コンピュータを用いた音の実験

             東京都立高島高校 北村俊樹

 Windowsのパソコンでは、音を取り扱うためにサウンドカード(16bitAD+DAコンバータ)が標準で装備されています。これを物理実験に使った例に、神川他1)大久保2)笹川3)北村4)があります。これらではサウンドカードで音をサンプリングし、波形を表示し、高速フーリェ変換FFTで倍音に分解し表示します。さらに分解した倍音を、サイン波の重ね合わせにより元と同じ波形に再合成します。この過程で音に対する理解を深めるというわけです。
 パソコン計測は難しいというイメージがあります。でも音の実験ならマイクとスピーカとソフトさえあれば簡単にできます。音の実験では、従来の実験に比べ簡単にできたり、パソコン計測で可能になる項目が多く、積極的にパソコンを使うべきだと私は考えます。パソコンが身近になった今、学校のパソコンだけでなく生徒の自宅でも実験できたらこんなすばらしいことはありません。というわけで、本稿ではWindowsパソコンとマイク+スピーカで簡単にできる音の実験を紹介します。


1.波形を観察しよう

    使用ソフト:パソコンオシロ「振駆郎」
 声のアイウエオ、音さ、ギター、金属音などの波形を観察します。音の強弱と振幅、振動数と周期、同振動数での音色の違いを調べます。ディジタルメモリスコープの機能を持つので、リアルタイム波形表示の他、同期させたり、波形を止めて観察もできます。FFTもリアルタイムで行います。他の音源も使いたい場合は1)に添付の数百個の楽器や声の音ファイルを利用してください。


図:「ア」の音



2.音を波形に分解・また再合成しよう

    使用ソフト:「音知(おんち)」
 マイクで「アイウエオ」と発音し、波形を表示します。「ア」の波形を切り出して、FFTにかけて1から16倍音の振幅と位相を求め表示します。これをサイン波の重ね合わせにより再合成し、さらに音として出力します。耳で元の音と聞き比べます。
 4秒内の言葉なら声の倍音成分の時間変化も表示可能です。(声紋の原理)


図:「アイウエオ」の声紋




図:「ア」の音の倍音への分解




図:「ア」の音のサイン波の重ね合わせによる合成



3.波の重ね合わせで音を合成しよう

    使用ソフト:「作音(つくね)」
 波の重ね合わせの原理を使って、倍音を重ねて音の波形を作ります。これを音として耳で聞きます。倍音は1から8倍音と0.5倍、1.5倍音でハモンドオルガンのドローバーと同じ倍音列を使っています。作った音はキーボードで演奏できます。またマウスで画面上に書いた波形を音として聞くこともできます。「音知」の音の合成機能の一部分を取り出したソフトです。


図:ドローバーで各倍音の振幅を指定し重ね合わせる



4.音速を測ろう

    使用ソフト:「とりコンブ」
 音速を測定するには2点間の距離を2つのマイクの信号の時間差で割ります。ステレオ用のマイク入力、またはライン入力にマイクミキサー経由で2本のマイク50cmほど離しつなぎます。空き缶をドライバーで叩き音を鳴らして各chに取り込みます。「とりコンブ」上で2点間の時間差をマウスで指定し計ります。(この方法は大久保先生のものを参考にしました。)


図:青と黒の波形はそれぞれ離れた点のマイクの




5.ドップラー効果の振動数を測ろう

    使用ソフト:「とりコンブ」
 痴漢ブザーをマイクの付近で動かします。静止して1秒ほど置いた後、左右に何回か往復させます。とりコンブ上で1周期分の波形を指定し、周期からドップラー効果の振動数を計算します。再生機能もあるので、耳で変化位置を特定できます。


6.振動数と音階の関係を調べる

    使用ソフト:「発音(はつね)」
 「発音」はファンクションゼネレータのソフトです。サイン波、三角波、のこぎり波、方形波を0.2Hz刻みで60〜9999.9Hzまでステレオで出力できます。キーボードがあり、マウスで鍵盤を押すと振動数が表示され音が鳴ります。ラの音440Hz、ド(1倍)とソ(1.5倍)、高いド(2倍)、高いソ(3倍)などや半音間が2の1/12乗であることなどを確かめます。


図:サイン波 440Hz



6.音は干渉する

     使用ソフト:「発音(はつね)」
 左右のスピーカから音を出し片耳で左右を移動します。音の干渉の様子を耳で聴きます。2つのスピーカからの音は同位相と、逆位相を簡単に切り替えられます。


7.気柱の共鳴点を探そう

     使用ソフト:「発音(はつね)」
 各社から発振器とアクリルパイプを用いた気柱共鳴装置が出ています。この発振部分をパソコンで置き換えます。共鳴用に使うスピーカーはボックス入りでなく、むき出しのスピーカの方が共鳴点がよくわかります。また、振動数が正確にわかっており、また周波数安定度も良い点が大きな利点です。音さの共鳴箱付近でスピーカから音を出すとき、干渉により消音できることが観察できます。


8.音さの共鳴とうなり

    使用ソフト:「発音(はつね)」
 1)音さをならし音を聞き、画面上の鍵盤で近い音を探し大体の振動数を求めます。2)振動している音さに、振動数を変化させていきうなりが0になる点から、音さの振動数を求めます。3)振動数を求めた後発振周波数をずらしうなりの様子を耳で聴きます。「発音」は単体でも左右の振動数を変えられうなりを聞けます。


9.弦の固有振動を調べる

    使用ソフト:「発音(はつね)」
 スピーカにフィルムケースの底を両面テープではりつけ、ふた部分に直径数mmのプラスチック棒を付けて、弦用の振動源とします5)。パソコンからの音声出力をラジカセ等で増幅しスピーカを駆動します。弦に張力を加え、振動源で一端近くを振動させます。腹が一つの定常波ができる時の発振周波数を求めます。続いて腹が2個、3個の場合の振動数を調べ、振動数の比を求めます。


10.水波の振動源として  

    使用ソフト:「発音(はつね)」
 フィルムケースのふた部分に2cm×5cmほどのプラスチック板を張り付け両側に直径1cmのプラスチック球を付けて水波用振動源とします。その他は弦の固有振動の場合と同じです。振動数を変えて波長の異なる水波を起こせるので、干渉による接線の様子や波長と干渉の度合いを調べることができます。


参考文献
 1)北村俊樹:「音声と運動の実験室」(1996)森北出版
2)神川定久:「特殊なハードウェアを必要としない音声の取り込み」
物理教育No.47-1(1995)p.34
 3)大久保政俊「コンピュータに内蔵されているADコンバータを使った計測」
  物理教育通信 No.98(1999)p.102
 4)笹川民雄「音の分析と合成」新潟物理教育第3号(1999)p.14
5)北村俊樹:「生徒用多目的波動実験装置の開発」物理教育No.40-4(1992)p.253
 なお、今回使用したソフトのうち「とりコンブ」「発音」は新規に開発した物で、
その他は1)の添付ソフトです。

   ソフト登録先:たまきち's HomePage
        http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/

改訂版のネット上での公開 2000.8.5

 1996年に森北出版より「音声と運動の実験室」を出版しました。この本はCD-ROMに収められたソフト付きで、Windows対応のほとんど最初の物理シミュレーション+計測ソフトだったと思います。当時はWindows3.1の時代でソフトの作成はwIN3.1用だった物が、校正の最終段階でWindows95が発表され急遽Win95対応分も作成したものでした。でも2000年になってCPUも速くなったこと、Windowsの体裁のソフトが増えてきたことなどから、音関係のソフトのみバージョンアップ版を製作し公開することとしました。これは、上の記述で使われているソフトをさらにverupしたものです。ダウンロードしたファイルの使用は、教育用であればさしあたって可とします。
 まだ開発途中版です。機能に制限はありません。不具合の場合は北村までメールをお願いします。

音声編:
 
  演示実験用パソコンオシロ  「振駆郎 ver1.3」  SYNCROU9 EXE
     「振駆郎」をダウンロードする(150K)
  2現象パソコンオシロ  「2振 ver1.2」  WSYNCROU EXE
     「2振」をダウンロードする(151K)
  音の入出力、分析、合成「音 知」ver1.3  ONCHI16 EXE
  (8bit 11KHzサンプリング)
     「音知」をダウンロードする(133K)
  音の入出力、分析、合成「音 知」ver1.4  ONCHI16REV EXE
  (8bit 44KHzサンプリング、ただし起動しないコンピュータ有り)
     「音知」をダウンロードする(133K)
  音色を作る      「作 音」  TUKUNE16 EXE
     「作音」をダウンロードする(114K)
  2chメモリースコープ    「とりコンブ」  TORICONVSYNC EXE
     「とりコンブ」をダウンロードする(155K)
  2ch低周波発振器      「発音(はつね)」  HATSUNE16 EXE
     「発音」をダウンロードする(224K)


注意:音のソフトは一度に一つしか実行できません。
特に、「とりコンブ」「発音」では他の音のソフトが起動していると、
その後どのソフトでも音が出なくなることが合います。その場合は、
再起動して、必ず音のソフトを終了してから別の音のソフトを実行する
ようにして下さい。この不具合は将来取り除く予定です。

限定版のネット上での公開 2000.3

出版社との契約で本に添付されたソフトをそのまま登録することはできません。しかし、起動後数分経つと終了する限定版ならOKでついでに宣伝にもなるとの了解を得ました。そこで、「Windowsで知る音声と運動の実験室」(森北出版)の本収録の27種のソフトの内、18個を機能限定版として公開しています。これらは、以下のページにありますのでそちらからダウンロードして下さい。

音声と運動の実験室
電磁気・光と原子の実験室



なお、終了したらもう一度アイコンをクリックすれば何度でも使用できます。
 完全版が必要な方は、CD-ROM付きの本を手に入れて下さい。

◎音の実験例「音の波形の観察」

  高校物理の授業で使える音の実験法です。三省堂詳説物理IBを参考にしています。 ■目的  さまざまな音の波形をコンピュータ(またはオシロスコープ)を用いて観察する。 ■準備  マイクロフォン、音声入力付きコンピュータまたはオシロスコープ+増幅器、音叉2本、楽器(笛、ギター、電子楽器など)、ワイングラス、輪ゴム ■実験方法  コンピュータ(またはオシロスコープ+増幅器)にマイクロフォンをつなぎ、音源から音を出して音の波形を観察し、スケッチを行う。 ■観察と考察 ・・・・・図はp.1「2.音を波形に分解・合成しよう」参照のこと 1.はじめにおんさの音の波形を調べる−−−>((音叉はきれいなサイン波です)) (1)おんさを振動させて、パソコンと接続したマイクロフォンでその音を取り込む。おんさの音が小さくなっていくと、波形はどのように変化していくか。 ((ソフト「振駆郎」で「開始」ボタンを押し、適当なところで「停止」ボタンで取り込む)) (2)いくつかの振動数の異なった音叉の波形を観察し、それらにはどのような違いがあるかを調べよ。 (3)コンピュータ上の波形で、縦軸と横軸はそれぞれ何を表しているか。 2.あらかじめ標準おんさを使って、いくつかの異なった楽器(笛、リコーダー、ギターなど)の振動数を合わせておく。これらの楽器の同じ振動数での波形を標準おんさの波形と比べ、波形の違いと音色の違いを調べよ。また、人の声についてもその波形をしらべてみよ。 3.共鳴する2つのおんさの1つの枝に輪ゴムを巻き、その固有振動数を少し小さくする。2つのおんさを同時に振動させ、、うなりの波形を観察して、うなりと波形の関係を考察せよ。 4.コンピュータの上の波形から音源の振動数を求めるにはどうしたらよいか。測定法を考え、実際に測定せよ。 5.コンピュータの計算機能を用い、波形を倍振動に分解しその振幅の割合(と位相)を求めよ。音源としては、楽器の音や、人の声の「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」を用いよ。 6.5の倍音の振幅(と位相)を入力し、重ね合わせの原理によって合成波を作製せよ。 この合成波形を元の波形と比較せよ。また、音として出力し耳で聴き比べよ。 7.ワイングラスのふちをぬらした指でこすり音を出せ。またグラスを叩いて音を出せ。2つの振動数は同じとなる。このときの波形を倍音に分解し比較せよ。((こすった方はきれいなサイン波、叩いたのは倍振動含まれる))。 8.以上の観察と考察にもとづき、音の大小、高低、音色と波形の関係、うなりと波形、波形の分解と重ね合わせについての報告書を作成しなさい。
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