映像と音声分析ソフトで学ぶ「音・波動デジタル教材」の開発 2003.8 

                              
              東京都立青山高等学校    北 村 俊 樹
                 
  この文章は、2003年日本理化学協会 全国理科教育大会(北海道大会)で8月に発表した内容に画像ファイルを追加したものである。
 
[要約]プロジェクターを使って教室で授業を行うための、音・波動のデジタル教材を科学技術振興事業団JSTと協力して開発した。内容は、1)波形記録・表示、FFT、発振器の機能を持つ計測ソフト 2)授業提示用の静止画や動画素材  3)ワークシート、教師用マニュアル 4)学習プラン作成ソフト である。インターネットまたはDVD上のデータをダウンロードし、パソコンで映像を見せたり実験を行いながら授業を行う教材である。この教材はJSTのホームページから利用できる。
[キーワード]計測ソフト、パソコン計測、FFT、ビデオ教材、JST、インターネット
 
1.はじめに
 音や波動の分野は現象が生徒の興味を引きつけ実験が多く行われるている。その一方で、準備などから実際には実施されない実験も多い。またパソコンを使っての波形表示など、パソコン計測が効果を上げる分野でもある。
 著者は先に、「コンピュータとマイク・スピーカを用いた音の実験」1)でパソコン計測による音の実験法を、また「楽器を使った音の実験」2)で楽器を使ったわかりやすい音の授業を提案してきた。今回、これまでの教材と動画や静止画を組み合わせて、パソコンを使った、よりわかりやすい音・波動分野のデジタル教材を開発したので、報告する。
 
2.開発した教材
2−1 教材開発の経緯
 科学技術振興事業団(以下JST)では平成13年から科学技術や理科教材のディジタル教材の開発を行っている。各教材は、静止画、動画、解説、授業用ワークシート、ティーチャーズガイド、シミュレーションソフトからなり、教室でパソコンとプロジェクターによる一斉授業用のディジタル教材である。
 JSTでは平成14年度に教材案を公募し、著者が提案した音・波動のデジタルコンテンツ案が採用された。この案を土台として、JSTとNTV映像センターの協力のもと、著者は監修者および計測ソフトの提供者として、今回の音・波動デジタルコンテンツを作成した。なお、著作権はJSTにある。

  

2−2 教材の特徴
 教材は、1)波形記録・表示、FFT、発振器の機能を持つ計測ソフト 2)授業提示用の音・波動実験映像素材 3)学習プラン作成ソフト4)ワークシート、教師用マニュアル から構成される。教師は実験映像を見せたり、計測ソフトを使った実験を行い、パソコンとプロジェクターで授業を進めていく。
 開発した教材データはインターネット上に置かれ、必要に応じダウンロードして授業を行う。インターネットが使えない時はDVDを利用する。
 現在のデジタル教材の登録先は科学技術・理科教育用ディジタル教材提供システム「理科ねっとわーく」である4)。

2−3 計測ソフト
 音のさまざまな実験をコンピュータとマイク、スピーカのみで行える実験用ソフトである1)3)。サウンドカードをADおよびDA変換器として利用する。実験装置としての機能はソフトで実現する。これらは、北村製作のものをバージョンアップしたものである。

 

(1)振駆郎(しんくろう)
 マイクから入力した音の波形表示、リアルタイムの波形表示(オシロモード)、32秒間の音の保存、音の再生、時間および振動数の測定を行う。入力は2chである。操作マニュアルや実験での操作法の動画はインターネット上にある。利用例は波形観察、簡易オシロスコープ、音速測定、ドップラー効果の振動数測定などである。

   


(2)音知(おんち)
 音を取り込みFFTを行い、1〜16倍音の振幅と位相を求め表示する。またこれを正弦波の重ね合わせにより再合成し、音として出力する。声紋も表示できる。利用例は、声や楽器の音の倍音への分解と再合成である。

  

 
(3)発音(はつね)
 ソフト版2chファンクションジェネレータである。メモリ上で合成した2chの波形を出力する。0.1Hzの値まで周波数を設定でき、また左右2chの位相、振動数を変えられる。
利用例は音の干渉、うなり、気柱共鳴、弦の振動などの音源・振動源としてである。 

 
 
(4)作音(つくね)
 スクロールバーを使って1〜16倍振動の正弦波を重ね合わせ音として出力する。鍵盤があり音程(振動数)をつけて演奏できる。
 
  


2−4 授業用の音・波動実験映像素材集
 波動・音の分野では多くの実験を提示することで生徒の理解を進められるが、準備や実施時間のために省略されることが多い。実験の一部を映像化すると、多くの例を見せられ理解を進められるメリットがある。
 そこで、
 1)教科書の波・音の基本的・標準的な物理現象
 2)大がかり・複雑・興味を引く実験 
 3)楽器の音
 の実験映像素材集を作製した。
 それぞれは数分の映像で、教師は授業の範囲や内容量、深度に応じて、選択して提示できる。映像により、実際の物理現象に基づいてわかりやすく説明をすることが可能である。また、解説のCGやテキストもボタンで呼び出せる。以下に実験素材のテーマを書く。

  

T.波の性質(12種類)
 バネの縦波・横波、定常波(自由・固定端)、定常波、波の重ね合わせ、円形波、平面波、2波源の波の干渉、反射、屈折、回折
U.音波とその伝わり方(22種類)
 太鼓の振動、空気・真空中の音の伝わり方、音の高さ・大きさ・音色、遅れて聞こえるピストルの音、音の反射、音の屈折、音の回折、音の干渉、パイプ内の音の反射(空気、He、CO2)、クインケ管、音のフレネルレンズ、音叉・低周波発振器・エレキギターのうなり
V.発音体とその振動(17種類)
 ギターの弦の振動、弦の固有振動(線密度、張力、弦の長さ、振動数を変化)、クントの実験、気柱の固有振動(閉管・開管)、気柱共鳴、開口端補正、ふりこの共振、音叉の共鳴、共鳴する2本のギター、魚洗鍋の共振 
W.ドップラー効果(9種類)
 移動する波源、音源の移動、観測者の移動、音源または観測者の移動(救急車利用)
X.発展学習  無響室、ステレオのしくみ
Y.いろいろな音 (17種類)
 ギター、チェロ、ウッドベース、バイオリン、トロンボーン、フルート、ピッコロ、トランペット、リコーダー、ハモンドオルガン、パイプオルガン演奏、パイプオルガンの仕組み、鳴き龍、ストロー笛の振動、風呂、教会
 

2−5 ワークシート、教師用マニュアル
 実験や映像と組み合わせ書き込めるワークシート、教師用の手引きも利用可能である。

  

2−6 学習プラン作成ソフト
 VTR映像は頭出しに時間がかかる。また複数の映像を見せるには、前もって編集したりダビングしたりする手間が必要である。一方、CAI型教材では学習順序が固定されており、一部だけ使うことができない。
 これらの解決のために、学習プラン作成ソフトと標準学習プランを用意した。ここで学習プランとは、実験映像やソフトの提示順序を示した実行用ファイルである。教師は、学習プランの画面をクリックして映像・ソフトを表示し、または次の映像へと進めていく。
(1)標準的な学習プラン
 波の性質、波とその伝わり方、発音体の振動、ドップラー効果の各プランで、教科書の流れに沿い標準的な授業を行うものである。
(2)応用的なプラン
 弦楽器で学ぶ弦の振動、管楽器で学ぶ管の振動、フレネルレンズで学ぶ音の回折・干渉、気柱の振動応用編の4つプランである。

  

(3)学習プラン作成ソフトで作るマイプラン
 実験映像素材一覧からマウスを使って選択し順序を並べて自分独自のプランを3つまで作成できる。映像を教師が、授業の範囲や内容量、深度に応じて取捨選択できる。自分の授業の今までのスタイルを崩さずに使える。なお、数個の映像だけでなら、実験映像一覧をクリックしても映像を提示できる。
 
  

 
3.教材の利用方法
 以下の手順で授業を進めていく。
@パソコンとマイク、プロジェクターを用意する。「理科ネットワーク」にアクセスする。
A教材検索画面で「映像と音声分析合成ソフトで学ぶ音・波動教育用デジタル教材」選択。
B表紙画面が出て学習プランを選択する。

 
 
 
C「発音体の振動」学習プランを指定

 
 
D映像をスタートさせ、生徒に見せる。

  
 
E必要に応じ解説CG、解説文を表示する。
F次の映像を表示する。
 
4.授業の展開例
(1)ソフトだけを使った授業の例

例1 波形の観察
 ソフト「振駆郎」を使う。声の「アイウエオ」、音さ、ギター、金属をたたいた音などを、マイクから入力し波形を観察する。音の強弱と振幅、振動数と周期、同じ振動数での音色の違いを調べる。

例2 音の倍音への分解と合成
 ソフト「音知」を使う。楽器の音や「アイウエオ」の声から1周期分の波形をマウスのドラッグで切り出す。FFT(高速フーリェ変換)によって正弦波の倍音に分解する。逆に正弦波の倍音と振幅、位相を使い音を再合成し、波形または音として比較する。

例3 ドップラー効果の振動数の測定
 ソフト「振駆郎」を使う。ブザーをマイクの前で左右に振る。この音を録音し、波形をドラッグしてドップラー効果による振動数の変化を求める。

例4 うなりの振動数の測定
 例3のブザーの代わりに、共鳴おんさの一方に輪ゴムを巻きうなりを発生させ、毎秒あたりのうなりの回数を測定する。

例5 音の干渉
 ソフト「発音」を使う。左右2chから同位相1000Hzの音を1mほど離したスピーカーから出力する。スピーカーと平行に移動するか、片耳をふさいで首をゆっくり振ると、干渉による音の強弱がわかる。

例6 うなり
 ソフト「発音」を使う。右chを振動数400Hz、左chを441Hzに設定し、左右のスピーカーから音を出す。左chの振動数を変えていき、うなりの振動数の変化を聞く。

例7 クントの実験
 ソフト「発音」を使う。透明パイプに発泡スチロールの小球を入れ、小さいスピーカーで共鳴させる。管内の疎密に応じて小球の分布が変わる。

例8 気柱共鳴装置の音源として
 おんさのかわりにイアフォンまたは小型スピーカーから音を出力して、共鳴用音源として使える。このときは、振動数を変えて共鳴振動数を調べられる。

(2)映像を使った授業の例
例9 ドップラー効果
 ドップラー効果で実際に救急車移動や、救急車と音源がともに移動する場合を映像を見せながら解説する。
 
5.おわりに
 パソコンや映像機材を使った授業は従来もあった。またインターネットを利用した教材も従来あった。しかし、操作性や内容の点で簡単に使えるという状況ではなかった。
 本教材は、授業に使うことを前提としており、インターネットを利用することで、さまざまな映像素材や計測ソフトを簡単に使うことができ、授業の質を高めることができる。
 実験できる場合は実験をした方がいいのは言うまでもない。しかし、手軽に映像やソフトを使うことででき、そして生徒の理解が進むなら積極的に使ってほしいと考える。
 なお、本教材の著作権はJSTにあるが、学校での教育的利用については著作権処理がなされており、教員の利用や画像の加工などは自由である。
 




参 考 文 献
1)北村俊樹:「コンピュータとマイク・スピーカを用いた音の実験」日本理化学協会研究発表論文集p.36(2000)
2)北村俊樹:「楽器を使った音の授業」日本理化学協会研究発表論文集p.14(2002)
3)北村俊樹:「音声と運動の実験室」(1996)
   森北出版
4)JSTパンフレット「平成14年度開発科学技術・理科教育用デジタル教材の紹介」

関連WEBサイト
@北村俊樹:たまきち's HomePage
  http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/

A理科ねっとわーくhttp://www.rikanet.jst.go.jp
  今回紹介した以外にも理科関係のディジ
 タル教材が登録されている。教材は全国の 小・中・高校で利用可能である。学校で利 用するにはe-mailで申請し、IDとパスワ ードを発行してもらう必要がある。
B科学技術振興事業団 http://www.jst.go.jp




 

  映像とシミュレーションで学ぶ「エネルギーデジタル教材」の開発 2004.8 

                              
              東京都立青山高等学校    北 村 俊 樹
                 
 この文章は、2004年日本理化学協会 全国理科教育大会(奈良大会)で8月5日に発表した内容に画像ファイルを追加したものである。
 
[要約]プロジェクターを使って授業を行うための、エネルギーに関するデジタル教材を、JSTと協力して開発した。内容は、1)家庭のエネルギー消費量の計算ソフト、発電所建設のシミュレーションソフト 2)授業提示用の映像素材  3)学習コース、ワークシート、教師用マニュアル である。インターネットやCD-ROM上のデータをダウンロードし、パソコンで映像を見せたり、エネルギー消費計算や発電所建設のシミュレーションを行って、授業を行う。この教材はJSTのホームページから利用できる。
[キーワード]エネルギー、シミュレーション、発電、ビデオ教材、インターネット

1.はじめに
 理科総合Aは主に物理および化学の教員が教える。教員は、「エネルギーの概念」を教えられるが,応用面である発電方法やCO2による温暖化など、「エネルギーの利用」に関しては資料や実践が少ないこと、教員自身に知識が乏しいことから、教えるのに困難が予想される。一方で、エネルギーの授業で、板書による説明や表、教員の話だけでは、生徒に興味や関心を持たせたり深く理解させることは難しい。
 多忙な教育現場では、準備に十分な時間をかけられず、すぐに授業で使える映像教材が必要である。映像資料の効果はきわめて大きいため、映像による授業支援が求められる。
 そこで、このための映像素材集およびシミュレーションソフトを、JSTと協力して開発した。この教材について報告する。


2.開発した教材
2−1 教材開発の経緯
 科学技術振興事業団(以下JST)3)では平成13年から科学技術や理科教材のディジタル教材の開発を行っている1)2)。各教材は、映像、解説、授業用ワークシート、ティーチャーズガイド、シミュレーションソフトからなり、教室でパソコンとプロジェクターによる一斉授業用のディジタル教材である。
 JSTでは平成15年度に教材案を公募し、著者が提案した「映像とシミュレーションで学ぶ『エネルギーデジタル教材』」(応募名「エネルギー供給プロジェクト」)が採用された。この案を土台とし、著者および凸版印刷がJSTの協力のもとで、本報告の「エネルギーデジタル教材」コンテンツを作成した。

2−2 教材の特徴
 教材は、1)シミュレーションソフト「消費電力計算ソフト」と「エネルギー供給プロジェクト」 2)エネルギー授業用の映像素材集 3)学習コース、ワークシート、教師用マニュアル から構成される。教師は動画や静止画の映像を見せたり、シミュレーションソフトを提示しながら、パソコンとプロジェクターで主に一斉授業を進めていく。
 開発した教材データはインターネット上に置かれ、必要に応じダウンロードして授業を行う。インターネットが使えない時はDVDやCD-ROMを利用する。これらは、科学技術・理科教育用ディジタル教材提供システム「理科ねっとわーく」4)から利用できる。

2−3 エネルギー授業用の映像素材集
 理科総合Aと物理Tの学習指導要領の項目「エネルギー資源の利用」「エネルギーの変換と保存」で利用できる映像集を作製した。
 内容は、1)教科書のエネルギー項目すべての映像 2)日常生活のエネルギー現象 3)先端技術 の3つの観点を含む映像素材集で、1)化石燃料の利用 2)原子力の利用 3)太陽エネルギーの利用 4)その他のエネルギー源 5)エネルギー消費についてである。全部で54種類の映像を利用できる。
 学習指導要領の内容を網羅しており、教科書なしに映像だけでわかりやすく授業を行える。生徒は物理現象の映像を通してエネルギーについての原理・法則を理解できる。
 それぞれの映像は、数分の映像からなり、教師は授業の範囲や内容量、深度に応じて、映像を選択できる。映像は、素材として教員が採用するので、教員が自分の授業の今までのスタイルを崩さずに導入できる。
 これらは、エネルギー関連の公共機関や企業の協力を得て収録した。

2−4 シミュレーションソフト
 「エネルギーの映像素材集」でエネルギーへの理解を深めた後に、シミュレーションソフトを使いグループや生徒個人で、自分の家でのエネルギー消費量を求め家庭の省エネルギー案を考えさせたり、エネルギーに関する発電所建設計画を作らせる。エネルギーに対して生徒が、シミュレーションに基づいて深く理解すること、科学的根拠に基づいて主体的に考え行動できることを目指す。

2−5 家庭のエネルギー消費量計算ソフト
 家庭で多くのエネルギーを消費していること、エネルギーはコストがかかること、エネルギー使用にはCO2発生など環境への負荷があることを学習する表計算ソフトである。
 家庭での1月の電気代(エネルギー消費量)と機器の消費電力と使用時間を入力することで、1日にどれだけのエネルギーを消費し、どれだけのCO2を発生するかを調べる。

2−6 エネルギー供給プロジェクトの背景 
 「エネルギー供給プロジェクト」の原形はイギリスの教育用プログラムで、邦訳「エネルギープロジェクト」笠耐、富沢ちよこ著(コロナ社1989年)を参考にした。これはある島で太陽熱、太陽光、風力、波力、水力の発電所を表に記入しながら計算をし、発電所計画案を作るものである。計算量が多く生徒が途中で挫折してしまうことがあった。また作成がかなり前なのでCO2の発生を抑えるという観点がないこと、太陽・風力・波力・水力の4つのクリーンエネルギーだけを使い理想的すぎるという特徴がある。
 そこで、今回作成した「エネルギー供給プロジェクト」は、エネルギープロジェクトを更に進め、次の工夫をした。
 1)表計算ソフトで計算を簡単にすることで、高校生が短時間にいくつも
  モデル案を試して、短時間によい案を検討できるようにした。
 2)グラフや図(森の面積の増減など)を使いデータをわかりやすい形で可
  視化し表示することで生徒が簡単に取り組めるようにした。
 3)火力と廃棄物発電という発電方法を入れ、現実に近い形で計画を立てる
  ことで、実社会の問題点を考えさせるようにした。
 4)CO2の発生や環境問題についての現在の課題を盛り込んだ。

2−7 エネルギー供給プロジェクト
 シムシテイ型のシミュレーションソフトで、発電所を建設し、町にエネルギーを供給する。人口増加に伴う発電計画を立てて、発電計画の難しさや、計画の観点による発電量や環境へのダメージの違いについて学ぶシミュレーションソフトである。
 発電所の種類(水力、火力、風力、太陽光、廃棄物)、建設地の場所、発電所の耐用年数。建設費、発電の維持費。発電量、CO2発生量などがデータとして内蔵され、項目をクリックすることで入力と計算を進めていく。発電コストは電気代に反映する。これらを数値だけでなく、視覚的にわかりやすく表示する。
2−8 学習コース、ワークシートなど
 すぐに一斉授業を行えるように、画面をクリックして進める標準的な学習コースを作成した。また、映像と組み合わせ書き込めるワークシート、教師用の手引きも利用できる。


3.授業での利用法
 映像による授業と、ソフトによる実習の両者を通して、エネルギーに対して生徒が、実践に基づいて深く理解すること、科学的根拠に基づいて主体的に考え行動できるようになることを目指す。また、社会との関わりを理解をさせることを目指す。

3−1 映像素材集の利用法
 映像素材集およびシミュレーションソフトを使った6時間の学習コースを用意した。画面に従い映像素材集の項目をクリックすることで、映像が再生され、プロジェクターを用いた一斉授業を行う。 
 6時間の内容は、
  1時限:限りある資源/化石燃料
  2時限:身のまわりでのエネルギー消費計算
  3時限:太陽エネルギーといろいろな発電法
  4時限:エネルギー供給プロジェクト
  5時限:エネルギー供給プロジェクト/発表
  6時限:エネルギーの問題とこれから
 このうち、1,3,6時限で映像素材を用いる。たとえば、1時限では、@エネルギー使用量の変化 A 化石燃料の家庭での熱源として利用 B 化石燃料の起源 C 可採年数と資源の枯渇、産出地域の偏在 E 温室効果ガスの増加と大気温の変化 F 化石燃料1kgで何m3のCO2を排出するか G 化石燃料消費と酸性雨 H 化石燃料消費と粒子状物質の環境への影響 、などが利用できる。
また、これらの項目は映像一覧のサムネールになっており、教師の判断で特定項目を組み合わせて授業を行うことができる。

  図1 火力発電



  図2 太陽熱利用




  図3 世界最古の自然原子炉(オクロ鉱山)



  図4 原子力発電の原理



  図5 波力発電の原理



  図6 太陽光発電の原理



  図7 コージェネレーションの概念



  図8 自動車でのエネルギーの利用


3−2 エネルギー消費量計算ソフトの利用法
 省エネルギーや省資源のためにはまず、自分のエネルギー消費量がどれくらいかを把握しなければならない。ソフトでこれを行う。

  図9 家庭の消費電力の入力画面




1)家庭の電気量の1月の請求書から消費量を入力し、1日のエネルギー量を計算する。
2)自分の使っているテレビやラジカセ、電灯などの項目をチェックし、使用時間を入力する。電気器具の標準的な消費電力はソフトに内蔵されており、項目をクリックすると消費電力が入力・表示される。これと時間の積から1日の消費電力量を表示する。
3)これらのデータを使い、1日あたりのエネルギー消費量または製品あたりのエネルギー量が、石油換算何g、CO2換算何g、電力量何kWhになるかを表示する。
5)応用編として、一人暮らしをするときのエネルギー消費のシミュレーションを行う。
6)さらに、授業の際に、消費電力を減らすには何を減らしたらよいか、待機電力によるエネルギーの消費量はなどの課題を与え、エネルギー消費について考えさせ、自分のエネルギー消費量について考えさせ行動させるように導く。この結果から、電気を減らすのだけが省エネルギーではなく、エネルギーを減らすのは単純でないこと、待機電力が大きいこと、省エネには細かい注意が必要だ等ということを気づかせる。
 利用形態は、パソコン室で生徒の個人またはグループが操作しながら学習する場合と、プロジェクターを使い教師が生徒に質問しながら入力し表示する一斉授業の場合がある。

3−3 エネルギー供給プロジェクトの利用法
 このソフトで、5〜15年間の供給計画を考えさせる。各エネルギーの発電所をどこに、いくつ、いつ建てるかの組み合わせで各人のエネルギー計画を作る。たとえば、CO2を減らす計画、クリーンエネルギーだけで行う計画、変動の少ない計画、一番コストのかからない計画などの観点で行う。これは班で話し合って、エネルギー供給の方針を決める。


  図10 発電所計画設定画面



  図11 発電所建設と環境への影響



 発電所の位置を表示したり、CO2発生やエネルギー供給量の時間変化をグラフ化するなど、情報を可視化して表示する。生徒はこれらを見ながらトライアンドエラーで計画を修正していき、望ましい発電計画を作る。ヘルプファイルには各発電方法の特徴が書いてある。
授業の利用法としては、グループまたは個人で取り組み、方針(コストを最小にとか、環境への負荷を少なくなど)を立てるか、または教師の提示する方針に基づき、ソフトを利用して各自のエネルギー案を作成する。
 計画を立てシミュレーションが終わったら、画面をプリントアウトする。パソコン室での授業はひとまず終わりとする。
 その後、教室に戻り授業で発表し、各班の長所・短所を検討する。また、さらに可能な場合は、投票によって優劣を競う。
 また、グループに別れた後、コスト最低計画、クリーンエネルギーのみの計画、石油依存計画など案からくじ引きで各班案を決め、ディベートを行ってもよい。 

4.おわりに
 エネルギーに関する映像素材とシミュレーションソフトを開発した。本教材に含まれるさまざまなデジタル教材を使うことで、授業の質を高めることができると考える。
 一方、授業でこれらの映像を見たりソフトを使う場面で、ただ単にビデオを見ているだけとか、ソフトを動かすだけでは学習内容は定着しない。これらは、あくまでも授業のための素材であり、教師の適切な指導があって初めて有効な教材となると考えている。
 本教材の作成については、指導案やソフトの修正で、都立雪谷高校の永露浩明先生にご協力いただいた。この場を借りて感謝したい。
 最後に、本教材の著作権はJSTにあるが、学校での教育的利用については著作権処理がなされており、教員の利用や画像の加工などは自由である。


参 考 文 献
1)北村俊樹:「映像と音声分析ソフトで学ぶ『音・波動デジタル教材』の開発」日本理化学協会研究発表論文集p.66(2003)

関連WEBサイト
2)北村俊樹:たまきち's HomePage
 http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/
  e-mail:PDF02120@nifty.ne.jp
3)科学技術振興機構 http://www.jst.go.jp
4)理科ねっとわーくhttp://www.rikanet.jst.go.jp




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