楽器を使った音の授業 2002.8
東京都立高島高等学校 北 村 俊 樹
[要約]
楽器を使って実験を行いながら音について学ぶ授業法を開発した。その特徴は、@ストロボおよびハーモニクスを使い弦楽器の倍振動を観察する。 A振動数測定に鍵盤楽器と理科年表を用いた方法を開発した B実際の楽器で弦長や管長と振動数の関係を演示する C多くの楽器の長さと振動数の関係を授業でいつでも使えるようビデオに収めた D楽器でうなりと共鳴を観察させる である。音に対する興味を高め、楽器の原理がわかると生徒に好評であった。
[キーワード]楽器、振動数測定、ハモンドオルガン、ビデオ作成、ストロボスコープ
1.はじめに
音の単元では、導入に楽器を使うことはあるが、楽器そのものを取り扱うことはあまりない。生徒が興味を示すことと、楽器が物理の法則に基づくことを実感させたいと思ったことから、楽器をメインに使った音の授業法を開発した。
2.授業の展開法
2−1 ギターによる弦の振動の導入
ギターの振動数を変える方法を質問し、
@弦の太さ(線密度)
A張力
B弦の長さ
が振動数を決めることをギターで実演する。
図1
2−2 ギターの弦の定常波の観察
(1)基本振動、2倍、3倍振動の観察
ハーモニクス奏法による倍振動を使う。
ギターの弦長の1/3(7フレット)と2/3の位置で振動させ、同じ3倍振動の音がしていることを聞かせる。
また弦長の1/2の12フレットを押さえたときとその位置でのハーモニクスの音(2倍振動)が同じ高さであることを耳で聞く。
図2
図3
(2)ストロボによる観察
ストロボをあて、基本振動や倍振動を同期を少しずらしゆっくりと振動させみせる。
図4
2−3 振動数の測定方法
(方法1) 振動数測定は、ギターと同じ高さの音を鍵盤楽器で出し、理科年表の楽音表より求める。
図5
図6
(方法2) 発振器ソフト「発音」2)を使い、ギターの音と同じ高さに聞こえる音を発振させ、そのときの振動数を読みとる。
図7
2−4 ギターの基本および倍振動の測定
ギターの基本振動、倍振動の波長と振動数を測定し、その間の関係を調べる。
(1)弦の長さL=0.653m (ギター開放弦)
(2)波長λn λn=2L/n
(3)fn=nv/2L導出(従来同様黒板上で)
(4)理論値と測定振動数fnを比較する
基本振動 f1=110Hz(5弦開放弦ラ音)
2倍振動 f2 =220Hz (12フレット ハーモニクス)
3倍振動 f3=440Hz (7フレット ハーモニクス)
2−5 ギターの音色と倍音構成
ギターの音に倍音が含まれていることをコンピュータソフト「音知」1)2)でFFTを行い示す。
図8
2−6 リコーダーによる気柱の振動の導入
管楽器の振動数を変えるにはと質問する。
@管の長さを変える
A吹く息の強さを変えて倍音を出す
が答えである。ソプラニーノ、ソプラノ、アルト、テナーの4種のリコーダーを吹く。管が長くなると低音になることを実演する。
図9
2−7 クントの実験
管内の定常波を実感させるため、大きさ数mmの発泡スチロール球を入れ低周波発振器を使ってクントの実験を見せる。節と腹の位置を観察する。
図10
2−8 フルートの基本振動の測定
フルートを生徒に吹かせ、振動を測定する。
@管の長さL=0.620m
A音速V=340m/s
B開管で両端は腹であり、基本振動
Cfn=nV/2L導出(従来同様黒板上で)
D測定値(261.6Hz)と理論値(274.2Hz)を
比較し、違いの原因を考えさせる。
図11
2−9 膜の固有振動
太鼓を使い発泡スチロール球でクラドニー図形を作り膜の固有振動を見せる。振動源は低周波発振器とスピーカーである。
図12
図13
2−10 エレキギターのうなり音と調律
エレキギターの5弦の5および4弦7フレット(ともにラ)でうなりの実験を行う。片方の張力を変え、うなりの回数が変化を聞く。
図14
2−11 エレキギターとガットギターの共鳴
アンプを通したエレキギターの音でガットギターを共鳴させて鳴らす。
図15
2−12 ハモンドオルガンを使った倍音合成
ハモンドオルガンは正弦波の1〜8倍音の重ね合わせで音色を作る。このオルガンを使い、様々な楽器の音を合成し実演する。
図16
図17
2−13 マリンバやビブラフォンの下の共鳴管
板の固有振動と管の共鳴振動の関係を説明。
2−14 ビデオの利用
授業で多くの楽器を使うのは難しい。ブラスバンド部や箏曲部の生徒に協力してもらい、楽器の長さと最低音を言ってから音を鳴らすビデオを作成し、授業で利用した。
3.楽器の測定結果
3−1 弦長と線密度、振動数の関係
図18
3−2 管長と振動数の関係
図19
4.おわりに
楽器の原理がわかったことと、黒板の説明だけでなく生徒が楽器を演奏し実験したことが好評だった。音の単元をを全部楽器でとまでは言わないが、適宜取り入れていくと授業に活気がでると思う。
なお、この文章は、2002年日本理化学協会 全国理科教育大会(宮崎大会)で8月に発表した内容に画像ファイルを追加したものである。
参 考 文 献
1)北村俊樹:「音声と運動の実験室」(1996)
森北出版
関連WEBサイト
2)ソフト登録先および「楽器を使った音の授業」について詳しいことは、
北村俊樹:たまきち's HomePage
http://www.bekkoame.ne.jp/~kitamula/
なお、「映像と音声分析ソフトで学ぶ『音・波動デジタル教材』の開発」は本研究を下敷きにしており、科学技術振興機構JSTのホームページ理科ねっとわーくで公開されています。
3)科学技術振興機構 http://www.jst.go.jp
4)理科ねっとわーくhttp://www.rikanet.jst.go.jp
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