力をオシロスコープにストレージ表示できる。2)バネの単振動。3)放射線の計測



11.計測用インターフェースの開発とVboxの活用
       東京都立広尾高等学校 天良和男

 (1)ワンチップマイコンによる計測システム
  CPU,ROM,RAM,A/D,D/Aコンバータ、<DIO,タイマーシリアルI/Oが内蔵されたインテリジェント方式でシリアルI/Oによりホストコンピュータとデータのやりとりを行えるワンチップマイコンを開発した。特徴は、1)ROMプログラムはブートのみ、2)電灯線電源と電池電源が可能、3)スルー計測・ストレージ計測が可能、4)データロガーとしても利用可能、5)センサー回路の接続が容易、などである。

 (2)Vboxの理科への活用
 ソニーのVbox CI-1000(3,8000円)はLANC端子やコントロールS端子を持つVTRやディスプレイをVISCAというプロトコルで制御できる。このVboxとビデオカメラ、パソコンを組み合わせることにより、ビデオ機器を活用した理科教育のためのマルチメディア観察・実験システムが容易に作れる。ビデオカメラの制御はBASICで行える。理科への使用例としては、植物の生育、動物の行動、化学変化、フーコー振り子の振動面変化、雲の動きの記録などへの活用が考えられる。



12.文化系のための楽しい物理選択
       東京都立清瀬高等学校 猪又英夫

 化学が嫌いだでは生活が制限されるしだまされ損をする可能性も高い。化学に対する恐怖心をなくし、科学に対する驚き、楽しさをもう一度感じて欲しい。身近な洗剤などの害や宣伝などのごまかしに正しい認識ができるようにしたい。このために物理選択講座を開いた。授業は楽しく身近な題材で実験や工作を行った。また、一部講義形式で行った。

 授業内容:
 1)猫の逆さ落としの理由を紙の猫を使い解明。
 2)ソーラーバルーン。各クラスごとに作製。
 3)綿菓子作り
4)紙飛行機。型紙使用。
 5)洗剤の害。合成洗剤の害を実験を通して理解。
 6)人のはいれるシャボン玉
 7)豆腐作り
 8)アイスクリーム作り
 9)超能力と心理学入門。こっくりさんのしくみなど。
 10)カメラ作り・撮影。青焼きカメラを作り人を撮影。
 11)電気は恐くない。エアコンの特別配線の理由ほか。
 12)ケーキ作り。電気パン焼き器利用。

 全体的な感想として、楽しめたと評判がよいようである。それは、生徒同士や家庭で物理の実験がいい意味で話題になっていることから言える。当初の目的にかなり近づいている。



13.コンピュータによる簡単で安価な物理実験
   −プリンタ端子を利用する−        東京都立上野高等学校 北村俊樹
       東京都立羽田工業高校 瀧上 哲

 物理教育にコンピュータを利用する方法として、マウス端子やRS232C端子、プリンタ端子を利用すれば極めて簡単にしかも安価に、生徒実験や測定を行うことができる。これらの端子に安価で自作が簡単な入出力用インターフェースとセンサ部を接続して、各種の実験や測定を行う方法を「コンピュータによる簡単な実験」またはCASEと呼ぶ。パソコンを、ソフトとセンサの組み合わせで、光電スイッチ、電圧系、メモリスコープ、抵抗計、容量計、マルチストロボなど汎用測定器、多目的実験器に変える。この中で、プリンタ端子利用に付いて述べる。
 プリンタ端子インターフェース:
 プリンタ端子につないで測定を行う。AD/DAコンバータ、アンプ、ディジタル入出力がある。サンプリング周波数は20KHz程度である。製作費は数千円程度である。

 実験例:
 1)メモリスコープとしての利用。Cの充放電、誘導起電力など。
 2)音の入出力実験。取り込んだ音の表示や合成音の音出力を行う。
 3)導電スポンジによる力測定。導電スポンジで力センサを作る。
 4)タイマーとしての利用。反発係数の時間間隔からの測定や、容量計に用いる。
 5)放射線カウンタ。秋月のキットをつなぎ、放射線のカウンタとして利用する。
 6)ストロボ制御。写るんですフラッシュを改造し、マルチストロボとして制御する。





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