都理化教育研究会 物理専門委員会研究発表抜粋



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1995年度(平成7年度)研究発表抜粋

1996年1月20日(土)

 「物理専門委員会氏名」
 委員長 :黒田楯彦(都立竹早高校)
 副委員長:土屋 博(都立新宿高校)
 副委員長:橋本道雄(都立大泉高校)
 委 員 :飯野 誠(都立大山高校)
      岩谷直之(都立町田高校)
      宇田川茂雄(私立暁星高校)
      岡戸靖一(都立富士高校)
      金子雅彦(都立青井高校)
      小林雅之(都立青山高校)
      田原輝夫(都立戸山高校)
      西島宏和(都立清瀬高校)
      萩原 清(都立保谷高校)
      増淵哲夫(私立中大杉並高校)
      三沢利晶(都立綾瀬聾学校)
      吉岡一秀(都立本所高校)

テーマ:(続)「物理の理解を深める生徒実験や演示実験」
−−魅力的で活力のある授業をめざして−−

 理科離れがさけばれるなかで、特に物理は「抽象的で、理解しにくい科目」、というのが一般の人の、物理に対する見方のようです。そこで、現場の教師としては、「具体的で、分かりやすい科目」といわれるように、また魅力的で活力ある授業をする努力が必要と思います。
 そこで、昨年度に引き続き、今年度も力学、波動、熱、電磁気・原子の四分野に分かれて、それぞれ上記の研究テーマにふさわしい「物理の理解を深め魅力のある、生徒実験や演示実験の開発」を行いました。ただし今年度は実験だけにとらわれず、授業展開についても、工夫、問題提起(とくに力学で)を行いました。
 各分野に分かれたとはいえ、毎回の会合でそれぞれの分野の研究について進行状況と内容を発表し、意見を出し合いながら絶えず全体で検討し、議論をしながら進めてきました。私達の、この1年間の研究成果が、先生方の授業にいくらかでもお役に立てば、幸いです。


1.力学:「概念理解を目指した力学の指導方法」

      田原輝夫(都立戸山高校)
      土屋 博(都立新宿高校)
      橋本道雄(都立大泉高校)

要約:いつまでも運動し続けるという慣性などの概念はどのように形成されるか。先人たちの考え方を参考にしながら、実際の授業での指導方法・展開を考える。

 1.はじめに
 物理学の概念は、決して計画的に生み出されてきたのではなく、「歴史的」に成り立ったものである。物理学がかつて提起しその概念を由とした根拠、それをめぐる困難の数々を拾いだし、人類と物理学の関わり方を思考する授業ができないかと考え実践した。
 当時の考え方をそのまま生徒に与えた。
 1)ガリレオ「天文対話」第日目 岩波文庫
 2)デカルト「哲学の哲理」  世界の名著 中央公論社
 3)ニュートン「プリンキピア」序文 世界の名著 中央公論社
 これらはほぼ「原典」の翻訳で入手が可能である。

 2.ねらい  ガリレオ、デカルト、ニュートンが名前から想像されるイメージと異なった顔をもってることや、その時代によって物理学の概念がどう人類とかかわり合っているかを知ることによって、今日の物理教育に対するよい見通しが得られるのではないかということを意図している。

 3.生徒に配布したプリント
 (1)「天文対話」が書かれた時代背景に注意しながら、ガリレオはいったい何をしようとしたかみんなで話し合おう。
 (2)「哲学の原理」が書かれた時代背景に注意しながら、デカルトは運動についてどのように考えているかみんなで話し合おう。
 (3)「プリンキピア」が書かれた時代背景に注意しながら、ニュートンはいったい何を主張しているのかみんなで話し合おう。
 (4)今まで学んできた物理との違いについて君の感じたことを簡潔に書いて下さい。

 4.生徒のレポート
 生徒のアンケート結果(省略)

 5.生徒のレポートからの検討及びこれからの課題
 授業に当たって、教師から結論を導き出すためのヒントは余り与えなかったので、生徒達の先入観でプリントを読む傾向が強く、物理の歴史に思いを巡らすことは難しい。
 ガリレオでは「地動説」と結び付けて考えており、地球表面に沿った運動が等速運動をするというガリレオの主張に到達できない生徒が多い。
 デカルトの場合は神にこだわり、デカルトの主張に到達できていない。
 ニュートンでは、全ての自然現象はある力によって説明され、それは数学的、幾何学的に証明できると考えた者が多い。
 この教材による可能な授業形態として、
 (1)単元の導入としての授業、(2)単元のまとめの授業に使える。
 
 なお、力学の指導法では、「座標変換を軸とした力学の指導」ということで、「相対速度の指導(2年生)」「相対性理論の指導の試み(選択3年生)」の指導実践例も報告された。


2.熱力学:「続・熱機関のしくみ」

      飯野 誠(都立大山高校)
      金子雅彦(都立青井高校)
      西島宏和(都立清瀬高校)

要約:1.簡単な、水を飲まない「水飲み鳥」(熱機関)の製作   2.熱機関の圧力・体積を測定して、P−Vグラフを作成することに挑戦した。

 1.はじめに
 専門委員会では2年前、旋盤がばくても小中学生が簡単にできるスターリングエンジンとして、ビー玉と注射器によるものを開発した。また、演示実験用として湯と水の30度ほどの温度差でうごくスターリングエンジンを紹介した。今年度は、ビー玉エンジンの授業プリント、p−V線図の作成、熱力学の授業に使える「水飲み鳥」を紹介する。

 2.ビ−玉式スターリングエンジン(再度の紹介)
作り方:材料に、試験管(内径15mmパイレックス製)、ビー玉5個(直径12.5mm)、注射器(3から5ml)、水フーセン、強力両面テープ、板、釘、棒、アルコールランプを使う。
 図のように作れば良い。試験管と注射器の間は水フーセンをきったものでつなぐ。注射器は両面テープでとめるが、注射器が内側に動けるように、両面テープの上は半分はがす。(注射器は摩擦の少ない物を使う。例:翼工業 荒川区南千住3-11-3 tel03-3807-5151)動きにくい時は、風船をはずして空気圧を調節したり、支点の位置を調節する。

 動作原理:
 (1)内部の空気は、大部分がアルコールランプで加熱されている部分にあり、高温・高圧になる。(定積変化)
 (2)注射器のシリンダーが持ち上げられ、ビー玉はアルコールランプの方へ移動する。(等温膨張)
 (3)内部の空気の大部分が、アルコールランプに加熱されない低温部へ移動し、低温・低圧となる。(定積変化)
 (4)注射器のシリンダーが下がることにより、ビー玉は注射器の方へ移動する。(等温圧縮)
 
 ビー玉は試験管の中の空気を、高温部や低温部に移動させる働きをしている。注射器は内部の圧力により、往復運動をしており、これより動力をとりだす。
 3.実験プリント「スターリングエンジンの動く原理」の紹介
  ・製作法
  ・なぜスターリングエンジンが動くかの問
  ・上の(1)-(4)の過程での試験管の動き、圧力、体積、温度の問
  ・演示用エンジンとビー玉エンジンとの対応性の問
  ・高熱源・低熱源、サイクル、熱の放出に関する問
  ・まとめ

 4.スターリングエンジンのp−V線図
 「お湯と水の温度差で動くスターリングエンジン」のp−V線図を測定した。エンジンの圧力調整口にシリコンチューブを付けガラス管に接続し、その先を水の入ったビーカーに浸す。エンジンを作動させ、ガラス管内の水の位置とエンジンの様子をビデオで撮影し、駒送りでフライホイールの回転位置と水位を祖空挺誌、体積変化、圧力を求める。
 p−V線図を図に示す。この方法は水位の変化でガラス内の空気の体積が変化し、圧力測定に誤差を含むので定量的には扱えない。しかし、実際に密閉している気体の温度差によってウゴイテイルエンジンについてp−V図を求めるのは、机上の話と異なり具体的なものとして感じる効果があるだろう。

 5.簡単な水を飲まない水飲み鳥の作成
 水飲み鳥は、
 ・熱機関として見ると高熱源と低熱源がはっきりしない。
 ・自分で作るのはガラス細工が困難。
 ・中の溶媒がエーテル・フロンなど危険である。
 ・どこにでも売っているわけでない。
ので自作した。材料は、丸降らす小、三角フラスコ、ガラス管、ゴム栓2個、エタノール、釘(回転軸用)、金属管(軸受け)、電球(60W−500W)、スタンド、水、ガスバーナー、試験管ばさみ、軍手である。丸フラスコ(上側)と三角フラスコ(下側)は同じ容量で、中の液体はエタノールまたは水を用いる。製作法は図を参考のこと。




3.波 動:「簡単にできる幾何光学の実験」

      岩谷直之(都立町田高校)
      岡戸靖一(都立富士高校)
      萩原 清(都立保谷高校)
      増淵哲夫(中大杉並高校)
      三沢利晶(都立綾瀬聾学校)

要約:平行光線発生器の作成、空気レンズ・空気プリズムによる光の屈折、ハーフミラーによる光の反射、水と空気の違いをシャーレと解説格子で視覚化することの紹介、ビニールシートによる光の干渉、色の吸収と反射に関する実験、スームカメラのスームを作成する、その他。

 1.はじめに
 物理1Bの波動の分野でレンズが扱われるようになり、幾何光学の重みが増した。レンズや幾何光学に関連した実験で、簡単で意外性のあるものや探求活動につながるものを紹介する。

 2.実験例(基礎編)
 (1)平行光線発生器
 回折格子と凸レンズを用いて、レンズの焦点と光線の進み方を知る。レーザー光を凸レンズの焦点に置いた回折格子に当てると、レンズの後方では平行光線になる。回折格子は1000本/cm程度で、レンズは焦点距離5−10cmで直径5cm程度のもの。
 (2)空気レンズ、空気プリズムによる光の屈折
 時計皿2枚の空気レンズやアクリル板で作った空気プリズムを水槽につけて光の屈折を見る。
 (3)レーザー光(赤)の透過率
 清涼飲料水、緑茶、シュース、酒、ワイン、などの透過の様子を見る
 (4)身近な回折格子によるレーザー光の干渉
 養命酒のキャップが回折格子、郵便切手のビニール袋が高分子の配列により方向性のある回折格子になる。
 (5)ガラス玉、氷、白熱電球によるレーザー光の散乱
 (6)糸電話リサージュ
  パイプに風船のゴムを貼り、その上に鏡をはりつけレーザー光をあてて話すとリサージュが見える。
 (7)ハーフミラーによる光の反射
 放物線、正弦曲線上にハーフミラーを湾曲させ、光の反射の関係を調べる。また大型パラボラ鏡に白熱灯を当てて熱く感じるところを探す。
 *ハーフミラー:ポリカービネイト板 300mmx300mm 板厚0.5mm、東急ハンズ1190円  *大型パラボラ鏡 直径45cm 光洋 No.30254 8500円

 (8)凹凸面鏡に写る顔
   ハーフミラーで作る。
 (9)水と空気の屈折率の違いをシャーレと回折格子で視覚化。
   (東レ理科教育賞参考)
 (10)レンズ作図によって焦点深度(収差)を気づかせる
 (11)水流光ファイバー
  ペットボトルに穴を開け水を放物運動させレーザー光線を裏側から当てると水が通り道にそって全反射する。
 (12)反射板の原理 
  直角三角コーナー型の鏡では光は反射で元来た方向に戻る。
 (13)潜望鏡の作製

 3.ズームレンズの実験(応用編)
  (凹・凸レンズを用いた実験と探求活動)
 焦点距離を連続的に変えられ、ピント面が一定で変化しないズームレンズの仕組みを実験を通して学ぶ。

 材料:グラフ陽子B3を2枚、凹・凸レンズ各1個(ともに直径40mm、焦点距離100mm)、電球1個、レンズ第2個、スクリーン用枠、トレーシングペーパー1枚、セロテープ、ものさし。

 実験1:凸レンズの焦点距離の測定定し、焦点距離fを求める。  実験2:凸レンズの式と倍率の関係
 凸レンズの位置を、光軸上のL1からL2間で等間隔0.50mmずつ移動させて、しかもこの間スクリーン上に鮮明な像を結ぶように電球Aを動かしこの位置(スクリーンS都電球Aの距離x)を測定する。スクリーンS上に等倍の倒立実像ができる凸レンズの位置L3と電球Aの位置A3を求める。
 電球Aの位置x=aの2乗/(a−10)
 またA3は倍率−1倍の倒立等倍実像でこのとき、a=2f、x=4fである。

 実験3:「凸レンズを用いたスーミングの実験」と「凹レンズによる虚像の位置の確認」
 電球AwpスクリーンSから67.5cmの位置に移して、凸レンズの位置を光軸上のL1からL2間で投函悪で0.50cmずつ移動させ、かつスクリーンS上に鮮明な像を結ぶようにして、このときの凹レンズの位置(電球Aからの距離y)を測定し、レンズの式から求められる理論地yと比較する。
 また、実験地yから凹レンズによってできる虚像の位置(スクリーンSからの距離z)を求め、その位置が実験2の電球Aの位置と等しいことを確かめる。
 f=−10cmより、b=67.5−x,
 凹レンズの位置y=((bの2乗+40b)の平方根 +b)/2
 また、凹レンズと虚像の距離c=10y/(10+y)
  虚像の位置z=67.5−(y−c)

 実験4:厚紙を用いた回転式(ツーリング)ズームレンズの工作
 製作プリント参照のこと(省略)



4.電磁気:「続・視覚で理解する電磁気・原子の実験」

      宇田川茂雄(私立暁星高校)
      黒田楯彦(都立竹早高校)
      小林雅之(都立青山高校)
      吉岡一秀(都立本所高校)

要約:同符号の2つの電荷のまわりの等電位面を求める実験、電池とモーターのエネルギー保存、RC並列回路における電流の位相差確認実験、キット「三角波発振器」の利用、自転車発電機を使った交流実験、共振回路作成における留意点、その他。

 1.等電位線の実験(生徒実験)
+と−の等電位線の実験は多く行われているが、+と+、−と−は行われていない。これを半田を使うことで比較的簡単にできる。
 導体紙の外縁に点電極からの距離がほぼ等距離になるように(楕円状)半田線を巡らせセロテープではりつける。この外縁部を電極の電位0Vとして電池の−極を付け、中央部の点電極に+極をつないで実験することで簡単にできる。本来は無限遠に電位0Vを持って行くべきだが、現実的には不可能であり、描かれる等電位線にも大きな違いはでてこないと思われる。

 2.電池とモーターのエネルギー保存
 モーターに電池をつないで回転させようとするとき、電池が供給する伝記エネルギーは、回転を通して行う仕事と、コイルに発生するジュール熱とになる。ここでは、教科書の「誘導起電力」に関連づけ理解させることを試みた。
 (1)モーターと電池、豆電球を直列につなぎ、モーターの軸を回転しないようにする。
 (2)軸を押さえて負荷をかけ、回転しにくいようにする。
 (3)自由に軸が回転するようにする。

 (1')電池と抵抗、磁界中を切りながら移動する導体棒による回路で、導体棒が動かないようにする。
 (2')導体棒を押さえてこれを等速で動かす。
 (3')導体棒が自由に動くようにする。
とを関連づけて、電池の供給電力P1と、抵抗での消費電力P2と、外部にする仕事P3との間に
   P1=P2+P3
が成り立つことを説明し、このとき豆電球が(1)では明るく点灯し、(2)ではやや暗く点灯し、(3)ではとても暗くなることを示す。

 3.発光ダイオードの点滅のずれでみるRC並列回路の電流の位相差確認器
 交流に抵抗と、極性を逆にした発光ダイオードのペアを直列につなぐと、電流の流れる向きによって、ダイオードが交互に点滅する様子がわかる。これをRC並列回路に使い、Rの直後と、Cの直後にそれぞれ1組ずつ計4個ををつなぐ。電流と電圧の位相差があるので順々に点滅することで、位相差を目で確認することができる。固定抵抗は10kオーム0.5W型、コンデンサーは耐圧100V、0.47マイクロファラッドのフィルムコンデンサーを使った。

 4.三角波発振器を用いた交流回路の実験
 秋月電子のキット(LM386ミニパワーアンプオシレータキット、500円)の三角波発振器を用いると、安価に班実験用の発振器を用意できる。

 5.自転車用発電機を用いた直列共振の実験
 自転車用発電機は交流発電機である。内部のコイルのインダクタンスにより、回転数を変えても出力電圧はほとんど変化せず、発生する交流の周波数が変わる。生活上の経験では回転数を上げるほど豆電球は明るくなる。これを、豆電球の途中に適当なLとCを直列に入れると、ある回転数の時にいちばん明るくなり、それ以上速く回しても暗くなってしまう。これを見せる。
 発生できる交流は20から150Hzで、5V前後である。L=0.1Hの直コイル、C=40マイクロファラッド、豆電球は6.3V用に取り替える。

 6.共振回路の実験における留意点
 (1)チョークコイルHCT0505(トヨデン)は0.05Hの自己インダクタンスを持つが、鉄心の一部を外しスライドさせることで、0.015から0.05Hまで変化させられる。
 (2)並列共振について
 共振を豆電球で確認するには、直列の時は抵抗の大きいもの、並列の時は抵抗の小さいものを選ぶ。

 7.電磁気・原子の授業で生徒の興味を喚起するおもちゃや現象
 (1)単振動の表示装置によるsin波形
 流星フラッシャーNT−6(イーケイジャパン)を利用して、単振動の位置にKEDを配置し暗室で歩くとsin波形が見える。また、LEDを円形に配置すると円運動が見え、横からみると単振動であることがわかる。このとき、点滅間隔を小さくするため、周期調整用の抵抗の値を変更した。
 (2)ペルチェ素子の利用
 高温側に熱湯を、低温側に角氷1個を使うと1V1A程度の起電力が取り出せる。これを使ってミニ四駆を動かす。
 (3)超低温における電子部品の特性
 固定抵抗、コイル、LED、ネオン管などを液体窒素で冷やして電圧を与え変化を調べる。





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